【ギルド総本山/中腹/中教会/蘇生部屋 [現地時刻 昼]】
「みなさん「ごーんごーん」────鐘の音?」
教会のステンドグラスがぎしぎしと軋み、日差しがゆらゆらと揺れます。
「今日はやけに遅い鐘がなっているニャ」
「そうなんですか?」
私が疑問を口にしますと、同じく窓の外を見ている、娘娘猫さんが答えてくれます。
猫耳をぺったりと倒していますので、彼女にとってはうるさい音なのかもしれません。
「いっつもなら、朝と夕方になるハズなのに、今日は昼になってるニャ」
「あー、言われてみればそんな気も、します」
「きっと鳴らす人が寝ぼけてたのなニャ~」
娘娘猫さんは、猫耳をゆっくりとあけて、大きなあくびをします。
「いや、そんなわけないでしょ。ニャン子じゃあるまいし」
と、いうのはツインテールから枝毛が溢れている、ツインテさんです。
服もシワだらけですし、知っている彼女より憔悴している気がします。
「ちっ、それにしても、うっとおしい音ね」
「ツインテニャも、大きすぎる音が苦手ニャ?」
「臭いモノに蓋をしようとする音なんて、誰だってきらいでしょ」
ツインテさんは、地面を見つめます。
釣られるように私も視線を向けますと、感じるのは違和感。
耳に、風の流れるような異音を捉えることになります。
「それって、この地面の音がですか?」
「ふーん、あんたも聞こえるのね」
「そうなのニャ?」
娘娘猫さんは首をかしげていますから、聞こえるのは個人差があるようです。
私とツインテさんの視線の先────地面からは、絶えず異音が聞こえます。
まるで地面を吸いこんでいるようなバキューム音は、しばらくして収まりました。
「これって何が起こっているんでしょうか?」
「大方、地下に化け物でも飼っているんじゃないの。ずっと聞こえてたし」
「ずっと? それはツインテさんが来てからですか」
「そうよ、私が痛い目をみて「なら、もう一回」「痛い目を」「見てもらうぜェ」────はぁ⁉ なによアンタ達ッ!!」
気付けば、周囲を三人の冒険者に囲まれていました。
あらくれ者たちの防具には、漢は最初だけを覚えてればいい、とかかれています。
「ヒヤッハッー! 俺達蘇生狩りパーティッ!!」
「今日は蘇生者が少なかったからな」
「ここで稼がせてもらうぜッ」
男達3人衆は武器を構えて、私達を逃がさない姿勢です。
ですが焦って攻めず、冷静なボス格は簡易アイテムボックスを開きます。
「おい、アレを出せッ」
「アレですね、兄貴ッ!」
「まっかしてくださいよッ!!」
取り出される、スカウター付きの機械。
「このォ、レベル測定装置でッ!」
「「雑魚を見つけるのが俺達の基本ッ!!」」
もちろん目に装着して、部下たちはボス格の指示を待ちます。
「まず、あの猫」
「レベル5でっせ、兄貴」
「ならツインテ―ルは」
「レベル2でっせ」
「最後にあの赤金髪はァ」
「えっと、レベル1っす」
正確には1+(1+10+14)が表示されていますが、漢は最初だけを覚えてればいいで、1だけを読みます。
ちなみに彼らの学力が低いのではなく、防御力をあげるための呪いみたいなもんです。
「ならばァ、あの小娘を狙えェッ!!」
「そして人質にとって、脅して、金をせびり、」
「今夜は────焼肉って寸法でいくぞ、オラァッ!」
飛び掛かってくるのは男達────3人衆。
私はぐっと拳を構えます。
ツインテさん達は、呆れた眼で成り行きを見守っています。
◇
【ギルド総本山/中腹/中教会/蘇生部屋 [現地時刻 昼]】
数分後、顔を腫らして、教会の地に伏しているのは、
「「「ずみませんでしたぁっ」」」
お金をせびられて、身ぐるみをはがされている男達────3人衆です。
とりあえず変なことをされても困るので、全員、火魔法で、蘇生送りにしておきます。
『なかなかに様になって来たじゃないか』
