紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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㊸ 少女とおつかいと乱入者

【異世界スーア・水車小屋 [現地時間 朝]】

 

山のふもとに流れるは、一本の小川。

 

ぐねぐねと曲がった先には、村の残骸が見られる場所が何か所も。

 

そんなとことに、ポツンと建つは、水車小屋。

 

昔に建造されたであろう水車にはコケが生え、壁には何回も修復された跡が目立ちます。

 

そんな水車小屋の中で────

 

金髪片角少女(わたし)は片づけをします。

 

魔法できれいになるとはいえ、食器の整理は手動。

 

よいしょよいしょと木彫りのお椀を棚に戻します。

 

「だいぶ慣れてきましたね」

 

今日でだいたい一週間。はじめはガタガタだった家での作業もこの通りです。

 

まだ、力加減をミスってお椀を割ることもありますが、次の日には新しいお椀が出来ています。

 

「今、すこしいいか?」

 

モヒカンエルフのモヒカさんから声をかけられます。

 

なんでしょうと、私は片づけの手を止め、話を聞きます。

 

「一角兎の角を村に持って行ってくれないか」

「それは、私が、ですか?」

 

自分で自分を指で差しながら、疑問を口にします。

 

「村の場所も分かりませんよ」

「簡易的だが地図はある」

 

モヒカさんは古びた紙を用意します。

 

棚の奥に放置された紙は、ホコリが多量にのっていますが、破れてはいません。

 

「結構おおざっぱですね」

「だいたいしか分からんからそこにある」

 

私はモヒカさんの手にある地図をのぞき込みます。

 

「この前の森がこれなので、だいたい反対側。川の上流でしょうか」

「それであっている」

 

昨日訪れた森につくまで1時間でしたから、反対側なら歩いて3時間、急いで2時間というところでしょう。

 

「ところで、モヒカさんはついてこないんですか?」

 

私の質問に、すこし真顔になるモヒカさん。

 

「エルフは人に好かれる生物ではない」

「つまり私一人でいってこいと」

「すまない。だが自然の滞留を認める訳にはいかなくてな」

 

モヒカさんの視線の奥には、沢山の一角兎の角。

 

「昨日こんなに取りましたっけ……」

「倉庫に積み重なっていた分だ」

 

「定期的に村で売ったりはしないんですか?」

「村には無関心を貫く、それ以上なんでもない」

 

言い訳をしまくるエルフを呆れた目で見ます。

 

(おとなしく、邪魔な一角兎の角を村で売ってきてくれと言えないんでしょうか)

 

「道に沿っていれば、盗賊などはでない平和な森だ」

「別に盗賊がいないわけではないんですね」

 

「臆病な奴らだ。どうせ岩穴からは出てこん」

「そこまで知っているなら対処してくださいっ」

 

この妙な信頼はなんなのでしょうか。

 

対面にいるのは一週間ぐらいしか知らない少女と言うことを忘れないでほしいです。

 

という気持ちを込めて、私はジト目をします。

 

「毎日、無防備に寝ている奴の何を疑えと言う」

「あっはい」

 

そういうと、モヒカさんは、一枚のメモ用紙を渡します。

 

「ええっと────酒、食器、果物ですか」

 

達筆な字で書かれたメモは、読むのにも一苦労しそうなメモです。

 

「買い物用だ」

「私、お金とか持っていませんよ」

「一角兎の角を売って、買える分だけで問題ない」

 

「やっぱり、モヒカさんが行きませんか」

「村には無関心を貫くと言ったハズだが」

「なら私に村で売買をさせないでくださいっ」

 

ぷんすかと怒りながらも、準備をする私。

 

(大方、私が来たせいで食事に困っているというところでしょうし)

 

素直に食材を村で買ってきてくれといえば、私も気兼ねなくいくことができるんですが。

 

エルフと言うのは、どうしてこう、回りくどい生物なんだと思う、金髪片角少女(わたし)でした。

 

◇◆◇

【異世界スーア・山/麓 [現地時間 朝]】

 

森林地帯。

 

広がるは昨日と変わらない道。

 

木々が寄り添ってできた森林の群れ。断崖や、廃墟の残骸も見られる山の側面。人工的な整備された道があり、路面には車輪が通った後も見られる。

 

「────という訳で来たのは良いですが」

 

「なんだ、辞世ノ句か?」

「いえ、朝の回想です」

 

そう呟く金髪片角少女(わたし)は現在進行形で地面に組み伏せられています。

 

正確には、

 

呑気に歩いていたら、木の隙間から影が飛び出てきて、一瞬で体を抑えられたといった感じです。

 

(魔力感知にも引っ掛かりませんでしたし、反射神経でも上をいかれましたし)

 

現状、首を抑えられて力が上手く入りませんし、死のカウントダウン待ちとなっています。

 

「しっかし、オメー変な匂いがするな」

 

