紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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㉕ 少女と魚人と小さな戦場

【城壁基地/地下・廃棄場-隠し通路 [現地時刻7:40]】

 

雑音のように反響するは、4匹の魚人たちの会話。

 

「た、隊長、耳無しの獣人はどうしますワ」

 

一番若手の魚人は、陸にも関わらず、キレよく聞いてくる。

 

「まて、今調べるタ」

 

隊長と呼ばれた魚人は、耳無しの獣人(ナット少女)を観察する。

 

ひれに覆われた手をかざしてみるが、反応はない。

 

「毛の長さから見るに、魔力量はそこそこだなタ」

 

連れてきた、ベテラン2人は各々の反応をする。

 

「鱗がないとは……異形ですな、この顔はべ」

「頭についている金属は制御装置でしょうかベ?」

 

我々にも、槍状の魔法増幅装置があるが、その一種にも感じる。

 

頭部は魔力に関係する場所。おそらく魔法の制御に用いているのだろう。

 

「我々の武器みたいなものだ」

 

隊長は手に持っている、三又の槍を見せる。

 

おのおのも自分の手に持っている、槍をみる。

 

「増幅装置なら、奪っておいた方がいいでしょうかべ?」

「やめておけ。未知に近い、下手に触れないのが正解タ」

「一理ありますな、隊長べ」

 

若手の魚人は、奥を観察を終わり、戻ってくる。

 

「隊長ッ、奥に人影は見えませんワ」

「ご苦労タ」

 

頷くはベテランの2匹の魚人。

 

「新人なのに先陣をきるとは、見どころがある奴べ」

「アイツはいい兵士になるべ」

 

「────無駄な呼吸をするな。魔力を余分に消費するタ」

 

彼らのエラには、補助的な魔法の光り。

 

水中と同じように動けるようにする、魚人族伝統の魔法です。

 

(おさ)の命令とはいえ、完遂する必要はないタ」

「あくまで我々は本命ではないとワ」

 

「そこまでは言っていないタ」

「ですが、先の爆発。敵が我々に気づいた可能性がありますワ」

 

「ならばすでに我々は囲まれているハズタ」

 

隊長は冷静に言い切ります。

 

「現在、必要なのは、現状の把握」

 

そして奥の広場、廃棄場を見つめます。

 

「────そして開いた通路からの潜入タ」

 

姿勢を正す、ベテラン二匹と若手が一匹。

 

悪くないチームだが、隊長にとっては練度不足です。

 

 ◇◆◇

 

【城壁基地/地下・廃棄場 [現地時刻7:50]】

 

部下たちに。槍を構えさせながら進むが、敵影は見えない。

 

音は────補助魔法のせいで明瞭に聞こえない。

 

「こ、ここは何でしょうかワ」

「倉庫のようなものだろうタ」

 

隊長は、長の昔話を思い出す。

 

────地上には魔道具が集まった倉庫、いや、宝物庫があるのじゃ。我々には理解できないモノじゃが、だいたいは奇妙な形で、途轍もない効果を秘めておる。

 

「気を付けろ、ここは最重要場所かもしれんタ」 

「わ、罠があるってことですかワ」

 

見たところ奇妙な形の道具ばかり。

 

(やはり、魔道具の倉庫に違いない)

 

とすれば、先の耳無し獣人は倉庫番か何かか?

 

「た、隊長見てくださいワッ」

「なんだこれはタッ」

 

海の怪物(クラーゲン)の吸盤を模した杖。

 

一見、簡素に見えるが、杖の効力を最大限まで発揮させるための簡素さ。

 

ひとたび振るえば街などは、洪水に包まれ滅ぼせると言われる一品か。

 

「だが、何の力も感じないなタ」

「た、確かにワ」

 

「おそらく失敗作だ。だからこそ無造作に置いてあるのだタ」

「流石、隊長だワ」

 

隊長は、トイレ用のすっぽんを、ゆっくりと置く。

 

失敗作の魔導具とはいえ、なにが起こるかは分からないからだ。

 

「だが、迂闊な行動はよせと言ったはずだぞタ」

「す、すみませんワ」

 

全体的に緊張感が足らんな。

 

(これでは、不慮の事態に対応が出来ん)

 

少々雑だが、脅かして奴らの気を引き締めるとしよう。

 

「そこの土人形(ゴーレム)が動き出したらどうするタ」

 

「「「へっ!?」」」

 

