紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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62 少女とギルド主任と参加方法

【ギルド総本山/麓・工房 [現地時刻 朝]】

 

「終わりです」

 

カウンターにめり込むレベルで、倒れ込むは金髪片角少女(わたし)

 

「私はこのまま一生借金奴隷として、生を終えるんです」

「だ、大丈夫よ。ビックマザーもアンタなら雇っていいって言ってたし」

 

同じようにカウンターに倒れ込む、ツインテ少女。

 

「何も良くないです」

「ふ、二人で頑張れば借金も返せるはずだから……」

 

「お腹減ったニャ」

 

こっちはお腹が減って倒れ込んでいる、娘娘猫です。

 

少女三人(内一名は猫)は、死んだ表情をして工房のカウンターに倒れています。

 

「あれ、みんな何をやっているでちか?」

 

そんな、絶望的な空気が漂っていいる工房に、届くは一筋の声。

 

赤髪をふりふりとして、工房に入って来るは小柄な少女の声です。

 

「ま、マウスガールさんっ」

「急に近づかれるとビックリするでち」

 

ゾンビ如く這い上がった私は、マウスガールさんに詰め寄ります。

 

「マウスガールさん、お金を持っていたりしませんか?」

「急な質問でちね。一応は持ってない事もないでちけど」

 

「今すぐ貸してくださいっ! 出来れば金貨1000枚ほどっ」

「金貨1000枚? それは国庫でもないと無理でちよ」

 

ですよねーとばかりに、再び終わった顔になる私。

 

そんな様子を見て、マウスガールさんは一言。

 

「そういうときは、他の偉い人間を頼ってみるべきでちよ」

 

そんな提案が工房に響くのでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/教会内部・執務室 [現地時刻 昼]】

 

「で、私のところにきたわけねー」

 

執務室で話を聞いてくれるは、紫髪の美人。

 

ギルド主任は前回と違って、ニコニコで私を出迎えてくれました。

 

「本当にすみません、忙しいところに」

「大丈夫、大丈夫。討伐業務は都合のいい臨時職員がやってくれているから」

 

「そうなんですか」

「そうそう、まあちょっと物品壊したり、村破壊するのが傷なんだけどねー」

 

指で執務室のテーブルの上で、足を組みながら話すギルド主任。

 

そもそも今回は断れる相手じゃなかったしー、という彼女の小声も聞こえてきます。

 

「それで、どうして欲しいの?」

「コロシアムに参加させて欲しいです」

 

ピクリと彼女の雰囲気が変化します。

 

「ふーん、お金貸してとかじゃなくていいんだ」

「貸して欲しいですけど……国家の予算に匹敵するって言われたので」

 

「別に、それぐらいなら貸してあげるって言ったら」

「靴でも舐める所存です」

 

私の発言に目を丸くする、ギルド主任。

 

「これは意外だね。もっと信念塗れかと思ってたけど」

「信念があっても、お金はやって来ませんから」

「どっかの龍とは違ってよい考えだ、褒めよう」

 

ふっふふーんと、鼻歌を歌い始める、ギルド主任。

 

それは、何か面白いことを思いついたといった顔です。

 

「ならさ、私の権力を使って────猫ちゃんか、妹ちゃんのどっちかは助けてあげる」

 

「もちろん両方というのは」

「そんな傲慢な考えはぶっぶーだよ」

 

「では、娘娘猫さんを助けてください」

「あれぇ? そこ、迷わないんだ……」

 

私の発言に、ちょっと不機嫌になるギルド主任。

 

「ほら、私的にはさー。自分と猫ちゃんどっちかーって、もっと苦悩して欲しかったんだけど」

「この質問に迷うところありますか?」

 

「ほら、でも妹ちゃん、借金が大量にあるんでしょ」

「はい、金貨1000枚ほどの借金があります」

 

「それやっばーい金額だよ。なのに自分の借金について悩んでないの?」

「その、悩んではいますけど……」

 

私は最近思うことがあります。

 

できるだけ真っ当な方法で返すつもりではありますが、無理な場合は。

 

「————殺してでも、踏み倒せばいいかなって」

 

私の回答に、虚を突かれたような顔になるギルド主任。

 

「妹ちゃん、それ、本気でいってる?」

「割と本気で言ってます」

 

「契約書の効力って本物だよ」

「でも、それは受け取る人間がいての話ですよね?」

 

我慢ができなくなったかのように、ぷるぷると震える、ギルド主任。

 

「────くくく、はっはっはっは、いや、もう限界ッ、やばいは、はっはっはッ」

 

