【城壁基地・野外訓練場/記録カメラ [現地時刻13:30]】
銃弾によって半壊した操縦席。
[キイロォッ]
褐色大尉の叫び声がひびきます。
[ふう、ようやく心に隙が出来たッキュか]
[サニー、なにをっ[上級-操作魔法]────なによ、これ]
褐色大尉の戦鋼にあまい光がはしります。
そのシグナルは脳に届き、命令系統の書き換えを行います。
[この光……サニーィ、なんのつもりよ]
[えっ、いや、コレ上級魔法ッキュよ。ちょっ、レジストは違う……]
[それが、どうしたっていうのよぉ]
[本当に効いていないッキュ? あの連中、嘘教えたッキュか?]
[そこで待っていなさい、サニー]
褐色大尉の戦鋼が、帽子曹長の戦鋼に殴りかかろうとします。
[レ、レイニー、戦鋼から降りるッキュ]
[なっ、か、体が勝手に]
褐色大尉は自身の操縦席のハッチを開きます。
[ビビったキュ。 魔法効果が半分ってホント化け物ッキュ]
外には、銃を構えた帽子曹長。
表情はいつもとかわりません。
「さっさと基地の防衛装置に案内するッキュ」
「何のことかしら」
褐色大尉はとぼけます。
「内部で忌々しい声を鳴らしている魔導具のことッキュ」
「だから、知らないわよ」
大尉の額には汗がにじんでいます。
それは現在も操作魔法をレジストしている証拠。
「これだから……中途半端なのは困るっキュ」
「粗悪魔法を使ったそっちが悪いのよ」
帽子曹長は思案します。
「まあ効いてないワケではないッキュから、ゴリ押すッキュ」
仕方ないという表情で、質問攻めを始める帽子曹長。
ようは操作魔法で操作できるまで、命令をするということです。
「防衛装置の場所を教えるっキュ」
「知らないわ」
「防衛装置の場所を教えるっキュ」
「ぐぐ、だから知らないわ」
「防衛装置の場所を教えるっキュ」
「うぐっ、ワイン樽の裏よ────くっ」
「ふーん、そんなところに隠していッキュか」
2人の姿は監視カメラから消えます。
◇◆◇
【城壁基地・地下/食料庫 [現地時刻14:00]】
地上にいた基地隊員は皆、気絶か、泡を吹いており、助けを呼ぶどころではりませんでした。
「そろいも揃って、基地の人間が倒れているとは」
「軽い食中毒ッキュよ。これを飲み会に仕込むのは苦労したッキュ」
「そこまで鮮やかにされるとは、私も鈍ったものね」
「いや、今までに何回も仕掛けたっキュよ」
偶然、今回が大成功を収めただけ、という顔の帽子曹長。
「あら? そうかしら?」
「毎回、悪戯で済まされた私の気持ちも察してほしいっキュ」
「それは悪かったわね」
褐色大尉の足は、意志に反して止まりません。
口で悪態をつくのが限度。すでに自身の足は勝手に動いています。
「ここが目的のワイン樽ッキュか」
「そうじゃ、そうよ」
「サニー、目的はなに」
「装置の停止と基地の確保ッキュ」
褐色大尉の手は、隠しとびらを開ける作業をはじめます。
(私の手、出来るだけ作業をゆっくりしてくれないかしら……)
褐色大尉は、頬に含んでいた弾丸を、舌にのせます。
口に含まれているのは9mmの弾丸。
銃弾を歯でホールド、咥えたばこの様に。
(暗い地下、緩んだ警戒、体での死角────今ならいけるかしら?)
「仲間でしょ、どうしてそんなことを?」
「上の連中に、命令されたからッキュ」
褐色大尉は、扉の解除棒をおろすフリをして、弾を手に落とします。
(チャンスは一度切り。撃鉄は自分の指で)
「────ふり向き、撃つッ!!」
「────ちっ、妙な事をキュッ」
数秒差。わたしの右手が撃ち抜かれ、弾丸は外れます。
撃ちぬいたのは帽子曹長の頭上。
彼女の帽子がパサリと落ちます。
「……うそでしょ、その耳ッ」
暗闇にうつされるは、特徴的な頭部の耳。
地球人にはなく、まるで動物のような耳。
「まるで異世界人とそっくりッキュか」
「嘘よッ! あなたはッ、地球人のハズよ……」
「元々、そうだったが適切ッキュ」
「そんなわけッ、行動から反応まで全部サニーだったじゃないッ!!」
帽子曹長は悲しそうな目で、褐色大尉を見ます。
「────レイニー。もう元の彼女はもういないッキュ」
「何が、言いたいの」
「運悪くわたしと入れ替わっちゃたッキュから……」
「ふ、ふざけないでッ」
「ふざけてないッ、だから今こうなってるッキュッ」
帽子曹長から銃口が再び向けられます。
「だから、いい加減ッ! 現実を受け入れて案内を続けるッキュ……」
泣きそうな顔の帽子曹長。
何も言えなくなる褐色大尉。
気付けば扉の解除棒はおろされ、むこうに続く道が開かれます。
「やっぱりここは呪われてるッキュ」
去り際に、彼女は魔物の壁画を見つめます。
「────まったく、嫌な思い出ッキュ」
それはまるで同族を憎むように、自分を呪うようにです。
◇◆◇
【城壁基地・地下/隠し通路 [現地時刻14:20]】
大きな地下通路。
そこは地下にも関わらず、本命の基地以上に補強が入れられた通路です。
そんな中を歩く、褐色大尉、帽子曹長。
二人は口を動かしつつ、進みます。
「いつから入れ替わっていたの」
「一年前からッキュ」
「よくバレなかったわね」