皆の視線は、土人形(ゴーレム)に集まる。

 

継ぎ接ぎだらけの腕、ボロボロの体、丸い頭に付く、1つしかない瞳。

 

(おそらく放置されて、長い年月が経っているのだろうタ……)

 

土人形(ゴーレム)とはいえ、悲しさを感じさせてくれる。

 

「冗談だ。そう気を張り詰めるなタ」

「た、隊長ワ」

 

「本当に宝物庫を守る土人形(ゴーレム)なら、部屋に入った時点で起動しているタ」

「そ、そうですがべ」

「冗談というにも程度がありますよべ」

 

ふと、若手の行動が目に入る。

 

「ご、土人形(ゴーレム)ごときがビビらせやがってワ」

 

衝動的に土人形を殴りつけている、若手。

 

「おい、何をやっているタ」

「すみません。でもこんなのにビビ「◁ドォガンッ!!」────……」

 

洞窟に反響する衝撃音。

 

隊長がゆっくりと首を向けると、

 

そこには壁に打ち付けられ、潰れた若手の姿。

 

「た、隊長べッ」

「あの土人形(ゴーレム)動きますべッ」

 

「────うろたえるなァ、武器を構えろタッ!!」

 

急いで、槍を構える、部下達。

 

隊長も槍を握る手に力が入る。

 

(衝撃で魔法回路がかみ合った、にしては不自然な動きだ)

 

「いいか、土人形の攻撃は、所詮命令された行動にすぎんタ」

 

部下は拳の一撃で、吹き飛ばされていた。

 

魔法ではなく拳を振った時点で、土人形としてはかなり低レベルな物。

 

「陣形を組み、魔法で削れ、中級(チュウキュウ)-水魔法(ミズマホウ)

「「しょ、初級-水魔法(ミズマホウ)ッ」」

 

三人は互いにカバーできるような位置に動く。

 

魚人族の基本陣形。広い視野を持つ彼らだからできる陣形。

 

「拳を振らすな、物量で押せタ」

 

「「水魔法(ミズマホウ)水魔法(ミズマホウ)水魔法(ミズマホウ)!!」」

 

魔法によって生み出された、水弾が弾け、砂埃が舞う。

 

「隊長、やりましたか「ドゴンッ」────かっ」

 

砂埃を切り裂いて、飛び出た腕が、部下を砕く。

 

その土人形の腕には、魔法で傷ついた痕跡はない。

 

「馬鹿な、ただの土人形ではないのかタッ」

 

土人形────戦鋼のカメラは、左右に振った後、隊長を捉える。

 

 ◇◆◇

【城壁基地/地下・廃棄場 [現地時刻7:50]】

 

戦鋼内部。操縦席で玉のような汗を流すは、金髪少女(わたし)です。

 

「ま、魔力を流しながらの操縦は……疲れ、ます」

 

ハアハア。息は当然のようにあがってますし、下着はびっしょり濡れています。

 

『もう終わりか。魚共が』

 

脳内の幻聴(ナビィ)は日ごろの憂さ晴らしが出来たのか、絶好調です。

 

「魔法を食らっても、意外と死なない、ですね」

『当然だ。貴様の馬鹿みたいな魔力が使われているんだ』

 

「あの、それは、どういうことですか」

『あの程度の魔法。100回撃たれても傷つかんという事だ』

 

曰く、初級魔法の副産物として、戦鋼が硬くなっているという事。

 

ストレスが少なくなった、幻聴(ナビィ)の軽口は止まりません。

 

『しかし、拳が甘いな』

「前に殴れ、って言ったのナビィです、よね」

『だが、雑魚に当てろとは言ってない』

 

魚人に、雑魚も強敵も関係ないと思います。

 

見た感じ、服装が違うぐらいしか異なる点はありません。

 

「x、xSVXgdsfYッ」

「vCYxdOAeUe!!」

 

音とともに、画面を見れば、こちらに向かって叫んでいる魚人たち。

 

『おいおい、魚共が迫ってくるぞ』

「っ、分かってますよ」

 

頬に溜まった汗を服でぬぐい、操縦管を動かします。

 

脳内イメージとペダルを踏み、戦鋼はゆっくりと前に進みます。

 

『全く……魔法は効かんと、なぜ学習できん』

 

放たれる水弾は装甲には当たり、振動が伝わってきます。

 

「本当に大丈夫なんですよね」

『当然だ』

 

