食事をすました後、
中腹の街をぬけて、山頂への階段に足をかけようとするのですが、ここで問題点が1つ。
「そろそろ、通してくれませんか」
「そう言われても、これも仕事だ。許してほしい」
ギルド入口は、頂上にあるんですが、現状────前に進もうとすると、犬耳のイケメン騎士に阻まれます。
具体的には、階段を登ろうと、前に行きます。
「悪いけど、これ以上は通せないよ」
ならば、と右に行こうとすると、
「右にもいかせないよ」
では、左に行こうとすると、
「左にもいかせないよ」
何度やっても、イケメン騎士が阻んできます。
こんなことをするぐらいなら、私を牢に入れていた方が早そうですが、そうしないのは彼のポリシーなのでしょう。
それは────ずいぶん、甘く見られたものですね。この程度は突破できない私だと思っているのでしょうか。
足に力を込めて、体を左右にふり、鋭く放つ声は、
「いきますよっ! 右、と見せかけて、左っ!!」
と見せかけて、実際は中央突破ぁっ!!!
「いいフェイントだね。だけど体格差は覆せないかな」
イケメン騎士は、回答といわんばかりに、手を広げ、大きな体をつかって、全ての進行方向を塞ぎます。
そして、私の小さな体はしっかりとブロックされます。
「フェイントをかけるなら、もう少し陽動する必要があるね」
「くっ、体格差さえ、なければ、こんな壁」
ばしばしと彼を叩きますが、金剛石のように彼の鎧は硬いです。
結局、彼に首根っこをつかまれて、空中で足をばたばたさせる結果となりました。
「ぐぬ、いったいなんでこんな事を」
「理由は二つあってね。1つは君をギルドにいかせないためなんだけど」
「それが大部分を占めてそうな理由ですね」
「いいや。もう一方も大きな理由だよ」
イケメン騎士は、申し訳なさそうな声でしゃべります。
「もう1つは、ギルドの面倒な冒険者が「見つけたぞ巨人族の取り巻きッ!」────ちょっと目立ち過ぎたか」
私達を指さして、声をあげるのは。白い布を被った人物。
正体不明の人物は、声を張り上げ、幾何学的な魔方陣にさけびます。
「各員集合、巨人族の取り巻きと思われる少女を発見、報告します」
すると数秒も経たず、わらわらと現れる、白い布の集団。
彼らは、私達をかこむように一定の距離をとり、沈黙しています。
「これは何の集団ですか」
「ギルドの冒険者のあつまり、なんだけど」
私の疑問に答えるように、白い布の人物が、1人声をあげました。
「────神聖な大会に、不正をはたらく巨人族に、裁きを」
すると、誰かが声をあげました。
「────公平な決闘に、不正をもちこむ巨人族に、裁きを」
するとすると、どこかで声があがって、
「────我々の平穏を、脅かす巨人族に、裁きを」
白い布のみんながそれに同調をはじめていきました。
「「「────粛正、粛正、粛正ッ!!!」」」」
彼らは、地面を踏み鳴らし、我々を威嚇するように、にじり寄ってきます。
まるで誰かがすすんでいるから、自分も進むといった、意志なき行進です。
「とても冒険者には見えませんが」
「ギルドの派閥とでも思ってくれればいい」
「派閥というより、随分カルト的ですね」
「実際、宗教には近いよ。ただ彼らには信仰するものも、理念もないけどね」
彼らは、白の教徒といいます。白、という名を使っているのは、聖女の威光にあやかるため。
教徒という言葉をつかっているのは、親しみをもたせやすくするため。
要約すれば、数だけが多い、低レベル冒険者派閥です。
「せめて、顔ぐらいみせて喋れないものなんでしょうか」
「彼らの大半が低レベル冒険者達だからね。特定を恐れているんだよ」
「特定されたら、何か困る事でも?」
「いくら死なないといっても、仕事が来ないと困るからね」
「それは、なんというか……卑怯な連中ですね」
「うん、いや、まあ、そうだね」
力強くいう私に対して、それを君がいうのか、といった顔になるイケメン騎士です。
もちろん、私の言葉に反応するのは、白い教徒の方々もです。
「先から聞いていれば、我らへの侮辱ばかり」
「やはり愚かな戦術をつかう連中は、心まで愚かッ」
「やはり高レベルになると他人を見下すことしかできないのか」
「「「────愚か、愚か、愚か」」」
同じ言葉をくちにする白の教徒たち。
彼らを見て、イケメン騎士は言います。
「彼らの言葉には耳を貸さなほうがいい。なにせ内容のないことしか言わないからね」
「なんだ、聖女の犬風情が。我々のなにを理解しているというのだ」
「君達が特定されないのをいいことに、暴力的なことぐらいかな」
「暴力だと?。違う、これは抑圧からの、反抗だ」
1人が大きな声をだすと、彼らは続けて叫びます。
「我々は代弁者なのだ」
「そうだ。日々、力を見せつけ、従わしているものとは違う」
「ギルドのレベル主義者たちとは、同じにしてくれるな」
