【ギルド総本山/頂上/入口 [現地時刻 昼すぎ]】
ざっと十人ぐらいが、ギルドの教会入口を封鎖するように並んでいます。
警備兵はベテラン冒険者から選出されており、いいガタイにいい武器をもっていますね。
彼らは、もちろん強気に命令をしてきます。
「貴様ら、さっさとここから去れッ!」
集団で現れた私達に投げられた言葉。
対して、私達は横一列に並ぶことで、彼らへの回答とします。
「なんだァ? ぞろぞろと並んでギルドに喧嘩を売るつもりか?」
「我々は通してもらいたいだけだ」
一人の白の教徒(偽)が答えます。
「無理に決まっている」
「何故だ」
「第一、我々の使命は怪しい集団から、ギルド入口を守ることだ」
「我々がギルドで登録された冒険者だとは、知っているはずだろ」
「ちっ、だとしてもだッ‼」
妙に歯切れが悪い警備兵たち。
彼らは、命令なんだから仕方ないだろといいたそうです。
「それに、アレを見てみろ」
警備兵は入口横のテントをさします。
テントには冒険者の列ができており、1人1人、鑑定魔法を受けています。
「────現在、鑑定魔法を受けていない者は、ギルドへの侵入を禁じている」
まるで、私が知っている作戦を読んでいたような措置です。
「卑しいことを考えていないなら、おとなしく鑑定を受けてもらおうか」
「断る。なぜ貴様らの無能を呈すような所業に付き合わなければならない」
「無能だと? この俺らが」
「ああ、鑑定魔法を使わなければ相手の正体見抜けぬ、貴様らがな」
売り言葉に買い言葉な発言を繰り返す、白の教徒(偽)です。
その狙いは“挑発”。おとなしく鑑定を受けるわけにはいきませんから、助かります。
警備兵としても、馬鹿にされていると感じたのか、殺気だった発言が多くなります。
「あァ? 顔も見せれん低レベル共が、意見か?」
「本性を現したな無能共が」
一人の白の教徒(偽)は、煽るように警備兵に近づきます。
「なんのつもりだ」
「顔に防具も付けないと警備もできない、無能共の顔をじっくり見ていたくてな」
ねっとりじっとりと、
「ちっ、さっきから言葉がうるせえぞ。殴られたいのか」
「おやおや、言うことを聞かなければ暴力しかできないのか。悲しい人間だな?」
理性の限界に一滴をたらすような言葉です。
結果は、明らか。
「おらよッ────雑魚冒険者が」
拳をふりぬいたのは一人の警備兵です。
一人の白の教徒(偽)は、これでもかと地面を飛んで、ホコリまみれで気絶をします。
他の教徒は、映像録画班の指示を見た後、応答するように列を構えます。
「我々に暴力をふるうとは、万死に値するな」
「仲間一人やられても達観か? 雑魚冒険者共が」
一触即発の空気。あとはこのまま乱戦に持ち込んで、ギルドの入口を突破する算段。
さて、誰から殴り飛ばそうかと考えていたところ────
「────落ち着けえッ」
私の隣にいる、白の教徒(偽)が大きな声を出します。
思わず戦鋼ごと、首をむけてしまう私のうごき。
あれ、こんなの作戦にありましたっけ?
「貴様ら、このお方をどなたと心得る」
「知るかよ。デカいだけの巨人族だろ、どうせ」
「不敬であるぞ。この方こそ────正当なる聖女の血筋、白の教姫であるぞ」
あれ、そんな設定ありましたっけ?
「えっ、えっ? このまま喧嘩になって中に突入では?」
「大丈夫です。ここまでは台本どおりです」
「ホントですか。作戦企画者が知らない台本とかあっていいんですか⁉」
慌てる私。警備兵の視線は、私に集中します。
ばちばちといってますから、ごりごりに鑑定魔法を使われているのが分かりますね。
「貴様、白の教姫といったな」
警備兵の一人が、私を問いただすように質問をぶつけてきます。
言ってない、と答えれれば楽なのですが、変な事をいって作戦を瓦解させるわけにはいきませんし。
助けを求めて、隣に、戦鋼の顔を向けますと、
「大丈夫です。それらしいことを言って誤魔化してください」
「やっぱり台本ありませんよねっ⁉」
「安心してください。嫁殿ならいけますから」
「どこをどう見て、安心してが出てくるんですかっ⁉」
あの、急に姫の対応をしろと言われましても……こっちは平民ですよっ! 一般人ですよっ!!
戸惑う私に、脳内から、かすかな声が聞こえてきます。
────いいか、私の言う通りにしろ、馬鹿。
「ほげ?」
『いいから、時間がない』
焦るような脳内の声。初めてきく声ですが、妙に安心感がありますね。
なんならこの声に任せていたら、大丈夫。そんな気持ちにさえなります。
いや大丈夫じゃないからっ……なんか過去の自分が止めてきている気がしますが、気にはしません。
『私は』
「私は」
『この世界を』
「この世界を」
『滅ぼす龍王です』
「滅ぼす龍王⋯⋯ちょっ、ちょっと、まってっ」
ケラケラと笑って消えていく脳内の幻聴。
私が慌てて訂正するも、時すでにおそく、
「なんだとッ、貴様、聖女の血縁ながらも、龍王を名乗るのかっ!」
警備兵に盛大に叫ばれます。
そしてその声は伝播して、列でっまっていた冒険者に届き、
「おいおい、白の教徒って実はやべーんじゃ」
「龍王ってあの伝説上の生物だろ、ほんとにいるのかよ」
「バカが勇者が殺したからいるわけねーだろ。でも、それを名乗るってことは……」
冒険者たちに奔る戦慄。
点と点を無理やり線にした考えを、警備兵が口にします。
「まさか、貴様のその巨体……復活した龍王か」
「そうだ。白の教姫様は龍王であらせられるぞ」
ハッキリと答える白の教徒(偽)。
堂々と答えてますけど、私は普通の人間ですからね。
「そうか最近起こる異常な災害、それらも全て」
「そうだ。姫様のご意向だ」
違いますからね。どこぞやの龍姉のせいですからっ。
「まさか、かつての龍王のしもべだった巨人族……ゴンスがここまで必死に戦っていたのは」
「そうだ。我々の悪行をバラそうとしていたが、間に合わなかったようだな」
隣の白の教徒(偽)が好きかって言ってますけど、違いますからねっ!
