・・・・なぜか、この場で一番殺気立っているのが現地球の中だけでは絶対的強者のラディッツではなく、数百年ぶりに復活して若い肉体を手にいれたピッコロ大魔王でもなく・・・・
「おら絶対におめえ達の事許さねえぞ!!!!」
よくもおらと・・・おらは良いがクリリン殺しかけたなと如意棒を構えて鬼の形相をしている悟空と
「お前達のせいで私達の夢が潰れたんだぞ!!!」
幸せ満載で生きてきた貴様等に、私の何が分かると言い募るピラフ・・・・
その二人を、二人の背の高い大人(・・・・ピラフよりもピッコロ大魔王年上だし・・・)が殺気立っている二人をとっ捕まえている。
どこな微笑まし気にしながらピラフを抱えているピッコロ大魔王の心情は兎も角として、ワイヤレスイヤホンで現状を逐一報告受けているラディッツは・・・・戦う気が失せている・・・・・だって・・・・世界滅亡させかけたかもしれない敵が、突如として蒸発したか溶けたかされましたと、半ばパニック気味の報告に驚いたからだ。
ラディッツはそもそもが、ゲンイン達曰くの弱いサイヤ人で闘争本能がまるでない奴なのである。
目の前に危難が降りかかるか弟が決定的に危機に陥ったの類でなければ、闘争心が失せてしまう・・・・舐めプとかそんなレベルではなく本当に戦いにからっきし向いていない奴なのだ・・・・・駄目じゃん・・・
しかも目の前にいるピッコロ大魔王と弟が言った相手が、本当にお師匠様が震えながら話していた悪の大魔王に見えないところにも問題がある。
邪気が無いのだ全く持って・・・・まるで静かで・・・・目を離したすきに消えてしまう位に自然に溶け込んでいる・・・
警戒心の強いクリリンが、突如として空から降りてきたピッコロ大魔王に無警戒の様になってしまったのが此処にある。
いまだとて大魔王様と、ピラフに憤慨されながら呼ばれている男は、何が面白いのかわかったわかったと言ってはピラフが降ろしてくださいと言っても降ろさずに・・・遊んでいるであってそうな事しとるし・・・・そんな二人に、おら達の事殺そうとした癖に何楽しそうにしてんだとブチギレ起こしている弟を宥めている間に、
「悟空!!!!!!!!!」
ヒュゥゥゥーーーーン!!!
「クリリン!!??・・・・・おめえ筋斗雲に・・・じゃなくて!!なんでこんなあぶねえところに来ちまったんだよ!!!」
「馬鹿!!!お前一人で行かせて俺一人が待ってるってあると思ってんのかよ馬鹿悟空!!!!」
筋斗雲に乗って来たクリリンは悟空に飛びつき、そのまま何とも言えない表情をしたラディッツの腕に悟空共々おさまり、二人は兄の腕の中で言い合いをする。
・・・・目の前の敵をほっぽり出して・・・
「おらが弱くて馬鹿なせいでクリリンが死にかけたんだぞ!!??」
「俺だって強くないけど!悟空を一人で戦いに行かせるくらいなら死んじまったほうがましだ!!!」
「馬鹿言うなよクリリン!!おめえが死んじまったら・・・・おら・・・おら嫌だぞ!!!」
「俺だってお前が死んじまったら嫌だよ悟空!!!」
そしてとうとう泣き合って抱きしめ合って・・・・ピラフがブチギレ起こした・・
「お前達は・・・・そこまで私の存在はどうでもいいのか!!!!」
その声音には確かに力が宿っていた、怨念まみれの怨嗟の力かも知れないが、悟空とクリリンを瞠目させるほどの気迫が籠っていた。
「お前達強者からすれば!!私の様な力のない者はとるに足らんのだろうな!!」
世界をこれ程に騒がせ人死にが出掛けたというのに、それでも最後には相手の視界から自然と外される路傍の石よりもちっぽけなのかと、ピッコロ大魔王の腕の中で吠え上げるピラフの表情は真剣そのものであり、何故自分が世界の滅亡を顧みないような事を仕出かしてのかぶち上げた・・・・偏にラディッツこと孫悟雲憎さだった・・・世界征服の仕方にまでケチをつけ、上から目線で自分を碌に見もしない奴の、収まりかえった顔を歪めてやりたかったのだと
いつの間にかピッコロ大魔王の腕から降ろされたピラフは、大地を踏みしめ指をラディッツに向けながら吠え上げた言葉に、
「クッハッハッハッハッハ!!やはり貴様は面白いものだなピラフよ。」
「・・・・ここで私の何を面白がるところがあるんですか大魔王様!!!!」
勝手な言い分にラディッツと悟空とクリリンが怒るでもなく、ピアノ達は遠巻きに見ているだけで、ピッコロ大魔王がピラフの物言いに呵々大笑して、ピラフはここ数ヶ月ずっとそんな大魔王様に振り回されて最近はこうして顔を真っ赤にして怒っているのを、大魔王様は其れすらも愉快気にしてみているのをラディッツ達はポカンとした
・・・・こいつ本当にピッコロ大魔王であってるのだろうか・・・・
そんな困惑の中・・・
