紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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㊴ 少女と幻聴と選択

【城壁基地・地下/隠し部屋・防衛装置区画 [現地時刻15:10]】

 

半壊したれ、操縦席には大きな穴。

 

落下の衝撃でイカレたのか、戦鋼はうんともすんとも動きません。

 

「相変わらず、ポンコツな魔道具だ」

 

正面装甲を蹴っ飛ばして、出てくるは金髪少女(ナビィ)

 

ボロボロの制服。髪の半分は血で、赤く染めていました。

 

「き、キイロ。なぜここにいるッキュッ!!」

「貴様を殺すのに理由がいるのか?」

 

こんこん、と一歩ずつ迫る金髪少女。

 

「れっ、レイニー、彼女を撃つッキュ」

「しまっ、避けなさいッ! キイロッ!!」

 

帽子曹長の命令により、褐色大尉が発射する弾丸は2発。

 

「避ける? 冗談は────」

 

的確に金髪少女の、額と、心臓を撃ち抜きます。

 

「ははは、ざまあないっキュね」

 

「────相変わらず的確な射撃だな」

 

撃たれたにも関わらず、倒れず。

 

頭部と心臓から血を流しつつも、喋り続ける金髪少女。

 

「ありえないッキュ、レイニーの射撃は確実にッキュ」

「ゆえに再生するのも慣れたモノだ」

 

軽く首をまわした金髪少女(ナビィ)から噴き出すは、極彩色の輝き。

 

額と、心臓からは、鮮やかな炎が広がり、傷を消していきます。

 

「ど、どういうレベルの回復魔法ッキュか……」

「なんの宴会芸の1つだ」

 

金髪少女(ナビィ)は見せつけるように手を広げ、手の中では炎がうねります。

 

「ちょっと、ちょ、冗談キツイッキュよ」

 

帽子曹長の体からは汗が滴り、地面に落ちた汗は蒸発します。

 

「笑えないのは私もだ────まさか、同じ種族を2度滅ぼす必要があるとは」

 

どうした笑えよ、とばかりの金髪少女の笑み。

 

「あー、あー、そういう事ッキュか。ようやく自分にイラつく理由が分かったッキュッ」

 

帽子曹長の脳裏に思い起こされるは────

 

数十年前、王国にあらわれて全てを焼き尽くしていった、冒険者。

 

その威圧的な眼。

 特徴的な火の魔法。

  見下すようなセリフ。

 

────忘れもしない。

 

「生きていたッキュがッ、赤色(せきしょく)ッ」

 

帽子曹長の銃口がむけられるは、金髪少女(ナビィ)

 

「懐かしい2つ名だ」

「そうか、なら、さっさと死「ボシュッ」────かッ⁉」

「おっと、変なことはするなよ」

 

帽子曹長の腕の先ごと消失します。

 

「正直、貴様が基地でなにをしようが知ったことではない、

 

 滅んだ種族がなにしようとも勝手だ、

 

 耳無しとつるもうが、人間ごっこしようがどうでもいい」

 

無くなった腕を抑えながら帽子曹長は、金髪少女を睨む。

 

 「クソ……じゃあなんでッキュ」

 「ウチの馬鹿を傷つけた、以上」

 

唖然とする帽子曹長。

 

なんだそんなことで、そんなことで死ぬのか、そんな顔です。

 

「無茶苦茶すぎるッキュ」

 

金髪少女の手は円を描きます。

 

「安心しろ、すぐに楽になる」

「私如きを殺すのに、魔法陣まで描くとか……はは、馬鹿すぎるッキュよ」

 

「また蘇られても面倒だからな」 

 

極彩色の魔法陣は、浸透するように炎を灯していきます。

 

最終的に赤色は、見えうだけで焼かれそうなほど真紅に。

 

魔法陣の効果で倍増どころではない、魔法が、帽子曹長の目前に顕現します。

 

「強化上級《キョウカジョウキュウ》-火魔法《ヒマホウ》、死ね『いや、ちょっ』────なんだ」

 

金髪少女の腕がぶれます。

 

火球は盛大に壁を抉り取り、外まで貫通。基地全体を大きく揺らします。

 

貫通箇所からは、太陽の日差しどころか、水の音さえも響いてきます。

 

「なんのつもりだ、馬鹿」

 

金髪少女は急に腕を組みます。

 

そして顔を百面相の様にコロコロ変えていきます。

 

「まさか殺すなとでも言うつもりか」

『──────』

 

「あー、まあそれは一理はあるな」

『──────!!』

 

「なあ、でも先っぽぐらい焼いとかないか」

『─────っ?』

 

「ちっ……興がさめたというやつか」

 

