紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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57 少女と冒険者と依頼の始まり

教会(ギルド)総本山・集会所 [現地時刻 朝]】

 

「まっ、何故かは実際見てもらった方が早いかなー」

 

紫髪美女ことギルド主任が案内するのは、教会(ギルド)の一区画。

 

そこには冒険者っぽい人たちが沢山いる場所でした。

 

「ここは、なんの場所でしょうか?」

「ただのギルドの集会所だろ」

 

金髪片角少女(わたし)の質問に、鎖で動けない龍ねえはテキトーに答えてくれます。

 

「そうそう、ここは冒険者が仲間を募る場所なんだけど————」

 

紫髪ギルド主任は集会所に響くような声で叫びます。

 

「みんなーッ、今大丈夫かなー!!」

 

「あー、どうしたギルド主任」

「今日はまだ騒ぎをおこしてねーぞ」

「なんだ、借りた金を返す気にでもなったか」

 

反応するは、多数の冒険者。

 

「実はァ、この新入り少女のパーティを探しているんだけどさー!!」

 

そんな一言とともに、私の周りには、わらわらと冒険者が集まってきます。

 

「おっ新入りか」

「嬢ちゃん、どんな魔法が使える」

「レベルは、レベルは。初心者超えたかい?」

 

「────ちなみに、彼女の魔力“測定不能”だから」

 

そんなギルド主任の一言とともに、一斉に引き下がる冒険者達。

 

「前言撤回だ、すまん」

「別のパーティを当たってくれ」

「ごめんな嬢ちゃん、時間取ちまって」

 

気づけば周りには誰一人冒険者は残っていませんでした。

 

「あの……これってどういうことですか?」

「妹ちゃんはさ、冒険者の利点って、なんだか知ってる」

 

「えっと、多種多様な場所に行けるとか」

「それもあるんだけど、一番は────死んでも復活できるという事なんだよね」

 

「それって、そのままの意味ですか……」

「そうだよ。実質的な不死と言ってもいい」

 

冒険者は復活できる。これこそが皆が冒険者になりたがる理由。

 

そして、後に知ることになりますが、これこそが戦争が終わらなかった理由でもあります。

 

「ですが、それと今回の件にどんな関係が?」

「だけど復活するには、ちょおおと教会にお布施する必要があるんだよね」

 

ちょおおと、を言うときに悪魔的な笑顔になる、ギルド主任。

 

「もしかして……そのお布施の量って、変わったりしますか」

「正解。金額はレベルや魔力の量に比例していくシステムでね」

 

「なので、魔力が多ければ多いほど」

「復活するための代金も高くなるってことだね」

 

「ちなみに、測定不能の場合だと」

「うーん、小国の国家予算ぐらいかな」

 

大体、金貨1000枚ぐらいだねー、と笑うギルド主任。

 

正確には知りませんが、銀貨以上、つまりヤバい値段というのは分かります。

 

(おかしいですね。冒険者において魔力量最強はメリットとゲームに書かれていいたのに……)

 

実は水晶玉が割れて浮かれていた自分が、馬鹿らしくなってきます。

 

「で、でも龍ねえみたいに一人で冒険することもできますし……」

「でもー、そうした場合誰も蘇生してくれなくてね」

 

「ま、魔力が多い方が強い呪文を連打できますしっ」

「実は一時的な魔力の増強剤とかならあるんだよねー」

 

「じゃ、じゃあ魔力が多い人の利点とかないんですかっ!!」

「利点は、おとりに使いやすいってのは「ガジッ」————いたたた」

 

ギルド主任の頭にかじりつく、龍ねえ。

 

鋭い犬歯をみせてガジガジと頭をかじっています。

 

「ちょっとなにするのよ」

「こっちノ台詞だ」

 

「別に現実を教えているだけでしょう」

「妹が今日を楽しみ二してたんだぞ。これ以上水を差す発言は控えろといってんだ」

 

うぐぐぐといいながらも、一理あると感じて、引き下がるギルド主任。

 

長い紫髪を丁寧に整え直し、どこからか取り出していた手鏡をしまいます。

 

「まったく、こう見えてもギルド主任になんてことするのかなー」

「偉そうにするなら、妹ノ冒険者の手伝いでもしてみろ」

 

「ならテキトーな街の依頼でもこなせばいいじゃん」

「なーに言ってんだ、初めてノ依頼だぞ。竜ぐらい屠って箔をだな」

「竜は面倒でしょ。せめて、海ダコ(クラーゲン)ぐらいにしときなさいよ」

「あいつら潜ると面倒なんだよ。間をとって……」

 