「・・・・・貴様・・・本当にピッコロ大魔王か?」
「「シュラ!!!!」」
外来種魔族の大魔王と外来種宇宙人の間に、地球産の魔族の長・シュラが空からゆっくりと降りたち、悟空とクリリンを驚かせながら
「モンブランと父君のナーリキンも無事だ、もしも二人に会ったらそう言ってくれと頼まれた。」
「お前・・・・うん・・・受け取った・・」
「へへ、やっぱりおめえそんな悪い奴じゃなかったんだな。」
数ヶ月前にモンブランを攫った奴だが、そこまで悪人ではない気がしていた二人は、クリリンは少し戸惑いながら、悟空はやっぱりと確信しながらモンブランの言葉を素直に受け取る中、伝言を終えたシュラは、かつて遠目で見たピッコロ大魔王と現在のピッコロ大魔王の落差に驚きが隠せない・・・・邪気がない・・・しかし善の心も感じられない・・・
「俺はあの世とこの世の境の黄泉に住んでいる魔族の長シュラだ。」
名乗り、貴様は何者だと問うシュラの質問に、
「私がピッコロ大魔王だ。」
それはお前達の方がよく知っているだろうと笑って答えるのを、ラディッツがシュラの次に質問をした。
「お前は数百年前に世界を、正確には人間すべてを殺して世界を征服しようとした悪鬼だと教えられた。
だが、-今-のお前の目的なはんだ?」
征服をするのならば、若返った肉体を引っ提げて手下たち共に戦いにけばいいのに、何故世界各地に展開していた手下達は一斉に姿を消したのだというラディッツの疑問に、事情を全く知らないクリリンと悟空が首を傾げる中、大魔王様と・・・かすれた声を上げるピラフを、大魔王は愉快気に笑い再びピラフを抱き上げさらりと答えた。
「私にはもう世界を如何にかしたい気持ちはない・・・・・」
これに封印を解かれた瞬間からそれは自覚をしていた・・・・
▲▲▲
俺はもう一人の俺から爪弾きにされた・・・・お前はいらない-邪魔-だと・・・捨てられた感情を天空から放り出したあいつは収まりかえった嫌な奴だろう・・・悪だから邪魔というが・・・・お前が抱えていた心だろうに!!!
捨てられた瞬間から煮えくり返った!邪魔だからと捨てられた方の事なぞ想いもせずに・・・それほどまでに世界の上に立ちたいというのなら!!俺がその世界を根本から壊してやろう!!!!
征服に興味があったわけではない、単にアレが守りたいなぞと抜かしていたから反対に壊してやりたかっただけの話・・・人間どもの恐怖や嘆きが其の時の俺には心地良く感じた・・・・これとても奴が見ているしか出来ないと嘆かせる事だと思うと心が高揚した・・・・復讐だった・・・・奴への・・・
だが、武泰斗という達人に封じられ海に沈められた後、最初の十年は復活したら必ず復讐をしてやると煮えくり返っていたというのに・・・・
「どうした事か俺の中から赤黒い怒りは消えていた・・・・」
少しずつ、少しずつ、何かの気が少しずつ自分の中に入り込まれた気がして・・・ピラフに封印を解かれた時には自分から何かをこの世界にしてやりたいという思いすらもわかずに、ピラフの愚直なまでの感情が面白く感じて
「手を貸してやったのだ。」
・・・・・・なんだそれは・・・・
「ではピラフというその男が、世界征服ではなくここにいる孫悟空の兄の悟雲だけを殺してほしいと願っていたらお前はどうしていた?」
「無論その通りにしただけだ。」
征服を除いても、無気力のようになった自分を揺り動かした熱量で望まれたら、きっとそうしていただろうという、大魔王の穏やかな・・・・穏やかすぎる声音の答えに、望んだピラフをしてポカンとした・・・・だって・・・・伝説とまでなった悪の大魔王が、こんなちびで無力の自分の望み故にここまで途方も無い事をしてくれたと言ってくれたら・・・・・
「ふ・・・う・・・」
「なんだ?何を泣く?」
「だ・・・大魔王様・・・・」
もうどうしていいか分からんである・・・・同じ強者でも、孫悟雲なぞろくすっぽ自分を見る事なんてなく、虫がいる以下の扱いなのに・・・・大魔王様は自分の望みの為に動いてくださっていたなんてというピラフの言葉に、ラディッツは弟二人をそっと降ろして頭をがりがりと掻きながらピッコロ大魔王に問うた。
「・・・・つまり、現在のあんたにとって世界征服はピラフが望んだ事であって、あんたにとってはそれが達成するかどうかはどうでも良かったのか?」
「ほう・・・鋭いな。
その通りだ、今の私にとって大事なのはそこじゃない。」
私に熱量をくれるピラフの存在の方が大事だというピッコロ大魔王に・・・・ラディッツは物凄くうんざりとした顔をした・・・・・物凄く似てる方の側で、六年間も働いていたから分かる・・・・こいつは強さは兎も角、フリーザ様に途轍もなく似ている!
