【ギルド総本山/中腹・コロシアム・戦いの場 [現地時刻 朝】
「おおっとォ、突如現れた水流がゴンス選手を襲うゥッ!!」
盛り上がる実況、状況を冷静に観察するは
ペダルを軽く止め、冷静に水流への対処を考えます。
(前方を覆い尽くすような津波。左右に避けるのは手遅れ)
「なら、避けなければいいだけです」
戦鋼を操作、地面に突き刺すは、大剣。
追加で機体を前傾させて、津波を耐えれるように
「そんなことだと思った────」
そんな思惑を見透かしたように、津波を破って来る影。
「────なるほど、それが狙いでしたか」
一閃。ガキンと大きな音を立てて、戦鋼の鎧が切り飛ばされます。
破損したのはゴンスさんの鎧。内部のフレームまでは傷がついていないようです。
「ふーん、結構硬いじゃん」
そんな何でもない様子で喋る、狼耳の少女こと────黒狼。
声が明瞭に聞こえるほど、接近してきたようです。
「そちらこそ、引き撃ちは止めたんですか」
「当然。効いてなさそうだったし」
「私的には、もう少し考える時間をくれても良かったんですが」
「そっちに仕込む時間を与えるのは癪だし」
黒狼の視線は、入り口で次弾を装填する、ツインテさんに。
「────悪いけど、さっさと死んでもらう」
ギアが上がった。そう感じるほどの攻撃密度。
水流や、風の刃も合わさり、より防御一辺倒となる私の操作。
「ツインテさん、ここからの通信は一方的になる事を許してくださいっ」
『いいわよッ! だけど必ず勝ちなさいよ!!』
「もちろんですっ!!」
戦鋼の操縦管を押し込み、彼女の攻撃に負けないように、機体を動かします。
◇◆◇
【ギルド総本山/コロシアム・観客席 [現地時刻 朝】
「ニャニャニャ、もう見てられないニャッ」
戦場の様子に顔を覆ってしまう、娘娘猫。
「まあ最悪の属性を引かなかっただけ、マシって感じかなー」
「そ、そのなのニャ?」
「彼女が使える二属性目はギルドにも秘匿にされていたからねー」
戦場を冷静にながめているのは、ギルド主任です。
「ギルドが定義している属性は5つ」
水、火、土、光、闇。人間に扱えるようにしたのは基本的に1属性のみ。
懐かしい設定を思い出しながら、ギルド主任は黒狼を見つめます。
「だから二属性が使えるのはバグみたいなもんなんだよねー」
「そうなのニャ?」
「うーん、まあ最近は混血のせいで結構そういう連中が多いんだけど」
「ちなみにそれって増やすことは出来るのニャ?」
「えっと……それってどういうことかな、猫ちゃん」
「例えば、二属性が使える同士で結婚したらどうなるのニャ?」
そんな娘娘猫の疑問に、眼を丸くするギルド主任。
その顔には“そんな事は想定されていない”と書かれていました。
「そんな魔力に対する冒涜なんてしたら────良くて精神の欠損、悪くて爆散って感じかなー」
「えっ、そうなのニャ? てっきり更に多くの属性が使えるとかかと思ったニャ」
「いやいや、流石にそう都合よくは……」
口では軽口を叩きながらも、娘娘猫の発言を真面目に考えているみるギルド主任。
数秒考えたあと、彼女は結論をだします。
「────まあ、出来ない事はなさそうだけど、コスパ悪そうだし普通はしないかなー」
その言葉の意味は、幾多の実験体を用意したり、魔力による罰の矛先を移し替えれば、不可能ではないということ。
あと、そんな事をするぐらいなら、別の属性を使える人物を作ったほうが早くね、ということ。
「ほら、そんな事を考えるより妹ちゃんを応援してあげなよ」
「でも、ニャが見てるとキイロニャが、負けそうな気がしてニャ」
ふるふる。首をふって試合を見ることを拒絶する、娘娘猫。
「心配症だなー。大丈夫、妹ちゃんは思ったより以上に強いから」
「ほ、本当ニャ? その言葉ニャは信じるニャ」
顔を上げて、ゆっくりとコロシアムの中心に視線をうつす、娘娘猫。
そこには、黒狼の攻撃に対して多種多様な武器を使って対処する、巨人の姿。
「7番────」「────甘いッ」
ハンマーで水流と激突し。
「3番──」「──────だから」
投げたジャベリンは風の刃に切り飛ばされ。
「5番──────」「──面倒な」
巨大な斧でコロシアムの地面ごと叩き割りる、鋼鉄巨人の姿。
「す、すごいニャ」
