────アラートが聞こえます。
機体が動いている?
私は死んではいない?
モニターに映るは、砂をまき散らすみみずの化け物。
サンドワームは躱されたことに不満か、ギュルルと低いうなり声をあげ、地下に潜ります。
追いかけようと、機体を動かそうとしますが────
『体が動かない?』
戦鋼を操縦しているのは私の体。
でも、動かしているのは、私、ではなく別人。
『ナビィですか……』
「ご名答だ、馬鹿者」
道理で俯瞰的な風景になっているわけです。
『ところで体返してもらってもいいですか』
「先まで寝てた奴に、この朝は耐えれるか?」
『……後で、体を返してください』
ぐうの音も反論ができません。
事実、しくじったのは私ですし、気絶をかましたのも私です。
「虫の癖に奴らの知能、身体能力は高い。囮は奴らの常套句だ」
『では、どうするんですか?』
「同じことをするだけだ」
ナビィは、倒れている戦鋼に発砲します。
砂漠の上には金属と液体が勢いよく飛び散ります。
一点、二点、三点。
金属と液体の海が周囲につくり出されます。
『こいつで、仕上げだ』
銃穴の開いた残骸は「「「ドドドッ!!!」」」────綺麗な火柱を立てます
内部の機器ににでも引火したのでしょう。
燃える炎は、鮮やかな極彩色。
魔法子《マナ》が燃えた時に発生する、綺麗な色です。
「奴らは、魔力を捉え、得物を狙う」
周囲は更に、
爆発、爆発、爆発。
爆発、爆発、爆発。
戦鋼は、極彩色の地獄に包まれます。
「だが、瞬時に膨大な魔力を捉えると────」
ドンッ。吹き出るは、多数のサンドワーム達。
どの個体も狂ったように体をうねらしています。
「────処理ができず意識が飛ぶ」
勝手に私の右手が動き、モニターを操作。
構えられるは突撃銃。
『大漁ですね』
「昔からよく使われる手法だ」
出来あがるのはサンドワームの山。
地面はもう揺れてはいません。
これにて殲滅は終了。
『体の返却を「ちっ、馬鹿の一つ覚えめ」────』
風景が────機体が一瞬で後ろに。
先居た地面は、サンドワームが突き出していました。
体は短小、ですが歯は鋭利、視線も狂暴に見えます。
「群体の雑魚ではなく、統率の本体か」
戦鋼はトリガーを弾き、銃弾が飛びます。
一点を目指し突き進む銃弾は、鈍い音を立てて砂に沈む結果に。
「安物めッ」
『ナビィ、残弾はゼロですっ』
「そんなことは分かっているッ」
流れるように押されるスイッチ、戦鋼は動き出す。
右手は銃を放棄。左手を使い戦鋼は前に滑る。
「シャアアッ!!」
目と鼻の先にはサンドワーム。
待ち構えるのではなく、化物が選んだのは突進。
「食用ミミズごときがッ────」
ギザギザとミキサーのような口がこちらを向く。
粉砕機のような口は戦鋼をかみ砕くには十分。
慣性がのりまくった戦鋼は“もう”止まらない。
『ナビィ、口が────』「────いいか、鎧とはこう使うッ!!」
必殺貫手。戦鋼の腕は化物の口を貫き、手に掴むはサンドワームの核。
太陽の下に、極彩色の宝石をさらけ出す。
「ムシケラめ、二度とその面を見せるなッ」
剛腕爆砕。核は一撃にて握りつぶされる。
「ふんッ、金にならん魔物だ。主導権返すぞ」
『へげっ』
感覚が急に戻ります。
体内が重い。体に肺や心臓が垂れさがる感覚。
呼吸が重い。人の活動を思い出す感覚。
「ごほっ、ごほ、つ、次は、意思疎通を頼み、ます」
『同居中だ。必要は無いだろ?』
息苦しさを紛らわすため、ヘルメットを脱ぎます。
モニターに映る顔は、少女の顔。
眉も、髪もない顔は、機械のようにも思えます。
表情一つ動かずに口を動かします。
「連絡のため、機体を警戒態勢で待機」
通信機のボタンをゆっくりと押します。
気持ちは落ち着いています。ですが、指は震えています。
[こちら
[他の連中はどうなっているッ! 応答をさせろッ!!]
飛んでくるのは怒鳴り声。
仕方ないので、モニターを通して周囲の確認を行います。
(レーダーにも、目視でも生存者は無い……)
[生存者は、私一人のみ]
[ッ……通信を終了。指示を待て]
戦鋼座席の硬さが、体を慰めます。
(私は生き残ったのでしょうか。それとも、私だけ死にそびれたのでしょうか)
意識はゆっくりと闇に落ちていくのでした。
◇◆◇
天井のライトが、部屋を照らします。
応接室のような部屋。ソファーに座るは黒服の男。
「上はサンドワーム討伐戦の結果に不満でな」
「はい」
私は立って頷くことしか許されませんでした。
「実験は凍結、この場所も爆破処理の予定だ」
「はい」
妙に首筋が痛みます。
こういうときだいたいが嫌な事が起こる、そう昔から決まっていました。
「────君は廃棄処分だ」
「はい……」
そんな気はしていました。
今回の戦闘で私以外の実験体は死亡。実験を続けるのは不可能です。
つまり、私たちは使い物にはならなかった。そういうことなのです。
(覚悟は出来ていたハズなんですけど……)
言葉の余韻が長く感じます。結局、私は世界に────
「────だが、金は少しでも回収する必要はあってな」
男は封筒を取り出します。
開けられた封筒の中には、書類と写真。
「この写真を見ろ」
写真に映るは、蒼穹の球。
神秘的な輝きを放つ球は、まるでそこにあるかのようでした。
「魔力を持った宝石。正確には敵が落とした忘れ物だが」
命令は簡素でした。この宝石を回収してこい、たったそれだけです。
「だが保管場所が場所でな」
書類が私に投げ渡されます。
見せられた書類には────
2000年 4月 4日
辞令書
H02 2士 殿
2000年4月4日をもって、
職務に励み、海軍の戦果に貢献することを期待する.
日本海軍海将
薩摩 三郎
「────なに、壁向こうの世界に行ってもらうだけだ」
拝啓、死んでいった兄弟たちへ、私はもう少しだけ生きれそうです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があれば作者が喜びます。