紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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64 少女と猫の過去とペンダント

【ギルド総本山/麓・工房・庭 [現地時刻 朝]】

 

────借金生活2日目

 

庭に並ぶは大量の戦鋼、5機以上の人型重機が並ぶ姿は、壮観すら覚えます。

 

「ふふっ、いつかは個人所有のガレージとか欲しいですね」

 

そう呟くは、金髪片角少女(わたし)

 

「いったい、どんだけお金を使うつもりなのよ……」

「でも、そも気持ちは分らなくもないニャ」

 

呆れるはツインテ少女。頷くは娘娘猫です。

 

ギルド主任は、誰かからの連絡を受けて、苦い顔をしながらどこかに行ってしまいました。

 

「それで、アンタこれをホントに直す気?」

「そうですけど、何か問題ありますか」

 

「いや、【PN-K2】って何年前の戦鋼か知ってんの?」

「ほら、この子、整備性だけはいいですから」

 

「整備性って……あんたコレで戦争してた年代でもないでしょ」

「いや、割とこの子しか乗ってないというか、なんというか」

 

そんな私の発言にジト目を向ける、ツインテ少女。

 

私が気になるのは。それよりも一つ。

 

「むしろ、ツインテさんこそ、よく【PN-K2】を知ってますね」

 

戦鋼の中でも、【PN-K2】はロートルな人型重機です。

 

よほどマニアな人間か、軍関係の人間でないと知らないと思うのですが。

 

「……ぐ、偶然知る機会があっただけよッ」

 

わざとらしく目線を逸らす、ツインテ少女。

 

その顔には、余計な事を言った、と書いてありました。

 

「今更、隠すようなことがありますかね……?」

 

首をかたむける、私。

 

人に借金をおしつけてますし、今更の隠し事は不要な気がするのですが。

 

「こ、コレはどちらかと言うと恥ずかしいから、言わないだけなのッ」

「まあ、なら深くは聞きませんが、いつか教えてくださいよ?」

「心の準備が出来たら、話すわよッ! 多分ッ!!」

 

そんなこんなでツインテ少女と談笑していると、娘娘猫の声。

 

「うーん、中を見る限り、整備しないと使いモノになりそうにないニャ」

 

気付けば、彼女は戦鋼の内部を調べているようです。

 

「娘娘さんも、戦鋼について知ってるんですか?」

「戦鋼? この鋼鉄巨人はそういう名前なのニャ」

 

「そうなんですけど、まるで仕組みを知っている風に調べていたので」

「そりゃあ、まあニャが良く弄っていたおもちゃだしニャ」

 

「“よく弄っていた”?」

 

娘娘猫も、余計な事を言ったニャ、という顔になります。

 

確か、ギルド総本山では、戦鋼は射撃用の的として売られてましたし、街でも動いている姿を見たことはないです。

 

(ですが、娘娘猫さんは、これを動く人型重機と認識している……)

 

「ふーん、怪しいわね」

「それは自分のことですか、ツインテさん?」

 

「なによ、異世界人なのに戦鋼をいじれる方がおかしいでしょッ!」

「いや、どっちもどっちだと思います」

 

正直、まだ腹を割って話してくれる娘娘猫の方が、信頼できる説もありますね。

 

そんな事を考えていると、怪しさ勝負で揉めている、猫とツインテ。

 

「ニャニャッ! ニャは別に怪しくないニャッ!!」

「ふーん、じゃあ証明できるのかしら?」

 

「しょ、証明……それはどうやるニャ」

「まずはなんで戦鋼が弄れるのか教えてもらおうじゃないの」

 

「えっと、それは言わなきゃ駄目ニャ……?」

「駄目に決まってるでしょ。アンタ、彼女に借金してるんだから、今更の隠し事は無しよッ」

 

ツインテさんはブーメランという言葉を知らないのでしょうか。

 

ですが娘娘猫は素直なので、数秒の沈黙の後、口を開きます。

 

「ちょっと長くなるけど、いいかニャ?」

「もちろん、いいに決まってるわよ」

 

「実は────昔、総本山に忍び込んだ、耳無しの人から教わったのニャ」

 

そうして語られる一言目は、ちょっとだけ斜め上のモノでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/麓・工房・庭 [現地時刻 朝]】

 

娘娘猫は、昔を思い出すように語り出します。

 

「皆ニャは、大きい物に憧れたことはあるかニャ?」

 

「大きいモノに? 別にないけど」

「自分も同様に憧れたことはないですね」

 

