紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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67 少女と魔法合体と本戦の作戦

【ギルド総本山/教会内部・ステータス管理部屋 [現地時刻 朝]】

 

「これって、どうにか再選択はできないんでしょうか」

 

そんな言葉が零れてしまうほど、絶望した表情を浮かべる、金髪片角少女(わたし)

 

「気持ちはわかります。私も同じミスをしたことがあるので」

 

うんうんと頷く、犬耳の受付嬢。

 

ちなみに彼女は選んだ特技のせいで、冒険者をやめて受付嬢をする羽目になったそうです。

 

「どうにもできないから、皆苦しむというか、なんというかごめん、だね」

 

もはや恒例行事すぎて、軽く流していく、ブルドック耳の技術部長。

 

「いやー、自爆魔法かぁ。昔は候補に挙がるくらい強い魔法だったんだけどね」

「懐かしいですね。マジポ自爆、テレポ自爆、昔はいろいろな組み合わせがあったと記憶してます」

 

マジポ自爆……マジックポーションで魔力の底上げを行い、自爆魔法を強化する組み合わせ。

 

テレポ自爆……自爆が発動するまでのラグを、テレポート魔法で打ち消して、爆殺する組み合わせ。

 

と、技術部長はあの日の魔法調整地獄を思い出しながら、語ります。

 

「それって、今でも使えたりはしないんですか?」

「爆発範囲も、威力も、起動時間も調整しちゃったからなぁ」

「しかも最終的にはギルドの方から自爆魔法による蘇生は3倍料金というお達しがくだりましたからね」

 

そんな二人の会話に、さらに絶望する私。

 

そんな私の落ち込みを見てか、技術部長や受付嬢はあれこれ考えてくれます。

 

「でもねえ、ここまで来ると、魔法合体の餌にするぐらいしか思いつかないかなぁ」

「あのクソガチャに突っ込むのもどうかと思いますが……」

 

「魔法合体? ガチャ? それはいったい何の話ですか?」

 

二人の発言から出てきた聞き逃せない単語。

 

それに一筋の希望をかけて、私は質問します。

 

「実は、魔法を合体させることで、より強い魔法を生み出せるとかいうシステムがあってね」

「あのエルフが悪ふざけで作ったシステムですか……」

「まあまあ、そう言わず」

 

二人の反応は、どこか歯切れが悪そうです。

 

ですが、今の私には関係ありません。

 

「その場所に案内してもらってもいいですかっ」

 

強くなれるのなら、どんなものでも利用しない手はありません。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/教会内部・魔法管理部屋 [現地時刻 昼]】

 

そこは幾何学的な魔方陣がえがかれた部屋。

 

その中央部には、当然のように水晶玉が置かれています。

 

「これが、魔法をいじる装置なんだけど」

「ずいぶん、使われていない部屋ですね」

 

内部は埃っぽく、歩くだけで足跡が付いてしまう程です。

 

「まあ、一時熱狂する連中が現れてね」

「それいらい職員の許可がないと使えなくなったシロモノです」

 

「ガチャガチャぐらいで、熱狂するものなのでしょうか?」

 

私はそんな疑問を感じながら、水晶玉に触ります。

 

すると当然のように現れる空中ウィンドウ。

 

画面内には混ぜることが出来る魔法と、“魔法合体”のボタン。

 

「これって混ぜる魔法はいくつでもいいんですか?」

「基本は2つだったような気がするけど」

 

「3つ以上を混ぜたりすることで、より強くなったりは」

「正直、そこまで試した連中がいなくてね」

 

実はこのシステム。混ぜた魔法は二度と使えなくなるため、皆最低限2つで合体させるそうです。

 

確かに、必死に覚えた魔法を、闇鍋にいれる理由はないですよね。

 

「これって混ぜた魔法の特徴を引き継いだりは」

「ある程度は引き継ぐんじゃなかったけ……」

「完全にランダムだったような気もします」

 

そんな二人のあやふやな回答。

 

なるほどと頷きながら、私は合体させる魔法を選びます。

 

「あれ、こんなに魔法を知ってましたっけ?」

 

私が疑問に感じてしまう程、画面に表示される魔法は多く。ですが大半の魔法は選択不可になっています。

 

「とりあえず、自爆魔法と……[限定解除]超級-火魔法とか面白そうですね」

 

そうして2つを入れても、未だについている選択できる画面。

 

「────あれ? まだ選べるんですか」

 

ならとばかりに、適当に魔法を突っ込む私。

 

大半が身に覚えのない魔法なので、入れても問題はないはずです。

 

「これでよし」

「できたかい?」

 

「はい、完璧です」

「なら“魔法合体”のボタンを押してくれ」

 

言われたとおりにボタンを押すと、極彩色の光りが宿る水晶玉。

 

その光は、水晶玉から溢れ、幾何学的な魔法陣に伝わり、徐々に、徐々に、大きく眩しくなっていきます。

 

