【ギルド総本山/麓・工房・内部 [現地時刻 朝】
────4日後
工房内には、大量の破材、鉱石、皮が置かれており、現在倉庫として利用されています。
最初に来た時よりも、汚くはなったが工房らしくなった場所。
「ニャニャ、キイロニャ見てニャ」
黒いススをつけた顔で寄って来るは、娘娘猫。
「どうしたんですか、娘娘さん」
キイロと呼ばれた
娘娘猫さんの肉球に挟まれているのは、今日の朝刊。
「新聞に準決勝の話がのっているニャ」
「わざわざ、買って来たんですか?」
「ニャ、偶々配っていただけなのニャ」
視線をそらしながら、新聞をひろげる、娘娘猫。
彼女の猫足が汚れていることから、中腹まで買いに行っていたのでしょう。
「へー、大会の優勝候補は“獣王”ですか」
「凄いニャ、表の一面をつかっているニャ」
「今まで見た獣人の中でも、かなり凛々しい顔立ちですね」
新聞には、上半身に鎧をきて、腕を組む獣人の男性写真。
ライオンを彷彿とさせる顔は、すがすがしいほど前を向いています。
「────そんな野郎より、私達の活躍はどうなってんのよ」
「ニャ、ツインテニャか」
「今仕事が終わったばかりよ、ニャン子」
疲れた目でこちらを見るは、ツインテさん。
自慢のツインテールは今日もへにゃへにゃになっています。
「で、もう一度聞くけど、私達の活躍は?」
「ちょっと、なんのことかわからないニャ」
眼をそらす娘娘猫。
「ニャン子、こっちをみていいなさい」
「落ち着いて、ここまでの行為を思い出して欲しいニャ」
娘娘猫の言葉に首をかしげる二人。
私とツインテさんは、いままでの対戦を思い出します。
「これまでの行為って、三回戦と四回戦に勝ったことかしら?」
「べつに普通に勝っただけですよね」
「ホントかニャ……」
「三回戦目は相手が魔力切れて勝ったし」
「四回戦目はキチンと戦いましたよ」
「じゃあ、前日日に何をしてたニャ」
「確か、三回戦目前はコロシアム障壁に細工して」
「四回戦目前は、装備をルールに抵触させるようにすり替えに」
うんうんと頷く、二人。
まるでここまでの工程は険しく、私達は精一杯頑張った────努力の結晶のように。
「いやー、大したことはしてないですね」
「全くよ、普通に大会に参加しただけじゃない」
「もうすでに手遅れだったニャ」
娘娘猫が開いた新聞。
内部には“借金王ゴンス”暴かれざる悪行ッ、という記事が一面に。
「凄いですね、真実の中に嘘が混ざってます」
「確かに。大半が真実だけど、これとか嘘じゃない」
宿屋を爆破したりはしましたが、別に中の金品を奪ってはいませんし。
コロシアムまで地下トンネルを作って侵入はしましたが、食べモノを盗むためではありません。
「そろそろ、反省した方がいい気がするニャ」
「反省して勝てるんなら、反省するわよ」
「お天道様もびっくりな言い訳なのニャ」
新聞の次のページには、対戦表と各選手の倍率が。
「へー、トトカルチョなんてあるんですね」
「でも参加者が賭けれないとかシケてるわね」
次の準決勝。対戦相手は獣王さんです。
もちろん、トトカルチョ(勝者予想)は獣王さんの圧勝。
「ニャン子、アンタが賭けてきて儲けてきなさいよ」
「そんな金がそもそもないニャ」
「そこはお得意の借金よ」
「ニャは必要な時以外、借金をしない性格ニャ」
新聞の記事で盛り上がったり、次の獣王さんについてアレコレ話す私達。
そんな様子に、娘娘猫は呆れた視線を向けます。
「てか、ニャ達はこんなところで呑気にしてていいのニャ?」
「別に呑気にしたいわけじゃないわよ」
「私だって、明日の準決勝の準備とか色々したいんですが……」
少女たちは窓の外を見ます。
そこには厳重に配置されたギルド職員。内部に重大犯罪者がいるかのような配置です、
「「いやー、なんで、こんな厳重な警備をされているんですかね……」」
娘娘猫はツッコミを放棄し、呆れた眼で二人を見るのでした。
◇◆◇
【ギルド総本山/麓・工房・入口 [現地時刻 朝】
ですが工房に籠っているわけにもいかず。準決勝の準備をしなければいけません。
最重要としてはギルド主任に合う事。時点で自身か、戦鋼の強化と言ったところです。
「なので、外に出てもいいですか」