パンパンと机をたたき、彼女は床で笑い転げます。

 

転んだ後も笑い続け、数秒たってからようやく声がやみます。

 

「あー、笑いすぎて腹痛い」

 

よっこいしょ、とばかりに机を支えにして、立ち上がるギルド主任。

 

その目には先ほどの試すような視線はなく、真剣なモノでした。

 

「よし決めた。私は、誰にもお金を貸しません」

「あれ、じゃあこの話はなんの為に?」

 

「ダメだよ、妹ちゃん。話をせかしちゃあー」

「どういう「むにっ」————むーむーっ」

 

かがんだギルド主任は、私の唇に、細い指をくっつけ、静かにさせます。

 

私を見る、彼女の笑顔は、すごく可憐で、

 

「でも、その代わり────コロシアムに出れるように手伝ってあげよう」

 

嫌な予感しかしませんでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/麓・工房 [現地時刻 昼]】

 

「というわけで、ギルド主任でーす」

 

どーんと工房のドアを蹴り飛ばし、中に入るはグラマスな美人。

 

あとに続く紫の長髪とともに、私も中に入ります。

 

「えっ?」「ニャっ?」

 

唖然とするのは、ツインテ少女と娘娘猫です。

 

「ほらー、ぼけっとしないで、動くよー」

 

「ニャニャッ、ちょっと話がよくわかんないニャ」

「何よッ、急にどうするつもりのなのよッ」

 

ギルド主任に、二人を工房から引きずりだすように、引っ張ります。

 

そして、工房の前に二人を投げると、有無言わさず、説明を始めます。

 

「じゃあ、今から簡単なコロシアムの参加方法をおしえます。よく聞いててねー」

 

「「???」」

 

ギルド主任の言葉に、情報のキャパオーバーを起こす二人。

 

晴天の下、意味不明、話が飲み込めない、といった間抜けな顔をさらしています。

 

「その、皆さん大丈夫ですか」

「これが大丈夫に見えるかしら?」

 

ぐるぐる眼をしている、ツインテ少女。

 

一方、娘娘猫は何かに気づき、びびっているようです。

 

「紫髪のギルド主任って、あのギルド主任かニャ……」

「どのギルド主任かはわからないけど、品性方向清廉潔白のギルド主任なら私のこかなー」

 

「紫髪のギルド主任は、腹黒陰湿根暗に外道で、ギルドを裏で牛耳ってるって聞いたニャ」

「それは別のギルド主任かなぁ。私とはこれぽっちも合ってないしー」

 

凄く貼り付けた笑みを返す、ギルド主任。

 

風にのって私の耳には、また噂を流した奴、私刑にしないとなー、と聞こえてきます。

 

「それより、皆さん準備はできたかしらー」

「準備ってそもそも何の準備よッ」

「そうだそうだニャ」

 

「だからー、最初に言った通り、今からでもできる参加方法を教えるーって話よ」

 

二度目にして、ようやく情報が頭に入ってくる、ツインテ少女と娘娘猫。

 

二人の目つきが真剣なモノに変わります。

 

「それは本気で言ってるのかしら」

「もちろん本気の、本気よ」

 

「それは大丈夫なのニャ?」

「大丈夫、お姉さんに任せたら、だいたいうまくいくから」

 

やっぱり、ギルド主任は胡散臭い笑みを浮かべるのでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/麓・青空市場 [現地時刻 昼]】

 

ギルド主任の簡単コロシアム参加方法は以下の通りでした。

 

「まず、大会本戦参加者を見つけます」

 

皆で訪れたのは、人で賑わう午後の市場。

 

中にはごつい防具を着けた冒険者と見られる方もたくさんいます。

 

「できれば、参加者は大きめの方がいいなかなー」

 

なぜかギルド主任が持っていた、本戦参加者の顔写真を見ながら、参加者を探します。

 

目についたのは、市場の中でも目立つ巨体の、参加者。

 

巨人族にしてはやや小柄な、ゴンスさん、という冒険者です。

 

「目標を決めたら、彼を誘導します」

 

私は黒フードを借りて、市場の人混みに紛れ込みます。

 

そうして客を装い、ゴンスさんの近くに忍び寄ります。

 

「この時はわかりやすく、彼の物を盗むのがいいですね」

「なんで盗む方がいいのニャ?」

「冒険者は信念の塊だからねー。盗んだ方が警備も呼ばすに追ってくるの」

 

私は、彼が商品に夢中になっている隙に、彼の懐から古びた本を盗みます。

 