そもそもゴンスさんが戦っていませんし、理由は借金の返済とかいう俗に染まった理由ですからね。
そんな、私の悶えもしらずに、周りの白の教徒(偽)のテンションは絶好調に、
「「「我々は白の教徒、龍王の力を借りて、横暴なる上位冒険者に鉄槌を下す、存在であるッ!!」」」
と、宣言をします。ギルド闇派閥のみなさんって、妙なところでノリがいいですよね。
できればその努力を、もうちょっと別の方向に役立てて欲しかったです。
「嫁様、後は宣言をするだけです」
「あの、喧嘩をして入口に侵入するという計画は……」
「サーカスさんは臨機応変に動けとおっしゃっていましたから」
「別に順当にいっているときに、臨機応変に動き必要はないですからね⁉」
私がツッコミを入れている最中に、耳元の通信魔法に、別回線が割り込みます。
チャンネル名は大砲制圧部隊。あまりにも知らない部隊から連絡が入ります。
『嫁様、砲撃準備がもうそろそろで整います』
「ほう、げき? あの大壁で騒乱をおこして、陽動する作戦じゃあなかったんですか」
『作戦に高度な柔軟性をもたした結果、利害が一致しましたので』
「もうこれ以上は聞かないようにします」
私が知らないことが、あれやこれやと追加されている作戦。
いったいどういう意図でサーカスさんはこんな命令をしたのでしょうか?
「で、私は何をすればいいんですかっ」
『数分ほど時間を稼いでください』
通信魔法の奥からは、目標ギルド総本山入口、距離15キロ、砲塔旋回180、仰角20、といった声が聞こえてきます。
そして、ノイズとともに独特な金属音が、鳴り響くあたり、もう嫌な予感しかしません。
『その後は予定通り、“カッコいい台詞”のあとに撃ちますから』
「せめてカッコいい台詞は指定してくれませんかね」
『そこはセンスに任せましょう、とサーカスさんからの言をあずかっています』
「そこで急にハードルを上げてくるのは良くないと思うんですよっ」
思わず叫んでしまう私。このまま……いえ、慌てていても事態は好転しません。
ここは勇気をもって一歩踏み出し、もうどうでもなれという気持ちとともに、宣言をします。
「────よく聞け、私は復活した龍王」
声のトーンは低めに設定。できるだけ悪役っぽく聞こえるようにです。
「今から貴様らに、我の力を見せる」
「力、だと⁉」
「そうだ。かつて私が用いた力」
「まさか……あのプロミネンス・レイを」
「そうだ。あのプロミネンス・レイだ」
「なんてことを、世界を滅ぼすつもりか」
いや、ただの砲撃なんで、世界を滅ぼす威力は出ないかもしれません。
そもそも、どや顔で言ってますが、私はプロミネンス・レイが何なのかすら分かっていませんし。
まあ、それらしく戦鋼の手をかかげ、魔力を放出しておきます。
「嫁殿、魔法陣にはプロミネンスは紅炎、レイは粒子砲と描きます」
「ありがたいですけど、何で知っているんですかねっ」
「若いころは誰もが憧れる魔法ですから」
満足そうにいう白の教徒(偽)からの情報を聞き、私はたからかに魔法を宣言します。
更にもう一歩。気持ちは十分、放出される魔力も赤みを帯びて、気合も充填完了っ!!
「
掛け声とともに、大気をゆらす46cm3連装砲。
秒速700mの超える砲弾が─大壁から──街を越えて───ギルド入口に、
「警備隊長ッ、何か来ます」
「総員、防御をしろッ」
「間に合い、ま」
閃光が目をつつみます。
戦鋼の巨体をゆらすほどの爆風は、2秒以上つづき、地面に足を落とすことでなんとか持ちこたえます。
風が重く、重力をひしひしと感じた数秒間。耐えたあとに、モニターに映ったのは、
「あの、その……入口を開けるどころか、消し炭にしてません?」
煤けた爆砕穴でした。
ギルドの教会入口はもはや形を成しておらず。
警備兵たちは跡形も残らず消し飛んでいます。
黒々とした大穴だけが、ぽっかり、とギルド教会壁面に残っています。
「さて進みましょうか、嫁殿」
「本当にこれで良かったんですかね……」
私に疑問に答えるモノはおらず、みなさん、煤けた爆砕穴から中へ入っていきます。
そんな中、隣にいた、白の教徒(偽)が足を止めます。
「ちなみに嫁様」
「なんでしょう」
「入った後に、言う台詞も考えていてくださいね」
「えっ、まだアドリブがあるんですか……」
「当然です。突貫で作られた作戦ですから」
私はちょっと頭が痛くなりながら、ギルドの中に入るのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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