紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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㉙ 少女とプラモと楽しさ

【城壁基地・隊員部屋 [現地時刻6:00]】

 

日も昇らぬ早朝、「パチッ、パチッ」という音が、止まります。

 

「ふふふ、ふふふふっ」

 

気色わるい笑い声を出して、手に持つニッパーを震わすは、金髪少女(わたし)

 

その笑みには確かな満足感がありました。

 

(この興奮を誰か、誰かに……)

 

「ナビィ、ナビィ、見てくださいっ」

『朝か? もう24時間寝させろ』

 

脳内の幻聴(ナビィ)は、まだ寝ぼけています。

 

「いつもなら、引き下がる私ですが────」

 

今日の私は止まれる気がしません。

 

(この、組んだプラモの素晴らしを語りつくす為にも……)

 

あきらかに深夜テンションですが、目に黒い隈をつくった私はそれすら気づくことができません。

 

「ナビィ、起きてくださいっ」

『なんだぁ、敵襲か?』

 

「いいえ、プラモに接着剤が要りません」

『はい?』

 

「この完璧な継ぎ目。凄くないですかっ」

『それは、凄い、のか?』

 

「────な、何を言っているんですかッ」

 

私は、昔は接着剤を使ったり、針金通さないと、まともに動かなかったことを力説します。

 

それが何も使わず、組み合わせるだけでプラモデルができる、それがどれだけ素晴らしいことか。

 

「ポリキャップ……恐ろしい発明です」

 

1mm程度の円状の部品。

 

最初は、床に落とし、探すのが面倒でキレていましたが。

 

取り付けてみると、部品としての存在する理由が分かりました。

 

(関節の保持性もさることながら、接続部の摩耗を防ぐとは)

 

ポリキャップを作った人間は、変態ですね。

 

今日は、腕を動かすだけで満足しそうです。

 

『本来の目的、忘れていないか?』

「ま、まさか、そんな訳ないですよ」

 

幻聴の何気ない一言に慌ててしまいますが、どんなときでも休憩は大事です。

 

そんなこんなで、朝食の時間に遅れそうになったのは、ご愛敬です。

 

 ◇◆◇

【城壁基地・隊員部屋 [現地時刻12:00]】

 

────月日は2日ほど進みます。

 

それはお昼時、丁度、隊員達の休憩時間です。

 

「というわけで、今日も練習を始めますか」

 

目の前には、ちょっとボロボロになった美少女プラモデル。

 

最初に比べて、色々な場所が欠けたり、汚れたりしていますが、少女は気にしていません。

 

『ほら、集中しろ』

「分かってますよっ」

 

お腹に力を入れて、右胸から、魔力を感じる私。

 

「いきます────初級(ショキュウ)-強化魔法(キョウカマホウ)

 

右腕から出るは、極彩色の輝き。

 

美少女プラモデルが薄い光を纏います。

 

『だいぶマシになったな』

「何度失敗したと思っているんですか」

 

『はじめは5分以上かかっていたのが、冗談の様だな』

「私だって成長しているんですっ」

 

『なら、私の補助はもう要らないか』

「えっ……まだ補助してたんですかっ」

 

少女は眼をぐるぐるさせます。

 

それはそうです。ようやく自分一人で発動出来るようになったと思ったら、実際は違うなんて言われたら、誰でも慌てます。

 

『────冗談だ』

 

「ビビらせないでくださいっ」

 

ふー、とため息をつきながら、私は美少女プラモと向き合います。

 

目指すは、強化魔法を上手く使う事。

 

その為には────

 

「まずは、腕を、ゆっくりと……」

 

ギシギシギシ。軋むような音を立てて、プラモデルの腕が────震えながら動きます。

 

「次は、纏う魔力を移動させて、腕をバンザイさせる」

 

魔力が腕から、肩に流れていき、プラモデルの腕もそれにそって上がります。

 

途中でビキっと嫌な音が聞こえますが、気にせずに進めます。

 

「そして、足をぴちっと揃えて……」

 

次は肩に溜まった魔力を、足先に流していき、足をぴちっと揃えて────

 

「か、完璧です」

『なんだこれは』

「凄そうなポーズです」

 

プラモデルは、グ〇コのポーズをしていました。

 

「まだまだです。今日の私はどこまでもいけるはずですっ」

 

次は────ガ〇ナ立ち

そして────ラス〇シューティング

敢えての────デスティニードローポーズ

 

『その辺でやめておけ』

「何を言っているのですか、楽しいのはこれからです」

 

正直、魔法の練習よりも、手を使わずプラモデルを動かす楽しさが、勝っています。

 

(これ、紐とかつければ、ラジコンみたいな感覚で操作できそうな……)

 

そんな事を思いながらも、少女は籠める魔力を増やしていきます。

 

「今度は、腕を下にして「バキッ」────へっ、破砕音?」

 

そこには、二つにわかれた腰と胴体。

 

美少女プラモは半分になって、床に転がるのでした。

 

「嘘、ですよね……」

『妥当だ。強化魔法は強度自体を上げるものではない』

 

私はがっくりと、腕を床に付けます。

 

「た、達観している場合ですか、ナビィっ」

『私に、どうしろというんだ……』

 

「私の努力の成果のプラモですよっ」

 

涙をこらえて、声をあげます。

 

「確かに魔法による訓練で無茶をさせ過ぎたと思いますっ」

 

自分はプラ板やパテでの修復なんかできないですし、関節を動かせば動かすほど摩耗していくのも知っていました。

 

「ですが、可動域が上がって、どんな動きもできて、あの頃夢見たポーズも取れて……」

 

昔と違って、足が前にしか曲がらなかったり、武器を持たすために磁石とか仕込まなくていいんですよっ。

 

「なにより────久しぶりに作ったプラモなんですよっ」

 

『あー、わかったわかった、魔法で何とかしてみるから、そう泣くな」

 

数時間後、そこには新品と同じように綺麗になった美少女プラモがあるのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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