紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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⑲ 少女と基地と止まった時間

【城壁基地/食堂・販売所 [現地時刻12:00]】

 

金髪少女(わたし)は、帽子(サニー)曹長に案内されます。

 

4km²の大きさを持つ中規模基地。一部は城壁に囲まれ────城壁基地と呼ばれています。

 

内部はレンガで作られている壁もあれば、超プラスチックの光沢作りにもなっているところもあります。

 

「ここが食堂だッキュ」

「ずいぶん変わってます」

 

食堂というより、カフェに近いです。

外にはおしゃれなテラスも見えますね。

 

(軍事基地にしては、凝った内装ですね)

 

「そんなに変わってるッキュ?」

「すみません。個人的な評価です」

「いや、気にしないでいいッキュよ」

 

帽子曹長は、食堂の注文所に進んでいきます。

 

メニュー表は、相変わらず様々なものがあり値段も相応です。

 

(そして、ここも購入式ですか……)

 

思い出すは、いやーな思い出。

 

「ナビィ、私に給料って入ってましたっけ?」

『キイロ少女の口座から引き落とせばいいだろ』

「故人のモノ勝手に使うのはどうかなって……」

 

そういう訳で、お金は一銭も持っていません。

 

最近の流行りは、非常用備蓄のレーションをむさぼることです。

 

「昼頃だし、食べていくッキュ」

「あの……お金が……」

 

「もちろん、おごりで大丈夫ッキュ」

「ありがとうございますッっ!!」

 

上官のお金ですし、控えめな注文にしましょう。

 

ですが────新作料理も捨てがたいです。

むむっ────期間限定もなかなかの商品ですね。

ぐぐっ────20名様のみの料理も……それはずるいです。

 

小一時間悩みかけたところで、帽子曹長がオススメを教えてくれました。

 

 ◇◆◇

【城壁基地/食堂・テラス席 [現地時刻12:30]】

 

金髪少女(わたし)の手元には、欠片も残さず食べ終わった皿があるのみ。

 

帽子曹長はトウモロコシサンドイッチを、未だおいしそうに食べてます。

 

「(圧倒的な風景ですね)」

 

眺めとしては、整備された訓練場と森林。

 

そして底が見えな断崖絶壁がありました。

 

(ちょうど崖の切り立ったところに、基地があるわけですか)

 

防御の面ではこれ以上ない立地ですが、崖が崩れて基地ごと落下したりしないんですかね。

 

「そんなに珍しい眺めだッキュか?」

「いえ、すごい位置に基地があるなって思いまして」

「昔は悪さをしたら谷に落とされるって言われてたッキュ」

 

これがリアル獅子の子落としですか。

 

落とされたら最後、二度と生きては戻れそうにありませんね。

 

「訓練でヘマしないように気を付け......ます」

「無理に畏まらなくてもいいッキュよ」

 

ありがたいお言葉です。

 

昔からというか体のせいか、敬語が苦手になっています。

 

「あと、レイニーがピリピリしてるのも許して欲しいッキュ」

「褐色大尉の事は、特に気にしていませんが」

「それでも、新人にあの態度は無いッキュよ」

 

個人的には、印象が残って顔が覚えやすいので、許容範囲です。

 

初手に腹パンとかもありましたし、まああの程度ならで済まされます。

 

「はぁ、だから大規模作戦、外されるッキュよ……」

「大規模作戦?」

「あれ、知らないキュか」

 

帽子曹長曰く、集められた精鋭隊員でデッカイトカゲを討伐というお話らしいです。

 

デッカイトカゲというのは、ドラゴンとかの事でしょうか。

 

(そもそもですが……)

 

「ここ以外にも精鋭用の基地があるんですね」

「宣伝の為に増やしすぎた結果ってレイニーは言ってたッキュ」

 

「そうなんですか」

「ここはその中でも末端キュ。名ばかりッキュよ」

 

確かに、テレビ宣伝でもよく○○小隊を新たに設立とかやってた気がします。

 

戦場の英雄は君だ、みたいな見出しでしたね。

 

(特に何も思っていませんでしたが、宣伝目的だったんですね、アレ)

 

「どの道、皆とのんびり過ごせればいいッキュよ」

「平和的な考えですね」

 

「昨日と変わらない今日こそ宝だと思わないッキュか?」

「そうは思わないです」

 

帽子曹長はキョトンとします。

 

「────それは昨日が素晴らしいものだから言えるだけです」

 

「地獄のような昨日は、誰かが変えないといけません。

 明日と変わらない今日こそが私が必要としているモノです」

 

帽子曹長は帽子を深く被り、ニヤニヤと笑います。

 

「なかなか、ナマイキな訓練生が入ったキュねぇ」

「生意気、でしたか?」

 

「そうッキュよ。明日からはビシバシ訓練するから覚悟するッキュ」

 

