エイジ753 遡った昼頃
「やっぱあの時筋斗雲に乗れたのって俺が悟空の事だけ考えてたからなんだな。」
「クリリンは筋斗雲乗れない方の良い子なんだから別にいいじゃねえか。
それよりもおらの事をそんなに心配してくれたクリリンがおら大好きだぞ!」
「よせやい・・・・」
今日も今日とて悟空とクリリンは壮絶仲良しさんである、なんならイチャコラしてると言えるほどにべたべたしとる
悟空とクリリンは昨日まで兄と一緒に鶴仙流の本部にいて、重力装置の部屋を貸してもらっていた。
近頃ではリストバンドや靴だけでは全く重りにならず、物足りない事この上ない
五十キロの靴を付けてカリン塔を往復してもなんだかなになってきてしまっている・・・戦いの才能在り過ぎだろう二人共・・・・お兄ちゃんが聞いたら絶対になく案件で、もしかしたら重力装置の部屋のマックス十を体験しても平気になりそうなのは天津飯よりもこの二人になりそうなくらいに、二人はぐんぐんと強くなっている。
生来の才能と武に対するあくなき探求心を、苦にならずに心の底から楽しんで修行をしているせいもあるかも知れない
好きこそものの上手なれ
まさにこの格言の通りで、走るのが早くなるのが楽しい、相手の動きが分かるのが楽しい、自分の体を思う通りに動かせた時はワクワクが止まらず、その先を、もっとその先にと二人は修行の間で辛いと思った事は一度として無かった
悟空がいるから、クリリンがいるから、二人で強くなってどこまでもいけそうな道をひた走るのが楽しくて仕方なく、ここらになるとチチとモンブランも入れない世界が完全に出来上がっている。
強くなって、いつか鶴の様に空高く飛翔し続けている兄の横に二人で並ぶのだと夢を持っているから
そしてそこに焦りはない
何時だって二人の心は夢に囚われる事無く自由であった
互いに好きな女の子も大切にしたい、お師匠様達や山村の人々、近頃また交流をし始めている多林寺の人々と楽しいお話を沢山して遊びたい。
そしてマーク達とまたどこかに遊びに生きた
常に沢山のワクワクを持つ二人は、ラディッツ以上に人生を謳歌しながら強さを求めて邁進している。
自分達二人ならばきっとどこまでもいけると信じて
その二人は、今日は山村に帰るから二人共先に帰っておいてくれという兄からのお達しに分かりましたと答え、兄から持たされたカプセルを預かって筋斗雲で帰る事にした。
三年前のあの時、クリリンは筋斗雲に乗れたのでもしやと思って試したら・・・お尻から落ちて色んな意味であたたな事になった・・・
だが悟空は筋斗雲に乗れる乗れないはどうでもいい、だってクリリン好きだもんが全てだからだ。
だから、クリリンと一緒に筋斗雲に乗る時はクリリンは自分の背中に負ぶさってくれていればいいだけの事で、ずっとこんな楽しい日々が続けばいいと悟空とクリリンが願いながら山村に向かった時
「ん・・・・悟空!!今来た道を左後ろに戻ってくれ!!人が倒れてる!!!」
「捕まってろよクリリン!!!」
-災厄-が転がっているのに気が付かなかった。
グビ・・・グビグビ・・・・はぁ・・・・
「悪いなちび達、世話かけちまって。」
「あ・・・・や・・・その・・・」
「あんな・・・・兄ちゃん・・・・」
倒れていた人は、白いマントで全身を包んでいるが・・・・髪型が物凄く・・・物凄く悟空と同じであった!!
髪型は同じだが鋭い目つきや、褐色の肌と纏っている雰囲気は違うものの、どうみても悟空・・・いや、-カカロット-関係の者にしかクリリンには思えない。
つまりサイヤ人ではないか・・・・だが、初対面それも水を求めていた最中に力尽きて倒れていた人にそんな超重要そうな事を聞くのは躊躇われる中
ぐぐぅぅぅぅぅぅ~~~
・・・・へ?
