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「まっ、何故かは実際見てもらった方が早いかなー」
紫髪美女ことギルド主任が案内するのは、
そこには冒険者っぽい人たちが沢山いる場所でした。
「ここは、なんの場所でしょうか?」
「ただのギルドの集会所だろ」
「そうそう、ここは冒険者が仲間を募る場所なんだけど————」
紫髪ギルド主任は集会所に響くような声で叫びます。
「みんなーッ、今大丈夫かなー!!」
「あー、どうしたギルド主任」
「今日はまだ騒ぎをおこしてねーぞ」
「なんだ、借りた金を返す気にでもなったか」
反応するは、多数の冒険者。
「実はァ、この新入り少女のパーティを探しているんだけどさー!!」
そんな一言とともに、私の周りには、わらわらと冒険者が集まってきます。
「おっ新入りか」
「嬢ちゃん、どんな魔法が使える」
「レベルは、レベルは。初心者超えたかい?」
「────ちなみに、彼女の魔力“測定不能”だから」
そんなギルド主任の一言とともに、一斉に引き下がる冒険者達。
「前言撤回だ、すまん」
「別のパーティを当たってくれ」
「ごめんな嬢ちゃん、時間取ちまって」
気づけば周りには誰一人冒険者は残っていませんでした。
「あの……これってどういうことですか?」
「妹ちゃんはさ、冒険者の利点って、なんだか知ってる」
「えっと、多種多様な場所に行けるとか」
「それもあるんだけど、一番は────死んでも復活できるという事なんだよね」
「それって、そのままの意味ですか……」
「そうだよ。実質的な不死と言ってもいい」
冒険者は復活できる。これこそが皆が冒険者になりたがる理由。
そして、後に知ることになりますが、これこそが戦争が終わらなかった理由でもあります。
「ですが、それと今回の件にどんな関係が?」
「だけど復活するには、ちょおおと教会にお布施する必要があるんだよね」
ちょおおと、を言うときに悪魔的な笑顔になる、ギルド主任。
「もしかして……そのお布施の量って、変わったりしますか」
「正解。金額はレベルや魔力の量に比例していくシステムでね」
「なので、魔力が多ければ多いほど」
「復活するための代金も高くなるってことだね」
「ちなみに、測定不能の場合だと」
「うーん、小国の国家予算ぐらいかな」
大体、金貨1000枚ぐらいだねー、と笑うギルド主任。
正確には知りませんが、銀貨以上、つまりヤバい値段というのは分かります。
(おかしいですね。冒険者において魔力量最強はメリットとゲームに書かれていいたのに……)
実は水晶玉が割れて浮かれていた自分が、馬鹿らしくなってきます。
「で、でも龍ねえみたいに一人で冒険することもできますし……」
「でもー、そうした場合誰も蘇生してくれなくてね」
「ま、魔力が多い方が強い呪文を連打できますしっ」
「実は一時的な魔力の増強剤とかならあるんだよねー」
「じゃ、じゃあ魔力が多い人の利点とかないんですかっ!!」
「利点は、おとりに使いやすいってのは「ガジッ」————いたたた」
ギルド主任の頭にかじりつく、龍ねえ。
鋭い犬歯をみせてガジガジと頭をかじっています。
「ちょっとなにするのよ」
「こっちノ台詞だ」
「別に現実を教えているだけでしょう」
「妹が今日を楽しみ二してたんだぞ。これ以上水を差す発言は控えろといってんだ」
うぐぐぐといいながらも、一理あると感じて、引き下がるギルド主任。
長い紫髪を丁寧に整え直し、どこからか取り出していた手鏡をしまいます。
「まったく、こう見えてもギルド主任になんてことするのかなー」
「偉そうにするなら、妹ノ冒険者の手伝いでもしてみろ」
「ならテキトーな街の依頼でもこなせばいいじゃん」
「なーに言ってんだ、初めてノ依頼だぞ。竜ぐらい屠って箔をだな」
「竜は面倒でしょ。せめて、
「あいつら潜ると面倒なんだよ。間をとって……」
結局は、再び言い争いになる、龍ねえとギルド主任。
「いや、初心者なんで、フツーに街の依頼で十分です」
数分後。そんな私の一言で論争に決着がつくのでした。
