紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

27 / 107
㉗ 少女と仮想訓練と結果

【城壁基地・格納庫 [現地時間10:00]】

 

格納庫に集まるは、戦鋼乗り達。

 

今日も元気な、帽子(サニー)曹長。

仕事仕事がと暗くつぶやく、褐色(レイニー)大尉。

病み上がりなので静かな、ナット少女です。

 

「木色の戦鋼どうするんッキュッか」

 

大きな帽子を揺らしながら訪ねる、帽子曹長。

 

「ナットのがあるでしょ」

 

疲れたように呟くは、褐色大尉です。

 

「あれ一応は彼女専用機ッキュよ」

「背中がデカいだけでしょ」

「いや、それはないッキュ」

 

上官たちは、今日も愉快な議論をしています。

 

そんな様子を、傍目から思案するは、金髪少女(わたし)

 

(やはり、私に実戦を経験させたいのでしょうか?)

 

上官たちは、あーだこーだと、揉めてますからきっとそうなのでしょう。

 

ですが、彼女らは、私の致命的な問題をしりません。

 

「あのー、いいですか」

「何よ?」「何ッキュ?」

 

「────その新型、実は操縦できないです」

 

そうです。新型戦鋼の操縦出来ないんですよね。

 

(前に戦った時も、走る、突っ込む、以外の選択肢がなかったですし)

 

「き”い”ろ”────」

 

褐色大尉に頭を掴まれます。

 

「な”ぜ”それを早く言わない」

 

「ま、前が見えな、い」

 

ギリギリ。頭蓋骨からしてはいけない音が聞こえます。

 

「言うタイミングがなかったというか、言いそびれたというか」

「機種転換できてないぐらいは、怒”ら”な”い”わ”よ”」

 

「じゃあ、この、アイアンクローは」

「報告を怠った可愛い部下に対する、評”価”よ”」

 

「あんまり、で、す」

「う”る”さ”い”わ”ね」

 

(ああ、幻聴、時が見せます)

 

絶対みえちゃいけない、兄弟の達も……

 

「ちょっ、レイニー、レイニー、そこまでッキュ」

「何よッ、いま取り込み中よッ」

 

「いや、木色が泡を吹いてるッキュよ」

「へっ、この程度で────ちょっ、メディックッ」

 

数分後、駆け付けた医療班によって、気絶から目覚めることができた、金髪少女(わたし)でした。

 

◇◆◇

【城壁基地・格納庫 [現地時間10:30]】

 

「よし、私が悪かったわ」

「痛い────……」

 

私はジト目で、褐色大尉を見ます。

 

「なーに、その程度で痛がってるのよ。来なさい」

 

褐色大尉はそう言うと、どーなどーなと、私を引きづっていきます。

 

後に続くは、帽子曹長と、ナット少女。

 

(これが病人に対する扱いですか)

 

そんな事を思い、数分、格納庫の奥につきます。

 

「なんですか、この球体は」

 

奥にあったのは────高さ2mほどの銀色立体。

 

ドアが正面に付いており、中に入れる仕様です。

 

「これは仮想訓練室(シュミレータ―)ってものよ」

「な、なるほど」

 

(仮想訓練というぐらいですから、中に戦鋼用の操縦席(コクピット)でもあるんですかね)

 

早速、仮想訓練室に近づこうとすると────

 

「頑張れー」「頑張るッキュ」

 

「急にどうしたんですか、皆さん?」

 

何故か、ナット少女と、帽子曹長から声援が送られます。 

 

「ちなみに、ライライちゃんはコレ初ー?」

「そうなりますね」

 

「なら私たちは何も言わないッキュ」

「どういうことですか?」

 

二人の表情には、同情と悪意が見られます。

 

わたしの肩に手を置いた褐色大尉は、ニヤニヤ顔です。

 

「まっ、せいぜい頑張ることね」

「りょ、了解です」

 

気をとりなおして、ドアに手をかけると、妙な寒気。

 

(本能が拒絶している?)

 

研究所に仮想訓練室(シュミレータ―)なんてものは無かったので、記憶(キイロ)の方の問題でしょうか。

 

疑問に思いつつも、私はドアを開けるのでした。

 

◇◆◇

【城壁基地・格納庫/仮想訓練室前 [現地時間10:45]】

 

金髪少女が仮想訓練に入ってから、数分後。

 

褐色大尉(わたし)は笑みを浮かべます。

 

「あなたたちも使ってもいいのよ?」

 

少女二人────帽子曹長とナット少女に振り向くが、首をふるのみ。

 

「いやー、思い出しただけでも吐き気がー」

「嫌な思い出しかないッキュ」

 

少女たちの顔はどんどん青くなっていきます。

 

