紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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71 少女と黒狼と接近戦

【ギルド総本山/中腹・コロシアム・戦いの場 [現地時刻 朝】

 

「おおっとォ、突如現れた水流がゴンス選手を襲うゥッ!!」

 

盛り上がる実況、状況を冷静に観察するは金髪片角少女(わたし)

 

ペダルを軽く止め、冷静に水流への対処を考えます。

 

(前方を覆い尽くすような津波。左右に避けるのは手遅れ)

 

「なら、避けなければいいだけです」

 

戦鋼を操作、地面に突き刺すは、大剣。

 

追加で機体を前傾させて、津波を耐えれるように

 

「そんなことだと思った────」

 

そんな思惑を見透かしたように、津波を破って来る影。

 

「────なるほど、それが狙いでしたか」

 

一閃。ガキンと大きな音を立てて、戦鋼の鎧が切り飛ばされます。

 

破損したのはゴンスさんの鎧。内部のフレームまでは傷がついていないようです。

 

「ふーん、結構硬いじゃん」

 

そんな何でもない様子で喋る、狼耳の少女こと────黒狼。

 

声が明瞭に聞こえるほど、接近してきたようです。

 

「そちらこそ、引き撃ちは止めたんですか」

「当然。効いてなさそうだったし」

 

「私的には、もう少し考える時間をくれても良かったんですが」

「そっちに仕込む時間を与えるのは癪だし」

 

黒狼の視線は、入り口で次弾を装填する、ツインテさんに。

 

「────悪いけど、さっさと死んでもらう」

 

ギアが上がった。そう感じるほどの攻撃密度。

 

水流や、風の刃も合わさり、より防御一辺倒となる私の操作。

 

「ツインテさん、ここからの通信は一方的になる事を許してくださいっ」

『いいわよッ! だけど必ず勝ちなさいよ!!』

「もちろんですっ!!」

 

戦鋼の操縦管を押し込み、彼女の攻撃に負けないように、機体を動かします。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/コロシアム・観客席 [現地時刻 朝】

 

「ニャニャニャ、もう見てられないニャッ」

 

戦場の様子に顔を覆ってしまう、娘娘猫。

 

「まあ最悪の属性を引かなかっただけ、マシって感じかなー」

「そ、そのなのニャ?」

「彼女が使える二属性目はギルドにも秘匿にされていたからねー」

 

戦場を冷静にながめているのは、ギルド主任です。

 

「ギルドが定義している属性は5つ」

 

水、火、土、光、闇。人間に扱えるようにしたのは基本的に1属性のみ。

 

懐かしい設定を思い出しながら、ギルド主任は黒狼を見つめます。

 

「だから二属性が使えるのはバグみたいなもんなんだよねー」

「そうなのニャ?」

 

「うーん、まあ最近は混血のせいで結構そういう連中が多いんだけど」

「ちなみにそれって増やすことは出来るのニャ?」

 

「えっと……それってどういうことかな、猫ちゃん」

「例えば、二属性が使える同士で結婚したらどうなるのニャ?」

 

そんな娘娘猫の疑問に、眼を丸くするギルド主任。

 

その顔には“そんな事は想定されていない”と書かれていました。

 

「そんな魔力に対する冒涜なんてしたら────良くて精神の欠損、悪くて爆散って感じかなー」

「えっ、そうなのニャ? てっきり更に多くの属性が使えるとかかと思ったニャ」

「いやいや、流石にそう都合よくは……」

 

口では軽口を叩きながらも、娘娘猫の発言を真面目に考えているみるギルド主任。

 

数秒考えたあと、彼女は結論をだします。

 

「────まあ、出来ない事はなさそうだけど、コスパ悪そうだし普通はしないかなー」

 

その言葉の意味は、幾多の実験体を用意したり、魔力による罰の矛先を移し替えれば、不可能ではないということ。

 

あと、そんな事をするぐらいなら、別の属性を使える人物を作ったほうが早くね、ということ。

 

「ほら、そんな事を考えるより妹ちゃんを応援してあげなよ」

「でも、ニャが見てるとキイロニャが、負けそうな気がしてニャ」

 

ふるふる。首をふって試合を見ることを拒絶する、娘娘猫。

 

「心配症だなー。大丈夫、妹ちゃんは思ったより以上に強いから」

「ほ、本当ニャ? その言葉ニャは信じるニャ」

 

顔を上げて、ゆっくりとコロシアムの中心に視線をうつす、娘娘猫。

 

そこには、黒狼の攻撃に対して多種多様な武器を使って対処する、巨人の姿。

 

「7番────」「────甘いッ」

 

ハンマーで水流と激突し。

 

「3番──」「──────だから」

 

投げたジャベリンは風の刃に切り飛ばされ。

 

「5番──────」「──面倒な」

 