「レベル差は確かに存在してる」
防戦一方の戦いは、気付けば一進一退の攻防へ。
「でも、その差を埋めれる程の援護が妹ちゃんにはある」
「こ、これはもしかしたりするかもニャッ」
そう期待した眼で、試合を見つめる、娘娘猫。
ですがギルド主任は────
「うーん、微妙」
ゴテン。観客席から転げ落ちる、娘娘猫。
ギルド主任の顔には“勝負は最後まで分からない”と書いてありました。
◇◆◇
【ギルド総本山/中腹・コロシアム・戦いの場 [現地時刻 朝】
狼耳の黒狼と相対するは、戦鋼を操作する私。
「それ、そんな中身だったんだ」
「鎧の姿も気に入ってたんですが、ねっ」
再三の攻防を終えて、変装用の鎧が半壊した戦鋼。
内部フレームは強化魔法で覆っていたおかげか、損傷は軽微。
「私が知ってる鋼鉄巨人よりも、随分古いっぽいし」
「こういうのはアンティークって言うんですよっ!」
周囲を跳ねまわり攻撃を仕掛けてくる、黒狼。
水流や風の刃による妨害も入り、非常に追従がしにくいです。
「ずいぶん跳ねまわるのを嫌がるじゃない」
「別に嫌った訳じゃないですけどっ!!」
悲しい事ですが、戦鋼【PN-K2】のカメラ追従速度は歴代最低値。
そのため、跳ねまわるどころか、左右に動かれるだけで、非常に困ります。
「でも、そっちが無駄に硬いのが悪い」
「それは申し訳なかったですねっ」
現状、戦鋼を覆う魔力が、分厚いから生きているようなモノ。
ですが、その魔力層も度重なる攻撃で、摩耗。そろそろ致命傷の覚悟が必要です。
「このままで攪乱して、削り切るのが正解みたいねッ」
「そう、させるとでもっ」
「逆に、どうにかなると思ってんのッ」
「
片手間で発動するは、この前使えることに気づいた、初級魔法。
銃弾ほどの小さな炎は、狙い通りに飛んでいきます。
「どこを狙って「ボシュ」────なっ、水に引火⁉」
狙いは当然、武器を取り出すごとにぶちまけられていた、黒色の液体。
地面の汚れと相まって、全く気にされずに、必要量を撒くことができました。
「周囲が炎に。水魔法────ちっ、消えない」
絡みつくような炎。その正体は、飲料水という名目で持ちこんだ、特製の魔法油。
粘度はそこまでではありませんが、一度火が付いたら最後。魔力が燃え尽きるまで炎上します。
「これで足は封じました」
「でも、その炎はアンタも蝕んでいるようだけど」
当然。砲弾をたたき割りまくっていた、戦鋼にも油は付着。
表面装甲はメラメラと燃え、操縦席の温度も上がっているように感じます。
「私と我慢比べでもしたいわけ?」
「もちろん、そのつもりですが」
ですが、装甲が有る以上、長期戦になればこちらが有利のハズ。
なにより、黒狼さんは、絡みつくような炎のせいで思うように動けないハズです。
「なら、その目論見は外れよ」
「何がいいた────ああ、それは“最悪”のパターンですね」
黒狼の右手には、極彩色の輝き。
そしてその右手に灯るは赤色。
「確か、ギルドには二属性しか使えないって出したっけ?」
「なら、二つしか使わないでくださいよ」
それは三つ目の属性。
「でも────火属性が使えないとは書いてないでしょ」
作戦の都合上、一番使われたくない属性でもあります。
彼女の魔法に呼応するように、周囲で燃えさかる火が反応します。
「……本当にマズいですね」
「どっかの誰かが大量に魔力油なんて撒かなければ、こうはならないわよ」
彼女の右手の火球に、吸いこまれるように集まる火────巨大な炎球となっていきます。
「ですが、まだ当たらなければっ」
炎球の威力は想像を絶するでしょう。ですが、その巨体は簡単に移動できるモノではありません。
(円九を投げる方向さえ見極めてしまえば、逆に避けるだけ)
モニターを凝視。彼女が動くのは、右か左か────
「────残念、上よ」
そこには風魔法にのって、一瞬で上空をとった、黒狼。
もちろん、彼女の手にはこちらを狙う、巨大な炎球。
「かい、ひ────」
思考より早く、モニターが白く焼けつきます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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