「私は練習の為によく利用するけど。そこそこ面倒な程度よ?」

 

褐色大尉は首を傾げて、二人を見ます。

 

「それはレイニーが変態だからッキュ」

「大尉はー、実力があるからそんなことが言えるんですよー」

 

「心外ね」

 

「そもそもコイツ揺れすぎッキュ」

「しかも操作性も最悪だし―」

 

「まあ昔の機械だから、それは仕方ないわ」

 

「瞬間5G越えの魔導具とか何を想定しているッキュか」

「オロロロ吐いた記憶しかないんですがー」

 

「新人の心を折るのによく使われるから、言いたいことはわかるわ」

 

難易度は【中級】で初心者に現実を見せる、なんて昔はよくやった手段ね。

 

新人の頃、知らずにクリアまで飯抜きにさせられたのは、いい思い出ね。

 

「酷い手段だッキュ」

「本当の用途は別にあるんだけどね」

 

「そうなのッキュか?」

「元は大戦期の疑似戦闘装置(トレーニングマシーン)だったかしら」

 

「なんでそんなものを改修して使ってるッキュか」

「お金がないのよ、お金が」

 

今回の難易度設定は【上級】

 

戦鋼に対するデバフ要素が酷くて、戦える難易度ではないハズ。

 

(それでも、操縦の勘を覚えるには十分)

 

死ぬほど死んで、早く現実で動かせるようになって頂戴。

 

褐色大尉は、早速アラートの聞こえる❘仮想訓練室《シミュレーション》を見つめ、微笑みます。

 

 ◇◆◇

【城壁基地・仮想訓練室(シミュレーション)/内部 [現地時刻12:00]】

 

ドンッ。華麗に台パンをするのは、金髪少女(わたし)です。

 

「ナビィ、もう一回台パンします」

『別に、宣言する必要はないと思うが』

 

ドドドンッ。腹が立つほど丈夫に作られた操縦席はビクともしません。

 

画面に現れるメッセージは────[殴っても、結果は変わりませんよ]。

 

「壊れるまで台パンしましょうか」

『性格変わってるぞ、おい』

 

「いっその事、戦鋼借りて潰しましょう」

『動かせないから、仮想訓練しているんだろ』

 

「この怒りがあれば、なんでもできる気がします」

『そんなに難しいか、このゲーム?』

 

幻聴の何気ない一言に、かなりキレそうになる私です。

 

幻聴(ナビィ)もやってみたら分かります」

 

呼吸を整え、冷静に何もわかってない幻聴に説明します。

 

「いいですか、このゲームには3つのクソ要素があります」

『お、おう』 

 

「1つ、操作性です」

 

周囲に配置された50以上のスイッチ。

フットペダルに至っては3つもあります。

 

(おかげで、起動するまでに20分もかかりました)

 

起動するまでに4つの手順を踏む必要があり、説明すらありません。

 

足元に手書きの説明書がなければ、即死でした。

 

「次に、戦鋼です」

 

操縦席(コクピット)は最新なのに、戦鋼の性能が終わってます。

戦鋼を動かす為の魔力タンクは、すぐに無くなりますし、

熱量とかいう謎の設定が、行動を阻害してきます。

 

(いや、操縦を理解していないと言えばそれまでなのですが)

 

せめて、魔力タンクの回復剤ぐらいは欲しいです。

 

「最後に、敵がクソすぎます」

 

まず、探知機(レーダー)に映らず、急に出てこないでください。

あと、攻撃方法────ゴブリンが、退きながら魔法を撃たないでください。

それをやっていいのは、ゲーム内の敵だけです。

 

「総合して、クソクソクソの三冠王です」

『外の空気を吸ってこないか』 

 

思い返せば、他にもありますね。

 

誤射しかしない味方。

謎の設定、敵の急所攻撃(クリティカル)

煽っているとしか思えない、画面のメッセージ。

 

(もはや、悪意のごった煮です)

 

考えれば考えるほど、自分の眉間に皺が寄っていくのがわかります。

 

『その~、昼だし食事に行くというのは、どうだ……』

「嫌ですっ!!」

 

私は操縦席で、ハッキリと叫びます。

 

「いいですかナビィ、それは甘えですっ」

『甘え、なのか?』

 

「いいですか、ゲーマーが負けたままで終われる訳ないじゃないですかっ!」

『いつからゲーマーになったんだ、お前』 

「もちろん生まれた時からですっ!!」

 

私は、上着を脱いで、気合を入れ直します。

 

「今日は、クリアするまでやりますよ、ナビィっ」

『勝手にしてくれ、全く……』

 

結局、夜になってもクリアできず、泣きながらナット少女に飯を作ってもらう、金髪少女でした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字報告があると作者が喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。