紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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78 少女と思考と作戦

【ギルド総本山/地下/屋敷 [現地時刻 昼]】

 

サーカスの老人と、イケメン騎士は丸机のまえにたっています。

 

「では、肝心の作戦をどうするかですな」

「僕としては大人しくしてほしいところなんだけど」

「私も同じ気持ちですが、嫁殿は違う様子ですからな」

 

金髪片角少女は、机に置かれた地図とにらめっこをしていました。

 

すでに提案した案は10を越えます。ですが、そのどれもが現実的ではないとボツになりました。

 

「ぐぬぬぬぬ」

 

すでに私の頭はオーバーヒート気味です。

 

「こんな時に────がいれば」

 

ふいに口に出るのは、名前すらわからない人物への頼り癖。

 

私はいったい誰の力を求めているのでしょうか。

 

「サーカス、彼女の力になるなら、もう少し助けてはやらないのかい?」

「私としても嫁殿が地下にいることに異議はありませんからね」

 

「だとしても、彼女が相当、煮詰まっているように思えないかい」

「騎士様はずいぶん優しいですねえ」

 

サーカスの老人はしかたないといった口調で、私に声をかけます。

 

「いいですか、自分の力というものはどこかで限界がくるものです」

「限界、頭が、?」

 

「ようは考え方です。視点を他者として考えてみるものですよ、嫁殿」

「言葉がまわりくどすぎて、わからない、です」

 

ちんぷんかんぷんな私に助け舟をだすように、イケメン騎士が口をひらきます。

 

「ようは、他人の思考を模倣してみろってことだと思うよ」

「思考を模倣?」

 

「そうそう。人間には得意不得意があるからね。得意な人間になって考えてみるってことかな」

「それなら……」

 

私の頭に浮かぶのは────赤髪の女性。

 

彼女は呆れているように私を見てめて、仕方ないといった感じで、

 

『いいか、馬鹿『はいはい、邪魔邪魔ー』────って何をする、キサマ』

 

頭の中では、赤髪の女性が蹴っとばされて、紫髪の美人なおねーさんがでてきました。

 

『何って、ちょっと思考の邪魔かなーって』

『はぁ、私以外いないだろ、この状況で助けをだすのはッ』

 

『直進以外、辞書になさそうなのはちょっとなー』

『あァん、それは私に喧嘩を売っているのか』

 

『はいはい、帰った帰った』

『なっ、キサマこんの魔法をいつのまにッ』

 

赤髪の女性は、脳内からログアウトするように消えていきます。

 

そして最終的に残ったのは、美人なねーさんこと、ギルド主任でした。

 

『というわけで、美人で誠実なおねーさんの、授業のはじまりはじまりー』

「あれ、おかしいですね、このイメージ」

 

なんか楽しそうにウィンクしてますし、ほんとにコレ脳内の話なんでしょうか。

 

細かいことは気にしないとばかりに、ギルド主任(妄想)は口を開きます。

 

『いい、こういう時は、ちゃぶ台をひっくりかえす────これが一番』

「ちゃぶ台をひっくり返す?」

 

『例えば、自分が悪、相手が正義なら、この条件をひっくり返すみたいにね』

「な、なるほど」

 

ざっくりとした表現ですが、いいたいことはなんとなく理解しました。

 

『まっ、これはまだ初級だから、やる気があれば今後ともよろしくー』

「えっ、初級……どゆこと」

 

『ちなみに、あまり一人で話していると心配されちゃう、ぞ』

 

美人なおねーさんのウィンクによって、現実の感覚がひき戻される私。

 

はっとしたとき、周囲には、笑っているサーカスの老人と、真剣に心配してくれるイケメン騎士の2人がいました。

 

「いや、別に独り言を話す、ヤバい奴とか、そんな癖はないですからね⁉」

 

口からとびでる慌てたような私の発言。

 

同じようなことを昔よく言っていた気がしますが、なぜでしょうか。

 

そんな気持ちになりながら、思いついたアイディアを説明する、私でした。

 

【ギルド総本山/地下/屋敷 [現地時刻 昼すぎ]】

 

地図には赤丸と、黒線が乱雑にかきこまれていました。

 

そして、可愛らしい字で、作戦書とかかれた書類には、内容が書き込まれています。

 

「────というのはどうでしょうか」

 

最後まで、説明を終えた私が感じたのは、疲れでした。

 

「中々に面白いですな」

「賛成できない考えだね」

 

私の計画をきいた二人の反応は、正反対でした。

 

サーカスの老人は、楽しそうに頷き、

 

イケメンの騎士は、苦い顔で腕を組んでいました。

 

「まったく、そろそろ自分の気持ちに素直になったらどうです、騎士殿」

「素直? 僕は自分にさえ真摯に向き合っているが」

 

「いいか、僕は聖女が、民が危険になることには賛成はしない。むしろこの作戦を止めてみせる」

「大いに結構ですよ。ですから、“止めるため”にも協力してもらえますな、騎士殿」

 

どういうことだい、と言った顔になるイケメン騎士。

 

サーカスの老人は楽しそうに、私の作戦書に手をいれていきます。

 

「なに、嫁殿がここまで頑張っているのですから、サーカスもこの作戦にひと捻りいれようかと」

「ちょっとまて。絶対余計なことになるから止めてくれ」

 

騎士の制止がなんのその、サーカスの老人はまずは場所の変更から始めます。

 

「まずは、せっかく優秀な冒険者がいるのですから、利用しない手はありませんよね」

 

次には、襲った後の行動。

 

「やることはもっと派手にしましょう」

「これ、派手というか、アウトなんだけど」

「そのための騎士殿ですから、頑張ってくださいな」

 

そして最後に、捕まったときの言い訳が立つようにします。

 

今回は、ギルドルールの悪用でもしますか、と老人は書類に付けたしを始めます。

 

「嫁殿は“依頼”というものを受けたことはありますかな」

「それは、ギルドで受けられる依頼ですか」

 

「そうですぞ。その中でも危険性の高いモノを“緊急依頼”として更新することがあるのですぞ」

「その話がどう関係するのですか?」

 

「緊急依頼はその性質上、冒険者にもそれなりの権利がもらえましてな」

「それは決してこういうために使うモノじゃないんだけどね」

「まあ、嫁殿の名前は、パーティにこっそり入れておきましょう」

 

そうして1時間の話し合いの結果、

 

そこには────最初とは似ても似つかない作戦が出来上がっていました。

 

「あの、私の原案はどこに……」

「はっはっは、つい老心に火がついてしまってですな」

 

快活にはっはっはと笑う老人、横には、頭を痛めているイケメン騎士です。

 

「これ僕が参加しないと絶対成り立たないものになってない」

「大丈夫ですぞ。参加しなければ、被害が増えるだけなので」

「まったく……こんな作戦書の話を聞くんじゃなかったよ」

 

諦めたようにイケメン騎士は、両手をあげます。

 

それは渋々ながらも、作戦に参加してくれるといった感じです。

 

「さて、騎士殿の腹も決まったことですし、部下には急いで準備をするように声をかけましょう」

「私も急いで準備をします」

 

「そう慌てなくていいですぞ。なんせギルドは逃げませんからな」

「ですが時間は有限なので、やっぱり急ぎますっ」

 

私がどたばたと走り出し、机上の作戦書がふわりと捲れます。

 

可愛らしい字でかかれている作戦名は────ホワイト・イーター。

 

目的は、白の教徒の排除、そしてギルドへの侵入です。

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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