ファーストインベーダー:始まり
エイジ753 九月 パオズ山 夜
「このクソガキが!!!手前のせいで俺達は宇宙の有名どころから締め出される羽目になったのかよ!!!」
「俺を・・・・クソガキと言っていいのは宇宙でただ一人親父だけだけだ!!
何もかもが貴様の自業自得だろうが!この武官崩れの賊が!!!!」
「は!!!俺がいつあの軍の武官様をやっていたってんだよ!!??
こんなど辺境の惑星に飛ばされちまったせいでおつむが鈍ったかよ文官長補佐官のラディッツ様よ!!!」
「今の俺をそう呼ぶなクソったれが!!!!」
三日月がパオズ山の頂上に浮かんでいる美しい夜に、尾を持つ二人の男達が空中に浮かんで戦っていた。
「兄ちゃん!!!」
「行くな悟空!!クリリンも・・・・親父の邪魔にしかならんぞ!!!」
「だってジュニア!!悟雲兄さんが・・・・兄さんが!!」
「行くなよ・・・曾祖父様だって分かってるはずだ・・・・俺達ではここにいる事自体が危険なんだ・・・親父が張ってくれたこのシールド内から絶対に俺が出さんぞ!!」
パオズ山の上空数百メートルで戦い合っているというのに、互いにぶつかり合う衝撃だけで木々が悲鳴を上げ平和に眠っていた動物や小恐竜の親子たちが麓を目指して逃げ惑う・・・・そんな中に-多少-武道の腕がたつくらいでは行かせんと、飛び出していきそうな悟空とクリリンを腕の中に閉じ込め、上空の孫の様子に戦いに呆然として見上げている曾祖父の心中を案じる・・・・まさか親父のあんな剥き出しの怒気を見る時が来るとはジュニアだって想定外であった
父は・・・・ラディッツという男の記憶が流れ込んで来た時でさへ大概は笑っているか、若しくは父の-親父-の事で怒りながらも慕っている感情か・・・唯一ゾッとしたのは幼馴染達が敵の手に落ちかけ包囲網を敷かれた時の-あの時-・・・敵の一族と関係した裏切り者たちを全て-処分-したあの時ですら、剥き出しの怒りで相手を罵っていなかった・・・・憎悪はあったが、それでも、父は余程相手の男が嫌いなのだと、-同族-であっても受け入れる気が端から無い事が伺い知れる。
男を拾って来てしまった悟空は涙を流して男を睨んでいる
お腹がすいている言った男は自分と同じ髪型で、どこか自分に似ていて尻尾があった!!
この人はもしかしたら・・・・兄と自分と同じサイヤ人かもしれないと思いながら、お腹がすいて倒れていたので祖父の待つ家に連れて行き・・・・そして・・・こんな事になってしまった!!
兄の白い袍が赤く染まっていく・・・・それも相手の返り血ではない・・・兄が!誰よりも強いあの兄が肩や片腹の白い袍を破られて血を流しているのだ!!