くんかくんかと嗅がれる私の頭。

 

顔は見ていませんので、頭を嗅いでいるのが、人間か、サルか、ゴリラなのか私にはわかりません。

 

(個人的には、すばやいゴリラあたりを押しておきますか)

 

「どーして、見知らぬ奴から同族ノ匂いがするんだか」

 

同族? ということは私と同じ人間ということでしょうか。

 

やはりモヒカさんが言っていた盗賊という線があっていそうです。

 

「よっこいしょ」

 

首を掴まれたまま、私の体が持ちあげられます。

 

ようやく土の匂いから解放された私の眼には────

 

「うーむ、やっぱり見たことがない」

 

「着物……?」

 

青い着物を纏い、着物より蒼い髪をもった、人間にしては変な女性です。

 

どこら辺が変化と言えば────頭に角が生えているところでしょうか。

 

(トナカイにしては小柄な、年季を感じる角……)

 

私の意図など知らず、女性は話続けます。

 

「まぁ、同族を食うというのも心がひけるってな」

「わたし、食べられる予定だったんですね」

「勿論、だ~が懐カしい匂いなんだよな」

 

蒼着物の角付き女性は、首をひねりながら私を見ます。

 

「オメー名前は?」

木色(きいろ) 来来(らいらい)ですが」

「やっぱリ、聞いたことはねーな」

 

蒼着物女性はうーんと考えた後、私のジロジロと見ます。

 

「と、すればアホがやらかして転生したか」

 

耳、目、額の順に彼女は私をじっくりと眺めます。

 

「キイロ、オメーは龍について知っているか?」

「想像上の生き物とだけなら知っていますが」

「こりゃあ想像以上に駄目だな」

 

片手だけでやれやれと表現する彼女。

 

「キイロ、生まれはどこだ?」

「研究所ですかね」

「ケンキュウジョ?」

 

「では、人間の里です」

「あーつまり耳無し共の居場所か」

 

よく見れば蒼着物女性の瞳孔は、縦長。それは獣というより古典的な生物のモノ。

 

(……見つめるだけで体の奥底が震えていますね)

 

「あ~あ、なるほどな。だいたい合点がいった」

 

納得のいく考えが出来たとばかりに、蒼着物女性は腕の力を弱めます。

 

どすん。尻もちをつきながら私は地面に落とされます。

 

「キイロ、好きなもんはなんだ」

「好きなモノ? 食事と友人と酒ですが」

 

「なら友人ガ酒を奪ったらどうする?」

「えっと、殺してでも奪い取る……あれ?」

 

「では友人が酒を持っていなければ」

「仕方ないとばかりに酒を諦める……うん?」

 

「────すみません、この質問過去にもした事ありましたっけ?」

 

そう思うほど、口からすらすらと出てくる解答です。

 

まるで私ではない誰かがしゃべったような気持でした。

 

「こりゃあ、転生というより、混ざっているパターンだな」 

 

はぁと呆れる、角付き蒼着物の女性。

 

「キイロ、オメーは何故、一角兎の角なんて運んでやがる」

「えっと、モヒカさんというエルフに頼まれまして」

 

「頼まれたァ? それだけで運んでんのか?」

「えっと、そうですね」

 

なんともないような顔でいう私。

 

「全く、オメーぇ────」

 

ガシっ。掴まれるは頭。

 

「へっ」

 

なでなで

 

「えっと、あのー」

 

なでなでなで。

 

「ちょ、ちょっと聞いてますかっ」

 

なでなでなでなでなで。

 

「いい子に育ちやがって......馬鹿ノ娘だとは.....思えねぇ」

 

そこにはポロポロと涙を流しながら、私をなで続ける着物の女性。

 

「切れたジャックナイフみたいな馬鹿から、こんないい子をが産まれるとは」

「いや、どういうことですか?」

「世界もまだ捨てたようなモンじゃないって事だな」

 

圧倒的に困惑している、わたし。

 

「しっかし、あの馬鹿、どうセ飽きて放棄したのが目に見える」

「?」

 

「安心しな、ここであったのは何かの縁ダ。責任をもって育ててやる」

「??」

 

「もちろん、呼び方ハ【お姉ちゃん】一択だ」

「???」

 

今の私はどんな顔をしているのでしょうか。

 

むしろどんな顔をすればいいのでしょうか。

 

「なんダ、不満か?」

「いえ不満と言うより、早急な説明をお願いします」

 

「お姉ちゃん、呼びハ?」

「いや見知らずの人間を呼ぶのはちょっと」

 

「なラ駄目だ」

「えぇ……」

 

このあと、きちんと、お姉ちゃんと呼ぶまで会話をさえしてくれませんでした。

 

この頭が痛い感じ、前にも経験したことがあるのですが、何故か思い出せません。

 

「一体、私は何を忘れているのでしょうか」

 

謎は深まるばかりです。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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