「・・・・俺の地球に来るまではそんな人生を送っていました。」
其の事に対して今でも後悔は欠片も浮かびませんがと、神殿の端に座って足を投げ出して下界を自分と見ているラディッツの前半というか地球に来るまでにラディッツが何をしていたのかを聞き終えた神様は、この男をどう評すべきか本気で悩んだ
淡々と話しながらもどこか不安げで、背は自分程はなくとも大きいというのに、尻尾を揺らめかせる様は寄る辺なき子供のようで・・・
・・・・この男は、誰にも知らずにこの地球の理とは全く別の世界から突然迷い込んできたのか・・・・・記憶が無くなって孤独であった自分と、記憶があるからこそ大切な思い出と壮絶な人生を抱えているこの男・・・・全く別なようでいて根は一緒
この地球では理解してくれる者を探すのは困難な事
自分は人間とも獣人族とも違う事に直ぐに気が付き早々に孤独を味わった
この男は見た目こそ人間だが、その生き様と心の在り様は現地球で平和に生きてきた者達からすれば異質で怖ろしかろう・・・
これが単一国家が出来る前の世界であったれば、国同士の諍いが絶えなかったあの頃ならば、どこの国の陣営からも一目置かれ、ここまで心の孤独を味わう事のない人生が歩めたかもしれないが、単一国家になってこの数百年、地球は小さな犯罪が絶える事は無かったが平和を謳歌していたのを神になる為に地球の歴史で学んでいる。
単一国家になっての唯一の騒乱は・・・・・自分が神になりたいという己の欲の為に悪の心を捨て去り、ピッコロ大魔王を生み出してしまった時のみという皮肉が付いてくるがそれは兎も角として・・・どう言ってやればよいか数多の人々を見守って来た神様にも悩まれるラディッツであった
後ろの子供達とポポのやり取りが微笑ましいだけに、何を言ってやれば良いのか
「あぁ・・・・もうまた避けられた!!」
「俺なんて避けられた上に肘打ちされた!!・・・ポポさんもう一回お願いします!!!」
「何度でも来るといい、真っ直ぐに頑張る奴をポポ好きだ。
お前達はもう少し気配を穏やかにした方がいい、そうすれば持っている力をもっと活かせる。
空の様にしずかにかまえ、雷のように素早く動くんだ。」
「空の様に・・・・兄ちゃんが構え無しなのはその為なんかな?」
「そこはポポもわからない・・・お前の兄さんは空というよりも-雲-みたいに感じる。」
「・・・悟雲兄さんだから?」
雲の名を冠する兄だからかなというクリリンの言葉に、ポポは首を横に振った。
「違う、ポポは大抵のものは一目見て大体どんな奴かわかる。
だが、お前達の兄はずっと見ていれば見ている程に形が定まらないような感じがする。」
それは大きな青い空を見ても果てが無い様に見えるというのではなく、刻一刻と姿形を変え、時に日差しを和らげる雲となり、時に嵐と雷を呼ぶ積乱雲にもなる雲
その様に変幻自在な感じをお前達の兄から感じたというポポの言葉に、悟空とクリリンは顔を見合わせ、遠くの声がサイヤ人のラディッツ以上に聞こえる神様は、確かにこの男は雲のような存在だと得心する
▲▲▲
カリンのいたずら者めと、神様がカリンが三人に何も説明されずに来た事で驚かせたことを詫びた後、一番に気を執成したラディッツがカリンにしたように片膝をついて礼をしようとしたのを、神様が止めた。
「儂はお前達に迷惑をかけたものだ。」
礼をしなければならないのは儂の方だという言葉に、神様って神様なんだなとか・・・・前世八百万の神様を教わって生きてきたころをほんの少しだけ思い出したラディッツが妙に目の前の神様に納得をした・・・カリン様に感じなかった・・・神気というか・・・声音から暖かくなるような気がする・・・・ピッコロ大魔王とは違う深みに、ここ最近沈んでいたラディッツは心が高揚するというか、温められていく気がした・・・この人は神様なんだと納得するほどに
それは弟達も得心したようだ。
終始愉快気にしていながらもどこか冷たさを感じたピッコロ大魔王の声と、目の前の神様は声が一緒なのに・・・・冬と春ほどに違う・・・・同じ季節だが確かに違いを感じる、そんな風に子供達二人も納得したのだ。
「・・・・なるほど・・・・今思えばあ奴が言った事の方が正しかろう。」
ラディッツから大魔王の伝言を受け取った神は項垂れた