なんで・・・・どうしてこんな事に・・・・・兄ちゃんが・・・おらが・・・あんな奴を家に入れちまったばかりに・・・
▲▲▲
ふっふっふ~んふ~ん
「機嫌がよさそうだな親父?」
「あぁ、今日は天が初めて重力装置の部屋で五以上耐えられた日だからな。」
技の多彩さはヤムチャに軍配が上がるが、気の総量と筋力を駆使した戦いならば天津飯の方が上であり、桃師兄の次に(ラディッツ自身は例外!)重力装置の十倍に達するのはあいつだろうと、久しぶりの帰郷の事も込みで、弟妹弟子達の成長を嬉しく思いつつ、舞空術ではなくジュニアの運転で帰路につく。
偶には景色を眺めながら帰るのもいいものだと
周りとの意思疎通も順調であり、なんならマスコミや王室関連の仕事の交渉人の役人にも近頃の孫悟雲さんは以前よりも親しみがわく共まで言われ始めている。
その前だとて温和に笑う気さくな人であったが、其の笑みがどこかそれ以上自分に踏み込ませないような線引きを感じていたが、今の悟雲さんは柔らかくなったと
・・・・思い切り心当たりのあるラディッツは顔を赤らめそうですかとしか言いようがなく、側にいたお師匠様や弟妹弟子達やら・・・・近頃は濃茶のダブルのスーツを着込んで、孫悟雲の私設秘書として付いて回るジュニアが内心で爆笑していたのを気配で感じた時は、息子の頭をはたきたくなった・・・・だって表情は真面目一辺倒の秘書でございって涼しい顔で周囲としれっと話してるんだもん!!息子が可愛くない!!!・・・駄目で馬鹿父だ・・・・
まぁ・・・・ガジェットでの子供にされて小学校に行かされた事件はなんだかんだとラディッツと悟空とクリリンとジュニアの人生を豊かにしてくれた・・・主にとある子供三人のお陰でだが、知らない筈であった-地球の子供-の生活を体験できたことは、ジュニアの心も色どりを付けるほどに良いものであった。
近頃は何をしても楽しい、厄介な仕事も片付ければ誰かが喜んでくれるのだと考えれば皆に力を貸してもらって解決し、ふと心が寂しくなったら・・・・何故か察するジュニアがどこからともなく現れては人気のないところに連れ出されてハグしてくれる・・・良い息子だ・・・・
お師匠様も近頃は表情が柔らかくなっている・・・どれだけ自分の事を案じさせてしまったのかを思うと申し訳なくて・・・でもそこまで思っていてもらえたのだと思うと不健全ではあるが嬉しくて、以前よりも甘える事が増えてしまって・・・やかましいと怒られては笑ってまた怒られてをして、兎に角ラディッツは心の底から楽しいのだ今が
浮かれて平和ボケになりつつあるとも言えよう
だからー迫る災厄ーに気が付かなかったのだろうか?
ピルピルピル
「ん?はいもしもし、サイヤンℱの孫悟雲です。
大将自らが・・・え?・・・・分りました、直ぐに伺います!!」
キキッ
「・・・・厄介ごとか親父?」
「お前の耳なら聞こえていただろうジュニア。」
中の都の大将・ジェネラルから、地球のものとは思えない半球の物体がジングルベル村よりも北の大地にて発見された上に、その周囲が気功弾で破壊されたと思しき森林状態であったと。
こんな訳のわからない案件は宇宙から来たサイヤ人・孫悟雲に聞くほかないと直ぐに呼び出しがかかったのだ。
「現場と大将の下とどっちに行くんだ?」
車をカプセルに戻しながら問いかける息子に
「現場が先だ。」
もしかしたら見た事の無い半球のものとは、自分達が乗っていた宇宙ポッドが何らかの理由で破壊された残りかも知れず、であるのならば-乗ってきた者-が生きてどこかに潜伏している可能性が高い・・・・まさか、自分が危惧していた侵略宇宙人が来たのかとラディッツは背中に冷や汗を流す。
もしそうならば・・・・この身にかえても・・・
「親父!!!!」
「・・・ジュニア・・・」
「・・・何考えてやがる・・・」
思考が下に落ちるのを感じながら俯いてしまったラディッツの顔を、ジュニアが両手で包みながら強引に上に向かせた。
