紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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66 少女とステータスと特技習得

【ギルド総本山/頂上・教会内部・執務室 [現地時刻 朝]】

 

────借金生活3日目

 

娘娘猫とゴンスさんは工房にて作業、ツインテ少女はその手伝いをしぶしぶおこなっている中、金髪片角少女(わたし)はギルドに足を運んでいました。

 

もちろん場所は執務室、対応するは────

 

「ありゃりゃ、どーしたの妹ちゃん」

 

執務室で頬杖をついている、ギルド主任。

 

自慢の紫髪もボサボサしていることから、仕事の方が大変のようです。

 

「実は相談がありまして」

「いいよー、今、暇になったからね」

 

机にどっさりと置かれた書類を、床に置き、笑顔で対応してくれます。

 

「いいんですか」

「大丈夫、5分もしないうちに次の仕事がくるから」

 

ガンギマッタ眼でそういう、ギルド主任。

 

あまり深いことは聞かない方がよさそうです。

 

「実は、本戦で当たる方がいまして」

「あー、黒狼ちゃんの事ね」

 

なになに、情報でも盗みにきたの、と楽しそうに語るギルド主任。

 

よく見れば、手には黒狼と書かれた書類が準備してあります。

 

「いえ、情報と言うより、自分の強化の為でして」

「強化? なんでー?」

 

「その黒狼さんは、上位の冒険者と聞きまして……」

「なるほどなるほど。つまりー、妹ちゃんは今の実力に不満な訳ね」

 

「まあ、そんな感じです」

 

うんうん、若いねーと呟くギルド主任。

 

そして彼女は一つの提案をしてくれるのでした。

 

「ならいっちょ、魔法でも習得してみれば」

「魔法ですか?」

 

確かに、なんで私は魔法が使えないのでしょうか? まるでそれが当たり前だったような……理由はもはや記憶の彼方です。

 

「強い魔法を覚えれば、強い敵だって倒せるからねー」

 

そう気楽に笑う、ギルド主任。

 

「あのー、すいません主任。追加の仕事なんですが……」

「げェッ、もうそんなに溜まってるの、はー」

「すみません……」

 

ドアを3度ノックして入って来るは、犬耳の受付嬢。

 

ぺたりと垂れた犬耳受付嬢の手元には、大量の書類の束。

 

「ですが、聖女様直々の仕事なので断ることができなくて……」

「大丈夫。多分、私のせいだから、そこ置いといて」

 

ドン。床に置かれる追加の書類。

 

「だけどさー、代わりにお願いできるかなー」

「なんでしょうか、ギルドを爆破するとか以外でお願いします」

 

「いやいや、妹ちゃんのステータス管理をお願いしたいだけ」

「珍しく通常業務のお願いですね……」

 

「心外だなー。まるでいつも無茶なお願いしてるように言わないでよー」

「いつもの会話記録、聞いてみたいですか?」

 

いや仕事あるから無理という、ギルド主任。

 

ならば仕方ないですねという、犬耳の受付嬢。

 

「すみませんが、私の後についてきてもらえますか」

 

犬耳の受付嬢は、優雅に私に言葉をかけるのでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/教会内部・ステータス管理部屋 [現地時刻 朝]】

 

案内されたのは、水晶玉が沢山ある部屋。

 

部屋には窓が付いており、外から差し込む日差しが温かいです。

 

「まずは、これに触れてください」

 

目の前に置かれた水晶玉は、魔力を測定したモノより小さく、触れるとどこかに繋がった感覚があります。

 

「なんか出てきましたね」

 

ピコン。目の前に現れた画面には────

 

 名前:木色 ■□

 種族:人■

 職業:■人(レベル5)

経験点:13000

 

「な、なぞの画面が空中に……」

「それが一般的にステータス画面と呼ばれるモノです」

 

「ず、ずいぶんハイテクな技術ですね」

「そうですか? 結構昔からあるモノですよ」

 

そういえば誰かがステータス画面について……あれ、誰が言ってたんですっけ?

