【城壁基地・格納庫 [現地時間10:00]】
格納庫に集まるは、戦鋼乗り達。
今日も元気な、
仕事仕事がと暗くつぶやく、
病み上がりなので静かな、ナット少女です。
「木色の戦鋼どうするんッキュッか」
大きな帽子を揺らしながら訪ねる、帽子曹長。
「ナットのがあるでしょ」
疲れたように呟くは、褐色大尉です。
「あれ一応は彼女専用機ッキュよ」
「背中がデカいだけでしょ」
「いや、それはないッキュ」
上官たちは、今日も愉快な議論をしています。
そんな様子を、傍目から思案するは、
(やはり、私に実戦を経験させたいのでしょうか?)
上官たちは、あーだこーだと、揉めてますからきっとそうなのでしょう。
ですが、彼女らは、私の致命的な問題をしりません。
「あのー、いいですか」
「何よ?」「何ッキュ?」
「────その新型、実は操縦できないです」
そうです。新型戦鋼の操縦出来ないんですよね。
(前に戦った時も、走る、突っ込む、以外の選択肢がなかったですし)
「き”い”ろ”────」
褐色大尉に頭を掴まれます。
「な”ぜ”それを早く言わない」
「ま、前が見えな、い」
ギリギリ。頭蓋骨からしてはいけない音が聞こえます。
「言うタイミングがなかったというか、言いそびれたというか」
「機種転換できてないぐらいは、怒”ら”な”い”わ”よ”」
「じゃあ、この、アイアンクローは」
「報告を怠った可愛い部下に対する、評”価”よ”」
「あんまり、で、す」
「う”る”さ”い”わ”ね」
(ああ、幻聴、時が見せます)
絶対みえちゃいけない、兄弟の達も……
「ちょっ、レイニー、レイニー、そこまでッキュ」
「何よッ、いま取り込み中よッ」
「いや、木色が泡を吹いてるッキュよ」
「へっ、この程度で────ちょっ、メディックッ」
数分後、駆け付けた医療班によって、気絶から目覚めることができた、
◇◆◇
【城壁基地・格納庫 [現地時間10:30]】
「よし、私が悪かったわ」
「痛い────……」
私はジト目で、褐色大尉を見ます。
「なーに、その程度で痛がってるのよ。来なさい」
褐色大尉はそう言うと、どーなどーなと、私を引きづっていきます。
後に続くは、帽子曹長と、ナット少女。
(これが病人に対する扱いですか)
そんな事を思い、数分、格納庫の奥につきます。
「なんですか、この球体は」
奥にあったのは────高さ2mほどの銀色立体。
ドアが正面に付いており、中に入れる仕様です。
「これは
「な、なるほど」
(仮想訓練というぐらいですから、中に戦鋼用の
早速、仮想訓練室に近づこうとすると────
「頑張れー」「頑張るッキュ」
「急にどうしたんですか、皆さん?」
何故か、ナット少女と、帽子曹長から声援が送られます。
「ちなみに、ライライちゃんはコレ初ー?」
「そうなりますね」
「なら私たちは何も言わないッキュ」
「どういうことですか?」
二人の表情には、同情と悪意が見られます。
わたしの肩に手を置いた褐色大尉は、ニヤニヤ顔です。
「まっ、せいぜい頑張ることね」
「りょ、了解です」
気をとりなおして、ドアに手をかけると、妙な寒気。
(本能が拒絶している?)