上がって見えたジュニアの顔は、何かとんでもなく馬鹿な事を考えていないだろなという、ジュニアの憤怒の表情であった。
近頃・・・否、ジュニアは生まれたときから誰よりもラディッツを甘やかして来た。
寂しかろうがそうでなかろうが片時も離れず、風呂も背が小さいときは寝床も共にし、今でも寝る部屋は共同で使っており、常に傍らにいる存在であるとラディッツに示している。
これからは父は俺が守るという言葉を実践するが如く・・・・そのジュニアが本気で怒りに燃えている・・・・きっと本当に微かだが自分とジュニアは心が繋がっているのかもしれない
卵に己の想いが込められたと言っていたピッコロ大魔王の言葉が本当であるのならば、きっと今考えた-馬鹿馬鹿しい-事を感じ取ったのだろう
最初から負けると思っていれば勝てる訳もなく、この身と引き換えに地球を守れたとしても、きっみんなが泣いて・・・・それでも・・・・
「最後の最後、どうにもならなかったら許してくれよジュニア。」
自分は弱いのだから、強ければ大丈夫だと笑ってやれるんだがなと軽やかに笑う父をジュニアはどうしようもなくなる
狡いではないか、そう言われてしまっては・・・・
「・・・一緒に死んでやるから安心しろ駄目父。」
「いや~、そこは爺様達とブルマ達とお師匠様達とマーク達を頼むよ息子。」
なんにせよ、現場にとラディッツはジュニアの脇に身を入れて飛んだ。
飛ぶことだけは、近頃戦闘力が・・・・スカウターがもうエネルギー切れで作動しないのでわからないが、もしかしたら八千はいっていそうなジュニアよりも速く
「悟雲さん!ジュニアさん!!」
「話はジェネラルから聞いています。」
今から周囲を捜索するので何かあればすぐに通信するので、其の時は退去してくださいというラディッツの指示に、気功が扱えない兵士達は見栄を張らずに指示に従う。
ピッコロ大魔王の件で、どうしても通常兵器だけでは対処できない事がある事を学んだからだ。
とはいえ科学とて捨てたものではなく、ドクターゲロが其の事に触発をされてレーザー銃だのナパーム弾並の威力の携帯型兵器を作ろうという案を、絶対に兵士、それも通常ではロックが掛かる仕様にする事を最優先事項にされた・・・・んなもんが犯罪者に出回ったとしたら洒落にもならんからだがそれは兎も角として、
「・・・・この出血量では・・・・」
「こんな頑丈な物を誰が壊せたんだ・・・」
軍によって半径一キロ圏内を封鎖された中心地に来て、半球状に破壊されたポッドに驚きながらも、残っていたシートにべったりとついた血を見て顔をしかめ、ジュニアは半球状の素材の欠片をつまんで壊そうとしたが、気を込めてようやく潰れる代物に、ここまで破壊できる奴は親父と同等かと冷や汗を流しながら周囲を警戒し耳をそばだてている
漂ってくる気配を、小さな物音ひとつ逃さないとばかりに・・・・隣で地球の気とやらを借り受けているラディッツがいれば、そんな必要が無いのだが・・・・
ピィーピィー
「・・・テラか・・・・俺が気を張り巡らせるとすぐに来るな・・・ずっと俺といるか?」
「ピィー♪」
「・・・・小鳥相手に馬鹿言ってないでどうだったんだ親父?」
小鳥の寿命なんてたかが知れているだろうし・・・・第一テラと父が名付けた小鳥はいつもどこにいるのか瞬時に父の下に現れるような得たいの知れないところがあるのでジュニアは警戒している。
魔族がいる様に、化け物が変化しているかもしれないのに駄目父はテラは可愛いと笑っているのが気に食わない・・・・いつかテラの化けの皮杯でやると思うがそれは兎も角、テラからラディッツの意識をそらしつつ本題をせかす。
「それがな・・・・確かに気の残留は感じられるんだが、本体がいないんだ。」
「死んだという事か?」
「違う、死体すらないし・・・・兎に角血の跡を辿ってみよう・・・」
幸いというか、血痕が点々とだが残っており、地球の気に導かれつつ森の中に入れば、確かに誰かが気功弾で木々を倒したのが分かる。
