紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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㉜ 少女と大尉と訓練

【城壁基地・隊員作業部屋 [現地時刻 23:30]】

 

褐色大尉の部屋をノックするは、金髪少女(わたし)です。

 

いいわよー、という声が聞こえたので、ドアを開けて褐色大尉に挨拶をします。

 

「あら、丁度いいタイミングね、キイロ」

「遅くなってすみません、レイニー大尉」

 

整備員達の協力もあり、なんとか褐色大尉に居場所が分かりました。

 

教えてくれた整備員達には感謝ですね。 

 

「ちなみに要件はなんでしょうか?」

「呼び出したつもりはないんだけど……」

 

「あれ、でもサニー曹長に言われたんですが」

「あー、どうせいつものイタズラか何かよ」

 

「悪戯って、サニー曹長、そんな性格ですっけ?」

「彼女、初対面にはだいぶネコ被っているから」

 

褐色大尉曰く、よく隊員を騙して、影で笑っているとの事です。

 

そしてその一番の被害者は、自分(褐色大尉)だそうです。

 

「まあ、ついでに今の進歩を聞いておこうかしら?」

「……なるほど、コレが狙いだったわけですか」

 

「なに一人で納得しているのかしら?」

「いえ帽子曹長には嵌められたなぁ、と」

 

嘘をついても仕方ないので、正直に現状を話します。

 

「────実は、まだ4面で止まっていまして」

 

「────そうね、確かに1面がクリアできなくても」

 

褐色大尉は首を傾げます。

 

「うん、()()4()()?」

「はい、まだ4面です」

 

きっと、褐色大尉は未だにクリアしていないことを不満に思っているに違いありません。

 

ここは一手、やる気がある事を見せて、いい感じに終わらしましょう。

 

「正確には4面の雑魚的にやられていますが、後3日あれば確実にクリアしてみせます」

 

確実な情報と、具体的な日時────これで猶予は伸びるハズ。

 

(これで、どうだ……)

 

若干半目でアームクローを警戒していると、褐色大尉はぐるぐると頭で?を回していました。

 

「キイロ、貴方、訓練を初めて何日かしら」

「今日で一週間になります」

「そうよね、まだ一週間しかたっていないわよね……」

 

褐色大尉は何度もカレンダーを確認します。

 

勢いよく捲ったり、緩やかにまくったりしています。

 

「やっぱり、一週間しかたってないわね」

「まあ、そうですが」

 

褐色大尉はこちらを真剣に見ます。

 

「サニーとかに手を貸してもらったかしら?」

「どちらかというと整備員に手を貸してもらいました」

 

「なるほどね、仮想訓練室の設定をいじったのね」

「いえ弄ったのはプラモデルですね」

 

「プラモデル? プラモデルは仮想訓練に関係ないはずよ」

「いえ、プラモデルで遊んだから勝てました」

 

頭痛がするのか頭を抑える、褐色大尉。

 

呟きからは、プラモ、プラモでどうして出来るようになるのッ、というのも聞こえてきます。

 

「……あなた機種転換訓練をなんだと思っているのよ」

 

「機種転換訓練? どういうことですか?」

 

こてんと、首を傾げる私。

 

がしっと、やっぱり頭を掴まれます。

 

「ええいっ、この無駄ハイスペック訓練生がッ」

「ちょ、しまってます、頭しまってますっ」

 

「本来、機種転換は三か月以上かかる大仕事なのォッ」

「知らなかったというか、なんかできたというかっ」

 

「なんかできたでできれば、私も苦労しなかったわよッ」

 

苦悶数十秒、ようやくアームロックから解放されます。

 

「────というわけで、今日付けで仮想訓練は終了。明日からは警戒の任に付きなさい」

 

「いや、まだ仮想訓練をクリアしてないんですが」

「いい、あれは初心者にクリアできる仕様じゃないわ」

 

数秒の沈黙。

 

私はジト目で褐色大尉を見ます。

 

「なによ、なにか文句あるかしら」

「いっぱいあります」

 

ですが、という感じでいう言葉は一つ。

 

「────クリアできないと言われると腹が立つので、もう一度挑んできますっ」

 

「────駄目に決まってるでしょ」

 

褐色大尉にがっちりとホールドされる、私の肩。

 

「はなせ─、はなしてください―、私にはまだ見ぬクソ敵たちがっ」

「ウチに戦鋼乗りを遊ばしておく、余裕はないのよッ」

 

「いいじゃないですか、3ヶ月の期間があると聞きましたし」

「働かざる者ォ、食うべからず―よッ」

 

必死に抜け出そうとしますが、私の首が伸びそうになるだけで終わります。

 

ぜえはあ、ぜえはあ、とお互いに息を切らして、一呼吸。

 

(脳に血流が回ったおかげか、一つ疑問がありあます)

