紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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82 作戦決行2段階目・改(聞いてないっ)

【ギルド総本山/頂上/入口 [現地時刻 昼すぎ]】

 

金髪片角少女(わたし)が駆る、戦鋼のモニターには警備兵が映ります。

 

ざっと十人ぐらいが、ギルドの教会入口を封鎖するように並んでいます。

 

警備兵はベテラン冒険者から選出されており、いいガタイにいい武器をもっていますね。

 

彼らは、もちろん強気に命令をしてきます。

 

「貴様ら、さっさとここから去れッ!」

 

集団で現れた私達に投げられた言葉。

 

対して、私達は横一列に並ぶことで、彼らへの回答とします。

 

「なんだァ? ぞろぞろと並んでギルドに喧嘩を売るつもりか?」

「我々は通してもらいたいだけだ」

 

一人の白の教徒(偽)が答えます。

 

「無理に決まっている」

「何故だ」

 

「第一、我々の使命は怪しい集団から、ギルド入口を守ることだ」

「我々がギルドで登録された冒険者だとは、知っているはずだろ」

 

「ちっ、だとしてもだッ‼」

 

妙に歯切れが悪い警備兵たち。

 

彼らは、命令なんだから仕方ないだろといいたそうです。

 

「それに、アレを見てみろ」

 

警備兵は入口横のテントをさします。

 

テントには冒険者の列ができており、1人1人、鑑定魔法を受けています。

 

「────現在、鑑定魔法を受けていない者は、ギルドへの侵入を禁じている」

 

まるで、私が知っている作戦を読んでいたような措置です。

 

「卑しいことを考えていないなら、おとなしく鑑定を受けてもらおうか」

「断る。なぜ貴様らの無能を呈すような所業に付き合わなければならない」

 

「無能だと? この俺らが」

「ああ、鑑定魔法を使わなければ相手の正体見抜けぬ、貴様らがな」

 

売り言葉に買い言葉な発言を繰り返す、白の教徒(偽)です。

 

その狙いは“挑発”。おとなしく鑑定を受けるわけにはいきませんから、助かります。

 

警備兵としても、馬鹿にされていると感じたのか、殺気だった発言が多くなります。

 

「あァ? 顔も見せれん低レベル共が、意見か?」

「本性を現したな無能共が」

 

一人の白の教徒(偽)は、煽るように警備兵に近づきます。

 

「なんのつもりだ」

「顔に防具も付けないと警備もできない、無能共の顔をじっくり見ていたくてな」

 

ねっとりじっとりと、

 

「ちっ、さっきから言葉がうるせえぞ。殴られたいのか」

「おやおや、言うことを聞かなければ暴力しかできないのか。悲しい人間だな?」

 

理性の限界に一滴をたらすような言葉です。

 

結果は、明らか。

 

「おらよッ────雑魚冒険者が」

 

拳をふりぬいたのは一人の警備兵です。

 

一人の白の教徒(偽)は、これでもかと地面を飛んで、ホコリまみれで気絶をします。

 

他の教徒は、映像録画班の指示を見た後、応答するように列を構えます。

 

「我々に暴力をふるうとは、万死に値するな」

「仲間一人やられても達観か? 雑魚冒険者共が」

 

一触即発の空気。あとはこのまま乱戦に持ち込んで、ギルドの入口を突破する算段。

 

さて、誰から殴り飛ばそうかと考えていたところ────

 

「────落ち着けえッ」

 

私の隣にいる、白の教徒(偽)が大きな声を出します。

 

思わず戦鋼ごと、首をむけてしまう私のうごき。

 

あれ、こんなの作戦にありましたっけ?

 

「貴様ら、このお方をどなたと心得る」

「知るかよ。デカいだけの巨人族だろ、どうせ」

「不敬であるぞ。この方こそ────正当なる聖女の血筋、白の教姫であるぞ」

 

あれ、そんな設定ありましたっけ?

