ブオォォォォォォォ
「おや?
ここはどこでしょう?
私は…?」
ブルックは1人岬に立っていた
周りを見ても誰もいない…
ブオォォォォォォォ
「なんとなく見覚えがあるような、無いような…」
聞こえる音は記憶にない音…
大きな風の音かと思うが風は感じられない
岬の先に立っている灯台を見つけ、グルリと周りを一周してみる
遠い昔に見た事があるようなその灯台を見上げながら更に探索をしようと歩き出す
灯台の事を思い出そうと記憶を手繰ることに意識を集中していて正面の真っ暗な壁に気付かずにぶつかってしまう
「イタイっ!?」
ぶつかった頭を撫でながら少し後ろに下がる
「あぁ、海に落ちないように壁が作ってあるんですねぇ
私など落ちてしまったらひとたまりもありませんからねぇ
ヨホホホホホホ」
海沿いにある大きな黒い壁を見上げて、ソレが海を塞ぐようにある事から自分達の様なカナヅチが海に落ちない様にある物と勝手に解釈をする
「ん!?
何か、臭いですね…
生臭いっ!
この壁生臭いです」
壁にぶつかった時に少し濡れた頭を触りながらその水分が生臭い事に驚く
「でも私、匂いを嗅ぐ鼻が無いんですけど~!!
ヨホホホホホホ~」
と、1人騒いでみるが誰も反応がない…
ブオォォォォォォォ
ブオォォォォォォォ
ブオォォォォォォォ
「それにしても、大きな音ですねぇ」
ブルックは、どうしても思い出せないその岬を、なんとか思い出そうと記憶をたどる
しかし、大きな音が耳に入り全く集中できない
風の音と思われる大きな音が思考の邪魔をする
「もう!
少し静かにして下さい
私、今必死に思い出そうとしてるんですから!!」
少し大きな声を空に向けて放つ
すると、さっきまで鳴っていた音が止まる
「おや?
急に静かに…
これで思い出す事に集中できますね…」
ようやく静かになり思い出そうと三角座りに座り込む
ブオ
いつだったか、確実に見覚えのある灯台
反対側の岬の先にも同じ様な灯台がある事に気がつく
ブオォ
「二つの灯台…
もしや、ココは双子岬?」
ブオォォォォォォォ!
ブルックがその場所が双子岬だと気付いたところで、またも大きな音が鳴る
「双子岬?
では、もしや”ラブーン”もどこかにいるのでは?」
双子岬ならラブーンがいるはずと岬の先へと近づきラブーンを探そうとする
「ラブーン!!」
ブオォォォォォォォ
「もう!この壁邪魔ですね
海の様子が見えないじゃないですか」
なんとか海を覗けるところがないか右に左にと動いてみるが黒い壁が邪魔をする
ブオォォォォォォォ
ブルックは、先程からする大きな音が上の方から聞こえるのに気が付き目線を上に上げる
「おや?」
その壁に大きな目がある事に気付く
「アレは…
目?でしょうか?」
ブルックが気付くと、その大きな目がギョロっとブルックを見る
「壁ではなく、生き物でしたか…
大きいですねぇ~」
その壁が生き物とわかり、ブルックは話しかけてみる
「あの、すみませんがクジラを見なかったですか?大きさは、そこまで大きくはないですが小舟ほどの大きさのクジラです
私の仲間なんです…」
ブオォォォォォォォ
ブオォォォォォォォ
ブオォォォォォォォ
「なるほど…」
ブルックはラブーンの鳴き声を聞き、納得をする
「何を言っているのか全くわかりません
ヨホホホホホホ~」
ブルックのふざけた態度を見てラブーンは少し静かになりブルックを見つめる
「いやぁ、それにしてもあなた大きいですねぇ~
一体、どんな生き物なんですか?
あっ、そうだ!
魂になって空から見れば、あなたがどんな生き物かわかりますね
それに、ラブーンも見つかるかもしれません」
「そ~れ~」
ブルックは、幽体離脱をして空へと登っていった
ふわ~っと空へと登っていったブルックは、ラブーンを見下ろす
「こ、これは!?
