紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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91 少女と蘇生と現実と

【ギルド総本山/中腹/中教会/蘇生部屋 [現地時刻 昼]】

 

「みなさん「ごーんごーん」────鐘の音?」

 

赤金髪少女(わたし)が、外を見ますと、頂上から鳴っているようです。

 

教会のステンドグラスがぎしぎしと軋み、日差しがゆらゆらと揺れます。

 

「今日はやけに遅い鐘がなっているニャ」

「そうなんですか?」

 

私が疑問を口にしますと、同じく窓の外を見ている、娘娘猫さんが答えてくれます。

 

猫耳をぺったりと倒していますので、彼女にとってはうるさい音なのかもしれません。

 

「いっつもなら、朝と夕方になるハズなのに、今日は昼になってるニャ」

「あー、言われてみればそんな気も、します」

「きっと鳴らす人が寝ぼけてたのなニャ~」

 

娘娘猫さんは、猫耳をゆっくりとあけて、大きなあくびをします。

 

「いや、そんなわけないでしょ。ニャン子じゃあるまいし」

 

と、いうのはツインテールから枝毛が溢れている、ツインテさんです。

 

服もシワだらけですし、知っている彼女より憔悴している気がします。

 

「ちっ、それにしても、うっとおしい音ね」

「ツインテニャも、大きすぎる音が苦手ニャ?」

「臭いモノに蓋をしようとする音なんて、誰だってきらいでしょ」

 

ツインテさんは、地面を見つめます。

 

釣られるように私も視線を向けますと、感じるのは違和感。

 

耳に、風の流れるような異音を捉えることになります。

 

「それって、この地面の音がですか?」

「ふーん、あんたも聞こえるのね」

「そうなのニャ?」

 

娘娘猫さんは首をかしげていますから、聞こえるのは個人差があるようです。

 

私とツインテさんの視線の先────地面からは、絶えず異音が聞こえます。

 

まるで地面を吸いこんでいるようなバキューム音は、しばらくして収まりました。

 

「これって何が起こっているんでしょうか?」

「大方、地下に化け物でも飼っているんじゃないの。ずっと聞こえてたし」

 

「ずっと? それはツインテさんが来てからですか」

「そうよ、私が痛い目をみて「なら、もう一回」「痛い目を」「見てもらうぜェ」────はぁ⁉ なによアンタ達ッ!!」

 

気付けば、周囲を三人の冒険者に囲まれていました。

 

あらくれ者たちの防具には、漢は最初だけを覚えてればいい、とかかれています。

 

「ヒヤッハッー! 俺達蘇生狩りパーティッ!!」

「今日は蘇生者が少なかったからな」

「ここで稼がせてもらうぜッ」

 

男達3人衆は武器を構えて、私達を逃がさない姿勢です。

 

ですが焦って攻めず、冷静なボス格は簡易アイテムボックスを開きます。

 

「おい、アレを出せッ」

「アレですね、兄貴ッ!」

「まっかしてくださいよッ!!」

 

取り出される、スカウター付きの機械。

 

「このォ、レベル測定装置でッ!」

「「雑魚を見つけるのが俺達の基本ッ!!」」

 

もちろん目に装着して、部下たちはボス格の指示を待ちます。

 

「まず、あの猫」

「レベル5でっせ、兄貴」

 

「ならツインテ―ルは」

「レベル2でっせ」

 

「最後にあの赤金髪はァ」

「えっと、レベル1っす」

 

正確には1+(1+10+14)が表示されていますが、漢は最初だけを覚えてればいいで、1だけを読みます。

 

ちなみに彼らの学力が低いのではなく、防御力をあげるための呪いみたいなもんです。

 

「ならばァ、あの小娘を狙えェッ!!」

「そして人質にとって、脅して、金をせびり、」

「今夜は────焼肉って寸法でいくぞ、オラァッ!」

 

飛び掛かってくるのは男達────3人衆。

 

私はぐっと拳を構えます。

 

ツインテさん達は、呆れた眼で成り行きを見守っています。

 

【ギルド総本山/中腹/中教会/蘇生部屋 [現地時刻 昼]】

 

数分後、顔を腫らして、教会の地に伏しているのは、

 

「「「ずみませんでしたぁっ」」」

 

お金をせびられて、身ぐるみをはがされている男達────3人衆です。

 