ぎゅるるるるるるるる・・・
「えっと・・・お兄さん・・・お腹減ったんですか?」
「悪いな、なにせ-俺達-の一族は皆大食漢ですぐに腹が減っちまうんだよ。」
クリリンの問いに、水を飲ませてもらって少しは元気が出たという男は、クリリンに顔を近づけてへらりと笑って答える・・・・何というか人懐っこいとは違うような・・・もやっとする何かを感じるクリリンであったが、腹を減らして可哀そうだという悟空の言葉に後押しをされて、兄から預かったカプセルを一つ取り出しランチボックスを出現させる。
「・・・・なんだ今のは?」
ポアンという音がしたと思ったらランチボックスが出てきた事に男が驚くのを
「それホイポイカプセルって言うんだ!どんな大きなもんでもカプセルになるように作ってあればなんだってカプセルにして持ち歩けんだ!!」
「へぇ~・・・ここいらじゃこいつが当たり前にあるのか?」
「そうですね、家や車に飛行機まで何でもありますね。」
「成る程、こいつになっちまえばどんな大きなものでも場所をとる事無く保管出来て、-どこにでも-持ち込める・・・・こいつは高いのかい?」
「えっと・・・俺も悟空も相場は知らないんです・・・・そういう事は成人してからか、早くても十五歳になるまではお金の事に関わるなって・・・」
「はっはっは!なんだそりゃ!随分と過保護な保護者だなそいつは。」
「む!おらの兄ちゃんはおら達の事大事に思ってるからお金とかややこしい事から守ってくれてんだぞ!!」
自分を大人にしたような不思議な男に少し親近感が湧いていた悟空はむっとした。
親近感が湧いたくらいでは、大好きな兄をどうこう言われるのは好かねぇのだから。
だが男は気にした風もなく笑って悟空の頭をポンポンと軽く叩
「男はな、物心ついた時から手前の事は手前でできるようになった方がいいんだぞ?」
そうすりゃ手前の事を守って、誰の指図も受けずに美味い酒や飯を食って気ままにさすらう自由を手に入るのだからという言葉に、子供の二人はきょとんとする。
「まだちび共のお前達には早かったかな?」
「うん・・・・よく分かんねぇ・・・美味い飯なら兄ちゃんや爺ちゃん達がすぐに作ってくれるし、川で魚とって焼いて木の実採って来てクリリンと食べるだけでうめぇし・・・」
「そういう意味では俺と悟空って相当好き勝手にさせてもらってるのかな?」
孫悟雲という庇護者の下で、自由気ままに修行してご飯を食べて楽しい人生を謳歌させてもらっているのだからというクリリンの言葉に、男は益々笑いが深まっていく。
二人に接触する為に態と二人が通りそうな道を見つけて先回りを・・・十回したのだ・・・馬鹿だろこいつ・・・・行き倒れの振りを十一回もしてようやく偶然の出会いに漕ぎつけたのだ・・・
地球にいるサイヤ人なぞいやでも人の目に触れて噂に上る筈だと男は地球に降り立つ前から計画を立てていた。
とりあえず、尻尾を持つ無茶苦茶強い男はいないかとドストレートに人が大勢いる都というところで聞いてみれば
孫悟雲という、かつて天才武道家子役のラディッツさんの事かと一発でビンゴった・・・・・
あいつ何してんのである・・・・・幼馴染達とフリーザと其の愉快仲間達が宇宙規模の悪党デスマッチをしてまでも血眼になって探している当の本人は、地球で超売れっ子野郎になってるって何だそれは、何かの新手のギャグだろうか?
そんなこんなで孫悟雲という名を持っているラディッツに実はプライバシーなんぞありはしなかった
実年齢と流派はもとより、実家も既に知られているがファンたちは日夜地球守ってくれているお人を煩わせる奴は死んで良しという過激派もいる位に孫悟雲信者が、にわかや暴走野郎どもを鉄壁の意思で実家に誰も行くんじゃねぇを敢行している・・・・もし破ったら、警察沙汰なんて生温い・・・都の軍かマスコミを使ってあらゆる意味で潰してやるの意志に、ラディッツの日常は守られていたりする・・・・地球怖えよと・・・・男・ターレスはその話にドン引いた・・・・あいつフリーザ軍にいた時と同じことしてやがる・・・
フリーザ軍にもいたのだ、ラディッツ様の日常を影日向お守りするのだ隊が・・・おかげで古いサイヤ人達が幼馴染達の留守を狙って一人になったラディッツを襲撃したとしても
「ラディッツ様!こちらに美味しいお菓子があるんですがご一緒にどうっすか?」
「いいの!!??今日親父も母さんもいなくて一人留守番で帰っても退屈なんだよ!」
お菓子食べてからゆっくりと帰ると笑うラディッツを見てほっこりとしながらその裏で、
「何してんだ手前?とりあえず腕と足ぶっ壊して、その後こいつをどっか適当な戦争場所に配属させたことにして処理しとけ。」
幾人もの襲撃を躱し、ラディッツ誘拐を未遂に終わらせその他数え上げればきりがないが、ラディッツの知らないところでラディッツはフリーザとその側近達と幼馴染達以外から守られて来たのだが・・・・
無自覚に味方を増やして勝手に守らせているところが一緒とはどうなんだろうと、ターレスとてたはは笑いの一つも出る・・・・・あの坊ちゃんはどこにいても人気者で・・・-取引不履行-にしてあの坊ちゃんを誘拐する方に切り替えたら、フリーザ軍とまだ敵対している勢力に売り渡したら高値がつくだろうなと、思わず考えてしまう
無論クソったれなフリーザに報せるつもりはひとっかけらもないがそれは兎も角として、平和過ぎて個人情報がガバ過ぎる、俺達の様な悪党にとっては、この星は何と魅力的な星なのだろうか?
