知らない間にGI7個獲ったことにされてた馬   作:タケノコランバス

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10000UAありがとう。

多分回を追うごとに更新速度が鈍化していくと思われますが、よろしければお付き合いください。


競走馬編[早すぎた変革者]チェンジオブエイジ
人生もとい馬生とは過酷である


 ──この体に初めて納まったとき、自分は疲れているのだと思った。

 

(……どこだここ)

 

 平々凡々とした日常の中でいつも通り就寝・起床を行っていた男は、まず辺り一面に芝が生い茂っているという光景に驚かされる。

 

(あーあー……声もおかしいな、どうした俺)

 

 声帯の異常も感じながら、いざ起き上がろうとしてみれば。今まで操っていた四肢とは何もかも異なる感覚に翻弄されて自立すら叶わない。

 

(んぁ? これ指無くなった? いやこれ夢か?)

 

 それどころか爪先にも開閉の手応えがなく、現実離れしたような感覚に苛まれた彼は、明晰夢の類に遭遇したのではと考えたところで、ようやく意識がクリアになり始める。

 

(オエ、なんだこの……なんだ)

 

 続いて、視界が普段見ているそれと大きく異なっていることに違和感を覚えながらめまいに苦しんでいると、首を振らずとも周囲一帯を認識できるほどに広がっていた視野域を以て、変わり果てた自らの肉体を目の当たりにすることになる。

 

(え、これ……は?)

 

 この日、彼は馬としての新たな生涯が始まってしまったことを自覚した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

(なんで俺が畜生道行きなんだよ、チクショウ)

 

 そんな下らないジョークで気を紛らわせながら行っていた現状把握は、概ね最終段階まで進んでいた。

 

(こんな柵の中で他にも同類がいるってなったら、そりゃ牧場うんぬんしかないでしょ)

 

 あの日からしばらく周囲を観察するうちに、彼はどうやらこの場所が牧場の類であることを知った。

 

(元に戻る方法を探すなんて現実的じゃないだろうしなぁ……とはいえ働かなくても飯が食えるのはまだマシなのか)

 

 しかしこうなった原因すら分からない現在、元の肉体に戻ることなど無謀の極みであることもすぐに察せられた。

 文明社会上がりが弱肉強食の自然界でサバイバルなど御免こうむる苦行であったが、ここにいる限りは外敵による危機にさらされることがないのはプラスの材料と言えよう。

 

(でもキョウソウバ、とか言ってたんだよな……。馬で競走って言ったら……多分アレだろ)

 

 そしてこの体が、おそらく競馬なる競技に用いるために生み出されたものであることも彼は悟っていた。

 

(言うならギャンブルの見せものにされるんだ、負けたら地下送りとか……あぁありそうだ)

 

 思わず某賭博漫画の光景を思い浮かべた男は唸る。同競技については「レースを行う馬の順位を当てるギャンブル」であることしか知らなかった彼であったが、それでも育てられるからには勝利を求められる身分であることは容易に察せられたからだ。

 

(そんなドス黒い人らには見えなかったがなぁ)

 

 おおらかに面倒を見にきていた飼育員らしき人物も、然るべき時には牙を剥く日が来るのだろうか、と憂鬱になりながら、彼はすでに食い慣れた芝生に口を伸ばすのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……今日はえらく(せわ)しないな、大丈夫か?」

 

 ある日、一頭の幼駒を指差した牧場スタッフがそう口にした。

 何事か、と応じたもう一人がアタリをつけた対象は、ここ最近心ここにあらずといった様子で不動を貫いていた馬だった。

 

「確かに、今までずっと死んでるのかってくらい動いてなかったのに」

 

 明日は雪かな、と内心でジョークを飛ばしながら応えたスタッフの脳裏に、今までのその馬の様子が想起される。

 他の幼駒とも絡まず、ひとり違う世界にいるように座り込んで黄昏るばかりだった彼とは打って変わって、落ち着かない素振りで首を動かすその様は、普段見ている身からすればよく目立つ豹変っぷりだった。

 

「他の子らが気になってきたのか? まあ今までよりはマシだろう」

 

 競走馬としての基礎体力を育成する観点からすれば、兎にも角にも動いてもらった方がよいのは承知だが、梃子でも動かなかった彼がなぜ、という思いはあった。

 

「まぁ、これでピーターのあだ名の返上も近いでしょう」

 

 ピタッ、と止まり動かない様を揶揄して付けられていたその幼名に大笑いしながら会話を続ける二人は、この光景がのちの競走馬・チェンジオブエイジが真に産声を上げた瞬間であることを、まだ知らない。




2週間タメた割には当たり障りのない書き出しで申し訳ない。

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