 

そんな疑問がよぎりつつ、私はステータス画面の質問をしていきます。

 

「とりあえず、画面表記がおかしいのが普通なのでしょうか」

「えっと、そんなにおかしいですか?」

 

私の横から、のぞき込むようにして、確認する犬耳受付嬢。

 

すると、平常だった顔はみるみる青くなっていきます。

 

「……技術部長ッ、大変です!!」

 

そんな声とともに、部屋から飛び出した受付嬢は、隣の部屋に。

 

壁が薄いのか、となり部屋の声は丸聞こえです。

 

「どうした、受付ちゃん。僕は今休憩中なんだが」

「表記がバグっている冒険者方が現れまして」

「どうせいつもの種族表記バグでしょ、適当に言いくるめといて」

 

「いえ、名前、種族、職業の3バグです」

「いいね……僕は何も聞いてない」

 

「諦めてください、技術部長の出番です」

「いやだ、絶対に嫌だ」

 

「駄目ですー、腹をくくって、手伝ってくださいッ」

「いやだー、どう見ても後で直さないといけない奴じゃんーッ」

 

そんな喧騒が聞こえたあと、引きずられるようにしてやって来る、ブルドック耳の技術部長。

 

私に軽い挨拶をしたあと、祈る表情で、私のステータス画面を見ます。

 

「うわー、完全に表記バグってるよ……」

「これ大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫であって欲しいのが、僕の気持ちだよ」

 

技術部長は、暗い表情で、ステータス画面をいじくり回します。

 

そうして、数分間調べたあと、彼は私に指示を出します。

 

「すまないけど、経験点を使ってレベルを上げてくれないかい」

「いいでしょうか、こんなバグった画面を触っても?」

「動作チェックを兼ねてるから、とりあえずレベル6に」

 

ステータス画面をいじり、経験点を使ってレベルを1つあげます。

 

ピロりんという音とともに、レベルが1つ上がります。

 

「きちんと動くね。ならシステム自体に異常がある訳じゃなさそうだ」

「よかったですね、技術部長」

「全くだよ、また一ヶ月徹夜コースとかは笑えないからね」

 

それから、あれこれと弄られますが、結論システムに異常は無し。

 

問題があるのは、私の体だという事に。

 

「まあ、嬢ちゃん体に混ざりモノでもあったんだろう」

「そんなことでバグったりするんですか?」

「まー、最近そんな事例が多発しているからね」

 

異世界スーアでは、多種多様な種族が存在しています。

 

そして多種多様な種族が結婚し、また新たな種族が生まれることは珍しくありません。

 

伝説の工房[猫と巨人]の書籍では、時代が変わり種族を越えた恋が増えた結果だと書かれています。そして自分たちもそんな連中の一人だとも。

 

「それはまあ、大変ですね……」

「元となったシステムが100年前のものだからね、コレばっかりは文句言ってもしかたないんだよ」

 

「そんなに古いものなのに、更新とかはしないんですか?」

「これが勇者によって作られたモノじゃなければ、とっくの昔に変えてるさ」

 

技術部長は頭を搔きながら、愚痴を吐きます。

 

「ただ、未知の言語やら、エルフの意味不明なコードが多すぎて、直すのだけで手いっぱいな現状だよ」

 

やれやれと、技術部長は手を動かします。

 

なるほどと、答えた私は、追加でこれからの事を聞きます。

 

「とりあえずレベルを8まで上げることがオススメかな」

「それはなんででしょうか」

 

「レベル8になると、好きな特技を一個覚えられる」

「その特技というのは」

「便利な効果ぐらいかな、たしか設定したときはそんな感覚だった」

 

「強い魔法を使えたりは」

「別の職業にすればできるけど、表記バグしている状態で職業を入れ替えるのは進められないかな」

 

「そんなに不味い状態なんですか?」

「正直、レアケース過ぎて、何が起こるかわかんない」

「それは、止めといた方がいいですね……」

 

技術部長の忠告もありましたし、私はレベル上げを選択します。

 

ピロリンピロリン。そうして、ステータス画面に増える特技の欄。

 

押してみると、山のように習得できる特技が表示されます。

 

「具体的な効果は、下の階にある本に載っているから、それを見ながら選ぶといいよ」

「確かに、これだけあると目移りが。コレとか面白そうですし」

 

「ちなみに一度押したりすると、再選択は「ぴっ」────あっ」

 

技術部長の視線の先には、特技に触れてしまった、私の姿。

 

私の顔は、がくがくと嫌な予感で震えています。

 

「な、なぜ先に言ってくれなかったんですかっ」

「もしかして、押しちゃった?」

 

「(こくこく)」

「うん、まあ、そういうこともある」

 

他人ごとなので、呑気な技術部長。

 

むしろ何を取ったのか、楽しそうに聞いてきます。

 

「そんで、何を押しちゃったのよ────」

 

特技欄に書かれた文字は、自爆魔法習得。

 

「あちゃー、よりにもよってその産廃を選んじゃったか……」

 

そんな技術部長の声が、妙に部屋に響くのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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