大気は澄んでいて海も空も青く美しく、森林があり川があり生命が横溢している・・まさに奇跡の星だここは・・・・こんな好条件の惑星なぞ滅多にない!
知的生命体がいても自然破壊が進んでおらず、工業で汚染している様子もなく、歩いている人間の大半は善良で少し周りを見ていれば、誰かが困っている誰かを助けている。
道を尋ねればすぐに教えてくれて、住所を聞けばわざわざメモをくれる・・・あぁなんて・・・なんてお目出度い星なのだ人なのだ・・・まるであの坊ちゃんが夢で見て具現化したようなお人好しだらけの・・・・血や阿鼻叫喚とは無縁の無垢な星にターレスの欲求が鎌首をもたげる
穢してしまいたい
酷くぐちゃぐちゃにして、泣き叫ばせて踏み躙って・・・・・あぁなんて・・・なんて愉快な事だろう・・・契約の枷が無ければ蹂躙しているのにと、其の不自由さえターレスにとっては人生を謳歌するスパイス
何の障害も無く楽々に生きていては人生の楽しさは半減、不自由さや障害を乗り越えた先にあるスリルを楽しんで望む物を手に入れてこそ、人生は楽しいのではないか
そんな楽しさを胸中で転がしてカッコつけながら・・・・行き倒れ作戦を十回も不発にさせられた時は・・・・あのクソガキどもと流石に殺意が芽生えた!
幾らなんでも平和ボケが過ぎるだろうカカロット!今のお前を見たら間違いなくバーダックの野郎は激怒するぞ!!・・・・お前の想いなんて誰も知ったこっちゃねぇのに逆切れしやがって次でようやく成功して
「そう言えばまだ俺は名乗って無かったな。俺はターレスだ。」
「おらは悟空、孫悟空だ。」
「俺はクリリンと言います・・・・その・・・」
「あのさ!お兄ちゃんお腹すいてんだったらもうすぐでおら達の家あんだけど食ってくか?」
「いいのか?見知らない俺を家に上げちまって。」
クリリンが言おうとした事を悟空も自分と同じ髪型に何と焚く兄と似ている気配に気になってターレスを家に誘えば、ターレス丁寧に悟空に了承を確認すれば
「兄ちゃんも爺ちゃんも困っている人がいたら助けてあげなさいって言ってたぞ。」
本当に何も知らない-孫悟空-の無邪気で無垢な言葉にターレスは胸中でクツクツと嗤う
坊ちゃん、お前が甘く育てた結果を享受してもらうぞ
散々宇宙で侵略行為をしていた男が、弟の教育をきちんとしていないつけを払う羽目になった時の顔が見ものだと嘲笑いながら、ターレスは孫悟飯宅に悟空自身によって招かれ
「・・・・こりゃ驚いた・・・・儂はここにいる悟空とクリリンと、今は留守にしておらんが悟雲の祖父の悟飯という・・・・話はご飯の後にすればいい。」
「世話になる・・・が、俺は金がないんだが・・・」
「構わんよ、困った時はお互い様じゃし、お主は他人とは思えんのじゃ。」
悟飯の言葉にもターレスは嗤いたくなって堪らなくなる
あのお綺麗な文官長補佐官殿は、どこまでもこの星の奴等を甘やかしているのか
弟達は子供だから仕方ないかもしれないが、大人にも危険な者達のことを教えていないとは
自身が散々数多の星を血と炎で染め上げる侵略行為の補助をしておきながら、そんな危険な者達の事を教えもしていないなんて・・・・逃げたなあいつは
きっと、それを話すには自分の体験だと白状しなければならないとか・・・遠目で見ていても貰った情報からもラディッツという坊ちゃんは兎に角どこか真っ直ぐな奴であった。
政争という伏魔殿の中を自由に歩き周り、時に政敵を失脚させて生きてきたくせに真っ正直さが残っている矛盾を抱えた奇妙な男は、どうやら奇妙さは健在らしい
そんな話を聞いたとかはぐらかしてでも危険性を教えてやればいいのに、まぁそのおかげで自分の様なものが何の疑いも無く招き入れてもらいつつ美味い飯にありつけるわけだが
食器を出す悟空事カカロットも、飲み物を用意してくれているクリリンと言う坊主も、こいつ等とラディッツの祖父だという男も、自分に食われかけ寸前の子ウサギだと気づきもしないで・・・・もしも、飯を食い終わってもお目当てのラディッツがこなかったら・・・・・こいつ等も喰っちまうか
そう己の中で賭けをしていたが、目当ての男は帰ってくると同時に自分は顎を蹴られて・・・・空中に浮かされて初めてその事実に気が付いた
嘘だろう・・・・あの坊ちゃんの戦闘力って確かたったの五千ぽっちだったはずだが・・・・だのに・・・蹴られた直後も気が付かない程の速さで・・・
だが
「ご挨拶だな~。」
空中で体勢を立て直したターレスは直ぐに床に降り立ち素早く悟空とクリリンを-優しく-両腕に納め
「行き倒れたところをこの良い子達に助けてもらったんだぜ?