痕跡の気がまだ感じられるという事は、少なくとも数日以上は立っていない筈だとラディッツは見ている・・・・地球の異変が分かるなら、大気圏を宇宙船なりポッドが落ちてきたら分かるようになりたいなとか・・・無茶苦茶な事を思うラディッツだが、それが出来れば防衛楽なんだがなとか本気で思うところがこいつの頭ぶっ飛んでいる証拠である・・・・・あるのだが、ラディッツがそう思う根底にはこの地球に住んでいる弟と家族と仲間と友人を守りたいからだ・・・絶対絶対に守りたいから身につけたいなと思いながら辿れば
「・・・・これは・・・」
「動物が食い荒らした?・・・・違うな・・・・ここらは寒さが厳しすぎて北狼の縄張りからも外れている・・・」
点々としていた血が突如乾いた血だまりが姿を現し・・・・だが遺骸どころか髪の毛一筋、身につけていたであろう衣服も何もかもが・・・・キラリ
「何だこれは・・・」
血だまりの地面に埋もれていた何かが陽光に照らされて光ったのを見たジュニアが手にしてみれば、金色に光る
「・・・・ベルトのバックルか?」
地球の金でできている様なそれは、金のようなものでできており赤色で四角が細く書かれており、残っているのはこれだけであった
後は本当に何も残っておらず、ラディッツもそこを起点として周囲五十キロの気配を捜索したが見つけられない。
一先ずポッドは完全に破壊する事にした。
未知の科学を調べようと研究している時に、この手のタイプは技術漏洩を防ぐ為に自爆するのが多く、ジェネラル大将に通信機器でその危険性を具申してやってくれという指示のもと、ラディッツはポッドを空中に放り投げてポッドの背後にシールドを張り、風切羽でポッドをずたずたにして最後はシールドでポッドを包んで圧縮して爆発させた。
未知の科学どころか、あれはどう見てもフリーザ軍の・・・・自分が乗って来た同タイプの宇宙ポッドであった・・・・誰が?何のために?なぜこんな辺境の惑星に・・・
考えても出ない疑問が頭の中をぐるぐると回るラディッツを、ジュニアがそっと抱き上げ車のカプセルを取り出し、ラディッツを後部に乗せた後すぐに大将に未知の半球物体の破壊と血だまりの他は遺骸も何もなかったと報告し、後は軍の仕事だと了承を得てその場を去った。
だんまりをしてテラが頬に身を寄せてもぼんやりとする父を、ミラーでちらりと見ながら様子を伺うジュニアは聞きたい言葉を呑み込む
あの未知の半球物体を見た時から父の表情が変わっていたのは誰が見てもわかる
驚愕し、そして懐かしそうであり泣きそうでもあった・・・・してみるとあれは宇宙船の類であり父の知る者がもしかしたら・・・だが、何も見つからず何らかのメッセージも見つけられなかったのだから、この件は父が落ち着くまで待とうと決めながら、山村で父の帰りを待っている曾祖父様と悟空とクリリンの下へといそぎ・・・・・そして月が空にかかりそうな黄昏時に家に付けば、家の中は外からでも聞こえるくらいの賑やかさであった
「これも食べますか?・・・・凄い食欲ですね・・」
「いや~~!!ここの食べ物は何でもおいしいんだな。」
「こんなに喜ばれるとは作り手としては嬉しい限りじゃのう。」
・・・・誰か客であろうか?
耳の良い二人は、客がいるならば失礼が無いようにせねばと衣服を互いに素早くチェックしながらラディッツが扉の取っ手に手をかければ
「そしたらやっぱりおめえはおらと兄ちゃんの同族って奴なんか!!??」
!!!!・・・今・・・カカロットは何と?
同族・・・俺達が同族と呼べるのは・・・
「そうだ、俺もお前も戦闘民族サイヤ人だ・・・・惑星ベジータは無くなったが・・」
バン!!!バキン!!!!!!
誰かは知らないが、戦闘民族サイヤ人を名乗る者の言葉に頭が真っ白になりながら扉を開けたラディッツは、正面のリビングのソファー中央で座っている男の姿を一目見るなり瞬時に近づき男の顎を蹴り飛ばしていた・・・・
「にい・・・ちゃん?」
「お・・・やじ・・・・」
「あ・・・にいさん・・」
「・・・・・」
その時のラディッツの形相は無表情であったが、纏う気配は怜悧で氷のようであった