紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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85 少女と強盗と宝物庫

【ギルド総本山/ [現地時刻 夕方]】

 

連れてこられたのは1Fの小部屋。

 

そこからギミックを2、3個解いていくと、部屋自体が動き始めます。

 

ヴヲオオオンと聞こえる床を見ながら、金髪片角少女(わたし)は唖然とするのでした。

 

「下にうごいてますね」

「そりゃ、えれべーたーだからねー」

 

大理石の床には、紫髪の美人なおねえさんこと、ギルド主任が映ります。

 

「エレベーターってこっちの世界にもあるんですね」

「発音が違うよ、妹ちゃん。魔力風利用下降機(えれべーた)

 

「どっちでもよくないですか……」

「言葉は大事だよ。まあコイツはうるさいから、適当でもいいけど」

 

床からは何かを噴出するような音。

 

がたがたとゆれて、振動が体までくるレベルですね。

 

おかげでギルド主任が持っている鍵束がジャラジャラとゆれています。

 

「それ、何に使うんですか?」

「これはねー、鍵束♡」

「それは見ればわかります」

 

冷たい視線をむけていると、つれないなーとばかりにギルド主任が答えてくれます。

 

「実は私の持ち物が保管庫に幽閉されちゃってねー」

「それを取り出すためのガキというわけですか」

「まあ、この中に正解があるかどうかは分らないけどね」

 

話している間にも、ヴヲオオオンと降下していくえれべーた。

 

体感3分以上たっていますが、どのくらい潜るのでしょうか?

 

「このエレベーターは何回まであるんですか」

「ぶっちゃけ、わかんない」

 

現在の、えれべーた表記はB-2。

 

下に付けられた円盤は回転して、えれべーたの表記はB-3になります。

 

「まあ、今回はB-4ぐらいでいいかな」

「そんな雑でいいんですか」

「いいのいいの。正直、宝物庫はどこに降りても変わらないから」

 

ギルド主任の言葉に首をかしげる私です。

 

宝物庫なら、きちんとした場所に降りる必要があるのでは……そんな疑問が浮かんできます。

 

「まっ、見てのおたのしみってなわけで」

 

チン。エレベーターはB-4につきます。

 

【ギルド総本山/地下エリア/浮遊宝物庫 [現地時刻 夕方]】

 

小部屋のドアを開けると、

 

「────すごい、立方体が浮いています」

 

暗い空洞内に、白いキューブが浮いている空間。

 

天井は緑に輝いていて、地下とは思えない、と一歩をふみだします。

 

「下はどうなって」

「ちなみに、足場よりは先に行かないほうがいいわよー」

 

「そうなんで、ほ⁉」

「ほら、魔力風で落ちそうになっちゃうから」

 

首元をつかまれて、なんとか足場に踏みとどまる私。

 

どうやら縦横3mの足場からは出ない方がよさそうです。

 

「ここには何があるんですかね」

「それは見てのお楽しみってね」

 

ギルド主任は、足場にある台座に、鍵を差し込みます。

 

ガチャリ。まわすと白いキューブが1つこちらに。

 

どうやら糸で釣られており、クレーンみたいに動くようです。

 

「表面まで真白ですね」

「まあ、魔力から中身を保護しないといけないからねー」

 

話しているとプシュっと切れ目がはいり、中身があらわになります。

 

「なんか槍とか、ベルトとかが入ってますけど」

「お、一発目からあたりを引くとは幸先がいいねー」

 

「あたりなんですか、これ……」

「アタリよ、アタリ。だって私の幽閉されてた武器だもん」

 

さっそく武器や、道具を、自前のアイテムボックスの中に入れていく、ギルド主任です。

 

ぽんぽん入ってますけど、容量の上限とかはないんですかね。

 

ちょっと気になったので聞いてみます。

 

「無いけど、今はちょっと重たいかなぁ」

「無いけど、重たいんですね」

「さっき変なモンを拾っちゃたしなー」

 

ギルド主任は軽口をたたきながらも、二本目の鍵を台座にさします。

 

目的のモノを取り戻したにも関わらず、鍵を回している姿勢に疑問を覚える私です。

 

「あれ、まだやるんですか?」

「当然。だっていいアイテムが欲しいでしょ」

「でもそれって、強盗「えい」────むぎゅ」

 

いつのまにか背後に回られ、口を押えられて、鍵に手を置かされます。

 

じたばたしてましたから、ガチャリと鍵が回ってしまいます。

 

「はい、これで妹ちゃんも共犯ね」

「悪質な手口を感じましたが?」

「賢い手口と言いなさい」

 

賢いテグチダナー、と思っていると、白いキューブが運ばれてきます。

 

「あれ今度は何も入ってませんね」

「ありゃ、ハズレかー」

 

「外れとかあるんですか?」

「そりゃ、入ってない宝箱だってあるでしょ」

 