「ぎ、技術部長、合体ってこんなに激しかったですっけ⁉」

「いや、もっとあっけなく終わるモノなんだけど……」

 

そうして部屋が光につつまれ、限界に達した時────爆発。

 

窓ガラスは飛散し、黒い煙が吐き出されるのでした。

 

そんな真っ黒こげになった、部屋で、真っ黒になった三人。

 

「ぷは……冒険者さん、謝らなくていいので教えてください」

「ぷは……さっきの合体で魔法を何種類混ぜた」

 

「ぷは……あの、その、10種類以上です」

 

私のステータスに表示されるは???と、表記バグを起こした魔法でした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/麓・工房 [現地時刻 夕方]】

 

「で、無様な姿で帰ってきたわけ」

「はい、そのとおりです」

 

「で、そのバグった魔法とやらは使い物になるわけ?」

「それがですね……」

 

「これが全くならなくてさー」

 

そう楽しそうに教えてくれる、ギルド主任。

 

現在私を抱えて、工房に運んでくれた人物でもあります。

 

「まさか使った瞬間に全魔力を消費するとは思いませんでした」

「でも、あそこまでの代償を払って何も起こらないのは凄いよねー」

 

現在私が運ばれた理由は、魔力不足による一時的な失神によるもの。

 

「本当に使った後、何も起きてなかったんですか?」

「むしろ異常と思えるほど、何も起こってなかったね」

「どういう魔法なんですか、これは」

 

ギルド主任曰く、魔量不足自体は慣れたら何とかなるそうですが……

 

そんなデバフ状態になる魔法は二度と使わないと思います。

 

「じゃあ、アンタの強化作戦は失敗ってことでいいのかしら」

「あの、はい、そういう感じです」

 

「全く、私は働いてたというのに……」

「むしろ、借金があるのに何で働いてないんですか……」

「うぐぐ、それは私にも考えがあってのことよッ」

 

そう言いながら珍しく大人しく働いている、ツインテ少女。

 

彼女の性格なら教会(ギルド)内部について来て、仕事をサボったりしそうなものですが。

 

なにか教会に近づきたく理由でもあるのでしょうか?

 

「しかも、よりにもよってコイツを連れてくるし……」

「あらー、私が来るとなにか問題があるのかなー?」

「まった碌でもない事に加担させられるんじゃないかって、思ってるだけよ」

 

ツインテ少女は、そうギルド主任に嫌な視線を向けます。

 

どうやら彼女にもいい感情を抱いていないようです。

 

「心外だなー、私は清く誠実なギルド主任です—」

「ホントどの口が言ってるのやら」

 

「この美人の顔についた、美人な口が言っているの」

「……キッショ」

 

バスン。ツインテ少女の頭が、丸めた本のようなもので、問答無用で叩かれます。

 

バスンバスン。ギルド主任は遠慮なく二発、三発とツインテ少女の頭を叩きます。

 

「で、言いたい事はそれだけでいいかなー?」

「あ”い”調子のってすみませんでした」

「分かればよろしい」

 

そう言ってギルド主任は、丸めていた本を、綺麗にします。

 

そうしてあらわになるは、茶色いシミが多く入った本。

 

「それ何の本ですか?」

「よく聞いてくれました。これこそが今回の秘策」

 

表紙には手書きで“天上天下大会るーるぶっく”と書かれていました。

 

そして著者は、勇者、シロ、清く正しい美女、天才マンと。

 

「これはねー、100年前に書かれた大会ルールブックの原本」

「「???」」

「驚いたでしょー。これでも物持ちは良い方でねー」

 

ギルド主任は、パラパラと本を捲っていきます。

 

中には装備の規定や、参加人数についてなど、コロシアム内に表示されていたものより、厳密に記されています。

 

「これを読むとねー、今は忘れられているルールがたくさんあるのよ」

 

天上天下大会は100年も続く、歴史的な大会です。

 

時代の価値観、環境の変化、選手層の増加によってルールは幾度となく変更され、そして全て把握するのは不可能に近いほど、増えています。

 

「そんなルールの穴を突くと?」

「言い方が悪いなー、妹ちゃん」

 

「でも、そんなモノ持ち出すってことは、そう言う事ですよね」

「大丈夫。私はただルール通りに、大会運営が想定してない提案をするだけだから」

 

と、笑顔で言うギルド主任。

 

「でも、大会運営ってギルド主体ですよね」

「なんなら私が運営トップだったりするねー」

 

「あれ、コレ、困るのギルド主任では……?」

「何言ってるのよ妹ちゃん。困るのは私だけじゃないから」

 

鼻歌を歌いながら、ギルド主任は楽しそうに、説明の準備を始めます。

 

「それに────ハプニングがあった方が、大会として面白いでしょ?」

 

彼女の信念は、清く正しく、自分が楽しく。

 

それが100年以上を生きる彼女の生きかたのモットーだそうです。




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