礼の一つくらいさせてくれよ?」
なぁ、フリーザ軍文官長補佐官のラディッツ様よ~。
ギリッ
人を小馬鹿にするようなターレスの言葉にラディッツの血と意識は一気に沸騰した
胸の奥底に抑え込むようにしてしまい、ようやく向き合えそうだった過去をむき出しにされた事への怒りと、何よりも・・・・
「・・・・二人から手を放せ賊が・・・」
「良い子二人へのお礼を邪魔すのか?
丁重にお断りする。」
弟達を人質にした事が許せない!弟達を騙して家に招き入れさせたことが許せない!!
「にい・・・ちゃん・・・・やだよ・・・おっかねえ顔してんよ兄ちゃん!!」
「どうしたんですか悟雲兄さん!!?」
「悟空・・・クリリン・・・・」
台所にいた悟飯と違い、ラディッツの正面から顔を見ている弟達は兄の形相と瞳に怯え、其の事がラディッツの闘心を削ぎ落す・・・・こんな自分を知られたくなくて
「・・・・落ち着け親父・・・」
事態が呑み込めないながらも、今は相手も何かをする気はなさそうだと判断したジュニアが、警戒をしながらもラディッツの肩に手を置き気を静めさせようと試みる。
-まだ-一触即発の時ではないと
「そうだぞラディッツ様よ、俺は腹が減ったのをこの良い子達に助けられただけなんだよ~、な?」
「う・・・・うん・・・」
「そうなんです兄さん、その・・・あのカプセルの・・・」
人を食ったような説明を始めるターレスを擁護しようと悟空とクリリンが説明しようとしたその時
ぐぐぅぅぅぅぅぅ~~~
・・・・・・
「・・・・お前達に渡した昼食も夕食も・・・そこの男が全部食べたという事か。」
「あ・・・・はい・・」
「そうなんだよ!ターレスの兄ちゃん腹減ってて・・・だからおら達の分前部と爺ちゃんもまだなんだ・・・」
「悟雲よ・・・・」
弟達と祖父の様子に、これは今は自分が動いた方がまずいとラディッツは天を仰いで深呼吸をして
「飯を作っている間に何かしたらただではおかんぞ-クラッシャーターレス軍団リーダー-のターレス。」
お前が俺を知るように、俺もお前の事を知っていると牽制するのを、ターレスは愉快気に嗤う
「あんたの様な超高級官僚様が、俺の様な下賎な者を知っていたとは驚きだ。」
「高級?」
「あぁ、お前達は知らないのか?」
このお兄さんは、銀河で一番規模のでかい軍のトップで仕事をして、数億という兵士達の仕事を采配していた文官長補佐官のラディッツ様なんだよ。
「・・・・なんと・・・・」
「兄ちゃん?・・・・ほんとけ?」
「軍の文官長の補佐官って・・・」
ターレスの言葉に、悟飯と悟空とクリリンはラディッツの在りし日の一端の、それも最たる秘め事に触れて驚愕し、知っていたジュニアと、古傷を触られたような痛みを覚えたラディッツは苦虫をかみつぶしながら
「古い話だ!飯を作るから邪魔をするなよ!!!」
こうとなってはジタバタしても始まらず、ならば有意義な事をすべきだとラディッツは悟飯たちの夕餉の支度に入る。
クラッシャーターレス軍団のリーダーが来てしまったからには、今更変に足掻いても罠にはまるばかりであり、少しずつ解きほぐさねば弟達と祖父と息子は瞬時に殺されてしまいかねないのだから・・・・・