紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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⑱ 少女と城壁と疑い

【城壁基地/格納庫 [現地時間11:00]】

 

「広大ですね────」

 

金髪少女(わたし)は唖然とします。

 

囲まれた城塞の先にあったのは、大きな野外訓練場。

 

そして城壁とミスマッチな超プラスチックつくりの中規模基地です。

 

「しかも、格納庫の中も段違いですね」

 

中には、ヘリや、戦車や、よくわからない兵器までありました。

 

格納庫は超プラスチックの最新的な内部、前線基地のトタン作りとは大きく違います。

 

「で、私は『どこから攻めるか考え物だな』────あっはい」

 

脳内の幻聴のテンションも高いようです。

 

やはり崖下の川からかとか、いや空からとか、ブツブツ言っています。

 

「私、訓練生として来てるんですよ」

『ならば大人しく、上にでも挨拶してこい』

「そうは言われてもこの人の量ですから……」

 

ですが、周囲には基地服や野戦服を着た人ばかり。

 

戦車だったり、ヘリだったりいろいろなモノを整備していることから、整備兵だとわかります。

 

『イカれた奴でも探せばいいんじゃないか』

「まるで戦鋼乗りがイカれているみたいな言い方、良くないですよ」

『だってそうだろ』

 

過去に私たちが知っている戦鋼乗りは────

 

鬼殺し教官←常時飲酒

アオイ一曹←目に鉢巻

キイロ少女←初手腹パン

 

「────割と、事実かもしれません」

 

認めます。戦鋼乗りは基本的に変人です。

 

(ですがそう簡単に見つかるとは……)

 

整備する兵士に交じって、異質な少女。

 

基地の服を着て一般的と見せかけて、大きな六角ナットを髪留めにしている少女。

 

「居ましたね」『居るな』

 

クレイジーという点では印象不足な気もしますが、少なくとも彼女は戦鋼乗りなハズです。

 

 ◇◆◇

【城壁基地/格納庫 [現地時間11:10]】

 

金髪少女《わたし》は、ナット少女に近づきます。

 

カンカンと鳴る、超プラスチックの光沢ある床を越えて、兵士たちの横をすり抜けて。

 

「あの、すみません」

「はいはい、なんでしょう?」

 

首を傾げるナット少女。

 

背丈は同じ、ですが階級は上の可能性があります。

 

(ここは、自ら名乗るのが良い気がします)

 

「その、エイ……いや、木色未来《キイロ ライライ》訓練生です」

「訓練生?」

 

ナット少女は複雑な顔をした後、ニヤリと笑います。

 

「おっほん────貴様が、噂の新人かッ!!」

 

(ど、怒鳴られてしまいました)

 

この高圧的な態度、もしかして彼女が上官だったりするのでしょうか。

 

ならば私の挨拶が気に食わなかったのかもしれません。

 

「噂かどうかは分かりませんが、一応新人です」

「きいろら────新人の癖に大層な名前だなッ」

 

「自分でもそう思っていますっ」

「ならば貴様は今日から、ライライちゃんだぁ!!」

 

「はい、ライライちゃ────はいっ?」

 

頭に疑問符を浮かぶ、私。

 

ですがナット上官?は間髪入れず叫びます。

 

「はい、復唱ッ」

「ら、ライライちゃんですっ」

 

私は、何をやっているんでしょうか。

 

このやり取りに意味はあるのでしょうか。

 

「そういう訳でライライちゃん、同期の六角《ロッカク》・菜都《ナット》だよ」

「ほげっ?」

 

同期? 六角ナットを頭に付けた、灰髪の少女が同期?

 

あまりの落差にあほーんとした顔になってしまいます。

 

「上官ではいないのでしょうか?」

「階級は兵長だけど、分類としては同じ訓練生だねー」

 

「(じー)」

 

騙されました。やはり同期を騙すようなナット少女は信用なりませんね。

 

これからは用心深く彼女を観察することにします。

 

「いや、ごめんってー、ついノリでー」

「(ぷいっ)」

 

どんなに謝っても私の信用は取り戻せません。

 

彼女は一度失った信用を取り戻すのにどれほど時間がかかるか学んだ方がいいと思います。

 

 ◇◆◇

【城塞基地/廊下 [現地時間11:20]】

 

金髪少女(わたし)とナット少女は、基地の廊下を歩きます。

 

先程の件は、夕食のおごりで勘弁してやりました。

 

(せいぜい薄くなった財布に悲しむことです)

 

「いやー、一人で上官に合いに行くの心細かったからさー」

「ナット少女も挨拶ですか」

「ナット……少女……」

 

ありえないモノを見る眼で、こちらに視線を向けるナット少女。

 

「何か問題がありましたか?」

「そうだけど、もうちょっと、可愛くできなかったのかなー」

 

「ナットカワイイ少女で」

「それはちょっと直線的だねー」

 

「ナット少女ちゃんっ」

「もうナット少女でいいよ、ライライちゃん……」

 

ナット少女に呆れられていたら、目の前には豪華な木の扉。

 

扉には【司令室】と名がうたれていました。

 

「ノックって何回でしたっけ」

「3回とかでいいんじゃないかなー」

 

ドントントン。3回ノックをして、伺いを立てます。

 

「────んっ、別に入ってもいいッキュよ」

 

そんな声が中から聞こえます。

 

「失礼します」

「し、失礼しますー」

 

内部は、豪華な調度品と、書類が散乱している机。

 

窓から差し込む日光が照らすは、ソファーには、二人の女性。

 

