【ギルド総本山/麓・工房・庭 [現地時刻 朝]】
────借金生活2日目
庭に並ぶは大量の戦鋼、5機以上の人型重機が並ぶ姿は、壮観すら覚えます。
「ふふっ、いつかは個人所有のガレージとか欲しいですね」
そう呟くは、
「いったい、どんだけお金を使うつもりなのよ……」
「でも、そも気持ちは分らなくもないニャ」
呆れるはツインテ少女。頷くは娘娘猫です。
ギルド主任は、誰かからの連絡を受けて、苦い顔をしながらどこかに行ってしまいました。
「それで、アンタこれをホントに直す気?」
「そうですけど、何か問題ありますか」
「いや、【PN-K2】って何年前の戦鋼か知ってんの?」
「ほら、この子、整備性だけはいいですから」
「整備性って……あんたコレで戦争してた年代でもないでしょ」
「いや、割とこの子しか乗ってないというか、なんというか」
そんな私の発言にジト目を向ける、ツインテ少女。
私が気になるのは。それよりも一つ。
「むしろ、ツインテさんこそ、よく【PN-K2】を知ってますね」
戦鋼の中でも、【PN-K2】はロートルな人型重機です。
よほどマニアな人間か、軍関係の人間でないと知らないと思うのですが。
「……ぐ、偶然知る機会があっただけよッ」
わざとらしく目線を逸らす、ツインテ少女。
その顔には、余計な事を言った、と書いてありました。
「今更、隠すようなことがありますかね……?」
首をかたむける、私。
人に借金をおしつけてますし、今更の隠し事は不要な気がするのですが。
「こ、コレはどちらかと言うと恥ずかしいから、言わないだけなのッ」
「まあ、なら深くは聞きませんが、いつか教えてくださいよ?」
「心の準備が出来たら、話すわよッ! 多分ッ!!」
そんなこんなでツインテ少女と談笑していると、娘娘猫の声。
「うーん、中を見る限り、整備しないと使いモノになりそうにないニャ」
気付けば、彼女は戦鋼の内部を調べているようです。
「娘娘さんも、戦鋼について知ってるんですか?」
「戦鋼? この鋼鉄巨人はそういう名前なのニャ」
「そうなんですけど、まるで仕組みを知っている風に調べていたので」
「そりゃあ、まあニャが良く弄っていたおもちゃだしニャ」
「“よく弄っていた”?」
娘娘猫も、余計な事を言ったニャ、という顔になります。
確か、ギルド総本山では、戦鋼は射撃用の的として売られてましたし、街でも動いている姿を見たことはないです。
(ですが、娘娘猫さんは、これを動く人型重機と認識している……)
「ふーん、怪しいわね」
「それは自分のことですか、ツインテさん?」
「なによ、異世界人なのに戦鋼をいじれる方がおかしいでしょッ!」
「いや、どっちもどっちだと思います」
正直、まだ腹を割って話してくれる娘娘猫の方が、信頼できる説もありますね。
そんな事を考えていると、怪しさ勝負で揉めている、猫とツインテ。
「ニャニャッ! ニャは別に怪しくないニャッ!!」
「ふーん、じゃあ証明できるのかしら?」
「しょ、証明……それはどうやるニャ」
「まずはなんで戦鋼が弄れるのか教えてもらおうじゃないの」
「えっと、それは言わなきゃ駄目ニャ……?」
「駄目に決まってるでしょ。アンタ、彼女に借金してるんだから、今更の隠し事は無しよッ」
ツインテさんはブーメランという言葉を知らないのでしょうか。
ですが娘娘猫は素直なので、数秒の沈黙の後、口を開きます。
「ちょっと長くなるけど、いいかニャ?」
「もちろん、いいに決まってるわよ」
「実は────昔、総本山に忍び込んだ、耳無しの人から教わったのニャ」
そうして語られる一言目は、ちょっとだけ斜め上のモノでした。
◇◆◇
【ギルド総本山/麓・工房・庭 [現地時刻 朝]】
娘娘猫は、昔を思い出すように語り出します。
「皆ニャは、大きい物に憧れたことはあるかニャ?」
「大きいモノに? 別にないけど」
「自分も同様に憧れたことはないですね」
娘娘猫さんは、自分の小さな肉球を見つめ、呟きます。
「────ニャはとっても憧れたのニャ」