娘娘猫さんは、自分の小さな肉球を見つめ、呟きます。

 

「────ニャはとっても憧れたのニャ」

 

娘娘猫が想像するは、工房で勢いよくハンマーを振るう自身の姿。

 

作っりあげた黄金の鎧を着て、コロシアムで勇敢に戦う姿。

 

「この小さい手では、か弱い体では出来ないことが沢山あったのニャ」

 

「で、その話が最初とどう繋がるのよ」

「ツインテさん、ちょっとは我慢できないんですか」

「他人の過去回想なんて聞いても、時間の無駄よ」

 

バッサリと切るツインテ少女。

 

仕方ないとばかりに、娘娘猫は記憶を辿ります。

 

「あれはニャが工房で馬鹿にされて、ふて腐れている日だったニャ」

 

猫族の手では、ハンマーも持てず、その体では溶鉱炉の高温にすら耐えれないと、弟子たちに馬鹿にされた日。

 

そんないつも通りの一日だったそうです。

 

「いつも通りに、工房の廃材置き場で寝ようとしたら、ごそごそと漁っている耳無しがいたニャ」

 

黒髪黒目の耳無しは、探し物があると、そして作り上げたいモノがあると。

 

不思議な紋章をもった青年は、娘娘猫に語ったそうです。

 

「その時についでとばかりに泣いている理由も聞かれたニャ」

「それで、ソイツと助け、助けられて感動話って訳?」

「いや、理由を聞いて放置されたニャ」

 

「「(アレ……思った以上に非情だな)」」

 

「結局、ニャはあまりにも腹が立ったから、毎回、ソイツが作った機械巨人を分解してやったのニャ」

 

「「(この猫も、割とだな……)」」

 

「そうしたら五度目を越えたあたりから、ソイツが音をあげて、いつか助けてやる代わりに、整備を手伝いをさせられたのニャ」

 

それが、今から3年ほど前の話。

 

そして、その時の経験から戦鋼を弄り回せるようになったとも。

 

「にしてもですね……」

「ニャン子、大丈夫? どう考えても騙されてるわよ、ソレ」

「いやー、ニャもそう思ってたんだけど、ある日、コレが届いたのニャ」

 

そういって、娘娘猫が取り出すは、不思議な紋章が刻まれた、ペンダント。

 

1年前に届いた手紙には、俺には不要だからバカ猫にやる、と書かれていたそうです。

 

「ふーん、こんな錆びて売れそうにないモノを渡されてもねェ」

「昔見た時は、もっと綺麗だったんだけどニャ」

 

「火の中にでも投げ込んで、インゴットにでもしたらいいんじゃない?」

「それが錆びを取ろうと、炉に投げ込んでもビクともしなかったのニャ」

 

見かけは普通のペンダントですが、なにか魔法がかかっているモノなのでしょうか。

 

そんな考えが、少女たちに浮かびます。

 

「とは言っててもニャが持っていても、意味がなさそうだし、キイロニャにあげるニャ」

 

そういって私に差し出される、紋章が刻まれたペンダント。

 

「いいんですか?」

「流石にタダ働きさせてると、悪い気分になってきたのニャ」

 

「ふーん、ニャン子の癖にいい心がけじゃない」

「ツインテさんは、娘娘猫さんの爪の垢でも飲んだ方がいいと思います」

 

「でも。借金取りの奴らすら放置していったものニャ。多分だけど大した価値はないニャ」

「なら、ありがたく受け取りたいと思います」

 

そうやって、娘娘猫から、私に受け渡される、ペンダント。

 

手にもって詳しく眺めてみると、紋章がまるでこちらを見ていいるようで……

 

「なんでしょうか『…………(ここから出せ)』────へっ、誰ですかッ!!」

 

突然の幻聴に、声を荒げてしまう私。

 

「「どうしたの(ニャ)?」」

「今、声とか聞こえませんでした……」

 

「ニャは何も聞こえなかったニャ?」

「私も聞こえなかったけど、アンタ大丈夫?」

 

首を傾げる、少女二人。

 

私は気のせいかと、再びペンダントを見つめます。

 

ですが、声すら聞こえず、そこには錆びたペンダントがあるだけでした。

 

(さっきの声は一体────)

 

「オデさん達、本戦一回戦目の相手が分かったでごんすッ!!」

 

思考を遮るように、庭に響くゴンスさんの声。

 

ドテドテと走って来るからの姿を見て、私は疑問を後回しにしてしまうのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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