紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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56 少女とギルドと冒険者登録

【異世界スーア・ギルド総本山/頂上・教会前 [現地時刻 朝]】

 

山を丸ごとつかって作られた街に、少女と女性がいました。

 

山麓には、白を基調とした、高さ30m以上の城壁。円環状にぐるっとまわった城壁内部には、ところせましと建物が建っていました。

 

少女と女性は街中を歩いて、階段を上って、最後は山を登っている気分になりながら────頂上にそびえ立つ教会にたどり着きます。

 

「妹よ、ここがギルド総本山ノ教会だ」

 

そう教えてくれるのは、身につけている青着物よりも蒼い髪をもつ、龍ねえです。

 

「大きな建物ですね」

 

応じるは妹呼びになれてしまった、金髪片角少女(わたし)です。

 

ショートから少し長くなった金髪はゆれて、そろそろ髪を切りたい気分になってきます

 

ここまでの道のりは一か月以上、妹呼びにもなれてしまい、体も少しだけたくましくなりました。

 

「ちなみに、あまり離れるなよ。迷子ニなるぞ」

「分かってますよ、龍ねえ」

 

「そう言って迷子ニなったことがなんどもあっただろ」

「アレは、龍ねえが迷子になったんですよ」

 

「モノはいいようだな」

「事実をいっただけです」

 

そんな談笑をしながら、二人は教会までの階段を上っていきます。

 

階段は麓から頂上まで続いており、その段数は殺意的。階段を登っている人達は、はあはあと息をきらしていました。

 

「にしても獣耳だらけですね」

「当然だろ、人間ノ国なんだから」

「いやー、そうなんですけど、そうじゃないといいますか」

 

人間。いわゆる我々が耳付きと呼んでいる連中です。

 

顔は我々とそっくりで、獣耳が生えているだけの違いですが、どうしてみ発言に対しては違和感がぬぐえません。

 

「獣人とかじゃ、だめなんでしょうか」

「ダメだろ。他ノ連中とかぶっちまってる」

 

「獣人と人間って違うんですか?」

「獣人ってのはな、ああいう顔まで獣の連中だ」

 

龍ねえが指した場所には、獣耳だけではなく、顔まで獣そっくりな方々。

 

彼らは列となって、何かを待っているようです。

 

「へー、なるほどなんです、が」

「なんダ、妹よ」

 

そして列のは、私たちの目的地である、教会。

 

「あの行列、教会まで続いていませんか?」

「そうだな。アレは冒険者ノ認定試験を受けにきた連中だろうしな」

 

「それって、つまり私も並ばないといけないということでは?」

「んな面倒ナ事、するわけないだろ」

 

「じゃあ、どうするんですか」

「こういう時は、顔パスで済ませるんだよ」

 

自信満々に言う、龍ねえ。

 

「なるほど、ここで龍ねえが冒険者であるということが生きてくるわけですね」

「まっ、そういうことダ、行ってくる」

「あれ……? 行ってくる?」

 

私の疑問に答えるように、猪突猛進で列に突っ込んでいく、龍ねえ。

 

「あの顔パスとは……」

 

どっかーん、どっかーん、と面白いように飛んでいく列に並んでいる方々たち。

 

「おらおら、どけどけェ、妹が通るんだぞ」

 

顔パス(実力行使)なのは予想外です。

 

数分後。乱闘騒ぎで、きっちりと冒険者に捕まる、私と龍ねえでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/教会内部・執務室 [現地時刻 朝]】

 

「で、何回言えばいいのかなー、馬鹿お龍さんェ」

 

そう、頭に怒りマークをつけて、声をあらげるは紫髪の美女。

 

連れてこられた教会内部の書斎には、ギルド主任と書かれていました。

 

「やっぱりコレが一番はえーな」

 

うんうんと満足そうに頷くは、鎖に拘束された、龍ねえ。

 

隣にはオマケのように鎖で拘束されている、金髪片角少女です。

 

「乱闘騒ぎを早いの一言で済まさないでくれるかなァ」

「いやー、並ぶのメンドくさかったからな」

 