 

「レイニー大尉、一ついいでしょうか?」

「はあはあ......なにかしら」

 

現在、城壁基地に配備されている、戦鋼は3機。

 

つまることろ、私の戦鋼はありません。

 

「警備って、もしかして生身で行うんでしょうか」

「そうよ、生身でゴブリンやオークを倒してきなさい」

 

「それって大丈夫なんでしょうか?」

「全く駄目ね。軍の規定にも触れるし、100%死体袋行きね」

 

「えっと、つまり、私に死んでこいと」

「そうね、アナタはちょっと有能すぎるもの」

 

青い顔になっている私を、楽しそうに笑う褐色大尉。

 

「冗談よ────ちょっと予備格納庫行ってきなさい」

 

投げられたのは、ぬいぐるみが付いたキー。

 

「ちなみに様子を見たら、さっさと寝ることね」

 

そう言われて、追い出されるように扉から外に出されます。

 

褐色大尉も疲れた顔ですし、早めに退散する方がいいですね。

 

 

……その後、隊員作業部屋にて。

 

「しっかし、一週間かぁ」

 

────私、4面行くの2年以上かかったんだけどなぁ。

 

そんな褐色大尉の呟きが、金髪少女に届くことはありませんでした。

 

 ◇◆◇

【城塞基地・予備格納庫】

 

予備格納庫には、数人の作業員達がいました。

 

本来は物置小屋兼、部品の保管場所で、非常時に予備の格納庫として使える設計です。

 

「こっちには仮想訓練室はないぞ、嬢ちゃん」

「いえ、大尉に予備格納庫に行って来いと」

 

私の手に持った、ぬいぐるみの付きキーを見ると、整備員は納得してくれました。

 

「こっちに来てみろ」

 

案内されたのは、不透明ビニールがかけられた、塊。

 

隙間から見える装甲には、緑色の光沢。

 

(形状から座った戦鋼ですか?)

 

ですが、新型戦鋼と比べてちょっと大きいような?

 

「おーい、ビニールとっていいか?」

「上は大丈夫っす」

 

「下はどうなっている」

「まだ調整と塗装が終わってません」

「なるほどー、わかった」

 

そんな整備員同士の会話の後、上側だけ不透明ビニールが外されていきます。

 

固定の為のテープが外されていき、戦鋼の全貌が明らかになっていきます。

 

「んじゃぁ、見て驚くなよ」

 

バサッと捲られ、下から現れるは、慣れ親しんだ戦鋼。

 

「これは……」

 

そこに鎮座するは、戦鋼【PN-K2(ピーエヌ ケーツー)】。

 

丸みを帯びた形状。

黒緑に輝く各部装甲。

そして特徴的なカメラ。

 

(おまけに、私が書いた文字まで再現されています)

 

肩にはなぞるように、ペンキで【PN-K2】と書かれています。

 

「ですが、妙に細部が違いますね」

「ほほう、どんなところが違う」

 

「操縦席周りが、妙にガッシリしてる気が」

「ふっ、そこに気づくとはお目が高いぜ、嬢ちゃん」

 

整備員は、ニヤリと笑います。

 

「コイツは、化け物だぜ────」

 

開けられるはエンジン近くの装甲。

 

内部に見えるは、金属光沢が輝く、新型戦鋼のエンジン。

 

「馬鹿出力エンジンを、旧式フレームに積んでんだ、機体強度は限界も、限界」

「それって」

「ああ、少しでも操作を間違えば、おじゃんだ」

 

整備員は装甲を閉めます。

 

「他にも関節部、カメラ、全てを入れ替えておいた」

「それは、もう新造と変わらないのでは」

「はははっ、全くだ」

 

私は装甲を触ります。

 

装甲には傷一つなく、コーティングまでしてあります。

 

「てっきり廃棄されたと思ってました」

「本来は捨てる予定でここに置かれてたんだ、が────」

 

「コイツの稼働に納得出来ない隊員共が集まって、

 夜な夜なパーツを弄り回していたら、外殻が出来て、

 どうせなら新型エンジン載せるかってことで戦鋼が出来た」

 

「完全に整備員のおもちゃですね」

「悪いのは俺じゃない、悪乗りした大尉殿だ」

 

整備員はどうどうと言い切ります。

 

「えぇ、これレイニー大尉も関わっているんですか」

「ああ、ノリノリで初日から弄ってたぞ」

「どうりで最近眠そうだった様子で」

 

「まあ、傷つけるなとは言わんが、大事に使ってやってくれ」

 

そう言うと整備員は調整に戻っていきました。 

 

残された戦鋼【PN-K2】のモノアイに映る、自分は湾曲です。

 

「────これが私の戦鋼(せんこう)

 

漂ってくる匂いは、新品ながらも懐かしい感じがします。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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