 

「えっ、えっ? このまま喧嘩になって中に突入では?」

「大丈夫です。ここまでは台本どおりです」

「ホントですか。作戦企画者が知らない台本とかあっていいんですか⁉」

 

慌てる私。警備兵の視線は、私に集中します。

 

ばちばちといってますから、ごりごりに鑑定魔法を使われているのが分かりますね。

 

「貴様、白の教姫といったな」

 

警備兵の一人が、私を問いただすように質問をぶつけてきます。

 

言ってない、と答えれれば楽なのですが、変な事をいって作戦を瓦解させるわけにはいきませんし。

 

助けを求めて、隣に、戦鋼の顔を向けますと、

 

「大丈夫です。それらしいことを言って誤魔化してください」

「やっぱり台本ありませんよねっ⁉」

 

「安心してください。嫁殿ならいけますから」

「どこをどう見て、安心してが出てくるんですかっ⁉」

 

あの、急に姫の対応をしろと言われましても……こっちは平民ですよっ! 一般人ですよっ!!

 

戸惑う私に、脳内から、かすかな声が聞こえてきます。

 

────いいか、私の言う通りにしろ、馬鹿。

 

「ほげ?」

『いいから、時間がない』

 

焦るような脳内の声。初めてきく声ですが、妙に安心感がありますね。

 

なんならこの声に任せていたら、大丈夫。そんな気持ちにさえなります。

 

いや大丈夫じゃないからっ……なんか過去の自分が止めてきている気がしますが、気にはしません。

 

『私は』

「私は」

 

『この世界を』

「この世界を」

 

『滅ぼす龍王です』

「滅ぼす龍王⋯⋯ちょっ、ちょっと、まってっ」

 

ケラケラと笑って消えていく脳内の幻聴。

 

私が慌てて訂正するも、時すでにおそく、

 

「なんだとッ、貴様、聖女の血縁ながらも、龍王を名乗るのかっ!」

 

警備兵に盛大に叫ばれます。

 

そしてその声は伝播して、列でっまっていた冒険者に届き、

 

「おいおい、白の教徒って実はやべーんじゃ」

「龍王ってあの伝説上の生物だろ、ほんとにいるのかよ」

「バカが勇者が殺したからいるわけねーだろ。でも、それを名乗るってことは……」

 

冒険者たちに奔る戦慄。

 

点と点を無理やり線にした考えを、警備兵が口にします。

 

「まさか、貴様のその巨体……復活した龍王か」

「そうだ。白の教姫様は龍王であらせられるぞ」

 

ハッキリと答える白の教徒(偽)。

 

堂々と答えてますけど、私は普通の人間ですからね。

 

「そうか最近起こる異常な災害、それらも全て」

「そうだ。姫様のご意向だ」

 

違いますからね。どこぞやの龍姉のせいですからっ。

 

「まさか、かつての龍王のしもべだった巨人族……ゴンスがここまで必死に戦っていたのは」

「そうだ。我々の悪行をバラそうとしていたが、間に合わなかったようだな」

 

隣の白の教徒(偽)が好きかって言ってますけど、違いますからねっ!

 

そもそもゴンスさんが戦っていませんし、理由は借金の返済とかいう俗に染まった理由ですからね。

 

そんな、私の悶えもしらずに、周りの白の教徒(偽)のテンションは絶好調に、

 

「「「我々は白の教徒、龍王の力を借りて、横暴なる上位冒険者に鉄槌を下す、存在であるッ!!」」」

 

と、宣言をします。ギルド闇派閥のみなさんって、妙なところでノリがいいですよね。

 

できればその努力を、もうちょっと別の方向に役立てて欲しかったです。

 

「嫁様、後は宣言をするだけです」

「あの、喧嘩をして入口に侵入するという計画は……」

 

「サーカスさんは臨機応変に動けとおっしゃっていましたから」

「別に順当にいっているときに、臨機応変に動き必要はないですからね⁉」

 

私がツッコミを入れている最中に、耳元の通信魔法に、別回線が割り込みます。

 

チャンネル名は大砲制圧部隊。あまりにも知らない部隊から連絡が入ります。

 

『嫁様、砲撃準備がもうそろそろで整います』

「ほう、げき? あの大壁で騒乱をおこして、陽動する作戦じゃあなかったんですか」

 

『作戦に高度な柔軟性をもたした結果、利害が一致しましたので』

「もうこれ以上は聞かないようにします」

 

私が知らないことが、あれやこれやと追加されている作戦。

 

いったいどういう意図でサーカスさんはこんな命令をしたのでしょうか?

