紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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75 少女と昼飯とイケメン騎士

【ギルド総本山/麓・屋外ハンバーガーショップ [現地時刻 朝】

 

店の外には、白いパラソルが並んでいます。

 

青空からさしこんだ陽光はパラソルに降りそそぎ、地面に影を2つおとしています。

 

1つは男性です。犬耳のついたイケメン騎士の前には、飲み物が1つありました。

 

1つは山ですね。積み上げられた紙袋でつくられた、山がありました。

 

「あの、君、結構食べるんだね……」

 

イケメン騎士は、頬をひきつらしながら、声をもらします。

 

彼の視線のさきには────ごそごそ、もごもごと動いている山。

 

「もぐもぐ?(そうですか?)」

 

そんな山からは、少女の声が聞こえてきます。

 

「ああ、僕の想像の30倍は食べてるよ」

「もぐもぐ(うまい)」

 

「そろそろ……」

「もぐもぐ(さて、次のハンバーガーは……)」

 

紙袋の山から、小さな手が生えて、ハンバーガをとりだし、山のなかにひっこみます。

 

1時間前から、すでに数十回以上おこなわれている光景。

 

そしてその元凶こと、金髪片角少女(わたし)はハンバーガーをほおばります。

 

「たしかに、僕のおごりとはいったけど……」

「もぐもぐ (それは本当に感謝してます)」

 

「ちょっとは遠慮をしたりとかは」

「もぐもぐ(男の二言は聞きたくないですね)」

 

私は当然のもぐもぐをします。

 

最近は満足に食べれる機会が少なかったのもあって、いつもより食べれます。

 

それもこれも、毎回かさんでいる戦鋼の修理費が悪いともいいます。

 

「もぐもぐ(大丈夫です。流石に限度はわきまえています)」

「なら、もう食べ止めて欲しいところなんだけど……」

 

じゃっかん顔が青くなりつつあるイケメン騎士。

 

さきほどから個数を気にしているようですし、金銭的にはだいぶきついのかもしれません。

 

「もぐもぐ(しかたないですね)」

 

私は口の咀嚼のペースを落として考えます。

 

流石に、おごってもらっておいて迷惑をかけるのは、あれですし。

 

ここは彼の意見と、私の気分を折半と言うことで勘弁が、妥当でしょうか。

 

「よいしょっと」

 

私は紙袋の山から顔をだして、結論をしゃべります。

 

それに気づいたイケメン騎士は、明るい顔になり、

 

「────ついに、食べ終えてくれたかい」

 

「────すみません、10個追加でお願いします」

 

テーブルに頭をぶつけるのでした。

 

いや、次に食べるのがなくなりそうだったので、追加の注文をしただけなのですが。

 

どうやら、イケメン騎士にあらぬ期待をさせてしまったようです。

 

「その、あの……わかったってなんだろうね」

「妥協の10個です」

 

「どこらへんが妥協をしているのかい」

「気持ち30個は余裕です」

 

「妥協……妥協か……本当にか……」

 

イケメン騎士の頬はひきつりすぎて、もはや笑っているようにみえます。

 

しかたないので、テーブル上の飲み物を飲むことを推奨しておきましょう。

 

水分をとれば、きっと彼の乾いた表情もマシになるでしょうし。

 

「まったく……君のような少女は初めてだよ」

「もぐもぐ (褒め言葉として受け取っておきます)」

 

さて、食べ終わるまで時間がかかりますので────なぜ、ハンバーガを食べているのかの説明をしておきます。

 

①私たちはギルドに向かいました。

②途中で私のお腹が鳴りました。

③イケメン騎士が軽い昼飯を提案してくれました。

 

なぜ異世界にハンバーガー屋があるのかは、分かりません。

 

「ふ、ふふ、もう喜んでいる少女の姿を見れたから、満足としておくか」

 

諦めきったイケメン騎士は、一周回って、げっそりとした顔から、いつもどおりのイケメンな顔に戻ります。

 

分かりやすく言えば、“警戒度”がすこしだけ落ちたような顔でしょうか。

 

どうやら、私の行動で毒気がぬかれたようです。

 

「もぐ、ごっくん────とてもおいしかったです」

 

「そう、か────口に合って良かった。僕にはなじみのない店で心配をしててね」

 

彼の言葉に疑問をもちます。

 

ここは総本山の中腹。ギルドの冒険者なら口にしそうなものですが。

 

「あまり、こんなモノを食べないんですか」

「ええっとね。僕は壁の上で警備をしているからね。食べる機会が少ないんだ」

 

彼が視線を向けるは、麓を囲うように作られた、白い大壁。

 

どこまでもつづく大壁は、街を守るように、そびえ立っています。

 

「守る必要はなさそうなほど、立派ですけど」

「どちらかと言えば、壁に付けられた武器の警備が必要でね」

 

「武器ですか?」

「そうそう、まあ巨大な大砲と言った方がわかりやすいかな」

 

「へー」

「興味がなさそうだね」

 

私的にいいますと、で、と言った感じです。

 

どうせ異世界の大砲とかあれでしょ。ちょっと口径がでかい、海賊船にのってそうなやつでしょ、といった気持ちです。

 

「見て見ると、結構かっこいんだけどね」

「壁の上にあるのを語られましても」

 

「そろそろ整備の時間だし、ここからでも見えるんじゃないかな」

「ここからでも見えるってどれだけ大きいんですか……」

 

呆れる私を尻目に、イケメン騎士は、壁の上部に視線をむけます。

 

つられて、私もそこに視線を向けると、

 

壁には凹になった場所があり、上層部がスライドして、内部があらわになっていきます。

 

「あれ?」

 

見えるのは、黒光りする砲身。

 

「あの、ちょ、ちょっと、思ってた大砲と違うというか」

「まあ、勇者様が残した遺物だから見慣れないモノではあるね」

 

それが3門。後ろには、重量をしかない甲板。

 

馬鹿デカい前盾に支えられる21mの砲身長。

 

それを3つ兼ね備えた砲塔は、

 

「────46cm3連装砲」

 

それは異世界にはないものでした。

 

「凄いね。よく正式名称を知っているね」

「いや知ってるというか、なんというか」

 

それはかつて日本を救った戦艦。

 

第一次異世界大戦で獅子奮迅の活躍をし、第二次は修理中ながらも敵に突撃し、せとない海に沈没した、戦艦の主砲。

 

現在は博物館の地下から、海底に沈んでいる様子が確認できます。

 

「いや、なんでそんなモノが付いているんですかね」

「100年前、大壁を作る時に取り付けられた、という話だよ」

 

異世界で100年前ということは、日本での製造年月のだいぶ昔のハズ。

 

とすればついているのは偽物の砲身ということになるのでしょうか。

 

「そんな昔に、いったい何を考えて……」

「それは、ね」

 

イケメン騎士の視線は、背後の建物たちにむきます。

 

「きっと、後ろの街を何としても守りたかったんじゃないかな」

「この街をですか」

 

「僕もいつか、そうなりたいと、そう憧れずにはいられなかったのさ」

「だから大壁の警備を?」

 

「あ、まあ……そんなところかな」

 

ほほをかいて気まずそうにする、イケメン騎士。

 

彼は恥ずかしさを消すように、伝票を机からとります。

 

「さて、君にも予定があるんだろ」

「別にツケにしてもらっても構わないですよ」

「男に二言はないからね」

 

彼は満足そうに笑い、私は紙袋に埋まった席から立ち上がるのでした。




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