紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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52 少女とエルフと戦闘開始

【異世界スーア/水車小屋 [現地時刻 夕方]】

 

水車小屋の外にでる、二人。

 

ギャオオオオオオ。叫びは山の向こうから。ですが金髪片角少女が立っている地面までがゆれます。

 

バランスを崩し、鼻につくは痛みと土の匂い。

 

手を差し出すにはモヒカさん。

 

「悪いが呑気に山を超えている暇はなさそうだ」

「ですが、徒歩以外の移動手段はなくないですか」

 

よいしょよいしょと泥を落として、立ち上がる私。

 

「いや、非常時の手段がある」

 

モヒカさんはおもむろに指をくわえ、音を鳴らすと、どこからともなく白い馬がやってきます。

 

「いくぞ。背中にのれ」

「えっ、ええ 」

 

「安心しろ。悪鬼の類ではない」

「えっ、いやそういう事ではないのですが」

 

私が気になっているのは、無から馬が現れた方です。

 

「なら、いくぞ」

 

強引に馬の背に乗せられ、白馬はパカラパカラと急加速。

 

風の様に早く、跳ねるように森に入っていきます。

 

(速い……)

 

吹き付ける空気にそって、私の金髪も後ろになびいていきます。

 

「あのー、今いいでしょうか」

「安心しろ、振り落とされる心配はない」

「いえ、そうではなく」

 

私が言いたいのはモヒカさんを巻き込んでしまったという事です。

 

「————すみません。私たち二人だけで竜に挑むことになってしまって」

 

「二人……それは間違いだ」

「どういうことですか?」

 

白馬の手綱を握りながらも、モヒカさんは私に教えてくれます。

 

「エルフがなぜ、森の事を知れると思う」

「それは魔法によるものではないんですか」

「まさか。もっと古典的な方法だ」

 

モヒカさんの発言に木々が震えます。

 

それは風によるものではなく、幹自身が震えるように。

 

「き、木々が動いている」

 

「ツリーフォーク。それが旧友たちの名だ」

 

気付けば、馬の周りには、のそのそと動く木々たち。

 

それは周囲だけではありません。まるで森一つがそうであるようでした。

 

「だが戦力としては期待するな」

「彼らがいても力不足だと」

「彼らは森を守る者だ。牙をたてる者ではない」

 

ツリーフォーク達は私たちについてこずに、何かに対抗するために集まっていきます。

 

「彼らは何を……」

「別のお願いを聞いてもらった。どの道、彼らの足では我々と同調はできん」

 

モヒカさんの言葉を残し、森を抜ける白馬。

 

私たちは戦火燻る、村へと急行します。

 

◇◆◇

【異世界スーア/猫族村・内部 [現地時刻 夕方]】

 

着いた村は、崩落したように家々がつぶれていました。

 

家が潰れているのが多数。無事なのは集会所ぐらいです。

 

ですが、そんなことより————

 

「モヒカさん、竜はどこですが……?」

 

私は馬から身を乗り出して周囲を確認しますが、それらしき姿はありません。

 

ならばと、上を見上げますが、暁に染まった空が見えるのみ。

 

「モヒカさん、私探してきます」

 

私が飛び降りた瞬間に、再び地響き。

 

「待て、上ではない。下だッ」

「へっ」

 

地面が吹き飛びます。

 

突き出すは巨大な口。

 

私どころか建物すら丸呑みできそうな、口です。

 

「大丈夫かッ、少女よッ」

「なんとか、大丈夫です」

 

ダン、ダン、ダン、と三点着地をして、地面に転がる私。

 

正直、地面ごと吹き飛ばされてなければ丸呑みされていた可能性もあります。

 

「少女よ、油断するな奴らは土竜だ」

「土竜……なにか普通の竜と違うんですか」

「飛ばない代わりに、地面に潜れる」

 

モヒカさんは飛んでくる石つぶてをよけます。

 

「そして、他の竜種と同じく狡猾だ」

 

陥没した穴の土煙が晴れ、現れるはティラノザウルスごとき巨体。

 

口から土塊を吐き出し、こちらを見ます。

 

「先ほどぶりだな、エルフの」

「今度は何を企んでいる」

 

「まさか、酒皿の火術に引っかかるような、エルフには見破れまい」

「……少女よッ、その場から逃げろッ!」

 

モヒカさんの鋭い言葉が飛んできます。

 

いや、竜の視線はモヒカさんに向いてますし、私は。

 

「————なっ、足が動かない」

 

気づけば足は、ぬかるみにとらわれていました。

 

「すこし気づくのが遅れたようだな、エルフの」

「ちっ、少女よ、慌てるなただの土魔法だ」

 

土竜は巨体はなんのその勢いで、こちらに迫ってきます。

 

私の足はまだぬかるみから抜けません。

 

「竜の魔法を簡単に抜けれると思うなよ、小娘」

 

頭に陰になるようにおおうは、土竜の爪。

 

靴を脱いでも絡みつくように、地面がぬかるんでいきます。

 

「悪いが、弱い者から狩るのが我の楽しみでな」

「姑息なだけじゃないんですか」

 

「姑息さも知性。知性こそが竜の武器。憐れみを抱いて死「やめるニャああああああ」————ふぐっ」

 

そんな土竜の顔に突っ込むは、小さな猫。

 

慢心した土竜に、少年猫は籠を叩きつけます。

 

土竜の堅い鱗に激突した籠は、へしゃげ中から詰め込まれていたものがあふれ出します。

 

「あれは、アイテムボックスか」

 

藁に、工具、鉄塊に、木のドアまでいろいろな物が落ちてきます。

 

そしてもちろん少年猫も落ちてくるので、いそいでキャッチします。

 

「た、助かったニャ……」

「なんていう無茶をするんですかっ」

 

「ゆ、勇者は仲間を助けるモノなのニャ」

「……そうですね」

 

少年猫を大事に抱え、モヒカさんとの合流をはかります。

 

幸運な事に、土竜の魔法は突然のアクシデントで効果が消えていました。

 

「少女よ、今のうちだッ——」「——ぬうう、待てえ、逃がすか、小娘共」

 

「「んなっニャ!!」」

 

極彩色が輝いたかと思うと、盛大に足が沈み込むは地面。

 

よく見れば周囲の物ごと、沈んでいっています。

 

「よくも我の顔を殴ったな、小娘共」

 

「まずいです。このままでは————」

 

近くの鉄塊に掴まり難を逃れようと

 

「待ってください、これ戦鋼ですかっ」

 

それは見慣れた、腕の折れた戦鋼。

 

「ニャ。納屋にあったモノひたすら詰めてたから混ざったニャ」

「どちらにしろ、私たちの幸運はまだ終わってないようですっ」

 

這いずるように操縦席に乗り込み、エンジンを起こします。

 

「捕まってください」

「な、何するニャ」

「こうするんですよっ」

 

エンジンを最大限で起動。

 

ブルルルン。盛大な音が鳴り響きますが、無限軌道は地面に嵌まったまま。

 

「馬鹿め、竜の魔法から簡単に逃げ切れると「なんのォッ」————はっ?」

 

その輝きも極彩色。中級強化魔法を纏った戦鋼は、無限軌道を動かし、地面をこえ、宙にはねます。

 

空に浮かぶは、暁を反射し、炎のように輝く戦鋼。

 

「戦鋼【PN-K2】現地改造型────木色来来、出撃しますッ」

 

さて、反撃開始の時間です。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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