紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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㊺ 少女と集会所と買取

【異世界スーア・猫族村/入口 [現地時刻 昼頃]】

 

天気は晴天、真夏前にも関わらず大きな入道雲。

 

日差しはじりじりと肌を焼きますが、気温自体はそれほどでもなく。

 

体感23度ぐらいの温度の中、動きやすい程度の風を感じて、金髪片角少女(わたし)はがっかりします。

 

「どうした妹よ、びみょーな顔をして」

 

そんな疑問を口にするは、着ている青着物より蒼い髪をもった、龍ねえ。

 

「いやー、その」

 

実は異世界の初めての村ということで、ワクワクしていた節がありました。

 

ですが、門をくぐって出迎えた風景は見知ったモノ。

 

木造の建造物、舗装されてない道路、向こうに見える農地。

 

「意外と田舎ですね」

「辛口だな妹よ」

 

個人的にはもっとファンタジー味がある町並みを要求したいところです。

 

「こう、道端に世界樹の木とか生えてませんか」

「あー、樹齢が1万年を超える木とかなら、別の国にあるぞ」

 

「えっ、ほんとですかっ」

「まあ、邪魔だから切られてたけどな」

 

「ええ」

 

そんな会話をしつつ進む、二人。

 

周囲の建物は、木造というか、ほったて小屋のような建築です。

 

災害が起きたら壊れそうな、そんな軽い作りをしていました。

 

「地震とか起きたらどうするんでしょうか」

「地震? なんダそりゃ」

 

「えっと災害の一種です」

「まあ、災害ナ連中がごまんといる世界だからな」

 

「ほらついたぞ」

 

龍ねえの足が止まるは、町の中で最も大きい建物。

 

木造2階建て。風貌は昔の学校。中からは活気があふれる声が聞こえます。

 

「ここがこの村の集会所だ」

「集会所ですか?」

 

「そーだぞ、ここしか無くて不便とも言うがな」

「なるほど。ですが、すこし物騒な場所ですね」

 

壁周りには植えられた花が目立つ一方で、なぜか一部の木壁は修復跡が目立ちます。

 

「えっと、それはタダの事故だから気にすんな」

「えっ、そうなんですか?」

「そうダそうだ」

 

まるで長居されると困るかの様に、ずかずかと中に進んでいく、龍ねえ。

 

私も慌てて背中を追いかかます。

 

ちょっと頭を打ちそうなな扉をくぐると、中には二足歩行の猫が沢山いるのでした。

 

◇◆◇

【異世界スーア・猫族村/集会所 [現地時刻 昼頃]】

 

内部は受付がいくつもあり、そこには猫がたくさん並んでいました。

 

いたるるところからニャ―ニャ―と聞こえてきて、木の床には毛が大量に落ちていました。

 

「凄い、猫の量ですね」

「まあ、奴らノ村だしな」

 

「でも凄いですね。外の建物よりも猫が多そうです」

「ああ、奴らはここに住んでるんだったけな」

 

うろ覚えな説明をしてくれる、龍ねえ。

 

どうやら猫たちは村を転々と移動させているらしく、建物は基本的に必要な分しか建てないそうです。

 

「へー、だから色々な施設が入っているんですね」

 

食堂と書かれた場所では、猫たちが楽しそうに料理をつくっています。

 

販売や買取と書かれたカウンターの前には列ができ、色々な素材や道具がカウンターに置かれています。

 

そんな中、龍ねえは買取のカウンターへと向かいます。

 

(列、すっ飛ばしてますけど良いのでしょうか?)

 

「お龍さんは、また昼からお酒かニャ?」

「ばーか、ちげェよ」

 

龍ねえは顎で私を差します。

 

「今回は妹ノ案内だ」

「あら可愛い娘だニャ」

「ダろ」

 

おばちゃん猫もわたしを見ます。

 

猫毛がとびでているエプロン。名札には集会所職員の文字。

 

「でも、この子が大きくなったらお龍さんみたいになるのは嫌だニャァ」

「あァ、私みたいな美人になるなら大歓迎だろ」

 

「美人は自分では言わないものニャ」

「こまけーことハいいんだよ」

 

そんな、おばちゃんのような会話を始める二人。

 

波長が合ったように話す二人ですが、後ろには長蛇の列。

 

(これ、絶対長くなる奴ですよね……)

 

完全に列の割り込みになってますし、後ろも混んでますので強引に話を切り混みます。

 

「あのっ、すみません、査定ってお願いできますか」

「あッ、ごめんなさいニャ」

 

「今ちょっと混んでるから、先にあずかっといてもいいかしニャ」

「それで大丈夫です」

 

私は籠の荷物を、おばちゃんの目の前に置いていきます。

 

どんどん。積み重なるように置かれる一角兎の角。

 

(あれ、思ったより入っていますね……)

 

私が持てるぐらいの籠には、大量の一角兎の角。

 

最終的に受付のテーブルが埋まるほどの量になりました。

 

「え、えっと、以上です」

「なんか100本以上あるのだニャ……」

「すみません、私もこんなにあるとは思わなくて」

「今度から定期的に持ってきて頂戴ニャ」

 

ゲッソリしているおばちゃん猫から、9と書かれた番号札を渡されます。

 

「これは?」

「ちょっと時間がかかるから、待っててほしいニャ」

 

そう言って裏に一角兎の角を運んでいく、おばちゃん猫。

 