ちっさい帽子少女と、大きい褐色女性。

 

「えっと、基地司令はどちらが」

「指令なら居ないッキュ。納入品のチェックで忙しいッキュよ」

 

小さな少女が、耳まで覆う大きな帽子を押さえながら答えます。

 

「見ない顔────いや今日配属された訓練生か」

 

体も胸も大きい褐色女性が、黒髪長髪の頭を向けます。

 

「私は、サニー曹長だッキュ」「レイニー・ディー、大尉よ」

 

ぺったんな少女が、帽子(サニー)曹長。

 

胸が大きい女性が、褐色(レイニー)大尉ですね。

 

(見かけが非常に分かりやすくて、助かります)

 

「よし覚えました」

 

「貴方、失礼な事考えていない?」

 

褐色大尉は私達を一瞥したあと、自らの胸の中に手を突っ込みます。

 

「まあいいわ────」

 

と言われ、取り出すは、黒い長方形。

 

「それって銃「ドォドォンッ」────はいっ」

 

雷管式拳銃。排莢とともに銃身から撃ちだされるは、2発の銃弾。

 

────軌道は、私とナット少女。

 

(ギリギリ避けれなくは無いですが……)

 

「ぐえっ」

 

盛大に後ろに跳んだので、壁に頭をぶつけましたね。

 

ナット少女は屈んだので、銃弾も私の体も当たってはいませんでした。

 

(合計2発、体に当たった場所は……)

 

「あれ……傷がありません」

 

服を捲っても、貫通跡もありません。

 

床で跳ねているのは、黒いプヨプヨした弾。

 

(確か、ゴム.....弾? という奴でしたか)

 

褐色大尉はナット少女と私を見ます。

 

「そっちは30点に、こっちは0点って所ね」

 

私に向けられる、褐色大尉の視線は冷たいです。

 

(戦鋼乗りなら、余裕で躱して見せろということでしょうか)

 

「貴方、前線基地で戦鋼に乗っていたわね」

「えっ、あっはい」

 

急な質問です。前線基地で褐色大尉と合ったことはありません。

 

おそらく、訓練生の書類に書かれていたのでしょうか。

 

「清州……────いや、酒乱の鬼殺しを知っているかしら」

「鬼? 鬼殺し教官のことでしょうか……」

「あら、よく知っているじゃない」

 

褐色大尉は、銃の弾倉を入れ替えます。

 

「彼女の戦鋼、上部からの圧迫による損傷が酷かったそうで」

「そう、なんですか……」

 

私の心臓の音が早くなります

 

前線基地被害の調査報告書によると死因一位は焼死。

 

次点で謎の力による圧迫死。軍はコレを魔法による被害と断じます。

 

ですが、それに納得できない者も少なからずいました。

 

「戦場に見えない一つ目巨人(サイクロプス)でも居たのかしら?」

「それはっ」

「その沈黙は損よ「ガチャリ」」

 

鼻先に充てられる、銃口。

 

撃鉄が引き起こされ、

 

「────はいはい、そこまでッキュ」

 

帽子曹長の待ったが入るのでした。

 

褐色大尉の銃は僅かに震えています。

 

「サニー、邪魔をするつもり?」

「キイロは私と基地案内でも付き合うッキュ」

 

そう言われて、指令室からひこずられる私。

 

心臓は未だにドクンドクンと跳ねていました。

 

 ◇◆◇

【盗聴カメラ(司令室) 記録復元】

 

映るは2人の男女。

一人は黒髪ロングの褐色女性。

一人は基地司令と言われた優男。

 

窓から入る風で、部屋の書類は風で舞い。ゴム弾も床を転がっています。

 

「戻ったかしら」

 

褐色大尉はソファーで大の字。

 

「いや、参ったね────」

 

基地司令は腕を回します。

 

「ゲッソリするほど判子を押す羽目になったよ」

「それは結構なことで」

 

褐色大尉は、足で床を叩く。

 

「木色訓練生の戦鋼は運びこまれているかしら」

「そりゃもちろん、ピッカピカの新品が来てたが?」

 

「────分解してちょうだい」

 

「へっ?」

「内部まで隈なくよ。最悪予備パーツにしても構わないわ」

 

基地司令は、手元の書類を見る。

 

「彼女を疑っているのかい」

「もう真っ黒確定なレベルよ」

 

「ならなんで泳がした」

「彼女以外にも同じような奴らがいるハズよ」

「そりゃあ、どんな予想で」

 

褐色大尉は、天井を見上げる。

 

「最近、上からの妙な命令が多く感じるわ」

「ウチの基地から人員を引っ張ったようにか」

「ええ、まるでこの戦争に負けたい、そんな感じよ」

 

「流石に言いすぎだろ」

「貴方もそう思っているんでしょ」

「半々、ぐらいだな。あまり公には言えんが」

 

窓から吹き込む風が強くなる。

 

「まあ、それより、だ────」

 

基地司令は真剣な顔になる。

 

「書類手伝ってくれないかな」

「女性を口説くなら他をオススメするわ」

 

 沈黙。仕方なしと基地司令は床を見る。

 

「おーと、こんなところに銃弾が」

「窓から鳥が投げてきたのよ」

 

「大尉しか使わないゴム弾を」

「そ、そういうこともあるわ……」

 

「基地内発砲禁止って知ってる?」

「あー、わかったわよッ。手伝えばいいんでしょッ」

 

しぶしぶ大尉は書類を取り始めるのであった。

 

【記録終了】




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