とりあえず変なことをされても困るので、全員、火魔法で、蘇生送りにしておきます。

 

『なかなかに様になって来たじゃないか』

「?」

 

『だめだよー、変な悪影響を受けちゃ』

「???」

 

脳内に変な声がながれてきましたが、気のせいでしょうか。

 

燃えカスの中から拾った、金を片手に、ツインテさんたちに提案します。

 

「お金も手に入りましたし、復活祝いに焼肉にいきませんか」

「人の心とかないの、あんた」

 

「確かに……もっとせびった方が良かったですね」

「それはぺんぺん草も生えないのニャ」

 

「まあ蘇生されて、また来られても困りますし」

「それもそうだニャ」

 

ツインテさんはジト目を私達にむけます。

 

「────いや、あそこまで塵にしたら上位の回復魔法でも無理でしょ」

 

ツインテさんの発言に、首を傾げる、私と娘娘猫さんです。

 

「いや、彼ら冒険者ですし」

「そうだニャ。たぶんぴんぴんで襲ってくるニャ」

「いやいや、死んだ人間は生き返らないのが基本でしょ。なに寝言いってんのよ」

 

「そっちこそ何言ってるニャ? 死んだ冒険者は生き返れるニャ」

「そうですよ。実際、私も蘇ってますし」

 

「────はぁァッ⁉」

 

「「そんなに驚くことか」ニャ?」

 

ツインテさんは眼を丸くさせて、頬が痙攣しています。

 

「も、もしかして冒険者って無限に生き返ったりする的な」

「まあ代金は取られるけど、だいたいそうニャ」

 

「アンタ達どんだけヤバイことやってるのか気づいて……ないわよね、ニャン子とキイロだし」

「でも冒険者が生き返れるなんて、ニャが子供の頃から普通のことだったニャ」

「私もすんなり受け入れてましたね」

 

ツインテさんは下をうつむいて、考え始めます。

 

「あー、なるほどね……敵が減らないのはそういうカラクリがあったわけね」

「なんか納得するようなことがあったのニャ」

「よくわかんないですけど────」

 

何故だかわかりませんが、無性にお腹が減っています。

 

何となくですが、体が足りない部分を補おうとしている感じです。

 

「────とりあえず、試合もありますし、ご飯でも」

 

「────何言ってんのよ、大会なんぞ、私達が負けで終了したわよ」

 

ツインテさんは、普通の顔で、当然のことのように語ります。

 

「えっと、そうなんで、すか?」

 

私は言葉に詰まってしまいます。

 

あれ、そうですよね。私は負けたんだから蘇生されて……

 

「とっくに終わってるのよ。何もかもが」

「たぶん、キイロニャは死んでて、知らなかったのニャ」

 

娘娘猫さんが気にかけてくれますが、私自身は気付いていたハズです。

 

「いえ……そうですよね。私、死んでいたんでした」

 

いつも上手くいっていたので、今回も上手くいったと思い込んでいたようです。

 

「まっ、人生を賭けて負けるなんてよくあることよ」

「そんな簡単に言わないで欲しいのニャ……」

「私だってそうじゃなきゃ、ここにいないわよ」

 

ツインテさん曰く、獣王に戦鋼ごと貫かれた私はもちろん即死。

 

敗北の知らせがアナウンスされたのは、その数秒後だったそうです。

 

「ちなみに、借金返済日は明日。総金貨500枚の返済が待っているわよ」

「ニャニャッ、そんな一気にまくしたてなくても、キイロニャは起きたてなのニャ」

 

「明日になろうと、今日になろうと話が変わるわけじゃないでしょ」

「それはそうだけどニャ……」

 

「そんなわけで、あんたも奴隷、私もいっつも通りのクソ仕事にカムバックよ」

 

ツインテさんは、さっぱりとした表情で言い切ります。

 

「────ほら、さっさとその金使って、最後の晩餐にでもいくわよ」

 

そう言い残したツインテさんは、一人でドアをくぐっていってしまいました。

 

「き、キイロニャ、落ち込んで……」

「大丈夫ですよ。私もすぐに行きますから」

 

私もドアをくぐり、教会をあとにします。

 

天候は清々しいほどに青空で、ちっぽけな私を、どこまでも惨めにしていました。




ここまでよんでいただきありがとうございます。

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