研究所に
疑問に思いつつも、私はドアを開けるのでした。
◇◆◇
【城壁基地・格納庫/仮想訓練室前 [現地時間10:45]】
金髪少女が仮想訓練に入ってから、数分後。
「あなたたちも使ってもいいのよ?」
少女二人────帽子曹長とナット少女に振り向くが、首をふるのみ。
「いやー、思い出しただけでも吐き気がー」
「嫌な思い出しかないッキュ」
少女たちの顔はどんどん青くなっていきます。
「私は練習の為によく利用するけど。そこそこ面倒な程度よ?」
褐色大尉は首を傾げて、二人を見ます。
「それはレイニーが変態だからッキュ」
「大尉はー、実力があるからそんなことが言えるんですよー」
「心外ね」
「そもそもコイツ揺れすぎッキュ」
「しかも操作性も最悪だし―」
「まあ昔の機械だから、それは仕方ないわ」
「瞬間5G越えの魔導具とか何を想定しているッキュか」
「オロロロ吐いた記憶しかないんですがー」
「新人の心を折るのによく使われるから、言いたいことはわかるわ」
難易度は【中級】で初心者に現実を見せる、なんて昔はよくやった手段ね。
新人の頃、知らずにクリアまで飯抜きにさせられたのは、いい思い出ね。
「酷い手段だッキュ」
「本当の用途は別にあるんだけどね」
「そうなのッキュか?」
「元は大戦期の
「なんでそんなものを改修して使ってるッキュか」
「お金がないのよ、お金が」
今回の難易度設定は【上級】
戦鋼に対するデバフ要素が酷くて、戦える難易度ではないハズ。
(それでも、操縦の勘を覚えるには十分)
死ぬほど死んで、早く現実で動かせるようになって頂戴。
褐色大尉は、早速アラートの聞こえる❘仮想訓練室《シミュレーション》を見つめ、微笑みます。
◇◆◇
【城壁基地・
ドンッ。華麗に台パンをするのは、
「ナビィ、もう一回台パンします」
『別に、宣言する必要はないと思うが』
ドドドンッ。腹が立つほど丈夫に作られた操縦席はビクともしません。
画面に現れるメッセージは────[殴っても、結果は変わりませんよ]。
「壊れるまで台パンしましょうか」
『性格変わってるぞ、おい』
「いっその事、戦鋼借りて潰しましょう」
『動かせないから、仮想訓練しているんだろ』
「この怒りがあれば、なんでもできる気がします」
『そんなに難しいか、このゲーム?』
幻聴の何気ない一言に、かなりキレそうになる私です。
「
呼吸を整え、冷静に何もわかってない幻聴に説明します。
「いいですか、このゲームには3つのクソ要素があります」
『お、おう』
「1つ、操作性です」
周囲に配置された50以上のスイッチ。
フットペダルに至っては3つもあります。
(おかげで、起動するまでに20分もかかりました)
起動するまでに4つの手順を踏む必要があり、説明すらありません。
足元に手書きの説明書がなければ、即死でした。
「次に、戦鋼です」
戦鋼を動かす為の魔力タンクは、すぐに無くなりますし、
熱量とかいう謎の設定が、行動を阻害してきます。
(いや、操縦を理解していないと言えばそれまでなのですが)
せめて、魔力タンクの回復剤ぐらいは欲しいです。
「最後に、敵がクソすぎます」
まず、
あと、攻撃方法────ゴブリンが、退きながら魔法を撃たないでください。
それをやっていいのは、ゲーム内の敵だけです。
「総合して、クソクソクソの三冠王です」
『外の空気を吸ってこないか』
思い返せば、他にもありますね。
誤射しかしない味方。
謎の設定、敵の
煽っているとしか思えない、画面のメッセージ。
(もはや、悪意のごった煮です)
考えれば考えるほど、自分の眉間に皺が寄っていくのがわかります。
『その~、昼だし食事に行くというのは、どうだ……』
「嫌ですっ!!」
私は操縦席で、ハッキリと叫びます。
「いいですかナビィ、それは甘えですっ」
『甘え、なのか?』
「いいですか、ゲーマーが負けたままで終われる訳ないじゃないですかっ!」
『いつからゲーマーになったんだ、お前』
「もちろん生まれた時からですっ!!」
私は、上着を脱いで、気合を入れ直します。
「今日は、クリアするまでやりますよ、ナビィっ」
『勝手にしてくれ、全く……』
結局、夜になってもクリアできず、泣きながらナット少女に飯を作ってもらう、金髪少女でした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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