【城壁基地・格納庫・仮想訓練室/内部 [現地時間23:00]】
仮想訓練室での挑戦は今日で7日目。
足元の電源スイッチを押すのも、見ずに押せるようになりました。
「さて続きをやりますか────」
[2面 ゴブリンの廃神社]
操縦管は強く握られ、天井のスイッチが言葉と共にカチカチと切り替わります。
「回避っ、死ね、回避っ、死ねぇっ、回避っ、消えろォっ!!」
道中に出現したゴブリンのガキ3体を瞬殺します。
彼らには殺意を越えてもはや、愛すら感じるレベルとなっています。
「さて、いよいよボス戦ですか……」
阿修羅ゴブリンは、攻撃密度こそ高いですが、攻撃するパターンは同一
6本の腕と、口からのビームを、戦鋼を滑り込ませることで躱します。
慣れた手つきで戦鋼を動かし、ボスの体を粉砕。
2面────クリア
[3面 ゴブゴブ洞窟]
薄暗い洞窟内。
無数に現れる、引き打ちゴブリンシャーマン&竹やりパイルゴブ蔵とかいうふざけた連中を倒して、奥にたどり着きます。
「ついに、出ましたね、マザーゴブリン……」
頭部が肥大化した、巨大ゴブリン。
ですが、コイツに注目していては、所見殺しされます。
(本当の敵は、背後より来る────)
「回避っ」
漆黒の影こと、ゴブリン忍者部隊の強襲をかわします。
「回避ッ、回避ッ、回避ッ────これでトドメです」
過酷な戦いの末、戦鋼の刃がマザーゴブリンに突き刺さります。
「ふっふふーん、どうですか、ナビィ」
『時間をかければ誰でも出来る』
脳内の
「もしかして悔しいとか」
『はっ? 冗談だろ。私なら2日でクリアと思っていたところだ』
「なら体を貸しましょうか?」
『悪いが、無駄な事はしない主義だ』
あーいえば、こーいう、幻聴《ナビィ》です。
「なら、私がクリアするところを目に焼き付けといてください」
『そうだな、期待して待っておこう』
3面────クリア
[4面 ゴブリンパニック!!]
「ぐぬぬぬぬ」
『さっきまでの威勢はどうした』
「敵が、敵が一生湧いてくる……」
そこは森林地帯のフィールド。
別にギミックがあるわけではないんですが、無限ともいえる数、ゴブリンが湧いてきます。
具体的にいうと、物量のせいで前に進めません。
「むしろ、進むどころか、下がっているような」
『まあ予想通りだな』
「これどうやってクリアするんですか……」
『貴様の捌く腕が未熟という事だ』
「腕の問題で何とかなりますか、コレ」
『現実では捌かれたぞ』
「急にリアルの話を持ちこまないでください」
4面────失敗
ふう、とため息をついた金髪少女は、操縦席に倒れ掛かります。
天井でチカチカ光るランプが、お星さまの様で綺麗です。
「こう、周囲一掃MAP兵器とか無いですかね」
『戦場でない物をねだると死ぬぞ』
「それは、その通りですね」
仮想訓練は、ゲーム風に作ってあっても、訓練の一環。
一戦一戦、戦場ならどうするか、を考えながら戦う必要があります。
「でも、いい加減ゴブリン以外と戦いたいんですけど」
『それには同感だ』
「やっぱり容量の都合とかなんでしょうか」
『史実通りに戦場を作りたくなかったんだろ』
「史実? どういうことですか」
『これは大戦の初期をなぞったようなゲームだ』
「いやいや、忍者とか出てきましたけど……」
『確か、東の忍者共が異世界人を襲撃したハズだぞ』
「えぇ、これ本当にあった事なんですか」
『まあ、私はそっち側については詳しく知らんが、な』
幻聴の解説に耳を傾けながらも、私は大きく深呼吸します。
(体の疲れも少し取れましたし、リトライしますか)
体を曲げて、リセットボタンに手を────
「────誰ですか?」
後ろに映る影は、小さな体格と大きな帽子。
どこかで見たことがある、帽子曹長の影ですね。
「サニーッキュ。もう深夜だっッキュよ」
「もう、そんな時間ですか」
意外と時間の経過には気づかないものです。
気分的には、先ほど昼飯を食べたと気分です。
(お腹は────あれ、なにか変な音がするような?)
仮想訓練の機械音というより、歌声のような……
「サニー曹長歌でも歌ってますか?」
「へっ? 私は歌は好きじゃないッキュけど」
「なら、操縦席の異音ですかね……」
確かにほぼ毎日使っていますし、どこか劣化していても不思議ではありません。
操縦席下に潜り込んで、耳を澄まして見ますが、今度は聞こえなくなりました。
「────にしても、面白い魔法使ってるッキュね」
帽子曹長の声が、操縦席の後ろからします。
仕方ないので、私は終了操作をしながら、答えます。
「強化魔法の事ですか?」
「そうッキュ」
「えっと、実は教えてもらいまして」
「へー、誰かから教えてもらったキュっか?」
ど、どう答えればいいのでしょう。
脳内の
(いい感じに誤魔化せますかね……)
「そうですね────脳内の先生に」
ひねり出した回答も、だいぶ怪しい気がします。
「いや、頭、大丈夫ッキュか」
帽子曹長からは、想定通りの発言を貰いました。
とりあえず、大丈夫です、と返しながら、終了操作を完了します。
(よし、周囲のランプは、消えていますね)
帽子曹長の方に向き直ると、何か慌てたようす。
「あっ────そういえば、レイニーが呼んでるッキュ」
「大尉がですか? 分かました」
褐色大尉の用……碌なイメージがありませんね。
単純に考えるなら仮想訓練の進捗とかですが、褐色大尉ならその上を行く可能性があります。
(たしかに、一週間もたってクリアできていないというのは怒られる可能性が……)
帽子曹長に軽く挨拶をし、足早に格納庫から去ります。
「レイニー大尉、怒ってますかね」
『またアームクローかもな』
「それだけは勘弁なんですが」
トラウマからか頭がずきずきと痛む、金髪少女でした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。