紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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108 少女と今日の冒険と明日見つけてほしい意思

【ギルド総本山/教会・最奥】

 

「それは地球を……欲しいということですか」

 

赤金髪少女は、言葉を濁します。

 

濁した言葉は“裏切る”という発言。言えば、地球の人間と名乗るようなものです。

 

「そうですね。正確には地球の星の魔力が必要といったところです」

「ちなみにさっきから出てくる星の魔力って?」

 

「星を動かす力、程度に考えてもらえれば十分です」

「デカい例えをしてほしいわけではないんですが」

 

私の頭が熱くなってきました。

 

星の魔力やら、地球に攻めるやら、難しい事が脳内にのしかかります。

 

反射的に、私の手はおもわず、耳に。

 

聖女様のほほえみ声がすべりこみます。

 

「別にキイロに難しいことを考えてほしいわけではありません。ただ戦ってほしいのです」

「言っている意味が理解できないのですが」

 

「嫌悪する必要はありません。害虫を潰すと考えればいいのです」

「それは私である必要があるんですか?」

 

私の目が細められます。

 

別に戦うだけなら、獣王さんでも、ギルドの主任、でもいいとんじゃないでしょうか。

 

私より、殺しに長けた人はいくらでもいるハズです。

 

「いいえ、この世界の人間では駄目なのです」

「まるで、私がこの世界の人間ではないかのように……」

「身構えなくても大丈夫ですよ。あなたが、地球人であることは承知の上ですから」

 

“地球人”聖女様の口から聞こえた言葉には、ずいぶん棘があります。

 

まるで、ゴミか、虫としか、おもっていないような声色です。

 

「ずいぶん軽蔑的ですね。耳ぐらいしか違わないのに」

「いいえ。魔力を吸う、我々人類と、地球人とでは大きく違うのですよ」

 

「だから、地球で戦えないと」

「ええ、ですから私は貴方が欲しいと言ったのです」

 

ハッキリというものをいう聖女様の言葉に、私は頭が痛くなってきました。

 

「そんな話をして、私が戦うと?」

「戦ってくれますよ」

 

「何を根拠に」

「貴方はすでに冒険者ですから」

 

真顔で答えてくれる聖女様。

 

それはまるで、冒険者だから、貴方は地球に敵対する、と言われている様です。

 

「それが従う理由とでも」

「したがってくれますよ。だって冒険者というものは────私の魔法にすぎませんから」

 

勇者が、竜王を討ち滅ぼすためにつくった原初の魔法。

 

勇者が1人しかいないのなら、後から作ればいいと考案された魔法。

 

足りない人間に、後から付けたしを可能にする、そういう魔法です。

 

「現在の使用者である、私がいなくなれば、機能しなくなる、その程度の奇跡です」

「それがどうしたんですか。魔法を使っているのだから、異世界に協力しろとでもいいたいのですかっ」

 

声を荒げるのは、ささやかな抵抗です。

 

聖女様がいいたい事は分かっています。ですから、有耶無耶にしようと荒げるのです。

 

ゆえに、彼女はいたずらっぽく告げてくれます。

 

「────なら貴方はそれを捨てれますか?」

 

冒険者になった貴方の生き方は輝かしいものでした。

 

人を助け、友を救い、龍と冒険した。

 

それは貴方の、付け足された力、があってのモノではないのでしょうか。

 

「それは────」

 

何かを言わなければ、屈してしまう。

 

予感とともに、口から僅かな言葉は出ていました。

 

核心をつかれた以上、意味あるモノを紡げるとは思いません。

 

ですが、身体に潜むナニカが“言い切れ”と命ずるのです。

 

「それでもっ「私としては、そういう回答は駄目です」────もごもご」

 

細い聖女様の指が、私の唇にあわされます。

 

「いいですか。私としては中途半端な回答は駄目です。自分の意思で言ってください」

「もごもご(じゃあ、ここまでの問答はなんだったんですかっ)」

 

「まあ、私としても、意志とは違えど、役割は果たさないといけませんから」

「もごごご(最初から最後までつかみどころがない人ですね)」

 

「なので、私としては先ほどの話は“問い”としてしまっておいてください────いつか答えが紡げる、その日まで」

 

唇から指が離されると、身体が、吸いこまれるように扉に飛んでいきます。

 

「ほえ?」

「私としては、帰りは聖女っぽいことをしてみたいので」

 

聖女様の声はすぐに聞こえなくなり。

 

扉から締め出されるように、放り出されます。

 

