【ギルド総本山/中腹→頂上 [現地時刻 昼すぎ]】
頂上までのぼる階段は3000段越えの、難所となっています。
VIP用の転送魔法というモノもありますが、魔力を馬鹿みたいに使うため、基本は徒歩です。
そのため、麓から頂上までの運搬依頼も、冒険者に頼まれる依頼の一つとなっています。
[ホワイト・イーター作戦、2段階目]
長い長い階段には、白い布をきた連中が、ぞろぞろと歩いています。
ひときわ目立つ存在ですが、白の教徒にみなれた街の人々にとっては足を止める対象ではありません
ですが彼らが、足を、止めてじっと見て────視線の先には、のっそりとあるく白の巨体。
布の中からは“ガコンガコン”と聞こえてくる、不気味な物体です。
一体あれは何なのだろう、疑問に思う人々を────操縦席のモニターから確認する、
「めっちゃ見られているんですけど、大丈夫ですかね」
『大丈夫です。我々の妨害魔法は完璧ですから』
隣を歩く白の教徒(偽)もとい、ギルド闇派閥の方は、自信満々に答えてくれます。
隣と言っても、操縦席とでは距離がありますので、音声は通信魔法を介したものとなっています。
「あの、嫁じゃないですし、妨害魔法も完璧ではないからこうなっているという話はいりますか?」
「そういう話もありますね」
妨害魔法とは、いわゆる鑑定魔法に対するバリヤーみたいなもです。
魔法にかかっているだけで、簡単に自分の正体を誤魔化すことができるすぐれものなのですが、
より強い鑑定をうけると、バレてしまうという欠点もあります。
「今回に限っては我々が悪いのではなく、ギルドの受付嬢がおかしいと思ってほしいです」
「そうなんですか」
「そうですよ。普通、人生に取得できる魔法を鑑定なんかに使いたくはないですからね」
「でも鑑定って便利そうな魔法な気がしますが?」
「あれば便利ですが、なくても生きていける魔法です」
「いろいろな考え方があるんですね」
「何より、弱点もありますから」
白の教徒(偽)がみるのは、巨体の内部です。
白布の下には────金属の質感、傷だらけの装甲、丸っこいデザイン。
つまるところ、戦鋼【PNK2】が動いていました。
「よく工房から持って来れましたね」
「隠密行動は我々の得意分野ですから」
鑑定魔法を防ぐ手立てとしては、こうなります。
まずは妨害魔法をかけた白布。
そして戦鋼に乗ることで鑑定の精度をにぶらせるというもの。
現状、白布ごしに貫通されても、“ただの鋼”としか、表示されないハズです。
「ホントは大会まで動かしたくなかったんですけどね」
「嫁猫殿は、諦めたような顔をして貸してくれましたよ?」
「それはそれでなんというか、ダメなような気がします」
現状、モニターからは赤いエラーが消えません。
なにより、ガコンガコンと関節がきしんでいるのが、少し嫌な予感をさせてくれます。
「メインのカメラも、半分見えてませんし」
「そうなんですか? 外見上からは分かりませんが」
「外見よりも、内面のパーツはわりとどうにもならないので」
モニターからは、右側の階段と向こうの建物ぐらいしか見えていませんね。
はぁ、と小さくため息をつきながら、ふと、気が付きます。
「あの建物にはられている張り紙は」
「見ない方がいいですよ」
紙には────悪しき巨人を倒せ、と書いてありました。
下にはゴンスさんの悪行映像が載っています。
「手の込んだ張り紙ですね」
「街中にはられているので、我々で回収中ですよ」
どうやら闇ギルドの皆さんで回収を頑張っている様子。
ですが、撒かれた数が膨大ですし、市民が協力しているとあっては回収は困難を極めることでしょう。
彼らの善意に頼るのは悪い気がしますし、これは私たちの問題です。
「別に無理に回収してもらう必要はありませんよ」
「いえ、我々が保存用に取っておきたいので」
「こう、善意的なモノではなく」
「善意? 我々は己の為にやっていますが」
彼曰く、水晶玉が映した映像は、買い取るのに、結構な額がするそうです。
それをタダで配ったあげく、布教用や保存用すらも配ってくれる。
これはもう、集めるしかねぇ! とのことです。
「どうしました、嫁殿?」
「いえ、なんでもないです」
すこし笑ってしまった自分を誤魔化すために、せき込んでおきます。
「もしや、体の方に異常が……」
「大丈夫です。ちょっとむせただけですよ」
「ならよろしいのですが」
「はい。それに頼もしい方々がいるので安心ですよ」
ちょっとだけ温かくなった気持ち。
この不安はきっと一時のものにすぎないのでしょう。
夏風をきって巨体はすすみ、教会の屋根が見え始め、いよいよ階段は終わりを迎えます。
ついた頂上に鎮座している教会の名は、ギルド総本山。
私の気持ちから始まった行動は、予想以上に巻き込んで、大きな事になろうとしていました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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