「「「────そうだ、そうだ、そうだ」」」
熱狂的にあらぶる白の教徒たち。
一体なにが、彼らをそこまで駆り立てるのでしょうか。
「で、結局、何用ですか」
「用だと? 我々は粛正をしに来たのだ」
「粛正? される筋合いも、理由もない気がしますが」
「貴様たちの戦いは、卑怯、愚劣。戦士の風上にも置けない」
「えっと、はい……?」
「巨人族は悪しき種族。それが勝つという、観衆の気持ちを考えたことはあるかッ」
支離滅裂な発言を繰り返し、それがまるで正当であるかのように言う、白の教徒たち。
ほかの連中も、同じようなことを叫ぶだけで、壊れた人形みたいですね。
「私の言葉って、彼らに通じているのでしょうか……」
「通じているさ。まあ彼らが都合のいいように解釈をしていると思うけど」
呆れた気持ちで眺めることしかできない、私とイケメン騎士。
どうやらその様子が、彼らの癪に障ったのか、
「どうやら巨人族と仲良くする連中には言葉でいっても無駄だ────総員、力ずくでこの女をわからせろ」
「「「暴力、暴力、暴力!!!」」」
雄たけびを上げて、一斉にとびかかってくる、白の教徒たち。
イケメン騎士と、私は、腰をおとして拳を構えます。
「やっぱりこうなるか」
「どうします? 逃げますか?」
「逃げるには、ちょっと数が多いかな」
気付けば、周囲をぐるっと取り囲むように。
2重にも、3重にも、白の教徒たちが襲い掛かってきていました。
「本当に数だけは多いで「ならば、我々が助太刀しましょう」「同意」「しかたない」────今度は、誰ですかっ」
声がする方向は、私の背後。
影に紛れるような黒い布を着込んだ連中は、どこからか現れ、何故か加勢をしてくれます。
「なんだ貴様ら「遅い」────ぬわぁ」
「我々の「邪魔」────ぐわぁ」
「こ「どけ」────ぐえぇ」
ぎったんばったん。一太刀で倒され、地面になぎ倒されていく、白の教徒たち。
「三流共が、ゴンス様の邪魔をするではないわ」
「理解不能な連中」
「不敬」
みるみると、教徒たちの人の山ができていきます。
「あの、彼らはまず味方なんでしょうか」
「おそらくは……だね」
「そのおそらくの意味は」
「少なくとも彼らはギルドではブラックリスト入りするような、悪党なんだけど」
イケメン騎士いわく、上から、盗賊、殺人鬼、殺し屋。
ギルドの冒険者でありながらも、ブラックリスト(蘇生対象外)に入ったり、懸賞金がかかったりする悪い方々です。
「もう直接聞いてみますか」
「どうせ金でしか動かない連中だ、理由を期待するだけ無駄だと思うけど」
渋い顔をするイケメン騎士を放置して、私はサーカスの仮面を被った老人に声をかけます。
「あの、すみません。ありがたいんですけど、なぜ助けてくれたんですか?」
「ほう、我々を怖がらないとは、流石ゴンスの嫁殿です」
「うん、嫁?」
あれ、なんか聞いたことのない話が聞こえますね。
「大丈夫ですぞ。我々が敬意を持っているゴンス様の嫁殿には一切の傷をおわせません」
「いや、心配しているのはそこではなくてですね」
「もしや、この間にも他の女に取られる心配ですか? 大丈夫ですぞ、工房にも部下をつけておきましたので」
「ありがたいですけど、本当に違いますからねっ」
────おかしいですね。話を訂正しようにもどんどんおかしな方向にもっていかれます。
そして、私があたふたしている間にも、状況は妙な方向に。
具体的には、白の教徒がぽつりと呟き、
「やはり、ゴンスがロリコンという話は本当だったのか……」
「噂によれば、来た日すぐに猫耳の少女を手籠めにしたそうだ」
「やはり巨人族はあそこもでかいのか、少女はでかいといいのか……許せねえ」
どんどん話が拗れていき、
「「「────粛正、粛正、粛正」」」
サーカス仮面の老人が楽しそうに便乗して、
「そうですとも────我々が敬意をもっている、ゴンス様は、とてつもない性豪」
なんか微妙に間違っていない話を始めます。
「小鬼、猫人族、耳無しに飽き足らず、ギルドのババアまで手をだすとは、このサーカスをもってしても、見抜けませんでしたぞ」
「うん、いや、あの」
「大丈夫ですぞ。このサーカス一派、ギルド闇派閥が、確実にお守りしますので」
「いやそうじゃないっていうか」
丁寧に敬礼をして、挨拶をしてくれるサーカスさん。
後ろのほうでは、他の2人が白の教徒を抑えててくれます。
「ささ、このような場所ではなく、安全な場所へいきましょう。嫁殿」
いや、嫁殿ではないんですが……。
そんなツッコミも間に合わず、私は、サーカスさんの拠点こと、ギルド闇派閥の本拠地に連れていかれるのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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