「信じますよ。その言葉」

『自分を信じろ。馬鹿者が』

 

ペダルを更に踏みこんで、前へ。

 

正面の画面に映るは、魚人の片割れ。

 

「FENzyUッ!!」

 

水弾が直撃し、噴煙が巻き起こり、視界は更に悪くなりますが、位置は────真横。

 

「FENzyU、FENzyU────」「────逃がしませんよっ!!」 

 

操縦管を大きく引き、戦鋼の腕を振り下ろします。

 

「FENzyUッ、FENzyUッ!!」

 

一瞬の拮抗。魚人は、振り下ろされる腕を、槍で耐えようとします。

 

「ですがっ、その程度の力でっ」

 

ぐしゃ。青い汁をまき散らしながら、戦鋼の腕は地面まで振り下ろされます。

 

『おい、馬鹿「へっ?」────「ズドオオン!!」』

 

戦鋼を揺らすほどの、衝撃。

 

操縦席(コクピット)は揺れ、思わず前に倒れこみます。

 

飛び込んでくるのは、脳内の幻聴からの叱責。

 

『魔石ごと潰す馬鹿がどこにいるッ』

「でも、ナビィ砕いてましたよねっ」

『あんなカス魔石は砕いても問題ないッ』

 

爆発で正面装甲は凹み、戦鋼の操縦席からでも、外の風景が見えます。

 

外の明るさに、一瞬、瞼を閉じてしまいます。

 

「日の光り、ですか……」

『気をつけろ。天井の一部が崩れかかっている』

 

「もしかして、次爆発したら不味いですか」

『もちろんだ。天井崩落からの生き埋めコースだ』

 

すでに痛い頭が、ズキッと更に痛くなります。

 

(つまり、力技で潰さずに、魚人を倒す必要があるということ)

 

「そんなの、どうすればいいんですか……」

 

『魔石を上手い事、抜き取れば問題ない』

「私に抜き取るとか、できると思いますか?」

 

そもそも魔石の位置が分かりませんし、戦鋼の太い手でそんな器用な事はできません。

 

『だが魔石は貴重でな。高く売れるぞ?』

「今、真面目な話をしているんですよ、ナビィ」

 

『魔石の位置は貴様と同じだ。頑張れ』

「いやできないって話をしましたよね、ナビィ」

 

接近する足音。

 

(いけませんね、前から目を離していました……)

 

画面に映る影。

 

戦鋼(せんこう)に近づくは、目を充血させた魚人。

 

「ETtTtxeqd、NGIxYッ!!」

 

『まさか、部下を討たれて弔い合戦か? 魚には過ぎた考えだな』

 

左腕の感覚が、一瞬ですが、無くなります。

 

『仕方ない、タイミングを合わせろ』

「どうする気ですか」

 

『────魔石ごと焼き斬る』

 

「急に無茶言ってくれますね」

『出来ないとは言わんだろ』

「もちろんですっ」

 

右手で操縦管を押し、脳で考えます。

 

(私と同じなら、魔石は、胸の左側にあるハズ……)

 

つまり、ピンポイントで左胸を貫けば、魔石を爆発させず済みます。

 

「次……爆発させたら、死ぬかもしれないんですよね」

『手を動かしていたら、死なないかもしれんぞ』

「わ、分かってますよっ」

 

魚人は、目前。

 

私の視線が注目するは、左胸。

 

距離が0になるタイミングは、一瞬。

 

「『そこおォォ(上級-火魔法)────』」

 

魚人の 胸に刺さる、赤い拳。

 

“赤”はジリジリと押し込むように、大きくなり、魚人の体を貫きます。

 

「────頼みますっ」

 

熱と光が三度放出されたのち、爆発することなく、魚人は生気を失うのでした。

 

「い、生きています、よね」

 

画面に映るは、崩れかけた天井と、融解した赤い石。

 

静まり返った洞窟内には、爪痕だけが残っていました。

 

────通信機が震えます。

 

[ラi、ライ、ちゃん、の為にも……]

 

聞こえるは、細い声。

 

雑音交じりの声ですが、確かに聞こえました。

 

「────ナットナットっ、そのまま動かないでくださいッ」

 

大声を出しながら、正面装甲を蹴飛ばして、操縦席から急いで飛び出します。

 

医療セットも持たず、ただひたすらに走る、金髪少女。

 

天井から差しこむ光は、そんな彼女を照らすのでした。




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