「でも、そんなに上手くいくのかニャ?」

「コツとしては、相手が追えるような速度で逃げることかなー」

 

巨人族の彼は、足が遅い部類です。

 

なので私はこれでもかとゆっくりと走り、彼から盗んだ物を見せつけるように、路地裏に逃げます。

 

「そして、次に襲います」

 

路地裏の屋根から飛び降りるは、ギルド主任、娘娘猫、ツインテ少女。

 

「できれば、人目に付きにくい路地裏の死角でやりましょう」

 

丁度、屋根と、入り口の建物の配置で外から覗き見ることが、不可能な場所。

 

巨人族のゴンスさんは、上空から襲いかかる少女達になすすべなく、その場で転びます。

 

「ここで重要なのは、殺さずに半殺しにすることだねー」

 

手慣れた手つきで、鎖を取り出し、ゴンスさんの体を縛る、ギルド主任。

 

次いでとばかりに、ゴンスさんの眼には黒い布が被されており、状況すら把握できないようにされています。

 

「下手に殺しちゃうと、復活して逃げられる可能性があるから、よっと」

 

ギルド主任は、どこからか取り出した槍で、ゴンスさんの両足を刺して、傷は当然のように回復魔法で治してます。

 

「あれれ、皆、こっちを向いてどうしたのかなー?」

 

少女達三人の視線は、笑顔でえげつない行為をしているギルド主任に向かいます。

 

「あのー、協力した私たちが言うのもなんなんですけど」

「奇遇ね。私もたぶん同じ事を思っているわ」

「ニャも同じ事を考えたニャ」

 

「「「手際が犯罪者なんですが……?」」」

 

「しっつれーだなー、清き正しいギルド職員だよッ!!」

 

少女達の脳裏によぎるは、清き正しいギルド職員は、そもそも冒険者の狩り方なんて知らないだろ、というツッコミ。

 

「お前ら、オデに一体なにようだ」

「大丈夫、大丈夫、もう痛みを感じることもないから」

 

ギルド主任が取り出すは、見るからに毒毒しい槍。

 

槍の穂先から、地面に滴る液体。こぼれた地面には、白い蒸気が発生します。

 

「ちょっとチクっとした後、30年ぐらい目が覚め「何やってるんでちかッ!!」────ありゃぁ」

 

そんな行動をとがめるは、赤髪の少女。

 

息を切らしているあたり、急いで駆けつけて来たようです。

 

「どーしたの、せ────マウスガールちゃん」

「どーもこーも、なんで頼んだら、こんな事件を起こしているでちかッ」

 

「ほらー、久しぶりの頼み事だったし、張り切ってみようかなーって」

「そもそも、その武器の使用は禁じていたハズでちよ」

 

「これが一番確実だったし、楽かなってー」

「いいから早く彼を解放するでちッ」

 

そんな言葉に、ニヤニヤしながら聞き返す、ギルド主任。

 

「えー、解放するのはいいけどー、マウスガールちゃんは、代案あるわけ?」

「そ、それはでち……」

 

「ほら、ないでしょ。というわけで彼には、やっぱり尊い犠牲にだね———」

 

再び取り出される、毒々しい槍。

 

「────ま、まつでごんす」

 

視界を覆われた状態で、懇願するように言葉を喋る、ゴンスさん。

 

ですがギルド主任にはそんな懇願も届かないようで、槍をじわじわと近づけていきます。

 

「残念だけど、懺悔の時間は30年後にお願い」

「な、なら、オデの参加資格なら渡すでごんすから」

 

「でも−、本人の意識があったら、後々問題も起こりそうだしー」

「な、なら、なんでもするからでごんすッ!」

 

「へー、なんでもか————なら、この契約書にサインしてちょうだい」

 

当然のように用意されている、契約書。

 

しかも一度サインしたら最後。二度と契約を破れなくなる、最上級レベルの契約書です。

 

「わ、わかったでゴンス」

「いやー、無理矢理だと契約書の効力が薄くなるからねー」

 

丁寧に彼の指に朱肉を付け、ゆっくりと判を押す手伝いまでしてあげる、ギルド主任。

 

「いやー、都合よく契約書も朱肉もあって、誰も被害がでなくてヨカッタナー」

 

胡散臭く汗を拭くまねをして、サムズアップをおこなう、ギルド主任。

 

「「「「絶対、用意してただろ(でち)(ニャ)!!!!」」」」

 

そんな少女達、四人の叫びは、路地裏に吹く風にかき消されていくのでした。

 




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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