周りの事象や心情よりも、己が楽しめるかどうか・・・・そういう意味だと自分の周りにいたかつての大人達が全員そうだろうと思うだろうが、破滅を望まれても面白そうだからと手を貸すものなんてそうはいないが・・・・いるのをラディッツは知っていてそして・・・・いかれてしまった・・・・前世の常識も良識も捨て去るほどに・・・あの方と酷く似ていると思うと・・・・折角心の奥底に埋められた慕情が鎌首をもたげそうになるのを、ラディッツはそれを埋めるべく顔をしかめて頭を何度も掻く・・・・
「なるほど?お前のその仕草が、ピラフにとって許せない事か・・・・見ていて私も不快になるな。」
「・・・なに?」
「お前は自分の一挙手一投足が相手にどう映っているのかなぞ気にした事は無いのか?」
「・・・・俺なんて見ていても面白くも無いだろう?」
何を言い出すんだというラディッツの言葉に、ピッコロ大魔王は鼻で笑う
「お前が私の何を見て知った気になっているかは知らんが、ひとつ言ってやろう。
ピラフの能天気な心を憎悪に染めたのは間違いなくお前だぞ。」
「・・・・・俺が?」
「そうだ、お前にとってピラフはとるに足りん者だろうが、こ奴とて物思う生き物だぞ?」
その言葉に、ラディッツは酷く動揺した
自分がピラフをそんな風に、いや、人をそんな風に軽んじた事は無いと言いかけるラディッツの瞳を、ピッコロ大魔王は酷く真剣な瞳で見つめてきた。
「なるほど・・・無自覚か、質の悪い奴だ・・・」
自覚して悪事を働く奴の方がまだましだと言わんばかりの大魔王の態度に、兄が侮辱を受けている事に悟空とクリリンの闘争心に火がつきかけ飛び掛かろうとした時、機先を制するようにシュラがピラフに声をかけた。
「ピラフと言ったな、お前はどこでピッコロ大魔王を見つけて封印を解いた?」
物凄く重要な事を聞くような雰囲気に、
「・・・・確か・・・ある場所を過ぎたら太陽が話しかけてきた妙な場所の海域だったな・・・」
「・・・・陰と陽の内の、陽の気しかないあの場所か・・・・」
これで分かったというシュラは、溜息をつきながらピッコロ大魔王の変異について推察を述べた
「先程こいつの行動目的を聞いていたが、誰に捨てられた感情かは知らんがこいつは生まれながらにして陰の気しかなかったようだ。」
しかし封印先が陽の気しかない場所であり、数百年をかけて陰と陽がピッコロ大魔王の中で混ざり合い
「悟空とクリリン、俺が言った言葉を覚えているか?」
モンブランは陰と陽の気が混然とした場所なら病気にはならない、何故なら病魔が存在しないから
「・・・でしたっけ?」
「クリリンはよく覚えている。それと同じだ、こいつは陰と陽の気のバランスが取れて思考は兎も角として邪気は無くなり進んで悪事を働く気が全くない奴になったんだ」
・・・・・・
ええええ!!!!!????