「このせいで、どれだけ私の仕事が増えているかわかっているのッ」

「だからー、いっつも忙しそうだから、こうやって騒ぎを起こして合いに来たんだろ」

 

「その頭の角を引き抜いたら、馬鹿お龍はちょっとは賢くなるのかなァ」

「おい、馬鹿ヤメロ、ちょっと角はそっちにはぬけねぇ」

 

そう言いながら、取っ組み合いを始める二人。

 

もっとも龍ねえは鎖で雁字搦めにされているので、歯をむき出しにして抵抗しています。

 

「あのー、すみません、ウチの姉が迷惑をかけまして……」

 

「お龍。誰、このちびっ子は」

「私の自慢の妹だ」

 

ギルド主任の頭には、お龍=馬鹿、ちびっ子=誠実そう、の構図。

 

お龍=姉妹=ちびっ子……?

 

「えっ、怖、これがお龍の妹とか……えっ、ホントに怖いんだけど」

「おかしいですね。謝罪をしただけなんですが」

 

なぜ軽く怯えられる必要があるのでしょうか。

 

「その……馬鹿をやりたいなら今のうちなら、やってもいいわよ」

「いや、別に馬鹿をやるためにここに来たわけでは」

 

「本山を水浸しにするために来たとかじゃなくて?」

「どうしたら、そんな発想になるのでしょうか」

 

ギルド主任の視線は、龍ねえに向きます。

 

「あっ、いや、本当にすみません」

「本当にお龍の妹とは思えないわ」

 

そういう紫髪ギルド主任は、閃いた、という顔をします。

 

そして凶暴な動物に触る雰囲気で、ゆっくりと手を伸ばし、私の髪の毛を触ります。

 

「あららー、普通に触れさせてくれるんだー」

「あのー、これはどういうことで」

 

ギルド主任のほそい指は、私の髪をとくように、丁寧に。

 

「なーで、なでなで」

「あのー、ちょっとくすぐったいです」

 

手ははげしかったり、ゆっくりだったり。

 

「なでなでなでなでなで」

「あのー、そのー、ふにゅー」

 

次第に耳元のつけねあたりを執拗に。

 

「なーで、なでなでなでなでなでなで」

「あにゃぁ、うにゃうにゃぁ......気持ちいいです」

 

甘い声をだし、思わず思考がとろけてしまっている、私。

 

そして、そんな様子を快く思わない人物が一人。

 

「————オイ、私の妹に何をしている」

 

もちろん龍ねえです。

 

「思った以上にかわいい生物だったから、ここにおいていきなさい」

「ダメだ。妹は私のモノだ」

 

「あなたは、どう考えてもこの子の教育に悪いでしょ、野に帰るべきよ」

「あァん、また教会総本山に洪水ぶつけてもいいんだぞォッ」

 

そんな龍ねえのガン飛ばしに、ニヤリと笑いだすギルド主任。

 

「あれれれー、冒険者達に討伐された奴がなんか言ってるな—」

「うるせー、あれはノーカンだ。ノーカン」

 

「龍ともあろう種族様が自分の負けを認めないのかなー」

「あんな卑劣な作戦デ負けを認めてたまるかッ」

 

そう言って煽り始めるギルド主任。キレ散らかす龍ねえ。

 

「あのー、そろそろ話進めませんか?」

「もうちょっとだけ弄りたいけどだめーかなー」

 

「そろそろ龍ねえが別のモノになりそうなので駄目です」

「しかたないわね。妹ちゃんに免じて聞いてあげるわ」

 

鎖に巻かれながらも、ふしゅーふしゅーと怒っている龍ねえ。

 

紫髪ギルド主任は、優雅に椅子に座り、ちょこんと私を膝の上にのせるのでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/教会内部・執務室 [現地時刻 朝]】

 

「なるほど、冒険者登録ねー」

 

私を左右に揺らしながら、ギルド主任は考えごとをします。

 

体に巻き付いていた鎖は気づいたらなくなっていましたが、蛇に睨まれた蛙のように私は考えます。

 