宙で一回転。着地すると、目前には豪華な装飾。

 

「放り投げられましたか……」

 

私の呟きは、閉まり切った扉に吸いこまれます。

 

それは、聖女様との面会終了を告げているのでした。

 

◆◇◆◇

【ギルド総本山/教会・地下通路】

 

赤金髪少女は、天井をながめて、指先で額をたたきます。

 

何か大事なことを忘れている気がしますね。

 

思考が頭を埋めそうなとき、背後から声がひびきます。

 

「いやー、面白い退出方法だったわねー」

「あれ? ギルド主任。まだ居たのですか」

「いやー、妹ちゃんが心配でねー」

 

紫髪のおねーさんは、えっへん、と豊満な胸をはります。

 

「────気にするな。当然のように聞き耳をたてていただけだ」

 

呆れた声。扉を守っていた門番さんが教えてくれます。

 

「失礼な、情報収集って言ってちょうだい」

「それで、貴様が扉に吹き飛ばされるのはお笑いだったな」

 

「なによ、ちょーっと開くのに反応できなかっただけじゃない」

「それだけ、貴様も甘くなったということだ」

 

門番さんは、重いため息をつきます。

 

長々と息をこぼしきった後、視線を私の方に。

 

「ところでだ。聖女様に願いは聞き届けてもらえたのか?」

「願い……えっ、あっ!?」

 

私は、やってしまった、という顔になっていることでしょう。

 

口があんぐりと広がって、元に戻りません。

 

まずいですね。肝心なことを忘れていました。

 

「あのー、妹ちゃん……」

「まったく、揃いも揃って腑抜けているな」

 

鉄鎧を抑える、門番さん。

 

沈黙を数秒しますが、足を動かし、門に手をかけます。

 

「まったく……仕方ない。もう一回行って来い」

「いいんですか?」

「いいわけないが、本当に謁見だけして帰る奴がいるかと、言いたい気持ちだ」

 

いや勝手に追い出されたんですよ。

 

そんなふくれっ面をしながら、再度、扉をくぐるのでした。

 

【ギルド総本山/教会・最奥】

 

「あら、私の場所に忘れ物でもありましたか?」

 

足を運んだ赤金髪少女を、笑顔ででむかえる聖女様。

 

絶対、わざと追い出しましたね……いや、勝手に断定するのは良くないですね。

 

首をふり、気持ちを切り替え、口をひらきます。

 

「えっと、ですね、非常に申し上げにくいんですが」

「あらあら、私はキイロが借金だらけでもいいんですよ」

 

はい、確信犯です。

 

まだ一言もしゃべってないのに、コレですよ。

 

「それは私がよくないんですが」

「大丈夫です。私の元でいい仕事紹介しますから」

 

聖女様はキラキラした笑顔を向けてきます。

 

視界を侵食してきたキラキラとしたものを押し返して、私は話を進めます。

 

「では、お願いというのは」

「借金の方は明日にでも無くしておきますよ」

「いえ────ゴンスさんを元に戻してくれませんか?」

 

急に真顔になる、聖女様。

 

「それ、意味を分かって言っていますか?」

「もちろん、分かって言っているつもりです」

 

「では、仮にそれが出来たとしても、借金の方はどうするつもりですか」

「ちょうど稼ぎのいい仕事を紹介してくださる人がいたので、それにでも頼りましょうか」

 

「なるほど、では地球人を全て────」

 

私の顔をじっとみる、聖女様。

 

表情の変化でも伺っているのでしょうか? 別に変わることはないですけど。

 

ゴンスさんに比べたら、借金なんて軽いモノですし。

 

ため息を1つついた後、聖女様は表情を変えます。

 

「────なんて命令したら、私が悪者みたいじゃないですか」

 

“まだ未熟か”そんな顔をしてくれる聖女様です。

 

「……」

 

どういう反応を返したら良かったんでしょうか。

 

やはり地球人虐殺の提案をしてきた時点で、もう悪役だろ、というツッコミが欲しかったんでしょうか。

 

「今、私はそもそも悪者だろって思いましたね」

「思ってません」

 

「いいや。絶対思ってました。私のしっている彼とそっくりな顔してました」

「他者との経験を押しつけるのはよくないと思います」

 

なぜか。プンプンと怒っている聖女様。

 

私はわけもわからず、苦笑いです。

 

「いいですか、今回は特例として、私の力で、借金も巨人族の方も、両方どうにかしてあげます」

「それは貸しという事です?」

 