「まずは行先を教えて貰おうか」
入り口で私を阻むのは、金髪イケメン騎士のギルド職員。
磨き上げられた、シルバーの大鎧は大きな体格に、大フィットしています。
「えっと、頂上の教会に行きたいのですが」
「現在、ギルド主任とは面会拒絶をさせてもらっている」
「えっと、自分のステータスが見たいと思いまして……」
「なら同行しても構わないか」
「別に魔物に襲われる心配もありませんし」
「魔物はいなくても、襲われる人が出るかもしれないからね」
右に一歩踏み出すと、右に現れる彼。
「いやいや、街中にそんな乱暴者がいるハズがないですよ」
「まあ、そうかもしれないけどね」
左に一歩踏み出すと、左に現れる彼。
「ど、同行しない、という選択肢は」
「竜でも攻めてこない限りはない、かな」
「か弱い少女のプライバシーを守ってくれてもいいんですよ」
「僕たちが第一にする少女は君じゃないからね」
彼の胸に付けられた、印がゆれます。
それはギルドの中でも、“面倒な連中”の証。
「僕たちは聖女直属のお抱え冒険者。彼女の健康の為に、無理でもついていくよ」
「そんな人物と知り合ったわけでもないんですが……」
「でも、彼女が胃痛で倒れそうになっているのは見てられなくてね」
「なら、看病のために彼女の近くにいた方が……」
イケメン騎士は、すがすがしい顔で、私にいいます。
「────それとも、僕たちがついてこない方がいいのかな」
完全に見透かされた私の考え。
ギルド内部に行けば、撒いてしまえるという、下心はお見通しのようです。
「まさか、そんなことがあるワケないじゃないですか」
「ははは、そうだよね」
表面上は笑っていますが、内心はかなり困っています。
2日前から、彼らが現れたせいでギルド主任と会うことは出来ず。
準決勝:獣王戦のための、作戦を話し合う事すら出来ていません。
「君の考えは分るよ。でもこれ以上、彼女に迷惑をかけて欲しくもないんだ」
「じゃあ、アナタが借金を払ってくれるというのは」
「流石にそれは出来ないけど、それ以外のことならなんでも」
イケメン騎士は微笑みます。その美貌は、年頃の少女ならイチコロと言ったモン。
ですが、ここには碌でもない少女しかいません。
「今、なんでもと言ったわね」
イケメン騎士の言葉を聞いて、忍び寄るはツインテール。
彼女はうきうきで、綺麗な手を差し出します。
「────じゃあ、その鎧を置いていきなさい」
「あのー、ツインテさん……?」
「ウチで武器作る為のインゴットが足りないのよ。武器でも防具でもなんでもよこしなさい」
無言になるイケメン騎士。
彼は思っているハズです。騎士には二言は無いけど、この子容赦もないな、と。
「すまない、これは高い装備でな」
「まさか、こんだけ人に迷惑かけてて、詫びの一つも渡さない気かしら?」
「よ、予備の装備で勘弁してくれないだろうか」
「防具脱いで、アンタが予備の装備を着ればいいじゃない」
「なら名工が作った剣ぐらいで許してくれないだろうか」
「名工が作った盾もよこしなさい。ニャン子のじゃ話にならないから」
その場で武具を摘発され、がっくりとうなだれるイケメン騎士。
見ただけで高そうな武具でしたし、彼にとっても安くない出費のハズです。
「あの、なんか……すみません」
「大丈夫だ。僕の犠牲で彼女が守られるなら、安いものなんだッ……」
ぐっと血涙をながしながら、つぶやく、イケメン騎士。
「別に断っても良かったと思いますけど」
「君たちに迷惑をかけているのは事実だからね」
頂上の教会を見つめ、彼は“仕方ない”と笑います。
その笑顔は彼の信念をどこまでも反映したものでした。
「それに────頑張っている少女をないがしろにするのは、僕の美学に反するのさ」
発言は重く、どこまでも彼を縛り付けている
彼がその気になれば私達を殺すことは出来ますし、それが聖女の胃痛を解決する一番の方法です。
ですが、そうしないのは彼女の意志であり、彼の信念でもあります。
そんな事にすら、流し聞き半分できいていた私は気付かないのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字報告があると作者が喜びます。