紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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74 少女と数日間と現状

【ギルド総本山/麓・工房・内部 [現地時刻 朝】

 

────4日後

 

工房内には、大量の破材、鉱石、皮が置かれており、現在倉庫として利用されています。

最初に来た時よりも、汚くはなったが工房らしくなった場所。

 

「ニャニャ、キイロニャ見てニャ」

 

黒いススをつけた顔で寄って来るは、娘娘猫。

 

「どうしたんですか、娘娘さん」

 

キイロと呼ばれた金髪片角少女(わたし)は、彼女の方にふりむきます。

 

娘娘猫さんの肉球に挟まれているのは、今日の朝刊。

 

「新聞に準決勝の話がのっているニャ」

「わざわざ、買って来たんですか?」

「ニャ、偶々配っていただけなのニャ」

 

視線をそらしながら、新聞をひろげる、娘娘猫。

 

彼女の猫足が汚れていることから、中腹まで買いに行っていたのでしょう。

 

「へー、大会の優勝候補は“獣王”ですか」

「凄いニャ、表の一面をつかっているニャ」

「今まで見た獣人の中でも、かなり凛々しい顔立ちですね」

 

新聞には、上半身に鎧をきて、腕を組む獣人の男性写真。

 

ライオンを彷彿とさせる顔は、すがすがしいほど前を向いています。

 

「────そんな野郎より、私達の活躍はどうなってんのよ」

 

「ニャ、ツインテニャか」

「今仕事が終わったばかりよ、ニャン子」

 

疲れた目でこちらを見るは、ツインテさん。

 

自慢のツインテールは今日もへにゃへにゃになっています。

 

「で、もう一度聞くけど、私達の活躍は?」

「ちょっと、なんのことかわからないニャ」

 

眼をそらす娘娘猫。

 

「ニャン子、こっちをみていいなさい」

「落ち着いて、ここまでの行為を思い出して欲しいニャ」

 

娘娘猫の言葉に首をかしげる二人。

 

私とツインテさんは、いままでの対戦を思い出します。

 

「これまでの行為って、三回戦と四回戦に勝ったことかしら?」

「べつに普通に勝っただけですよね」

 

「ホントかニャ……」

「三回戦目は相手が魔力切れて勝ったし」

「四回戦目はキチンと戦いましたよ」

 

「じゃあ、前日日に何をしてたニャ」

「確か、三回戦目前はコロシアム障壁に細工して」

「四回戦目前は、装備をルールに抵触させるようにすり替えに」

 

うんうんと頷く、二人。

 

まるでここまでの工程は険しく、私達は精一杯頑張った────努力の結晶のように。

 

「いやー、大したことはしてないですね」

「全くよ、普通に大会に参加しただけじゃない」

 

「もうすでに手遅れだったニャ」

 

娘娘猫が開いた新聞。

 

内部には“借金王ゴンス”暴かれざる悪行ッ、という記事が一面に。

 

「凄いですね、真実の中に嘘が混ざってます」

「確かに。大半が真実だけど、これとか嘘じゃない」

 

宿屋を爆破したりはしましたが、別に中の金品を奪ってはいませんし。

 

コロシアムまで地下トンネルを作って侵入はしましたが、食べモノを盗むためではありません。

 

「そろそろ、反省した方がいい気がするニャ」

「反省して勝てるんなら、反省するわよ」

「お天道様もびっくりな言い訳なのニャ」

 

新聞の次のページには、対戦表と各選手の倍率が。

 

「へー、トトカルチョなんてあるんですね」

「でも参加者が賭けれないとかシケてるわね」

 

次の準決勝。対戦相手は獣王さんです。

 

もちろん、トトカルチョ(勝者予想)は獣王さんの圧勝。

 

「ニャン子、アンタが賭けてきて儲けてきなさいよ」

「そんな金がそもそもないニャ」

 

「そこはお得意の借金よ」

「ニャは必要な時以外、借金をしない性格ニャ」

 

新聞の記事で盛り上がったり、次の獣王さんについてアレコレ話す私達。

 

そんな様子に、娘娘猫は呆れた視線を向けます。

 

「てか、ニャ達はこんなところで呑気にしてていいのニャ?」

 

「別に呑気にしたいわけじゃないわよ」

「私だって、明日の準決勝の準備とか色々したいんですが……」

 

少女たちは窓の外を見ます。

 

そこには厳重に配置されたギルド職員。内部に重大犯罪者がいるかのような配置です、

 

「「いやー、なんで、こんな厳重な警備をされているんですかね……」」

 

娘娘猫はツッコミを放棄し、呆れた眼で二人を見るのでした。

 

◇◆◇

【ギルド総本山/麓・工房・入口 [現地時刻 朝】

 