クジラさんでしたか…
さすがに大きいですねぇ」
ブルックは、ラブーンの大きさに驚きながらも、大きくなったラブーンと記憶のラブーンが一致せずに自分のイメージのラブーンを探す
「ラブーンはいませんねぇ
潜っているのでしょうか…」
ブルックは幽体離脱を解除し体に戻る
「ココで待っているはずなんですが…」
ブオォォォォォォォ
「いやぁ、それにしても大きいですねぇ
クジラさんとはこんなにも大きくなるものなんですねぇ
ラブーンも、こんなに大きくなるのでしょうか…」
ブオォォォォォォォ
「双子岬…、クジラ…、ラブーン…」
ブルックの頭の中で、双子岬、クジラ、ラブーンというワードが一つにつながる
「…………」
ブオォ
「…………」
ブルックは、沈黙したままラブーンを見上げる
ラブーンも、大きな目をブルックに向ける
「も、もしかして…
ラブーン…」
ブルックの足元に涙が一つこぼれる
ブオォォ♪
ようやく、ブルックが気付いた事に喜ぶラブーンは水の中に潜り沖の方へと泳いで行った
ブルックは、ラブーンの行動がわからずただ海を眺めていた
すると、ラブーンは沖の方で大きくジャンプをして海から大きな体を空中へ跳ね上げた
そして潮を吹き、またブルックの元へと帰ってきた
「大きくなりましたねラブーン…」
ラブーンは、自分の大きくなった身体をブルックに見せるために空中へジャンプをしたのだ
ラブーンの姿を見た瞬間、ブルックの頭にノイズが走った
少し顔を歪めたブルックをラブーンは心配そうに見る
「あぁ、大丈夫ですよ
ラブーンに会えて感極まってしまっていたんです」
そこからブルックはラブーンに別れてからの事を話した
途中でヨーキ船長達と別れた事、残った海賊の仲間達は毒により自分も含め全滅してしまった事、そして悪魔の実の力により自分だけがこの世に戻ってこれた事、その時に戻る身体が見つからず白骨化してしまってこの姿になった事、その後約50年彷徨い続けこんなに時間が経ってしまった事…
時に笑い、怒り、悲しみ、謝り、ラブーンに話し続けた
ラブーンは、ブルックの話を聞いていた
時々、頷くように身体を大きく動かし
相槌を打つように、鳴き声をあげた
言葉は違えど、会話は成立していた
ラブーンが身体を大きく動かした時に、ふとブルックが気付く
「ラブーン?
その頭の落書きは何ですか?」
ラブーンは頭のマークを自慢げにブルックに見せつける
「ラブーン…
そのマーク…」
ブオォォ♪
「とても下手くそなマークですねぇ~
ヨホホホホホホ~
何のマークかもわからないくらい下手くそじゃないですか!」
ブォッ
ラブーンはルフィとの約束のマークを馬鹿にされて、少し不貞腐れた感を出す
「あれ?
怒ったんですかラブーン?
それは、申し訳ありません
そのマークをもう一度見せてもらってもいいですか?」
ラブーンはもう一度、正面からブルックにマークを見せる
「このマークは…
麦わら帽子でしょうか…
海賊のマークに見えますねぇ」
またも、ブルックの頭にノイズが走る
ブルックの頭の中に、ルフィ達との記憶が蘇る
「あっ、そうでした…
私…」
と、言いかけたところでブルックは黙ってしまう
(いいんでしょうか…
私のワガママでここまで待たせてしまっているというのに…)
ブルックが急に黙り込んでしまった事に、ラブーンは心配そうな鳴き声をあげる
「………」
「………」
「ラブーン…
よく聞いてください」
ブルックは静かに話し始めた
「50年以上も待たせてしまっている私が、こんな事を言うのはおかしいと思いますが
もう少し…
もう少しだけ、ココで待っていてはくれませんか?」
ブォ
ラブーンは小さく鳴く
「あなたの頭に書いてあるマークを見て、私思い出したんです
あなたとの約束は『必ず世界を一周して迎えに来る』でした
ですから、この再開は違うんです
約束の再開ではないんです」
「ですが!!
私は今、あなたにそのマークを書いた人達と一緒に冒険をしています
今度こそ、必ず!!