「記憶はそのまま保持されるッキュから」
「……じゃあ、あんたは何者なのよ」
「サニーであり、居場所を追われたハーピィッキュ」
「ハーピィ……この城の元主かしら」
「その主の娘ッキュよ。無様に地下から川に逃げた」
帽子曹長は、嫌な思い出のように語ります。
「────魚人に拾われて、操作魔法の才があると知った時は、酷い皮肉を感じたッキュけどね」
「どうりでウチに魚人が攻めてくるわけね」
「アレを潰されたときは、台パンしそうだったッキュ」
「なら、ウチの戦鋼乗りも」
「あれは軽く操作魔法をかけただけッキュ」
「────まあ、どこぞやの訓練生みたいに、耐性がある奴もいたッキュけど」
そうして辿り着くは、大きな扉。
褐色大尉の体が勝手に扉を開けて、二人は大きな地下空間にでるのでした。
◇◆◇
【城壁基地・地下/隠し部屋・防衛装置区画 [現地時刻14:40]】
巨大な水槽、そして周囲には水晶玉が置かれた部屋。
水槽にはいくつものパイプが接続されており、その異様さが伺えます。
「やっぱり、わたしじゃ操作できないッキュか」
「なら私でもできないわ」
「冗談ッキュ。最高基地管理者はレイニーのはずッキュよ」
「なんの事かしら」
「本当の司令官はレイニーッキュよ」
「それ、他の人間に喋った事はないんだけど」
「悪いけど、部屋を盗聴させてもらったッキュ」
褐色大尉は諦めるような眼で、帽子曹長を見ます。
「これ、何か知っているのかしら」
「何って、防衛装置ッキュよね?」
「なら
「含みがありそうな発言ッキュね。話して貰えるッキュか?」
「残念。それ以上は魔法で言葉を封じられているわ」
「上級弾くとか、どんな封印魔法ッキュよ……」
まあ知ってても意味ない事だろう、という顔をする帽子曹長。
「まあ、さっさと防衛装置のロックを解除するッキュ」
「はぁ……嫌だと言っても、体が勝手に動くわね」
褐色大尉の手が、水晶玉の一部に触れます。
[承認確認 システムのロックを解除します]
「で、なにをさせるつもりよ」
「とりあえず装置の機能を止めるッキュ」
褐色大尉の手は勝手に動きます。
[※注 この操作は装置の主動作に影響します]
「続けるッキュ」
[機能停止 スリープモードに入ります]
静寂と共に、水晶玉の光は消え、空間は暗闇でみたされます。
「止まったわよ。で、破壊でもすればいいのかしら?」
「まさか、連中が欲しがってるのはコレ自体ッキュ」
「……まったく、どっから情報が漏れたものか」
任務は終わったという顔をする、帽子曹長。
そしてここからは私情と言わんばかりの発言をします。
「ところで────私の仲間にならないッキュか?」
「どういうことよ? なんで仲間にならないといけないのよ……」
「この装置を切った時点で、どのみち裏切者扱いッキュよ」
「なら、貴方を捕まえて、弁明でもするわ」
「魔法くらっているのに強情ッキュね」
「仲間というより、本部へのスパイが欲しいだけでしょ」
「そういう邪な気持ちじゃないッキュのに」
帽子曹長は思案します。
そして思いついたようにい提案をします。
「レイニーが仲間になるなら、基地の人間を助けてあげるッキュ」
「助けるって、アレ、ただの食中毒って貴方」
「それは我々にとってのッキュ」
「……まさか」
「砂利を1人1人殺すのって、結構手間ッキュよ」
褐色大尉の手がキリキリと鳴ります。
「レイニー、そんな顔しないで欲しいッキュ」
帽子曹長は何でもないように答えます。
「私は傷つけたいわけじゃないッキュ」
「ここまでしておいて、どの口がッ」
褐色大尉の頬に、帽子曹長が触れます。
「レイニーは、私にやさしいし、頑張り屋だし、ポンコツだけども────そんなレイニーが大好きッキュ」
まるで当然自分のものと言わんばかりの発言。
その思考は人間というより、魔物に近い思考です。
「だからこそ、私と一緒にいて欲しいッキュ」
「貴方、正気、かしら?」
「この気持ちに嘘はないッキュ」
「なおさら、たちが悪いわね」
一方的過ぎて受け取り切れないわね、という褐色大尉の顔。
(とはいっても、感情にそって断ったけど、現状は悪化する一途……)
ジリジリと追い詰められていっる、感覚を褐色大尉を襲います。
「なら、しかたないッキュね」
「それは、サニーが昔拾っていた」
帽子曹長は青い球体を取りだします。
まばゆい光に包まれたそれはまさしく
宝体を肌に触れるように、ゆっくりと近づけます。
「ちょッ、なにをするつもりッ」
「ちょっと素直になるだけッキュ」
褐色大尉の体は、未だに自由に動きません。
「まあ、レイニーでなくなるのはショックけどッキュ」
帽子曹長の目に迷いはない。
数センチ。宝球が、肌に────天井が盛大に爆発します。
「へっ?」「ッキュ⁉」
振り向くと、吹き付ける噴煙。
天井の割れ目から差し込むは、太陽の輝き。
噴煙が切り裂かれ、照らされるは────赤く燃える、戦鋼。
「────見つけたぞッ、鳥カスがッ!!」
空間内に響くは、聞きなれた金髪少女の声です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。