自分はどうしても神になりたかった、そして神殿へと赴いて神に弟子入りをしてそして・・・悪の心があると指摘されて焦った自分は其の悪の心を善へと昇華するという事をせずに・・・・其の所為で・・・
「数多の人々を数百年前に死に追いやったのはあ奴であろうが、もとを辿れば儂が元凶・・・・死んだら地獄に送られそうじゃな・・・」
悄然とする神様に悟空とクリリンは何と慰めてよいか分らないが、悄然とする神様の手を左右それぞれに握ってぎゅっとした。
自分達は兄からギュっとされるのが大好きだ、なにかぽかぽかとした温かさが流れ込んできて、しょげる神様にも温かいものを送ってあげたくなって・・・
「優しいな其方達は・・・悟雲・・・・お主もそうしょげてくれるな。
儂の犯した罪はこの地球を安定して、地球に住まう全ての生命を生涯見守る事で償おうと決めているのだ。」
神の仕事とは、天変地異などの超エネルギーが発生しないように惑星の気の運行を整えて地球という惑星を安定させる事であるという
人間や他の種族が絶滅するような異常気象とても、神の中では惑星の気が乱れているとはならないらしい。
もっと激しく、惑星自体が消滅するようなことが無い限りは地上の事は地上の者達で解決するべき・・・・事だが・・・・
「・・・・ピッコロ大魔王を生み出したのは貴方では?」
・・・物凄く的確な悟雲事ラディッツの突っ込みに、だから武泰斗というその当時の達人の頂点に立つ武道家に魔封波という封じる術を授けたという。
原則地上に不干渉を決められている、神にとってできる事があれが精一杯であったとか。
「それに、あれが死ねば儂も死ぬ。」
死は然程怖くはないが、あの当時神を引き継ぎ今も後継者がいない中で自分が死んでしまっては、途端に惑星は乱れて遠からず滅びてしまうという神様の言葉に、滅するのではなく封じる術を授けた理由に三人はとっても納得した・・・・ピッコロ大魔王殺さんでよかったと・・・ラディッツ本気で冷や汗かいて、あいつ倒さなくて良かったと悟空とクリリンもゾッとした・・・・神様まで殺しかけていたなんて思いもしなかった・・・そりゃそうだろう・・・
訥々と自分の心証が不利になる事であっても包み隠さずに話す神様に、悟空とクリリンはお師匠様に抱いている尊敬の念を覚え、そして・・・この人ならと、ラディッツの心を揺り動かした。
何かを言いたげになったラディッツを見た神は、
「悟空とクリリン、お前達もポポを兄のように捕まえたくはないか?」
「「へ?」」
「ポポは強い、ポポを捕まえることが出来ればお前達の強さは本物だという事だ。」
ポポを口実に二人を兄から引き離しにかかった。
おそらくこの子供達の前では言いづらい何かを、目の前の変わった男は胸の内に抱えているのではないかと感じて。
伊達に数百年神をしていたのではない
聞き届ける事は少なかったが、数多の悩みも見てきた神にとって、目の前の男は素直であったのだ・・・・わかりやすい奴なのだラディッツは・・・
そして悟空とクリリンとラディッツをそれぞれの反対側に連れ出し、ポポは神様から命じられた事もさりながら、カリンが感じたように良い子二人を鍛えて上げたくなっていたので喜んで二人の相手をし始め、神様はラディッツに何か打ち明けたい事があるのかと水を向けながら下界の様子を見始める。
面と向かって向き合うよりも、この方が話しやすかろうと
案の定立っている自分の隣に、ふちから足を投げ出してラディッツも地上を見ながら訥々と自分の生まれとそして-仕事-の話をした。
今この地球でしている仕事ではなく、無論子役の話ではなく、惑星ベジータで生まれた戦闘民族サイヤ人・ラディッツが六歳の頃からしていたフリーザ軍の中でしていた文官時代の仕事の話・・・自分の民族が戦闘民族である事を祖父とお師匠様と師兄は知らず、ましてしてきた仕事を完全に話したのは神様が初である・・・・話したら、俺は悪として滅せられるだろうか?糾弾されるだろうか・・・・少なくとも悟空とクリリンの兄である資格はないと断じられるかとも思ったが・・・限界だった・・・
自分のしてきた事に後悔はないが、これ程大勢の者達の人生を知りながら自分の事は誰にも知られない孤独感を持つのが・・・・何故お前がそんな事を知っているんだと、近頃それを言われる事が苦痛だった・・・・
