【前線基地/監視カメラ(廊下・自販機前) [現地時間10:00]】
カメラに映るは、
自販機前の壁によっかかる、褐色大尉。
休憩用のクッションに座るは、帽子曹長です。
「勝手にさせていいッキュか?」
「何をしても無駄よ。どうせ帰ることになるわ」
「自身がありげッキュね」
「だいたいの手は打っておいたわ」
褐色大尉は手に持っている缶、謎の実サイダーを傾けます。
「廃材の
「
「そうなのッキュか」
「あれはもう重いだけの鉄塊よ」
「知らなかったッキュ」
帽子曹長は両手で、超おいしい水ボトルをばくばくとしながら、ごくっと飲みます。
「ならパーツを盗むとかはどうッキュか?」
「整備員にはここぞとばかりに釘を刺しておいたわ」
褐色大尉は、最後まで謎の実サイダーを飲み切ります。
「ついでに、3日間だけ格納庫の警備シフトを増やしておいたわ」
「あまりにも念入りッキュね」
「それぐらいは必要よ」
帽子曹長は呆れた視線を向けます。
「────そんなに彼女が嫌いッキュか?」
「まさか彼女にとってもコレが最適よ、サニー」
褐色大尉が後ろ向きで投げた缶は、ゴミ箱にスコンっと入るのでした。
【映像復元終了】
◇◆◇
【前線基地/監視カメラ(格納庫) [現地時間10:00]】
カメラに映るは、ナット少女と、整備員のにいちゃんです。
超プラスチックの床の上に立ち、周りには様々な工具やスプレー缶が置かれています。
「ライライ、大丈夫かなー」
「心配か、ナットの嬢ちゃん」
「初めての基地仲間だからねー」
二人の前にあるのは、むき出しになった
「これ、直せないかなー」
「頑張っても1週間ってところだな」
「分解するのは直ぐだったのにー?」
整備員は帽子を深くかぶります。
「ナットの嬢ちゃん、
新型戦鋼は、精密な部品、制御プログラム、定期的な整備、が必須とされています。
その為、別名、現代技術の結晶ともよばれています。
「一度外にバラしたら、また調整のやり直し。それで何日泣くことになったか……」
「そーなのー? 昔のちっさい奴は自分でもいじれたけどー」
「それ何年前のヤツだ?」
「3年ぐらい前の奴かなー」
整備員は指を指します。
つられて振り向く、ナット少女。
「アイツを見てみろ」
「私の戦鋼だねー」
整備員が指さすは、ナット少女の戦鋼。
「装甲、関節、制御機、全てが小さくなって、全ての性能が向上した。
その結果、参考書一冊じゃ収まらないぐらいの知識が整備には要求される。
機械をいじりたいのに、何で量子について勉強してんのかってよくキレたもんだ」
「そ、そうなんだー」
「特に新型魔導エンジン、こいつが難敵だ」
「そんなに大変なのー」
「気分屋というか、きちんとおだてないと動力として働いてくれない」
整備員は、再びむき身になった
視線の先には、やけに大きな空洞。元々新型魔導エンジンが入っていた場所です。
「子供みたいだねー」
「子供をおだてる方がもっと楽なレベルだ」
「おかげで、どの基地整備班もエンジン予備が欲しくて嘆いているぜ」
「えぇ、それってエンジンとしてどうなのー」
「安心しな、ウチのエンジンはばっちりさ」
整備員はナット少女の肩を押すように叩きます。
「ほら、嬢ちゃんは自分の機体のチェックをしな」
「あいあいさー」
そんな声と共に、各々は自分の仕事に取り掛かるのでした。
【映像復元終了】
◇◆◇
【城壁基地/地下・廃棄場 [現地時間10:00]】
ポツンポツンと水滴が足れ、洞窟内に反響します。
そんな中、鉄塊にのって、唖然とするは、
廃棄場のゴミの中に放置された鉄塊────通称、戦鋼【PN-K2】
正面装甲はバールでこじ開け、内部を灯りで照らしたところです。
「まさか、
『ハリボテとは、正にこのことだな』
脳内の幻聴《ナビィ》も、これには頷くしかないようです。
通りで開閉ボタンを押しても、うんともすんとも言わない訳です。
「しかも内部は悲惨の一言ですね……」
『悲惨というか、半分自然だな』
座席はボロボロ、
更に、我がものだと主張する如く、ツタ生い茂ってました。
「真面目に動かすなら、新型を作った方が早そうですね」
『どうする、新型でも盗むか?』
「どうせ格納庫の警備が厳重になってますよ」
地下に来る途中で見ましたが、最初に見た時より警備が多くなっています。
あれ程厳重な状態で、戦鋼や部品を盗むことは不可能に近いでしょう。
『なら、諦めて昼寝でもするか?』
「いえ、寝るのは万策尽きてからです」
『折角のフカフカなベットがあるんだぞ』
「ツタよりも、自室のベットの方が寝やすいです」
幻聴に軽口を叩きながらも、ツタをもぎ取っていきます。
(一体どこから生えているのやら、どっかに水源や種の運び手がいるんですかね)
「とりあえず、直せる範囲で頑張りますか」
『だが頑張ると言っても部品はどうする?』
「────別に格納庫の部品じゃなくてもいいじゃないですか」
『なるほど、ポンコツ故の利点という事か』
旧型の戦鋼【SN-P1】は大層な部品で作られていません。
基本的に代用が利く部品で構成され、シンプルというか単純な設計をしています。
(まあ、そのせいで壊れやすいんですが)
関節に補強を入れないと、腕が落ちるとか日常沙汰でしたし。
「という訳で、基地の物資を片っ端から分解してパクります」
『つまり────研究所でやっていた事と変わらんな』
狙い目は、中型運送車や、土木用の機械とかですか。
あとは、会議室、指令室のPCも欲しいですね。
人が少ない区画から配線を引き抜くのもありかもしれません。
「ふふ、ナビィ、昔を思い出しませんか」
『ああ、迷子になって帰れなくなった話か』
「違いますっ。研究所での部品探しの話ですっ!!」
監視を搔い潜って車を分解したり、研究所の謎の装置を付けてみたり、です。
他にも、毎回ガムテープや雑な溶接で補強、修理していた気がします。
後は、他人の戦鋼の部品をパク......交換するのもよくやりましたね。
(今思えば、彼らには申し訳ないことをしました)
『だが、
「私にいい
『聞くだけならタダか』
簡単な話です────
「別に無ければ積まなければいいんですよ」
『冗談はいい加減にしろ』
いいえ、冗談ではありません。
エンジンは魔力発生装置で、演算回路は戦鋼に指令を送る機械だった気がします。
「
私はニヤリと笑いながら、幻聴に言います。
「────私がエンジンで、ナビィがコアです」
帰って来るのは、
「笑う必要ありますか」
『くくく、はっはは、ふあははっ、あまりにも、馬鹿らしくてな』
「なんですか、出来ないって言いたいんですか」
『まさか、
私は満足そうに頷きます。
「では
早速、少女は基地漁りを開始するのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。