「なら、昼飯デも食っていくか」

 

そんな提案をする、龍ねえ、

 

「えっと、龍ねえだけでお願いします」

「どうした? 嫌いなモンでもあるのか」

「いや、そうではないんですが────お金が無くてですね」

 

当然ですが、辺境の水車小屋に住む、モヒカンエルフのモヒカさんがお金を持っている訳もなく。

 

私には申し訳程度の干し肉が昼ご飯として、持たされています。

 

「問題ナい、奢るからな」

「流石にそれはちょっと悪いかと思いまして」

 

「心配するな、どうせツケで食べる」

「それはもっと悪いと思います……」

 

呆れた視線を向ける私。口笛をふく龍ねえ。

 

結局、昼ご飯は買取の代金から差し引いてもらう事になりました。

 

ちなみに対面に座る龍ねえは、ツケで肉と酒を頼んで、とても楽しそうに食べていました。

 

 ◇◆◇

【異世界スーア・猫族村/集会所 [現地時刻 昼頃]】

 

テーブルの上に置かれたお皿が空になったころ、番号が呼ばれ、私は買取カウンターにむかいます。

 

受付にいたのは、疲れ果てたおばちゃん猫でした。

 

「早かったニャ」

「呼ばれたのですぐに来ました」

「まったく、他の奴に聞かせてやりたいニャ」

 

ふさふさした手元から、一枚の紙が受付に置かれます。

 

 ───────────

 買取[担当 三毛猫]

 一角兎の角×90 (銀貨30枚)

 一角兎の角×33 (銅貨5枚)

 [罅割れのため]

 

 食事代 銅貨5枚

 

 合計 銀貨30

 ───────────     

      サイン____

 

「その銀貨30って多いんでしょうか」

「だいたい一日に使う飯代で銀貨1枚だニャ」

 

「なら結構少ないんですね」

「昔はもっと高かったんだけどニャ」

 

おばちゃん猫は一角兎の角の懐かしむように撫でます。

 

「工芸品や、肉を食べるためとかいって村で一角兎を飼育し始めてから、もう値段が付かなくなったのニャ」

 

そう言えば、村の周囲にあった小屋から、兎の鳴き声が聞こえた気もします。

 

あれって、一角兎を飼っていたんですね。

 

「あれ? じゃあ今回の買取は……」

「折角、旅人さんが持ってきてくれたんだしニャ」

 

片目でウインクするおばちゃん猫。

 

(コレは。完全に温情の金額ということですね……)

 

そんな温情に感謝しつつ、サインを書いていきます。

 

紙を受け取ったおばちゃん猫は、慣れた手つきで紙に判を押し、袋から数枚の硬貨を取り出します。

 

「狩った奴に言っとくニャ。中々にいい腕をしているニャっと」

「りょ、了解です」

 

渡されたのは銀貨29、銅貨10枚。

 

本来、銅貨が10枚で銀貨1枚なので、おつりを出しやすくするために貨幣の交換をしてもらいました。 

 

(いやホント、何から何まですみません)

 

そんな感謝を向けていると、後ろから龍ねえの声。

 

「おー、買取終わったカ妹よ」

 

私でも分かる酒臭さ。ツーンとした匂いが鼻を通り抜けていきます。

 

「また昼からお酒飲んでニャ」

 

龍ねえにどっかに行けと合図を送るは、鼻を抑えている、おばちゃん猫。

 

「何を飲もうト勝手だろ」

「アンタ、またお金無くなるわよニャ」

「金が無くなったら、また武器ヲ作って売るさ」

 

龍ねえはなんて事のないように、取り出したとっくりを傾けています。

 

「うん────武器を売る?」

 

「ふっふふーん、実はこう見えテ鍛冶師でな」

 

胸を張って威張る龍ねえ。 

 

「ゴミ作り職人の間違いだニャ」

 

おばちゃん猫からの反応は冷たいです。

 

「いいか、私の作る武器はなァ」

「万物を守り抜く武器かニャ」

 

「なーんだ、よク知ってるな」

「酔ったアンタの口から腐るほど聞いたニャ」

 

やっぱりおばちゃん猫の反応は冷たいです。

 

「意外と崇高な考えだと思いますけど」

「それで出来たのが素材ゴミだから手に負えないニャ」

 

そう言ったおばちゃんの視線の先には、隅に立てかけられた剣。

 

無骨ながらも、鈍くかがやく剣。

 

武器に疎い私でも“いいモノ”と感じる作品です。

 

ですが────

 

「なんていうか、デカいですね」

 

剣の全長は5m超。

 

横幅、厚みも相応にあります。私が握ったら潰れる自信もあります。

 

「デカすぎなのニャ。巨人族の冒険者はウチには居ないのニャ」

「結構な力作なんだけどなー」

 

「それよりも、大剣のせいで破損した壁の代金を払ってもらうニャ」

「いや、それハ関係ないだろ」

 

「集会所のおいても、毎回壁や床をぶち抜くせいで、修理費がかさんでいるニャ」

「んなこと言ワれてもよ」

 

確かに、よく見れば立てかけている壁には、何重もの直した跡があります。

 

表側から見えていた修復跡は、この大剣のせいだったんですね。

 

「全く、その大剣を大事ニ扱ってろよ。無くしたら痛い目にあうぞー」

 

そんな不機嫌な龍ねえを引きずって、私は次の買い物に移動するのでした。




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