紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

13 / 107
⑪ 少女と戦闘と託されたモノ

【前線基地/格納庫 [現地時間5:35]】

 

捉えるは魔物(ゴブリン)、構えるは全長4mほどの強化外骨格、戦鋼(せんこう)

 

戦鋼操縦席に座るは、少女は唾をのみます。

 

戦鋼《せんこう》の装甲は剥げ、外の景色が見え、

画面の光は半半で、左手の操縦管は折れていました。

 

幻聴(ナビィ)黒髪少女(わたし)は、戦鋼を動かす。

 

『まずは回避と攻撃からだな』

「こっちは動かすのに精一杯ですよっ」

 

戦鋼の動きは機敏に欠けたと言わざるえません。

 

頭で考えた動きが戦鋼に伝わっているらしく、操作反応にムラがあります。

 

「大人しくレバーペダル式にすればいいものをっ」

『それは作った奴らに言え』

 

「しかも無駄に関節モータありますしっ」

『次、正面来るぞ』

 

画面に映るは、裸体の醜悪な悪鬼、ゴブリン。

 

手に持つ棍棒は、火と同じぐらい赤に染まっています。

 

(こちらの気持ちも知らないでっ、突撃ですか)

 

棍棒《こんぼう》は掲げられ、殺意が戦鋼のすぐそこまで迫っていました。

 

「ジェッアッ!」

「かい───」

 

「回()」の二文字は、脳には浮かべど実際にはできず。

 

戦鋼を傾けるだけに終わるのでした。

 

「がはっ」

 

────歪む視界

 

一瞬、沈黙をはさんで意識が戻ります。

 

何が起こった。

いや、ぶつかった。

当たったのだ攻撃が。

 

────何と、魔物と

 

「ゴブリンはどこですかっ」

 

眼をはしらせますが、画面に影は無し。

 

代わりに耳に届くは、上から鳴る嫌な金属音。

 

にやりとゴブリンの顔が、空いた穴からのぞきます。

 

「すぐ上に取りつきたがりますねっ」

 

学んだのか、偶然なのか、装甲穴に差し込まれる棍棒。

 

「キシャァァッ!」

「ちぃッ────!」

 

右操縦棒を左に動かします。

 

戦鋼《せんこう》は左にカクつきます。

 

(ああクソ、上手く動かせませんねっ)

 

仕方ないと、操縦棒とペダル振り回し、ゴブリンを弾き飛ばします。

 

「シャッ、シャー」

 

ですが、鮮やかに着地され、ゴブリンはこちらを睨みます。

 

転げ落ちた傷も無ければ、悪質な笑みが存在するだけです。

 

「これが魔物です、か」

 

右操縦棒は硬いし、重いです。

 

頭も痛いですし、戦鋼は上手く動きませんし、敵は想像以上に素早いです。

 

地球で戦った魔物よりも何十倍も強そですし、武器だって持っています。

 

(なんで私……戦っているんでしょうか)

 

今の私は嗚咽だって出そうな体です。

 

『どうだ慣れたか?』

「全くです。腕を動かすのが限界、です、よ」

 

幻聴(ナビィ)はとても気楽そうです。

 

こっちは焦っているのに冗談じゃない、そんな気持ちさえ芽生えます。 

 

『────そうか、もう一回攻撃が来るぞ?』

 

魔物(ゴブリン)は再び襲来。

3mほどある距離を猪突猛進に駆けてきます。

戦鋼(せんこう)はまだ思いどうりに動きません。

 

(クソですよ。どうやって避ければいいんですかッ)

 

右に、いや左に操縦菅を倒すべきか。

 

『全く、頭で考えすぎだ。右手だけで行動をしろ』

「いや、どういうことです────あれ」

 

右手が気持ちいいほど、簡単に動きます。

 

頭は回避などを考えず、腕を動かすことを────

 

『だから、頭で考えすぎと言っただろ』

「そういう事ですか……」

 

ゴブリンの接近は1mを切りました。

 

ですが戦鋼は動かず、いえ動かす必要がないという事ですね。

 

『おいおい避けないのか』

「余計な思考を吹き込まないでください」

 

接近30cm。もはやスローモーションに見える突進をする、ゴブリン。

 

最後の一撃とばかりに、飛びあがり、棍棒を振り下ろす間際。

 

「────そこおおッっ!!」 

 

右の操縦菅(レバー)は、前に落ちます。

 

一突き。戦鋼の右手が貫くは、ゴブリンの体。

 

「終わりです」

 

機械の右手が握りつぶすは、ゴブリンの魔石です。

 

『まあ、私の劣化パクリだな』

「そこは素直に褒めてくださいっ」

 