◇◆◇
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街の依頼とかかれた緑のボードの前には、様々な依頼書が貼ってあります。
一枚の依頼書をとってみると、そこにはパーティ必須と書かれていました。
「街の依頼でもパーティを組む必要があるのでしょうか」
「まかせろ、他の奴らを一発ぶんなぐって、パーティに入れてくる」
「いえ、そうではなくて」
「安心して妹ちゃん。最悪、私の権力でパーティを作ってあげるから」
「いや、そうでもなくて」
ケラケラと笑うギルド主任いわく、パーティを組まなくてもいい依頼もあるそうです。
パーティを組む基準は、依頼の危険性によるものらしく、街の依頼ではその傾向はすくないとか。
「ちなみに今更なんですけど、ギルド主任って偉いんですか?」
「偉くはないかなー。ウチのトップは聖女様だし」
「名前的にギルド長とかではないんですね」
「まあ、元々が教会から派生したところだからね」
ギルド主任いわく、教会がギルドになったのは100年ほど前からだそうです。
それまでは旅人への宿を提供したり、お墓の管理をするのが一般的だったそうです。
「おい、コレとかいいんじゃねーか」
そういう龍ねえの声に振り向くと、一枚の依頼書を見せられます。
依頼名は、鍛冶屋の手伝い。
「仕事内容は、炉に魔力を注ぐことですか」
「そうそう魔石なんかでやってもいいんだが、お金がすごくかかるからな」
「すごく詳しいですね、龍ねえ」
「こう見えても鍛治師を名乗っているからな」
そういえばそうでした、という顔をする私。
いつもお酒ばっか飲んでいるので、鍛冶師というよりも職業:酒豪のイメージがあります。
「ギルド主任さん、この工房って近いんでしょうか」
「あらら……ほんとにソレを選んじゃうんだ……まあ行ってみればいいんじゃないかなー」
お気楽な様子ながらも、目が真剣になっているギルド主任。
龍ねえからはうさんくせーという視線が飛んでいます。
「変な事を隠シてねーよな」
「マッサカー、麓にある工房だから日が暮れないうちに行った方がイイカナー」
さらにニコニコと笑うギルド主任。
「おい、妹よ。さっさとこんなところから離れるぞ。腹黒がうつっちまう」
そう言って動き出そうとする龍ねえ————の長い蒼髪を押さえる人物が一人。
もちろん、ニコニコとしているギルド主任です。
「だぁめー。行っていいのは妹ちゃんだけだよ」
「あァ、さらに用でもあんのかァ」
「もちろん。十件以上の依頼不備と、七件の集落破壊、そして無数の苦情について、みっちり、しっかり、お話を聞きたくてねえ」
「ほら……、それはまた後日とかじゃァ、駄目か」
「まさかー。逆に
血の気が引きます。そう感じてしまう程の威圧感。
一瞬ですが、周囲にいた人も感じたようで、気絶している人も見られます。
そうしてがっくりとうなだれた龍ねえは、ギルド主任にドナドナと引きずられていくのでした。
「いや、ごめんねー、妹ちゃん。高レベルの冒険者を遊ばせとくほど、ウチには余裕が無くてね」
去り際にそんな事を教えてくれる、ギルド主任。
「あっ、はい、大丈夫です」
「その意気だー。お姉さんも妹ちゃんを応援してるぞー」
胡散臭そうな笑顔を浮かべて、どこかに行ってしまうギルド主任。
紫髪がたなびいた後には、彼女の顔はよく思い出せなくなっていました。
「にしても、久しぶりの一人行動ですか」
そんな事も気にせず、別の方向にすすむ、私。
心情としては、一ヶ月以上、龍ねえとともにでしたから、寂しい気持ちもありますが、懐かしい気持ちでもあります。
「ここはさっさと完了させて、龍ねえを驚かしてやりましょう」
そうして受付に持って行くは、一枚の依頼書。
それはまた新たな冒険の始まりでもあるのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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