 

「で、私は何をすればいいんですかっ」

『数分ほど時間を稼いでください』

 

通信魔法の奥からは、目標ギルド総本山入口、距離15キロ、砲塔旋回180、仰角20、といった声が聞こえてきます。

 

そして、ノイズとともに独特な金属音が、鳴り響くあたり、もう嫌な予感しかしません。

 

『その後は予定通り、“カッコいい台詞”のあとに撃ちますから』

「せめてカッコいい台詞は指定してくれませんかね」

 

『そこはセンスに任せましょう、とサーカスさんからの言をあずかっています』

「そこで急にハードルを上げてくるのは良くないと思うんですよっ」

 

思わず叫んでしまう私。このまま……いえ、慌てていても事態は好転しません。

 

ここは勇気をもって一歩踏み出し、もうどうでもなれという気持ちとともに、宣言をします。

 

「────よく聞け、私は復活した龍王」

 

声のトーンは低めに設定。できるだけ悪役っぽく聞こえるようにです。

 

「今から貴様らに、我の力を見せる」

「力、だと⁉」

 

「そうだ。かつて私が用いた力」

「まさか……あのプロミネンス・レイを」

 

「そうだ。あのプロミネンス・レイだ」

「なんてことを、世界を滅ぼすつもりか」

 

いや、ただの砲撃なんで、世界を滅ぼす威力は出ないかもしれません。

 

そもそも、どや顔で言ってますが、私はプロミネンス・レイが何なのかすら分かっていませんし。

 

まあ、それらしく戦鋼の手をかかげ、魔力を放出しておきます。

 

「嫁殿、魔法陣にはプロミネンスは紅炎、レイは粒子砲と描きます」

「ありがたいですけど、何で知っているんですかねっ」

「若いころは誰もが憧れる魔法ですから」

 

満足そうにいう白の教徒(偽)からの情報を聞き、私はたからかに魔法を宣言します。

 

更にもう一歩。気持ちは十分、放出される魔力も赤みを帯びて、気合も充填完了っ!!

 

紅炎の(プロミネンス)『うちーかた、はじめッ』粒子砲(レイ)────「ドワッン!!」」

 

掛け声とともに、大気をゆらす46cm3連装砲。

 

秒速700mの超える砲弾が─大壁から──街を越えて───ギルド入口に、

 

「警備隊長ッ、何か来ます」

「総員、防御をしろッ」

「間に合い、ま」

 

閃光が目をつつみます。

 

戦鋼の巨体をゆらすほどの爆風は、2秒以上つづき、地面に足を落とすことでなんとか持ちこたえます。

 

風が重く、重力をひしひしと感じた数秒間。耐えたあとに、モニターに映ったのは、

 

「あの、その……入口を開けるどころか、消し炭にしてません?」

 

煤けた爆砕穴でした。

 

ギルドの教会入口はもはや形を成しておらず。

 

警備兵たちは跡形も残らず消し飛んでいます。

 

黒々とした大穴だけが、ぽっかり、とギルド教会壁面に残っています。

 

「さて進みましょうか、嫁殿」

「本当にこれで良かったんですかね……」

 

私に疑問に答えるモノはおらず、みなさん、煤けた爆砕穴から中へ入っていきます。

 

そんな中、隣にいた、白の教徒(偽)が足を止めます。

 

「ちなみに嫁様」

「なんでしょう」

 

「入った後に、言う台詞も考えていてくださいね」

「えっ、まだアドリブがあるんですか……」

「当然です。突貫で作られた作戦ですから」

 

私はちょっと頭が痛くなりながら、ギルドの中に入るのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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