金髪少女の雰囲気がかわります。

 

具体的には、幻聴からわたしに変わった感じです。

 

「気絶している間に、どうしてこんなことに」

「キ、キイロ、わたしは……ッキュ」

 

膝を、腕を、体を震わす帽子曹長。

 

どうやら幻聴(ナビィ)は、彼女のトラウマなようです。

 

「別にあなたを殺す気はありませんよ」

「そ、そうッキュか、そうッキュか、

 

 やっぱりキイロは

 

 ────甘いッキュ」

 

ですが、目の殺意は消えていないようで。

 

帽子曹長は笑顔で笑いながら、命令します。

 

「レイニー、キイロを殺すッキュ」

「ちっ────あれ、体が自由に動く」

 

「魔法が……解けているッキュ?」 

「あまりにも陳腐な魔法だったのでな」

 

また、幻聴に体の操作権を奪われています。

 

「はは、これ、私の上級魔法ッキュよ……」

「次はもっといい魔法を習うんだな、ですか」

 

幻聴《ナビィ》が先程なにかしていると思えば。魔法を解除してたんですね。

 

だから無駄に煽って、時間を稼いでいたんですか。

 

「大人しく、諦めてくれませんか?」

「ここまでやってまだ降伏勧告とは、ああ分かったッキュ────よッ」

 

急に立ち上がり、走り出す帽子曹長。

 

向かう先は、幻聴がぶち抜いた穴。

 

(水の音……もしかして下は川ですかっ)

 

「まて、サニー」

「今回は、負けを認めるッキュよ」

 

私より一歩早く、穴の先にたどり着く、帽子曹長。

 

躊躇することなく、彼女はその先に飛び込みます。

 

「下は激流だぞッ」

「死にはしないッキュ」

 

たしかに激流に飛び込めば逃げれるかもしれません。

 

ですが、

 

「────逃がすとでも?」

「へっ?」

 

私も激流に飛び込みます。

 

「ナビィ────」『────はぁ……初級-火魔法』

 

火球にぶち当たる、帽子曹長。

 

「お前ら……正気ッキュか」

 

その威力はは帽子曹長を押しあげ、私は重力にそって下に引っ張られます。 

 

「レイニー大尉、あと任せまし、た」

「キイロォッ! 返事をしなさいッ!!」

 

そんな、褐色大尉の叫び声が聞こえます。

 

無茶をしすぎたのか、体は声すら出せませんでした。

 

(最後に敬礼はぐらいはした方が良かったですね)

 

────着水。

 

水を感じる。

 

口に、肺に、液体がそそがれ、

 

体が沈んでいく。

 

嗚呼、駄目だな、視界が──────……

 

◇◆◇

【異世界スーア/五大河川・短江 [現地時刻16:00]】

 

金髪少女は激流に流されます。

 

岩石によって体には切り傷。体温低下の為、顔も青いです。

 

『────まったく、他人を信じすぎだ、馬鹿』

 

ナビィは1か100しかできない、少女に頭を悩ませます。

 

『たった数週間で周囲に絆されて、戦士としての矜持はないのか、全く』

 

結果、体はボロボロ、

水はなんとか体から押しだしたが、

呼吸はギリギリ、おまけに岩肌での怪我。

 

『治すにしても、貴様の残存魔力はほぼ0なんだぞッ』

 

馬鹿からの回答はない。

 

分かっていたことだが、精神は眠り、肉体の回復に努めている。

 

(結局、一番絆されてたのは私ということか)

 

『クッソ気に喰わんが、事実か』

 

気持ちよく寝やがって。

後生のわかれかもしれんのだぞ。

起きた時に道に困っても知らないからな。

 

悪態ならいくらでも出てくる。

生活習慣から、戦闘行動まで思い返せば沢山だ。

 

だが────意外と嫌な気持ちがしないのが、一番の癪だ。

 

『ああ……使ってやるか、私の活動魔力を』

 

そう言いながら、すでにナビィの意識は失われています。

 

『次起きたら少しは強くなっとくんだな、馬鹿が』

 

ああ、最初は体を乗っ取るつもりだったのに、

 

どうしてこうなったんだが─────……

 

 ◇◆◇

【異世界スーア/五大河川・短江 [現地時刻6:30]】

 

少女は激流に流されます。

体は岩肌でボロボロ、出血も多々。

ですが顔には少しだけ赤みが戻っています。

 

「────おいッ、そこの、大丈夫かッ」

 

どこかで、そんな声が聞こえます。

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

これにて2章は完結です。

3章のプロットが出来るまで、休みますというのが作者の意志です。

誤字脱字報告があると作者が喜びます。
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