「まあ、枠は余ってるからいいけど、理由だけ聞いとくかな」

「旅ヲするためだ」

 

「旅ってそんな変なところに行く気?」

「あって損ハねーだろ」

 

「そんな軽い気持ちで取るもんじゃあないんだけどなー」

 

まあいいでしょう、とばかりに立ち上がって、私を抱えながら準備を始める、ギルド主任。

 

「あのー、そろそろ下ろしてもらっていいでしょうか?」

「もうちょっと抱えてていい。湯たんぽみたいに暖かいのよねー」

 

「なら、こっちの鎖をいい加減外してくれねーか」

「そっちは自分でがんばって—」

 

がしがしと鎖を引きちぎろうとする、龍ねえ。

 

ギルド主任はその間にも、装備を選んで、書類を準備して、別の部屋に行く準備を整えます。

 

「お龍、まだちぎれてないのー」

「ウルセ—、どれだけ堅いやつを選んだんだよッ」

「堅い奴ねぇ……前回とそれほどかわんないんだけどなぁ」

 

結局、私は抱えられ、龍ねえは鎖のまま、ギルド主任は別の部屋に案内します。

 

部屋の名前は[魔力測定室]。注意:高濃度魔力の物質を持ち込まないこと、と赤文字でデカデカと書かれています。

 

「なんですか、この部屋────ゴホゴホ」

 

その部屋は埃りっぽく、部屋には窓すらついていません。

 

「ごめんねー、太陽の魔力も邪魔でねえ」

 

そう言いながら、私を右手で抱え、左手では書類を確認する、紫髪ギルド主任。

 

「うーん、色々項目はあるけど、私とお龍の推薦ということで大半はOKってことで」

「……いいんですか、それは」

 

「私の業務が減るから、よしッ」

「あまりにも横暴すぎますっ」

 

書類をのぞいてみると、戦闘経験や、人格判断など、ほぼ全ての項目がOKとなっていました。

 

「でも、魔力量だけは規定で測定する必要があるのよねー」

 

めんどくさいなー、と言いながらギルド主任は、正面の布をかけられた物体を見つめます。

 

そうして、私をちょこんとおいて、布を丁寧に外します。

 

「これは……随分大きな水晶玉ですね」

「まあ、ちょっとだけ古い奴だからね」

 

目の前には、私と同じぐらいの水晶玉。

 

「新しいのはちっちゃいんですか?」

「そうなんだけど、結果が見えているから新品は使いたくないってのが本音」

 

というわけで触れてみて頂戴、といわれ、私は水晶玉に手を伸ばします。

 

「意外と冷たくないですね」

 

つるつるした表面にふれると、体から何かが抜ける感覚

 

水晶玉の透明な内部が濁りはじめ、赤色や黄色に発光していきます。

 

「綺麗な発光で「パッリーンッ」────へっ!?」

 

そして、まるで内部のモノに耐えきれなくなったように、崩壊する水晶玉。

 

「うーん、分かってたけど、魔力量は“測定不能”だね」

「やっぱり龍の魔力に耐えきれね—のダメじゃねーか」

「あんた達みたいに濃すぎる魔力を、普通の人間はもってないの」

 

すでに割れた水晶玉の掃き掃除を始めている、ギルド主任。

 

どうやら私だけではなく、龍ねえも同じようだったようです。

 

「しっかし、困ったわね—」

「そのー、魔力が測定不能だと、何か問題があるのでしょうか?」

 

そんな私の疑問に、答えるは龍ねえ。

 

「いや、大した問題ハなかった気がするけどな」

「まあ、お龍の言うとおり問題ってほどじゃないんだけどね」

 

掃き掃除を終えたギルド主任も答えてくれます。

 

一拍子おいて、紡がれる言葉は。

 

「————ただ、冒険者としては廃業レベルになっちゃうんだよねー」

 

「うんっ?」

 

まあ旅人志望だから問題ないでしょ、そんなギルド主任の声が静まり帰った部屋に響くのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字報告があると作者が喜びます。

もちろんノープロットの4章突入です。休みは捨ててきた、向こうから来たら教授したいと思います。
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