「?」
『だめだよー、変な悪影響を受けちゃ』
「???」
脳内に変な声がながれてきましたが、気のせいでしょうか。
燃えカスの中から拾った、金を片手に、ツインテさんたちに提案します。
「お金も手に入りましたし、復活祝いに焼肉にいきませんか」
「人の心とかないの、あんた」
「確かに……もっとせびった方が良かったですね」
「それはぺんぺん草も生えないのニャ」
「まあ蘇生されて、また来られても困りますし」
「それもそうだニャ」
ツインテさんはジト目を私達にむけます。
「────いや、あそこまで塵にしたら上位の回復魔法でも無理でしょ」
ツインテさんの発言に、首を傾げる、私と娘娘猫さんです。
「いや、彼ら冒険者ですし」
「そうだニャ。たぶんぴんぴんで襲ってくるニャ」
「いやいや、死んだ人間は生き返らないのが基本でしょ。なに寝言いってんのよ」
「そっちこそ何言ってるニャ? 死んだ冒険者は生き返れるニャ」
「そうですよ。実際、私も蘇ってますし」
「────はぁァッ⁉」
「「そんなに驚くことか」ニャ?」
ツインテさんは眼を丸くさせて、頬が痙攣しています。
「も、もしかして冒険者って無限に生き返ったりする的な」
「まあ代金は取られるけど、だいたいそうニャ」
「アンタ達どんだけヤバイことやってるのか気づいて……ないわよね、ニャン子とキイロだし」
「でも冒険者が生き返れるなんて、ニャが子供の頃から普通のことだったニャ」
「私もすんなり受け入れてましたね」
ツインテさんは下をうつむいて、考え始めます。
「あー、なるほどね……敵が減らないのはそういうカラクリがあったわけね」
「なんか納得するようなことがあったのニャ」
「よくわかんないですけど────」
何故だかわかりませんが、無性にお腹が減っています。
何となくですが、体が足りない部分を補おうとしている感じです。
「────とりあえず、試合もありますし、ご飯でも」
「────何言ってんのよ、大会なんぞ、私達が負けで終了したわよ」
ツインテさんは、普通の顔で、当然のことのように語ります。
「えっと、そうなんで、すか?」
私は言葉に詰まってしまいます。
あれ、そうですよね。私は負けたんだから蘇生されて……
「とっくに終わってるのよ。何もかもが」
「たぶん、キイロニャは死んでて、知らなかったのニャ」
娘娘猫さんが気にかけてくれますが、私自身は気付いていたハズです。
「いえ……そうですよね。私、死んでいたんでした」
いつも上手くいっていたので、今回も上手くいったと思い込んでいたようです。
「まっ、人生を賭けて負けるなんてよくあることよ」
「そんな簡単に言わないで欲しいのニャ……」
「私だってそうじゃなきゃ、ここにいないわよ」
ツインテさん曰く、獣王に戦鋼ごと貫かれた私はもちろん即死。
敗北の知らせがアナウンスされたのは、その数秒後だったそうです。
「ちなみに、借金返済日は明日。総金貨500枚の返済が待っているわよ」
「ニャニャッ、そんな一気にまくしたてなくても、キイロニャは起きたてなのニャ」
「明日になろうと、今日になろうと話が変わるわけじゃないでしょ」
「それはそうだけどニャ……」
「そんなわけで、あんたも奴隷、私もいっつも通りのクソ仕事にカムバックよ」
ツインテさんは、さっぱりとした表情で言い切ります。
「────ほら、さっさとその金使って、最後の晩餐にでもいくわよ」
そう言い残したツインテさんは、一人でドアをくぐっていってしまいました。
「き、キイロニャ、落ち込んで……」
「大丈夫ですよ。私もすぐに行きますから」
私もドアをくぐり、教会をあとにします。
天候は清々しいほどに青空で、ちっぽけな私を、どこまでも惨めにしていました。
ここまでよんでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。