娘娘猫が想像するは、工房で勢いよくハンマーを振るう自身の姿。
作っりあげた黄金の鎧を着て、コロシアムで勇敢に戦う姿。
「この小さい手では、か弱い体では出来ないことが沢山あったのニャ」
「で、その話が最初とどう繋がるのよ」
「ツインテさん、ちょっとは我慢できないんですか」
「他人の過去回想なんて聞いても、時間の無駄よ」
バッサリと切るツインテ少女。
仕方ないとばかりに、娘娘猫は記憶を辿ります。
「あれはニャが工房で馬鹿にされて、ふて腐れている日だったニャ」
猫族の手では、ハンマーも持てず、その体では溶鉱炉の高温にすら耐えれないと、弟子たちに馬鹿にされた日。
そんないつも通りの一日だったそうです。
「いつも通りに、工房の廃材置き場で寝ようとしたら、ごそごそと漁っている耳無しがいたニャ」
黒髪黒目の耳無しは、探し物があると、そして作り上げたいモノがあると。
不思議な紋章をもった青年は、娘娘猫に語ったそうです。
「その時についでとばかりに泣いている理由も聞かれたニャ」
「それで、ソイツと助け、助けられて感動話って訳?」
「いや、理由を聞いて放置されたニャ」
「「(アレ……思った以上に非情だな)」」
「結局、ニャはあまりにも腹が立ったから、毎回、ソイツが作った機械巨人を分解してやったのニャ」
「「(この猫も、割とだな……)」」
「そうしたら五度目を越えたあたりから、ソイツが音をあげて、いつか助けてやる代わりに、整備を手伝いをさせられたのニャ」
それが、今から3年ほど前の話。
そして、その時の経験から戦鋼を弄り回せるようになったとも。
「にしてもですね……」
「ニャン子、大丈夫? どう考えても騙されてるわよ、ソレ」
「いやー、ニャもそう思ってたんだけど、ある日、コレが届いたのニャ」
そういって、娘娘猫が取り出すは、不思議な紋章が刻まれた、ペンダント。
1年前に届いた手紙には、俺には不要だからバカ猫にやる、と書かれていたそうです。
「ふーん、こんな錆びて売れそうにないモノを渡されてもねェ」
「昔見た時は、もっと綺麗だったんだけどニャ」
「火の中にでも投げ込んで、インゴットにでもしたらいいんじゃない?」
「それが錆びを取ろうと、炉に投げ込んでもビクともしなかったのニャ」
見かけは普通のペンダントですが、なにか魔法がかかっているモノなのでしょうか。
そんな考えが、少女たちに浮かびます。
「とは言っててもニャが持っていても、意味がなさそうだし、キイロニャにあげるニャ」
そういって私に差し出される、紋章が刻まれたペンダント。
「いいんですか?」
「流石にタダ働きさせてると、悪い気分になってきたのニャ」
「ふーん、ニャン子の癖にいい心がけじゃない」
「ツインテさんは、娘娘猫さんの爪の垢でも飲んだ方がいいと思います」
「でも。借金取りの奴らすら放置していったものニャ。多分だけど大した価値はないニャ」
「なら、ありがたく受け取りたいと思います」
そうやって、娘娘猫から、私に受け渡される、ペンダント。
手にもって詳しく眺めてみると、紋章がまるでこちらを見ていいるようで……
「なんでしょうか『…………(ここから出せ)』────へっ、誰ですかッ!!」
突然の幻聴に、声を荒げてしまう私。
「「どうしたの(ニャ)?」」
「今、声とか聞こえませんでした……」
「ニャは何も聞こえなかったニャ?」
「私も聞こえなかったけど、アンタ大丈夫?」
首を傾げる、少女二人。
私は気のせいかと、再びペンダントを見つめます。
ですが、声すら聞こえず、そこには錆びたペンダントがあるだけでした。
(さっきの声は一体────)
「オデさん達、本戦一回戦目の相手が分かったでごんすッ!!」
思考を遮るように、庭に響くゴンスさんの声。
ドテドテと走って来るからの姿を見て、私は疑問を後回しにしてしまうのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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