「この、私の頑張りをどう捉えるかは、キイロ次第です」

「なら聖女様の気まぐれと言うことで」

 

「言ってくれますね……私、こうみえても、この世界の聖女なんですよ」

「ソレハスゴイナー」

 

私は、めんどくさいので、背中をむけます。

 

うごきだす踵、扉にむかって歩きます。

 

「え……も、もう、帰ってしまうのですか。こう、もう少し、私の感謝に報いるとかは……ないのでしょうか」

 

背後からは、聖女様の慌てた声が。

 

なんか言ってますが、長居しても悪いですし、帰りましょう。

 

別に言いたいことは、これ以上は……

 

そう────扉に手をかけたとき、足を止めます。

 

「ああ、確かに忘れていました、ね」

 

キュッ、180度反対を向いて、彼女に”忘れた事”を言っておきます。

 

「あの、聖女様っ」

「なんでしょうか。今さら私のお金が欲しいとかは聞けませんよ」

 

「いえ、そういうことではありません」

「なら本当は私が欲しいとかですか。残念ですが、あなたの聖女様は非売品となっています」

 

聖女様は、支離滅裂な言葉を吐いています。

 

壊れた機械といいますか、相反する感情がごちゃごちゃになったロボットみたいですね。

 

まあ、目前にいるのが壊れかけのロボットだとしても、やることは変わりませんが。

 

「────ありがとうございました」

 

私は、頭を軽くさげます。

 

深くは下げれません、彼女はたぶん敵ですから。

 

「それは……“何に”対しての感謝ですか?」

「この街で出会いをくれたこと、そして手助けをしてくれた事に、対してです」

 

不自然なほど事件に巻き込まれ、偶然のように全てが綱渡りできた今回。

 

その裏には赤髪の少女たちと、ギルドの影響があったように感じます。

 

「これは手助けというには、私欲まじりだったと記憶していますが」

「ですが、この結果は貴方達がいなければ、有り得なかった」

 

ですが時間は長々とかけて。

 

それは、彼女に誠意を伝えるために。

 

「────行動に、敬意と感謝を」

 

足を動かし、再び前を向いて歩き始める私。

 

扉は開き、外に出ると「痛ッ」「貴様、俺に倒れかかるな」────ギルド主任と門番さんが、床に倒れていました

 

「いや、何やってるんですか」

「いやー、ちょっと気になってねー」

「貴様が聖女様に不埒な文言を吐いていないかの確認だ」

 

「いや、そんなこと言うわけが……」

「うーん、これはどう思う、門番くん」

「これは限りなく白に近い黒ですな、ギルド主任」

 

聖女様の部屋をつなぐ、扉はすでに締まりきっています。

 

ですが、もし扉に耳をつけている者がいれば、こんな会話が聞こえたことでしょう。

 

「やっぱり勇者の方々って、どうしてこう────いえいえッ、私は何を考えているんですかッ」

 

年相応の少女として顔をあかめらせ、左右にブンブンする聖女様。

 

それは警備兵ですら知らない彼女の一面なのでした。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます

誤字脱字報告があると作者が喜びます

余談

「ところで最後のキイロの台詞は誰に言ったモノだとおもうでち?」
「もちろん、私ですね」

「いや、どうみても、これは暗躍を頑張ったでちこうに対してでち」
「いえ、これは裏で糸をひいていた私に対してですね」

「シナリオの都合上、ギルドの地下でぐーたらしてた人物のどこに頑張った要素があるでちか?」
「私としては、皆で頑張ったところに水をさした、貴方に感謝する必要はないと感じますが」

「自分も輪に混ざりたくなった結果、さらに借金をふっかけた人物がいうと、すごく説得力があるでち」
「そもそも、私は破綻しかけた計画を修正するために、わざわざ出張ったわけですけど?」

「世界よがりの計画なんて、壊れるのが当然でち」
「言ったはずですよ、1人はみんなのために。聖女は、世界のために、と」

そんな2人のなかに、プラカードが差し込まれます。

文字には────

「(ねえねえ、実は私とかはない?)」
「「それはない」でち」

喧嘩をするのは、耳をつかさどる少女、口をつかさどる少女、ギルドの女王。

床はドンドンと踏みならされ、振動は、ギシギシと扉をゆらします

「声がこちら側まで聞こえている、と彼女たちに伝えたほうがいいのだろうか……」

門番は、扉の前で、1人頭をかかえるのでした。
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