紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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87 回想とギルド主任と策

【ギルド総本山/ギルド2F/執務室 [現地時刻 夜]】

 

遡ること10時間前────

 

「酒がウマイ」

 

執務室で、干物を片手に瓶を傾けているのは────金髪片角少女(ギルド主任)です。

 

「いや、私の姿で何をやってるんですか」

 

ホンモノの金髪片角少女(わたし)は、呆れた顔でツッコみます。

 

ドアを開けたら強烈な酒臭さで、顔をしかめ、現在窓全開で換気をおこなっています。

 

ほんとはアイテムボックス初期型の使い道を聞きたかったんですが、それどころではなさそうです。

 

「ほら、見ればわかるでしょ。飲酒よ、飲酒ー」

「別に私の姿でする必要はないような」

 

「実はつまみとかギルド主任の姿だとパクれなくて」

「それって私に罪をなすりつけてません?」

 

「別に気にするような罪じゃないから」

「大きな犯罪をやってるなら、何をしてもいいわけじゃなくてですね」

 

若干息が切れ気味の私を見ながら、ギルド主任は瓶を口につけます。

 

ひと口、ふた口と飲んだあと、思いついたように瓶を置きます。

 

「ちなみに「ボンキュッ」────こんなこともできる」

「少女の胸を盛るのは犯罪だって知りませんか?」

 

「大きい方が好きかなーって」

「小さい方が動きやすいので好きです」

 

「あまいわねー。胸の分だけ魔力が蓄えられるのよ」

「でも、それって偽乳(きょにゅう)「えい」────ふぎゅ」

 

無理やり干物をツッコまれる私です。

 

もぐもぐと咀嚼すると、味が染み出てきて、喉が渇きます。

 

しかたなしに座り込み、勝手にそこら辺の飲み物を飲みます。

 

「あー、それ私のー」

「無造作に置いてある方が悪いんですよ」

 

ごくごくと飲みながら思う事は1つ。

 

「てか、そんなものどこから持ってきたんですか?」

「そりゃ、毎日使ってるものだし」

 

ギルド主任は腕についている、金色の腕輪を見せてくれます。

 

何気ないアクセサリーにみえますが、実態は“変身の腕輪”といえる勇者の遺物らしいです。

 

「ちなみに呑気に酒盛りしてて大丈夫なんですか?」

「飲んでなきゃ、やってられないってのが心情ね」

 

「そんなに分が悪い戦いですかね」

「悪いを越して、最悪よ」

 

ギルド主任は指に集めた魔力で現状を説明します。

 

「聖女直属が介入することは想像通りなんだけど、それ以上の問題があってね」

 

何時もとは違った真剣な声で話します。

 

「正直言って、獣王の底が見えない」

「強敵ってことぐらいは認識してますけど」

「いや、そういうレベルじゃなくて、次元が違うってこと」

 

ギルド主任が取り出した紙には────白紙。

 

「彼の情報を取りに行った、諜報員、冒険者は全員返り討ちにあっちゃってねー」

「獣王は冒険者情報に登録はされてないんですか」

 

コロシアムは“死亡”が前提に作られている場所です。

 

そのため、基本的には冒険者でなければ参加できない祭りとなっています。

 

「彼が登録していると思う?」

「まさか、未登録で参加をできたんですか……」

「まあ、表向きは獣人連合からの招待枠ってことになってるけどねー」

 

「本当のところは」

「大会に参加させろの一点張りで、為立ちふさがった冒険者も全員殺して参加だね」

 

ちなみに、戦いの後、獣王が言った台詞は、いいサンドバックを見つけた、だそうです。

 

「彼は、獣人連合が生み出した勇者のリアルコピー。正直、奇跡が起きたとしても今の妹ちゃんじゃあ、勝てない」

「なら勝ちを諦めろと?」

 

「諦めるんじゃない、前提をひっくり返せばいい」

「前提を? 策に嵌めるではなく?」

 

「ええ、戦いを1対1 ではなく1対2にする」

 

ギルド主任は自信満々に告げますが、何をいってんだ人はという眼でみるは、私。

 

そもそもそれが出来るなら、最初から苦労はしていません。

 

「あの、コロシアムには私しか入れないハズですが」

「正確には、妹ちゃんと武器と防具とアクセサリーしか入れないの」

 

「いや、まあそうですけど。それで何か変わりますかね?」

「もちろん変わるわよ」

 

ギルド主任が楽しげに見せるのは、変身の腕輪。

 

「────別に、無機物に化けれないとは言ってないもの」

 

 

【ギルド総本山/コロシアム [現地時刻 朝]】

 

というわけで、戦鋼に化けている、ギルド主任。

 

正直、無機物にまで化けれるとは、あの腕輪はヤバいものな気がします。

 

「待ってくださいッ、ゴンス選手の鎧は規定違反の可能性が————えっ、障壁が開かない?」

 

アナウンスから流れるは、絶叫にちかい悲鳴。

 

ギルド主任はあざ笑うがごとく、戦鋼の大きな一歩を進めます。

 

「はっはー、当然じゃん、なんで障壁に細工されてないと思っているのかな」

「まさか、前々回の魔法にそんなものまで組んであったんですか……」

 

ギルド主任は、手は出来るだけ仕込んでおくものよ、と笑います。

 

「でも、これ失格になったりはしないんですかね?」

「ルールにはないことをやってるし、失格にはできないわよ」

 

「それよりも、問題は────」

 

槍に絡めとられ、獣王は槍が突き刺さった腕をなおも、動かそうとします。

 

ですが毒々しい槍達が、それ許さず。

 

檻に囚われた獅子のごとく、彼は問いかけるしかできません。

 

「お前は、誰だァ」

「清く誠実な回復役、またの名をギルド主任」

 

「ふざけた名乗りだな」

「大丈夫、今日から痛いほど覚えてもらうから」

 

戦鋼こと、ギルド主任は楽しそうに名乗るのでした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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