【???/水車小屋 [現地時間 朝]】
ぱち、ぱち、と木が弾ける音。
小刻みな音は、脳に一定の鼓動を刻み、わたしの目覚めをうながします。
「ここは、どこですか......?」
私はそう呟くのでした。
「古民家でしょうか」
目にはいるは、やかんと囲炉裏。
囲炉裏には魚が刺されており香ばしい匂いが鼻をつっつきます。
「目が覚めたか」
声は囲炉裏の奥から。
炎によって映し出されるのは、長耳のモヒカン。
「モヒカン?」
「モヒカだが」
モヒカと名乗った、長耳モヒカンなおじさんが、私を眺めていました。
「すみません、ちょっと情報を整理しますね」
モヒカンは何者なのか。
なぜ私はここにいるのか。
そもそもここはどこなのか。
情報を処理し、適切な回答を選ぶためにも────に相談を────
(アレ? なんだか考えるだけですごく頭が、痛い)
「すみません、もう少し寝ます」
モヒカさんから、心配の視線が飛んできますが、それすら気にせず布団にもぐります。
10分後、すっきりとした顔で少女は目覚めるのでした。
◇◆◇
【
「とりあえず食べるか?」
モヒカさんから差し出されるは、串に刺さった焼き魚。
かなりいい匂いと、香ばしそうな焼き加減ですが、それだけです。
(うまそ……いえいえ、彼が敵の場合も考えるべきですね)
落ち着いてください私。
行動をするときは、細心の注意を払って動くべきでしょう。
─────────
───────
─────
「うまい、うまいすぎますっ! これって!!」
「お、おう」
ちょっと引いているモヒカさん。
言い訳をするなら、腹の虫には勝てなかったというところです。
「焼き魚として完全に自然の味ですが、逆にそれがいいまであります」
「満足してくれたなら何よりだ」
ぶっきらぼうな表情で答えるモヒカさん。
どうやら彼は人と喋るのがあまり得意ではないようです。
「子供は結構喋るものなのだな」
「確かに……今まで喋るキャラじゃなかった気もします」
首を傾げるわたし。
なぜか、脳の一部が解放されたような、不思議な気分。
(ナビィ……一体私は誰のことを思い浮かべているのでしょうか?)
少なくとも女性の姿は思い出せないのですが。
「お前が不思議な小鬼だということは分かった」
「不思議な小鬼?」
「そうだ。エルフを見ても嫌悪せず、対等に接してくる」
「いえ、そこではなく、“小鬼”とは」
「額の角の事だ」
「頭のツノ?」
モヒカさんの言葉通りに、額に触ってみると、違和感が。
妙に出っ張った感触があります。
「自分のことも分かってないのか?」
「少なくとも川に落ちるまでは、なかったような気がしまして」
「破片が岩に食い込んだにしては、ガッシリとしておる」
「川を下ったら、化物になる逸話とかあったりしますか」
「いや、聞いたこともない」
モヒカンエルフこと、モヒカさんは心配そうに私を見ます。
「ちなみに、ここはどこですか?」
「ここは
「ということは外には街があったり」
「いや、ボロイ水車小屋がここに一軒あるだけだ」
横を見れば、窓の外が見えます。
そこには動いていない水車が。
耳には河のせせらぎ音も聞こえてきます。
「変わった人なんですね」
「ただただ、里を出ていったエルフだ。気を使わなくていい」
「里をですか?」
「深くは聞くな。いつも通りの兄弟喧嘩だ」
「あっはい」
それにしても、私は首を傾げます。
そんなわたしに、モヒカさんは疑問をもった様子。
「どうした、何か悩み事でもあるのか」
「いえ、今更なんですけど、モヒカさんってエルフなんですよね」
「そうだが。本で読んだモノと違ったか」
「えっと、エルフってみんなそんな髪型なんでしょうか……」
聞くのは野暮だとは分かっているんですが、どうしてもエルフにモヒカンは違う気がします。
折角の銀髪ですし、もっと長く、知的な感じでお願いしたかったです。
「……これは戒めの為だ」
「あっ、すみません余計なことを聞いてしまって」
「安心しろ。里の者は皆、髪を長くゆっている」
「あっ、一般的ではないんですね」
そんな発言に、ちょっと落ち込むモヒカさん。
流石にデリカシーに欠けた発言だった気もします。
「食ったら寝ておけ。拾ってからまだ3日とたっていない」
「お気持ちありがとうございます」
(もう3日も経っているのですか、基地の皆さんは……)
そう冷静になってみると、どっと疲れがやってきます。
わたしの体は本調子ではないみたいで、す────……
◇◆◇
【
「本当に寝ているな……」
そう呟くはモヒカンエルフ────モヒカさん。
囲炉裏のむこうでは、よだれをたらして眠る、金髪片角少女。
その姿には、警戒の“け”の字もない、安心しきった様子です。
「全く、エルフの箱入り娘のようだ」
モヒカの頭によぎるは、少女の反応。
普通、エルフと聞けば嫌悪するか、逃げるかの二択です。
それほどエルフという種族は、人の理を越えた生物となっています。
(エルフを知っているようではあった。だが知識自体がないのか……不可解な)
「森を戻してやらんといけんと言うのに、俺はなにをやっているのか」
モヒカはパチパチと燃える囲炉裏。
囲炉裏型の魔道具を見つめます。
「孤独には慣れていると思っていたが……」
囲炉裏に釣り下がる、やかんには、歪な姿がうつります。
それはかつて耳付き人と手を組んだ、兄の姿の様でした。
「森を殺しているのは、耳付き人だ。そんな奴をなぜ助けた」
やかんに映るエルフと、自問自答しますが、答えはすーすーと聞こえる寝息のみ。
金髪片角少女は、えへへと涎をたらしながら、寝ています。
「明日からは狩りの時間を増やす必要があるか」
モヒカは囲炉裏の傍で、弓の手入れを始めるのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。
プロットは捨ててきました。