体の核が貫かれたゴブリンはそのまま煙のように消えていきます。

 

額ににじむは大量の汗、手も力を込めすぎたのか痙攣しています。

 

(ははっ、これでようやく1体ですか)

 

最初から避ける必要はなかったんですね。

 

「これも経験の賜物、でしょうか」

『私に感謝してもいいぞ』

「まさか。倒したのは私ですよ」

 

魔物を一体討伐。地球にいた時よりも成長できたということでしょうか。

 

脳内の幻聴(ナビィ)の力がなくても、いえ────手は貸してくれましたね。

 

(一発で魔石の場所を貫いていましたし)

 

どうみても、脳内の幻聴(ナビィ)アシストが入っいたとしか思えません。

 

『及第点といったところだ。あと3匹いけるか?』

「もちろんですっ」

 

少女は喝として言葉をいいます。

 

殺らなければ、殺られるだけ。

 

未だ揺れる戦鋼を、前に進めるます。

 

 ◇◆◇

【前線基地/格納庫 [現地時間6:00]】

 

燃え盛る炎の中に、戦鋼(せんこう)は立っていました。

 

周囲には、ゴブリンの姿はありません。

 

「はぁはぁ、助かりました、ナビィ」

 

まさか、ゴブリン達があんなアクロバティックな戦い方をしてくるとは……でした。

 

後半は完全に幻聴の言いなりになる私でした。

 

『多人数戦はまだ早かったか』

「ナビィ、誰目線ですかそれは」

『もちろん、脳内師匠目線だ』

「いや、なんですかそれは」

 

『毎回貴様が弱いと、私が毎回働く必要があるだろ』

「うぐっ、精進します」

 

戦鋼を動かしますが、もはやギギギと嫌な音を立てるだけです。

 

操縦系統に異常はないので、どこか外部の部品が壊れたのでしょうか。

 

「でも、私生きています、ね」

 

あの、激戦から生き延びました。

 

動かないハズの戦鋼で魔物を倒して、ここに生きています。

 

「結局、キイロはどこに行ったのでしょうか」

『今、気にするようなことではない』

 

幻聴(ナビィ)は含みのある返しをしてきます。

 

それは過去をくやくやと悩むなという事でしょうか。

 

『とりあえず、救った命にでも喜んでおけばいい』

 

半壊したモニターが映すは、奥で立ちあがる整備員達。

 

彼らは大小様々なケガをしていますが、確かに生き残っていました。

 

「私、守れたんですね」

『だがここが戦場ということを忘れるな』

「すみません。でも気が抜けてしまって────」

 

気持ちが止まりません。

 

あるれ出した思いは感情を越えて、涙となって現れます。

 

「あれっ、私はなんで泣けて、いるんですか……」

『お前の肉体も疲れているんだろ』

「そうなんですかね」

 

表情筋が、感情が死んでいるハズの肉体は、ぼろぼろと涙をこぼし続けます。

 

『それよりも、覚悟をしておけ』

「へっ、なんの覚悟をですか」

 

『────託されたモノに耐える覚悟だ』

 

モニターが映すは、駆け寄って来る整備員達。

 

周囲の安全確認が終わったのか、部品とスパナを持ち、戦鋼に近寄ってきます。

 

「キイロ、大丈夫かッ」

「へっ?」 

 

私は今更になって思い出します。

 

この戦鋼はキイロ少女の機体。

 

(そうです、彼らはキイロ少女が死んだことをまだ知りません)

 

「本当にボロボロだな、正面装甲、開けるぞ」

「いや、私は────」

 

言葉が終わる間もなく、開閉音が鳴り響き、正面装甲が開いてきます、

 

整備員達に、私が彼女ではないと伝える間もなくです。

 

(ああ、彼らは絶望しますよね)

 

将来有望な彼女ではなく、ただの侵入者が生き残ってしまったことに。

 

「流石、期待の訓練生。体は無傷かよ」

「────はいっ?」

 

整備員は、何を言っているんでしょうか。

 

疲労のあまり、顔を間違えてる?

 

(そんな馬鹿なことがありますか)

 

「き、彼女(キイロ)は」

 

操縦席から立ち上がろうとした時、ポケットから落ちる物があります。

 

宝玉以外に、私が持っているモノ────キイロ少女のパス。

 

「ひっ、何でッ、どうしてっ」

 

写っているパスの写真は─────私の顔。

 

『言っただろ。託された人生(モノ)は重いぞ、と』

 

幻聴(ナビィ)の一言は、燃え盛る格納庫内の音にゆっくりと混じっていくのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字報告があると作者が喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。