「そんな軽い理由でいいんですか……」

「まあ、きちんとした理由はあるんだけど、聞く?」

 

「三行で話せたりしますか」

「異世界戦争、金払えねえ、勇者の遺物あげるかー、以上」

 

「わかんないんで詳しい説明をお願いします」

「しっかたないなー」

 

話は、地球と異世界が戦争をしていたことから始まります。

 

勝ったのは異世界側。ですがそれは辛勝といえるモノでした。

 

結局、地球の領土を奪うことができませんでしたし、膨大な借金ができてしまったからです。

 

「ギルドでの蘇生はタダじゃーなくってね」

「お金を払わないといけないってことですか?」

「そうじゃなくて、蘇生にはそれだけの魔力がいるって事」

 

戦争参加者に無制限で蘇生をおこなっていたギルド。

 

ですが地球側の抵抗が激しく、備蓄していた魔力が尽きてしまいます。

 

「そこで考案されたのは、他国から魔石を買い取る事」

「でもお金ってあったんですか?」

「そこはギルドの信用を担保によ」

 

結局、魔法学院、獣人連合、竜の国から魔石を融通してもらい、なんとか戦争には勝つことができました。

 

ですが、戦争で得たモノは無いに等しく、困ったギルドが差し出したものが────勇者の遺物です。

 

「でも良かったんですか。そんな大事なモノを渡しちゃって」

「結果的には悪かった。としか言えないわね」

 

頭をかいて、過去を反省しているギルド主任。

 

「渡す品は、選定して問題ないのを渡したハズなんだけど、ね」

「なら問題ないんじゃないですか?」

「単体だったらね」

 

魔法学院には配合装置、獣人連合にはシミュレーション装置、竜帝国には簡易教会装置。

 

それぞれでは大した事が出来ない、勇者の遺物です。

 

「まさか、学院と連合が組んでたのは想定外だったってかんじね」

「その二つって組み合わさったらなにか不味いんですか?」

「彼ら、勇者を作ろうとしてたのよ」

 

シミュレーション装置は、勇者が戦った魔物の戦闘をもとに、作られた遺物です。

 

配合装置は2つの生物をかけあわせて、新たな生物を作る装置です。

 

2つの装置があれば、

 

「配合装置で作り上げた生物を、シミュレーション装置で何度も戦わせれる」

「それって、そんな簡単に成功するんですか?」

「しないわよ。だから何百、何千と繰り返す。そしてもし、1回でも全てを倒す生物がうまれたら────それは勇者といっても過言じゃない」

 

学園には魔物のサンプルもあったでしょうし、時間魔法の使い手もいた事でしょうね、とギルド主任は嫌な顔をします。

 

「でも、その計画は成功したんですか?」

「したから、獣王なんて化物が大会に参加してるんじゃない」

 

「すごく聞きたくなかった話ですね」

「といわけで、勝てるような武器をもとめてごー」

 

追加で8回ぐらい、乱雑に回される鍵。

 

白いキューブが来ては、中身を取り出し、次を回していきます。

 

「まっ、ギルド1Fにおいてある鍵なんて、大したもんが入ってないんだけどね」

「いまさらそれ言っちゃいます……」

 

10本の鍵束を回した結果は、

ギルド主任の武器

(中身無し)

(中身無し)

アイテムボックス( )

(中身無し)

アイテムボックス( )

(中身無し)

アイテムボックス( )

(中身無し)

ボロボロの槍 

 

「外れも多いですし、なんですかこのアイテムボックスは……」

 

手のひらサイズの木箱には、文字を描く欄がありました。

 

まるで最後の一工程だけがされていない、無垢なアイテムボックスです。

 

「ソレ、失敗作なんだけど、なまじアイテムボックスだから外に出せないのよねぇ」

「ちなみにどこら辺が失敗作なんですか?」

 

「中に同じモノしかいれれないのよ」

「なんて微妙な……」

 

名前はアイテムボックス初期型。

 

もちろん容量の制限もありますし、そこまで入りません。

 

「ありゃ、でもこの槍は当たりね」

「この黒ずんで、先に破片が付いただけの槍がですか」

「そうそう、昔私が作ったんだけど、こんなところに保存されてるとは」

 

いいモノを見つけたとばかりに、ギルド主任はアイテムボックスにしまいます。

 

他のモノも何かに使えるかもしれませんし、持っていきましょうか。

 

「さて、夕食でも食べながら呑気に策を考えますかー」

「明日までに思いつくといいんですけど……」

 

「大丈夫よ。ダメだったら、本当に私の妹にでもしてあげるから」

「じゃあ自分のお姉ちゃんを増やさない為にも、頑張りますかね」

「えー、まったく、つれないなー」

 

呑気な声をだして、地上にもどっていく2人。

 

楽しそうな彼女たちを、天井の魔力達はあたたかく応援するのでした。

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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