巨大な斧でコロシアムの地面ごと叩き割りる、鋼鉄巨人の姿。

 

「す、すごいニャ」

「レベル差は確かに存在してる」

 

防戦一方の戦いは、気付けば一進一退の攻防へ。

 

「でも、その差を埋めれる程の援護が妹ちゃんにはある」

「こ、これはもしかしたりするかもニャッ」

 

そう期待した眼で、試合を見つめる、娘娘猫。

 

ですがギルド主任は────

 

「うーん、微妙」

 

ゴテン。観客席から転げ落ちる、娘娘猫。

 

ギルド主任の顔には“勝負は最後まで分からない”と書いてありました。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/中腹・コロシアム・戦いの場 [現地時刻 朝】

 

狼耳の黒狼と相対するは、戦鋼を操作する私。

 

「それ、そんな中身だったんだ」

「鎧の姿も気に入ってたんですが、ねっ」

 

再三の攻防を終えて、変装用の鎧が半壊した戦鋼。

 

内部フレームは強化魔法で覆っていたおかげか、損傷は軽微。

 

「私が知ってる鋼鉄巨人よりも、随分古いっぽいし」

「こういうのはアンティークって言うんですよっ!」

 

周囲を跳ねまわり攻撃を仕掛けてくる、黒狼。

 

水流や風の刃による妨害も入り、非常に追従がしにくいです。

 

「ずいぶん跳ねまわるのを嫌がるじゃない」

「別に嫌った訳じゃないですけどっ!!」

 

悲しい事ですが、戦鋼【PN-K2】のカメラ追従速度は歴代最低値。

 

そのため、跳ねまわるどころか、左右に動かれるだけで、非常に困ります。

 

「でも、そっちが無駄に硬いのが悪い」

「それは申し訳なかったですねっ」

 

現状、戦鋼を覆う魔力が、分厚いから生きているようなモノ。

 

ですが、その魔力層も度重なる攻撃で、摩耗。そろそろ致命傷の覚悟が必要です。

 

「このままで攪乱して、削り切るのが正解みたいねッ」

「そう、させるとでもっ」

 

「逆に、どうにかなると思ってんのッ」

初級-火魔法(どうにかするんですよっ)!!」

 

片手間で発動するは、この前使えることに気づいた、初級魔法。

 

銃弾ほどの小さな炎は、狙い通りに飛んでいきます。

 

「どこを狙って「ボシュ」────なっ、水に引火⁉」

 

狙いは当然、武器を取り出すごとにぶちまけられていた、黒色の液体。

 

地面の汚れと相まって、全く気にされずに、必要量を撒くことができました。

 

「周囲が炎に。水魔法────ちっ、消えない」

 

絡みつくような炎。その正体は、飲料水という名目で持ちこんだ、特製の魔法油。

 

粘度はそこまでではありませんが、一度火が付いたら最後。魔力が燃え尽きるまで炎上します。

 

「これで足は封じました」

「でも、その炎はアンタも蝕んでいるようだけど」

 

当然。砲弾をたたき割りまくっていた、戦鋼にも油は付着。

 

表面装甲はメラメラと燃え、操縦席の温度も上がっているように感じます。

 

「私と我慢比べでもしたいわけ?」

「もちろん、そのつもりですが」

 

ですが、装甲が有る以上、長期戦になればこちらが有利のハズ。

 

なにより、黒狼さんは、絡みつくような炎のせいで思うように動けないハズです。

 

「なら、その目論見は外れよ」

「何がいいた────ああ、それは“最悪”のパターンですね」

 

黒狼の右手には、極彩色の輝き。

 

そしてその右手に灯るは赤色。

 

「確か、ギルドには二属性しか使えないって出したっけ?」

「なら、二つしか使わないでくださいよ」

 

それは三つ目の属性。

 

「でも────火属性が使えないとは書いてないでしょ」

 

作戦の都合上、一番使われたくない属性でもあります。

 

彼女の魔法に呼応するように、周囲で燃えさかる火が反応します。

 

「……本当にマズいですね」

「どっかの誰かが大量に魔力油なんて撒かなければ、こうはならないわよ」

 

彼女の右手の火球に、吸いこまれるように集まる火────巨大な炎球となっていきます。

 

「ですが、まだ当たらなければっ」

 

炎球の威力は想像を絶するでしょう。ですが、その巨体は簡単に移動できるモノではありません。

 

(円九を投げる方向さえ見極めてしまえば、逆に避けるだけ)

 

モニターを凝視。彼女が動くのは、右か左か────

 

「────残念、上よ」

 

そこには風魔法にのって、一瞬で上空をとった、黒狼。

 

もちろん、彼女の手にはこちらを狙う、巨大な炎球。

 

「かい、ひ────」

 

思考より早く、モニターが白く焼けつきます。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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