ルフィさん達と共にあなたを迎えに来ます
ですから、もう少し…
もう少しだけ、ココで待ってはいただけないでしょうか…
私の、いえ私達が交わしたあの約束の為にも正面からあなたを迎えに来たいのです
本当に私のワガママでしかありませんが…
どうか、わかってはいただけないでしょうか」
ブルックは、自分の思いを全てラブーンに打ち明けた
ラブーンは、静かに波に打たれている
その波の音だけが2人を包む
ブオォォォォォォォ!!!
しばらく沈黙していたラブーンが空に顔を向け、今までで一番大きな鳴き声をあげた
そして、ラブーンは海に潜っていってしまった
「ラブーン…
やはり怒ってしまったのでしょうか」
ブルックは、海を見つめワガママを押し通した自分を悔やんだ
ラブーンの姿が見えなくなった事でブルックは呆然としていた
ドーーーン!
急に大きな音と振動がブルックを、いや岬全体を襲う
「な、何ですか!?
地震ですか!?」
ブルックは慌てて周りを確認するが、原因を突き止める前に再び大きな音がなり、更に大きな振動に襲われる
「地震ではない!
この音は…
まさか…、ラブーン!」
ドーーーン!!
ラブーンは、また昔のようにレッドラインの壁に頭を打ち付けていた
「やめてください、ラブーン!!!
そんな事をしたらあなたが怪我を、いや下手したら死んでしまいます」
ドーーーン!!!
ブルックが叫んでも、ラブーン頭を打ち付けるのをやめない
「やめてください!
お願いですから!ラブーン!!」
何度ブルックが叫んでもラブーンは頭を打ち付ける事をやめない
ついに、頭の古傷が開き血が出始めた
それでもラブーンは構わずレッドラインに向けて頭を打ち続けた
「あぁ…
ルフィさんとの約束のマークまで傷つけてしまった…」
ブルックが自分のせいで、ラブーンが傷付くだけでなく、ルフィとの約束も反故にさせてしまった事に更に落ち込む
「ラブーン…」
ブルックは膝から崩れ、両手を地に付き涙をこぼす
ラブーンは海から顔をだしブルックを見つめる
しかし、すぐにまた海に潜ってしまった
鳴り響くラブーンが頭を打ち付ける音と、その度に響く地響きはどんどんブルックの気持ちを潰していく
(私のせいで…)
ピシッ
ピシッピシッ
ラブーンの体当たりで、岬の地面にヒビが入っていく
地面に入ったヒビは、どんどん広がり
ラブーンの体当たりの度に、どんどん大きくなっていった
しかし、うつむいたままのブルックはそれに気がつかず涙を流す
「ラブーン…
もう、やめてください」
顔を上げたブルックの目に入ってきたのは、大きくヒビが入った地面、それを辿るとレッドラインの壁にも亀裂が走っていた
「こ、これは…」
ブルックが壁の亀裂に気が付いた時、海の方から大きなラブーンの鳴き声が
ブオォォォォォォォ!!!
ラブーンは今まで以上の助走をつけ、ものすごい勢いで体当たりをした
ドカーンっと大きな音がして地面が大きく揺れる
少し、時間をおいて壁の亀裂が大きく裂け崩れ始めた
崩れた壁は、人が1人通れるほどの隙間が空いた
その、隙間からは白い光が漏れていた
「これは?
もしかして、ラブーン!」
振り返るとラブーンは空に向け大きく吠えていた
「ラブーン…
申し訳ありません、50年以上も待たせて更にまだ待てという私のワガママを、あなたは…
ルフィさんが繋いでくれなければ、それすらもできなかったかもしれない…
今再び、私はあなたとあなたの頭に描かれた海賊旗に誓います!
私は、ルフィさん達と共に”
このソウルの全てを賭けて!!!」
ブオォォォォォォォ!!!
ラブーンは、ブルックの誓いに大きく返事をした
「それでは、行ってきます」
ブルックはラブーンが開けてくれた壁の隙間の白い光の中へと進んでいった
双子岬
ブォッ!
ブォッ!
ブォォォォォォッ!
いつもより楽しげな鯨の姿をみて、1人の老人が話しかける
「どうした?ラブーン
今朝は偉く機嫌が良いじゃないか…
何か、良い夢でも見たのか?」
双子岬では、今日も大きなクジラが約束を果たされる日が来るのを待っている
昔の仲間との約束
少し前のライバルとの約束
そして、夢の中で交わした仲間との新たな約束が果たされる日を…