帽子曹長のお皿には、ひとかけらもトウモロコシサンドイッチは残っていませんでした。

 

 ◇◆◇

【城塞基地/地下 [現地時刻15:00]】

 

他に案内されたのは、遊戯室、隊員部屋、格納庫。

 

基本的な構造は、前線基地と変わりませんね。スケールが全部デカいですが。

 

「こっちは何ですか?」

「あとここが倉庫だッキュ」

 

最後に案内されたのは地下。

 

上につけられたライトに照らされた通路は、石で壁ができており、一階とは違う雰囲気です。

 

「ひんやりとした空気を感じます」

「ここは食料保存庫も兼ねてるッキュ」

 

壁際の籠には、野菜や果物が見えますね。

 

他には樽や────

 

「あれは絵ですか?」

『久しぶりに見たな、ハーピィ共の落書きだ』

「ナビィ、知っているのですか?」

 

石壁に描かれた、ぐるぐるとした線。

 

幼稚園児の落書きと言ってしまえばそれまでです。

 

「でも何故こんなところに」

『この地域は鳥カス共の領地だったはずだ』

 

「ハーピィの領地? ですか」

『ああ、それも20年以上前の話だがな』

 

脳内の幻聴(ナビィ)は相変わらず物知りです。

 

絵を色んな角度で見たり、触ったりして質感を試していると、

 

「壁画に興味があるッキュか?」

 

帽子曹長はひょこっと訪ねてきます。

 

「これ壁画だったんですね」

「そうだッキュ。むかーしむかーしに書かれた壁画だッキュ」

 

「歴史に詳しいんですね」

「そんなアホの子だと思ってたッキュか?」

 

「いえ、そういう訳では……」

「冗談だッキュ」

 

帽子曹長はニヤリと笑います。

 

そしてトントンと地面を叩き、天井からはパラパラと砂が落ちてきます。

 

「ちなみに、ここ崩れやすいから気を付けるッキュ」

「今更ですか」

 

天井を見れば金属で蓋がされた部分があります。

 

他にも補強がされた場所がいくつもあり、壊れそうというのは嘘ではありませんね。

 

「備蓄の在庫見るッキュから、歩くなら気をつけるッキュ」

 

そんな声が聞こえた後、帽子曹長はどこかに行ってしまいました。

 

 ◇◆◇

【城塞基地/地下・廃棄場 [現地時刻15:30]】

 

歩くたびに反響する足跡、少しだけパラパラと落ちてくる砂。

 

「やはり地下を勝手に見て回るのは危険でしょうか」

 

少し内部を歩くと、瓦礫以外にも、折れた武具がなどが見えてきます。

 

「これは……不燃物のゴミ置き場?」

 

大きめの空間に置かれているのは、古い電子機器や壊れた椅子、冷蔵庫。

 

ポツンポツンと雨水がしたたり、水が溜まった冷蔵庫には、コケが生えています。

 

(アレ、この鉄塊、見たことがある形ですね) 

 

近づいてみると、輪郭がはっきりします。

 

「これは────」

 

それは頭部でした。丸みを帯びた愛らしいデザイン。

 

足と手は鋳鉄。黒みを帯びた角ばった作りです。

 

『よかったな貴様が大好きなポンコツ戦鋼だぞ』

PN-K2(ピーエヌ ケーツー)です。間違ないでください、ナビィ」

 

見た感じ、かなり劣化してますね。

片腕がもげてますし、全体的に錆びてます。

 

『乗らないのか?』

「まず、動かないと思います」

 

足元に気を付けて、戦鋼を触ってみると。

 

「やっぱり電源死んでますし、正面装甲(ハッチ)も変形してますね」

『頑張れば動かせそうだがな』

「研究所じゃないんですから、その必要ないですよ」

 

そんな感じで、色々といじくりまわしていると、足音がします。

 

「頑張っても動かないッキュよ?」

「そうなんですか」

「動かすのも大変だから放置されてるッキュ」

 

私は確かにと言った感じで頷きます。

 

動くのであれば、作業用なり土木用なり、使われてはいそうです。

 

「にしても、久しぶりのゴミ漁りは楽しいですね」

 

そんな思いと共に戦鋼から飛び降りようとして、きらりと光るは、手元。

 

気持ちは一気に現実に。

 

(なに浮かれてるんですかね、私は)

 

灯りに照らされる手元は赤黒く、錆にも関わらず別のモノに見えます。

 

「大丈夫ッキュか?」

「ええ、大丈夫です」

 

私は手元を握りしめます。

 

そんな少女を見つめるのは、鎮座する戦鋼(せんこう)

 

「────あなたはここで誰の為に戦ったんですか」

 

やはり、戦鋼は沈黙したままです。

 

「ほらほら、次の場所を案内するッキュよ」

 

そう言われて地下から引きずり出される私。

 

結局、日が沈むまで帽子曹長に連れまわされるのでした。

 

 




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