先月高級クラブで女の人の事でやらかした後、遊ぶのが嫌なら結婚を前提に付き合ってみろ、幸いお見合い話が来ているとお師匠様に言われて釣書を見て、これは本当に釣りの餌だとお師匠様に警告をした。
「この娘さんの事は兎も角、父親は確か現職の中の都の軍人でホースさんの上司のジェネラル大将とは政敵同士だったと記憶しています。」
自分の中で都の軍のパイプは除隊したホースだが、自分だけでは心もとないだろうとか笑って自分を気にかけてくれている人いるから紹介すると言って引合わされたのが、ホースの除隊を最後まで止めようとした大将だった・・・・ホースひでぇ・・
まあそれは兎も角として、(ホースはその後は大将に様々に民間企業の社長業でこき使われたのでよし・・)パイプ役ともいえる大将の軍閥と仲の悪い者達を知らずに普通に挨拶して互いの派閥に目を付けられても面白くないラディッツは、きちんと大将と仲の悪い軍閥と政敵のリストは頭に入れている。
「なのでこれは俺とジェネラル大将との仲を裂く離間策の一種でしょう。」
自分が受ければ相手は喧伝して上手くいけば国王陛下の覚え目出度い鶴仙流の高弟にしてサイヤンℱのオーナーの自分と縁続きになれた上に、それをもってジェネラル大将を追い落とせるかもしれない一石三鳥も四鳥も美味しい策
失敗しても、あたかも自分の娘と孫悟雲は見合いをした事実だけを伝えてジェネラル大将派閥に疑心の種を植え付けられるかもしれない
要は成功すれば天にも昇るほどに嬉しいが、失敗しても自分も見合いの娘さんも誰も傷がつかない美味しい策でしょうねと言ったら、
「・・・・お前はどうして征服やら軍閥の争い方まで知っているんだ・・・」
そう聞かれた自分は・・・何と言ってお師匠様の前から逃げ出したのか覚えていない
言えない・・・知られたくない・・・・・こんなきれいな地球で、悪党していてもたかが知れている人に
それでも・・・・誰かに知ってほしくて・・・・自分は決してみんなが思うようないい人ではない・・・・
良い人が、自分の身内とフリーザ様とその軍以外がどうなろうと知った事ではないなんて思う訳がない
良い人になろうとして足掻いているだけの者なのだと・・・
ポン
俯き抱いている卵に顎が乗りかけたラディッツの頭に温かい何かが置かれた
それが神様の手である事に気が付くまでに、ラディッツは本気で時間を要した・・・
近頃はこうして自分の頭を撫でてくれる人がいなかったから
自分が誰かの頭を撫でてそうして優しい事を言おうとして来たから・・・・寂しがり屋の自分・・・弟妹を作ろうとしているのはきっと引き離されて欠けた想いを埋めようかとしているのかもしれなくて・・それでも愛おしい気持ちに嘘はないから、どうか愛する事を許してほしいと思いながら抱きしめて・・・・そんな自分の頭を、神様は優しく手を置いてそして・・・
「お前は頑張って生きてきたのだな。」
戦争していた地球を知る神からすれば、ラディッツがしていたのはその規模が宇宙になっただけの事
自国を大事にして他国を攻めて隷属にする歴史の中で、悪人は死んであの世で裁かれる
そしてこのラディッツは、そうしなければ生きていけない中で懸命に誰かを愛して大切にするという優しさを守り続けながら生きてきたのだ・・・・捨ててしまえば楽であったろうに・・・・自分と真逆
悪の心を捨てて楽になり、地上を破滅させかけた自分
愛の心を捨てることが出来ずに、誰かを破滅させる仕事をしていた孫悟雲・・・皮肉な事に、そんな真逆の男が自分と大魔王の命運の卵を託されている・・・その男に
「お前は頑張って生きてきたのだよ。」
幾度も幾度も同じ言葉を神様はラディッツに贈る
自分が出来うる限りの事をして生きてきたのだという神様の言葉に、ラディッツの瞳からほろりと涙が零れた
この地球に来て孫悟飯に出会ったあの時以来、泣くまいと誓った涙が零れて、数滴の雨を降らせる・・・自分は頑張ってこられたのだろうか・・・・頑張ることが出来たのであろうかと・・・・
その涙を神はじっと見守る
泣く事の何が恥であろうかとラディッツの頭を優しく撫でながら、地上を見守る時と同じ優しい瞳を向けて
迷子になった子供を安心させるように・・・
やっとハツカダイコン兄さんのお悩み相談できる人出せた、、
精神安定した方が強くなれそう。
頑張れ神様