ですが工房に籠っているわけにもいかず。準決勝の準備をしなければいけません。

 

最重要としてはギルド主任に合う事。時点で自身か、戦鋼の強化と言ったところです。

 

「なので、外に出てもいいですか」

「まずは行先を教えて貰おうか」

 

入り口で私を阻むのは、金髪イケメン騎士のギルド職員。

 

磨き上げられた、シルバーの大鎧は大きな体格に、大フィットしています。

 

「えっと、頂上の教会に行きたいのですが」

「現在、ギルド主任とは面会拒絶をさせてもらっている」

 

「えっと、自分のステータスが見たいと思いまして……」

「なら同行しても構わないか」

 

「別に魔物に襲われる心配もありませんし」

「魔物はいなくても、襲われる人が出るかもしれないからね」

 

右に一歩踏み出すと、右に現れる彼。

 

「いやいや、街中にそんな乱暴者がいるハズがないですよ」

「まあ、そうかもしれないけどね」

 

左に一歩踏み出すと、左に現れる彼。

 

「ど、同行しない、という選択肢は」

「竜でも攻めてこない限りはない、かな」

 

「か弱い少女のプライバシーを守ってくれてもいいんですよ」

「僕たちが第一にする少女は君じゃないからね」

 

彼の胸に付けられた、印がゆれます。

 

それはギルドの中でも、“面倒な連中”の証。

 

「僕たちは聖女直属のお抱え冒険者。彼女の健康の為に、無理でもついていくよ」

「そんな人物と知り合ったわけでもないんですが……」

 

「でも、彼女が胃痛で倒れそうになっているのは見てられなくてね」

「なら、看病のために彼女の近くにいた方が……」

 

イケメン騎士は、すがすがしい顔で、私にいいます。

 

「────それとも、僕たちがついてこない方がいいのかな」

 

完全に見透かされた私の考え。

 

ギルド内部に行けば、撒いてしまえるという、下心はお見通しのようです。

 

「まさか、そんなことがあるワケないじゃないですか」

「ははは、そうだよね」

 

表面上は笑っていますが、内心はかなり困っています。

 

2日前から、彼らが現れたせいでギルド主任と会うことは出来ず。

 

準決勝:獣王戦のための、作戦を話し合う事すら出来ていません。

 

「君の考えは分るよ。でもこれ以上、彼女に迷惑をかけて欲しくもないんだ」

「じゃあ、アナタが借金を払ってくれるというのは」

「流石にそれは出来ないけど、それ以外のことならなんでも」

 

イケメン騎士は微笑みます。その美貌は、年頃の少女ならイチコロと言ったモン。

 

ですが、ここには碌でもない少女しかいません。

 

「今、なんでもと言ったわね」

 

イケメン騎士の言葉を聞いて、忍び寄るはツインテール。

 

彼女はうきうきで、綺麗な手を差し出します。

 

「────じゃあ、その鎧を置いていきなさい」

 

「あのー、ツインテさん……?」

「ウチで武器作る為のインゴットが足りないのよ。武器でも防具でもなんでもよこしなさい」

 

無言になるイケメン騎士。

 

彼は思っているハズです。騎士には二言は無いけど、この子容赦もないな、と。

 

「すまない、これは高い装備でな」

「まさか、こんだけ人に迷惑かけてて、詫びの一つも渡さない気かしら?」

 

「よ、予備の装備で勘弁してくれないだろうか」

「防具脱いで、アンタが予備の装備を着ればいいじゃない」

 

「なら名工が作った剣ぐらいで許してくれないだろうか」

「名工が作った盾もよこしなさい。ニャン子のじゃ話にならないから」

 

その場で武具を摘発され、がっくりとうなだれるイケメン騎士。

 

見ただけで高そうな武具でしたし、彼にとっても安くない出費のハズです。

 

「あの、なんか……すみません」

「大丈夫だ。僕の犠牲で彼女が守られるなら、安いものなんだッ……」

 

ぐっと血涙をながしながら、つぶやく、イケメン騎士。

 

「別に断っても良かったと思いますけど」

「君たちに迷惑をかけているのは事実だからね」

 

頂上の教会を見つめ、彼は“仕方ない”と笑います。

 

その笑顔は彼の信念をどこまでも反映したものでした。

 

「それに────頑張っている少女をないがしろにするのは、僕の美学に反するのさ」

 

発言は重く、どこまでも彼を縛り付けている信念(モノ)

 

彼がその気になれば私達を殺すことは出来ますし、それが聖女の胃痛を解決する一番の方法です。

 

ですが、そうしないのは彼女の意志であり、彼の信念でもあります。

 

そんな事にすら、流し聞き半分できいていた私は気付かないのでした。

 




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