結局は、再び言い争いになる、龍ねえとギルド主任。

 

「いや、初心者なんで、フツーに街の依頼で十分です」

 

数分後。そんな私の一言で論争に決着がつくのでした。

 

◇◆◇

教会(ギルド)総本山・集会所/依頼ボード前 [現地時刻 朝]】

 

街の依頼とかかれた緑のボードの前には、様々な依頼書が貼ってあります。

 

一枚の依頼書をとってみると、そこにはパーティ必須と書かれていました。

 

「街の依頼でもパーティを組む必要があるのでしょうか」

 

「まかせろ、他の奴らを一発ぶんなぐって、パーティに入れてくる」

「いえ、そうではなくて」

 

「安心して妹ちゃん。最悪、私の権力でパーティを作ってあげるから」

「いや、そうでもなくて」

 

ケラケラと笑うギルド主任いわく、パーティを組まなくてもいい依頼もあるそうです。

 

パーティを組む基準は、依頼の危険性によるものらしく、街の依頼ではその傾向はすくないとか。

 

「ちなみに今更なんですけど、ギルド主任って偉いんですか?」

「偉くはないかなー。ウチのトップは聖女様だし」

 

「名前的にギルド長とかではないんですね」

「まあ、元々が教会から派生したところだからね」

 

ギルド主任いわく、教会がギルドになったのは100年ほど前からだそうです。

 

それまでは旅人への宿を提供したり、お墓の管理をするのが一般的だったそうです。

 

「おい、コレとかいいんじゃねーか」

 

そういう龍ねえの声に振り向くと、一枚の依頼書を見せられます。

 

依頼名は、鍛冶屋の手伝い。

 

「仕事内容は、炉に魔力を注ぐことですか」

「そうそう魔石なんかでやってもいいんだが、お金がすごくかかるからな」

 

「すごく詳しいですね、龍ねえ」

「こう見えても鍛治師を名乗っているからな」

 

そういえばそうでした、という顔をする私。

 

いつもお酒ばっか飲んでいるので、鍛冶師というよりも職業:酒豪のイメージがあります。

 

「ギルド主任さん、この工房って近いんでしょうか」

「あらら……ほんとにソレを選んじゃうんだ……まあ行ってみればいいんじゃないかなー」

 

お気楽な様子ながらも、目が真剣になっているギルド主任。

 

龍ねえからはうさんくせーという視線が飛んでいます。

 

「変な事を隠シてねーよな」

「マッサカー、麓にある工房だから日が暮れないうちに行った方がイイカナー」

 

さらにニコニコと笑うギルド主任。

 

「おい、妹よ。さっさとこんなところから離れるぞ。腹黒がうつっちまう」

 

そう言って動き出そうとする龍ねえ————の長い蒼髪を押さえる人物が一人。

 

もちろん、ニコニコとしているギルド主任です。

 

「だぁめー。行っていいのは妹ちゃんだけだよ」

「あァ、さらに用でもあんのかァ」

 

「もちろん。十件以上の依頼不備と、七件の集落破壊、そして無数の苦情について、みっちり、しっかり、お話を聞きたくてねえ」

 

「ほら……、それはまた後日とかじゃァ、駄目か」

「まさかー。逆に()()()()()()()()()()、思ってるの?」

 

血の気が引きます。そう感じてしまう程の威圧感。

 

一瞬ですが、周囲にいた人も感じたようで、気絶している人も見られます。

 

そうしてがっくりとうなだれた龍ねえは、ギルド主任にドナドナと引きずられていくのでした。

 

「いや、ごめんねー、妹ちゃん。高レベルの冒険者を遊ばせとくほど、ウチには余裕が無くてね」

 

去り際にそんな事を教えてくれる、ギルド主任。

 

「あっ、はい、大丈夫です」

「その意気だー。お姉さんも妹ちゃんを応援してるぞー」

 

胡散臭そうな笑顔を浮かべて、どこかに行ってしまうギルド主任。

 

紫髪がたなびいた後には、彼女の顔はよく思い出せなくなっていました。

 

「にしても、久しぶりの一人行動ですか」

 

そんな事も気にせず、別の方向にすすむ、私。

 

心情としては、一ヶ月以上、龍ねえとともにでしたから、寂しい気持ちもありますが、懐かしい気持ちでもあります。

 

「ここはさっさと完了させて、龍ねえを驚かしてやりましょう」

 

そうして受付に持って行くは、一枚の依頼書。

 

それはまた新たな冒険の始まりでもあるのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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