紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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80 作戦決行1段階目

【ギルド総本山/外周部/大壁 [現地時刻 昼すぎ]】

 

ギルド総本山をとりかこむように、ぐるっと大壁が建造されています。

 

100年以上前に、龍王と戦うために作られた壁は、現在では役割を終えて、観光名所として人気です。

 

特に人気なのは、大壁の頂上。

 

ギルド総本山が一望でき、外のおだやかな風景も楽しむことができます。

 

観光ツアーに参加する旅行者もおおく、今日は旅行者の一団に、怪しげな連中も混ざっていました。

 

「あれ、人数が足りなくないですか?」

「ガイドさん、それならさっきお腹が痛いって、数人どっかに」

「えっ、だから頂上に着くまでにトイレはすましておいてくださいって言ったのに」

 

ツアーガイドは嘆きますが、もちろん彼らはトイレにはいっていません。

 

からんからん。名残でゆれるのは、[立入禁止]と書かれた札。

 

そこは、内部の施設につながる入口の札です。

 

────[作戦:ホワイト・イーター、1段階目]

 

階段を2つほど降りて、右に曲がった部屋には、頑丈な扉があります。

 

頑丈な扉にするくらいですから、監視用の水晶玉もついています。

 

そんな水晶玉に細工して、扉の前にあつまる連中。

 

「監視用水晶玉、動作20秒で固定できました」

「よし、俺がドアをこじ開けたら起動させろ」

 

白布に身つつんだ彼らは、白の教徒でしょうか?

 

いえいえ彼らはここまで器用ではありませんし、そもそも計画なんてたてません。

 

よく見れば────白布の端からのぞくは、黒い服。

 

彼らは白布をまとって、偽装をしている、ギルド闇派閥の方々です。

 

「いいか、間違ってもいつもの自我をだすなよ」

「大丈夫ですよ、リーダー。騙すことだけで飯を食ってますから」

 

「なら、はみ出た黒服は完璧に隠しておけ」

「ありゃ、最近動いてませんから太りましたかね」

「どちらにせよ、俺達は今から“白の教徒”だ。いいな」

 

「「「了解」」」

 

掛声を背に、リーダーと思われる人物は、ドアに魔法を描き始めます。

 

無駄に声を張り上げて、まるでドア向こうにも聞こえるように、

 

「カウントダウン、3、2,1────ッ」

 

ドアが蹴破られます。

 

内部に侵入する白の教徒(偽)たちです。

 

「動くな、白の教徒だッ」

「なんだ貴様ら、ここは砲撃コントロール室だぞ」

 

「悪いがここは、我々白の教徒が占拠させてもらうッ」

「馬鹿な、警備に雇った冒険者共は何をやっているんだ」

 

「残念だが、奴らには眠ってもらった」

「ぐっ、これでは奴らの言うことを聞かなければならないじゃないか」

 

「そうだ、お前らが言う事を聞かなければ、死よりもひどい目に合わせてやる」

「く、くっそぉ、申し訳ない聖女様……」

 

悲痛な空間。

 

整備員達は、己の無力さを噛みしめて、拳を握りしめることしかできません。

 

砲整備長は、己の無力さが嗚咽となって出てしまう程、悔しがっています。

 

彼らが沈黙している間も、時計の針はすすみ、17、18、19────

 

「────20秒経過しましたッ」

 

そんな教徒の声が聞こえて、真っ先に反応したのは、砲整備長です。

 

悔しがっていたはずなのに、この瞬間、どうしようもなく笑みを浮かべています。

 

「監視用水晶玉は?」

「完全に落ちています」

 

「映像はきちんとギルドに届いて?」

「闇派閥を舐めないでください。普段通りの映像を送っていますよ」

 

「素晴らしい」

「そちらこそ、いい演技でしたよ」

 

緊張感ある雰囲気は消えて、温和な空気が。

 

がっちりと握手をするのは、白の教徒(偽)と砲整備長です。

 

おかしいですね。彼らは敵同士みたいな関係だったハズなのですが。

 

「どうだい、闇派閥の皆さん、俺達の演技は」

「なかなかに迫真極まっていたな。闇派閥に来ないか?」

 

「わるいが、生きるも死ぬのも魔導具の中って決めてんだ」

「そいつは悲しいことを聞いちまったな。気が変わったら歓迎するさ」

 

白の教徒?たちは、白い布を脱いで、下からはギルド闇派閥の証である、黒いマントが。

 

さきほどまで絶叫していた整備員の方々は、彼らと楽しそうに会話をします。

 

やっぱり、敵みたいな関係だったのに、仲良しになっていますね。

 

一体、何が整備員をここまで突き動かすのでしょうか……?

 

「しかし、いいんですかね、砲整備長さん」

「馬鹿が、いいに決まってるだろ」

 

砲整備長は、自信満々に言い切ります。

 

「────いいか、ここから起こることは、全部、白の教徒のせいだ」

 

清々しいぐらいクソ発言。教徒のみなさんが聞いたら、無関係だッ!! と怒りそうですね。

 

ですが、悲しいことに公式記録では白の教徒のせいとなっています。

 

砲整備長は視線を上に、整備員も視線を上に、見上げます。

 

「まあ、確かにコイツを使えるなら、分かる気がします」

「だろ? 俺達が万年整備させられて撃つことができなかった、コイツをぶっぱなせる機会なんてなかなかにないからな」

 

視線の先には、鎮座する────46cm3連装砲塔がありました。

 

「よーし、総員、砲撃準備を始めるぞ」

 

砲整備長の一声で動き出す、整備員達です。

 

ギルド闇派閥の方々は、どこかと通信するために、通信魔法の準備を始めています。

 

「さあて、みせてもらおうじゃねえか、勇者の遺物の実力を」

 

砲整備長は、笑みをかくすように、整備帽を深く被るのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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