何だそのとんでもなく都合のいい展開は!!!気の事だけで善悪逆転とまではいかないまでも、邪気が無くなりましたって・・・・フリーザ様が地球に住み続けてくれたら・・・・悪の心が無くなってくれるのかなとか、夢見て日和るほどにラディッツと聞いていた悟空とクリリンとピラフも仰天した!!!・・・・これ聞いたら絶対になんじゃそれはとか、お師匠様が大激怒しそうだが・・・・
「あぁ・・・ちなみにピッコロ大魔王・・・お前はこれからどうするつもりなんだ?」
「ピラフの熱量を堪能して、-ゲーム-もそこそこしたが飽きたしな・・」
「・・・・なるほど、昔の大魔王の眷属よりも弱かったのは、貴様ゲームをしていたのか・・」
「ふふ、現在の人間のレベルはピラフが調べ上げていたからな、」
シュラの問いに、必死に抵抗すれば生き延びられる簡単でスリルのあるゲームであったろうと言う大魔王。
人間が生きても死んでもどうでも良く、生命をかけて逃げまどい抵抗する様は生命の煌めきが見れた様で美しかったという言葉に、悟空とクリリンは何を言っているのだとぞっとした・・・生命を脅かす事をゲームだといい、生死を度外視した発言をした大魔王は本当に遊びに飽きた子供のようで、それがなお一層の事恐ろしく見えて
「ピラフを連れてあちこちフラフラとする・・・・」
眠いから今は兎に角寝て、その後何かしたいことが無いかを世界中を周ってみると言う。
勝手に産み落とされてから感情を振り回され、今はそんな事をする気も起きないが退屈はごめんこうむる・・・面白きものを連れ歩けば楽しそうだと
「わ!!私がですか!!??」
「お前は嫌か?」
まぁお前にはその選択肢しかないぞという大魔王の言葉に、その通りだとピラフは項垂れる
孫悟雲に目を付けられたからには、最早マイとシュウのいる場所では暮らせない・・
望みがあるとすれば・・・・
「・・・大魔王様・・」
情けない声で懇願するピラフに、大魔王は苦笑する
「私とて目の前の男は気に食わんから消してやりたいが無理だな・・・」
一目で生物的格からして違うのが分かるほどではある・・・・気配は全く感じないが、やろうとした瞬間塵になる自分を幻視させられる程に違いすぎる目の前の-バケモノ-は、黙って行かせると思うのかと-口先-だけ威嚇をしてくる。
ラディッツは悪事を成して来た自分が悪を見逃さないなどと口が裂けても言えない・・それを言えば自分もまた・・・
そんなラディッツの葛藤を見越したように、大魔王は何を思ったのか・・・卵を産んだ・・・・・へ?
「だ!!大魔王様!!???」
「騒ぐなピラフ、これは私の今の感情を詰め込んだ私の分身とも言うべき者が入った卵だ。」
もしも孵ったこれが、邪気を持っていたら私を殺しにくればいいというピッコロ大魔王の言葉に、ピアノ達以外の全員が唖然とした!
物凄く自信満々に言ってくれる・・・
「悟雲といったな、お前ならば今の私の気をどこからでも追えるのだろう?」
「・・・当然だ・・・」
-地球-の力を辿ればどこであろうとも追えるという言葉に、大魔王は愉快気に笑い、
「お前自身が見定め、孵った直後でなくとも卵の中の者が成長して邪気を持ったらその時も私を殺しに来い。」
それもそれで一興だと言い放つ。
お前ならば私を殺す事なぞ訳ないだろうと一方的に言い放ち
「それと-神-に言っておけ!
ある日突然共にいた者から、お前は邪魔だと言われた者は酷く傷つくものだとな。
それと貴様は、強いが故に傲慢だ。」
ピラフが貴様に抱いた憎悪が誤解から生じたものだとしても、言葉の端々に態度に無造作な高慢さが見え隠れしていると、言われたラディッツは本気で衝撃を受けた・・似たような事を、近頃お師匠様や師兄から言われた・・・お前はもう少し自分が強者の立場にいる事を自覚しろと・・・自分の無造作な言葉が、他者を酷く傷つけると・・・何故大魔王から同じ事を言われているのだと思いながらも、大魔王から投げ渡された卵をそっと受け取り、
「・・・・・神とやらにはどこに行けば会える?」
空に浮かんだ大魔王達に、ラディッツは真剣に問うた。
伝言を伝える為に・・・
「ふん、まだ腐りきってはおらんようだな。」
「・・・・いちいち腹立つな・・」
「ふん!その数千倍の想いをピラフが受けた事よりは何ほどの事も無かろう?
カリンが知っている。
収まりかえった-あいつ-が、お前から私の伝言を受け取った時どう思うか見てやりたいがな。」
兎に角今は寝たいと、ピラフとピアノ達を伴って行こうとする一行に、
ピラフ!!マイとシュウに伝言はあるか?・・・・そう言おうとしたが・・・・何かを感じ取ったピラフからの拒絶の視線に、ラディッツは何も言えずに黙ってしまった
自分は・・・・世界を滅ぼそうという心を持った者を生み出す程に酷い者になっているのかと言われた気がして・・・
夕暮れの中、黙って飛んでいくピッコロ大魔王を見送りながら、ラディッツの心もまた沈んでいった