様々なギルド支部にある店で、ギルド総本山には、その1号店がある。
“食事の極み”とついているのは、昔はハンバーガーというモノが無かったから。
最初期は閑古鳥が鳴くような店だったけど、冒険者の常時食というイメージがついてからは、販売の方が追い付かなくなった。
1人でもおいしい勇者バーガー、2人で食べたらもっとおいしい勇者バーガー、みんなで食べろ勇者バーガー♪
懐かしい替え歌まで、思い出しちゃったな―。
────勇者バーガー創業100周年記念本、二代目店長コメントより抜粋。
【ギルド総本山/中腹 [現地時刻 昼すぎ]】
勇者バーガー13号店の中にいるのは、
店内は人がすくなく、注文さえしてしまえば、貸し切りになりそうなほどです。
「ここのバーガーは、時間がたってもおいしんですよね」
「それは、冒険者たちが極地でも食べれるようにした為でごんすな」
「そんな工夫がされているんですか?」
「容器をみると分かりやすいでごんす」
注文カウンター上で、サンプルと置かれている容器を手にとります。
よく見れば内部でスライムが暮らしており、彼らがバーガー自体を覆ことで、鮮度を維持しているということが分かります。
「でも、開けた時にはスライムなんていなかったような」
「本来は、あけると勝手に死んでいくでごんす」
耐衝撃性は高いスライムですが、急激な魔力濃度の変化には耐えれない、品種改良がされています。
ですので、容器の蓋を開けられると、魔力を含んだ空気が混入して、勝手に消えます。
そして残った、
「ごんすも羽織のいい依頼を受けた時に、ご飯としてもっていくでごんす」
「特化型スライム(バーベキュー味)……凄い名前ですね」
「他にも塩レモン味や、トマトソース味があるでごんす」
「確かに多種多様な味があった気もします」
うんうん、と頷きながら、はや10分ぐらい。
流石に食べたいバーガーの種類も決まってきました。
「そろそろ注文するでごんすか?」
「そうですね」
という訳で店員さんを呼びます。
カウンターのベルを叩くと、金属音が鳴り響いて、厨房からどたどたという足音が。
あわてて駆け付けてくれる店員さん。ですが、顔は申し訳なさそうにしています。
「あの、その、申し訳ありません。本日の勇者バーガーは売り切れてしまいまして」
「「えっ、売り切れた(でごんす)?」」
「はい、こちらでも在庫を確認したのですが」
「今日はそんなに人が来たんですか?」
「いえ、つい先ほど、あちらのお客さまが、買い占めてしまって」
「「あちらのお客様────」」
二人が視線を向けると、外のテラス席に、あふれるほどの紙袋。
なにより、中心にいたのは私達がよくしっている人物、
「「────げっ、獣王⁉」」
バーガーをむさぼり喰うのは、王者の威風ただようライオン髭に、トマトソースをつけた獣人です。
彼は1人で、ただひたすらに袋を開けて、容器から取り出し、バーガーを食べるを繰り返していました。
「なんだ、貴様ら」
「「いや、なんでもないで(ごんす)」」
驚きすぎて外まで声がとどいてしまったのか、獣王は鋭い眼光で睨んできます。
窓ガラスが1枚あるはずなのですが、獣人の耳はよく聞こえるんですね。
「ならばさっさと消えろ、今日の俺は気分がいい」
「あっ、はい」
私達は、右向け右、と引き返す準備をします。
文句? あんな化物に言えるわけないじゃないですか。
さっさと引き返して「待て、小娘」────どうやらそうもいかないようです。
「なんでしょうか」
「貴様、いい目をしているな」
獣王は私を見つめ、なぜかニヤケていきます。
「普通の眼ですよ」
「更に、おもしろいことを言う小娘だ」
そして、隣のゴンスさんを一瞥した後、一息の呼吸。
ビキリッ。筋肉が力んだかと思うと、彼の魔力がドス黒く、視認できるほど濃くなっていきます。
「────余興だ」
窓ガラスがはじけ飛びます。
嵐のように放出される魔力は、物理的に私達に害を与え、
ゴンスさんはひっくり返り、積み重なった紙袋はぶっとんで、もってた容器は空に舞います。
踏ん張って耐えるのがやっと。彼と大会で戦っていなければ、私も飛翔物の一部になっていたことでしょう。
「顔色ひとつ変えんとは」
「背中に冷汗がびっしょりですよ」
中心部の中から、未だに笑みを浮かべている獣王は、拳を構えます。
「かかってこい。勝てば好きなモノをくれてやる」
「面白い、話ですね」
賢い選択肢は、撤退一択。
ですが、ここで退くのは私の空腹が許してくれません。
「悪いですが、勝って、奪わせてもらいますよ」
「俺から何を奪う? 富か、名声か、力か?」
「勇者バーガーですよ」
私は手に持っているサンプル容器を見せつけます。
もちろん空の容器ですから、中には何も入っていません。
ですが、私の言いたいことは伝わるでしょう。
買い占めたバーガーをよこせという事です。
「むっ、それは、どうしたものか……」
ですが、彼の反応は好戦的なモノではありませんでした。
どちらかと言えば、困ったという様子です。
「まさか獣王とあろうものが、食べ物1つをケチるんですか」
「いや、そうではない」
「ならば戦えない理由でも?」
「そのだな」
彼はごくりと唾を飲み込んで、申し訳なさそうにいいます。
「悪いが────全て、食べてしまった」
彼の気持ちを代弁しているのか、魔力の嵐が消えて、紙袋がどさどさと落ちてきます。
私は落ちてくる紙袋を頭にのせながら、つい言ってしまいます。
「あの……100個ぐらいありましたよね」
「とても美味であった」
「ほら他の店を回れば、まだ」
「ここが売り切れてない最後の店であった」
「えっ、マジで、国中の全部を食べたんですか……」
「獣王の胃袋を並みだと思ってもらっては困る」
膝から崩れ落ちるとは、まさにこの事でしょう。
現状、重度の空腹状態。正直、バーガーの匂いだけでもかなり限界でした。
「お、終わりです、ね」
倒れ込んだ地面は硬いですね。
ソースをかけたら、バーガーとかになったりしませんかね。
てか、もうバーガーじゃなくていいので食べ物をください。
「最後に、お腹いっぱい食べたかった」
狭まる視界に、ぼやけている手がうつります。
私の手よりも大きく、もふもふとしながらも、鋭い爪を備えたのは────獣王の手。
「小娘、好きな店を案内しろ」
「あ、案内……?」
よれよれの私は立つこともままならず、彼の肩に担がれます。
「────施してやると言っているんだ。早くしろ」
もふもふの毛を感じながら、私はそんな言葉を耳にするのでした。
余談
獣王√は、会話と行動をミスるだけで、即死します。
現状、10ぐらいある運命で主人公は死んでます。
例
獣王 「欲しいのはなんだ」
主人公「金」
→勝てずに敗北エンド。もちろん蘇生は3年後ぐらい
獣王 「いい眼をしているな」
主人公「怖いんで帰りますね」
獣王 「臆病者が、興が削がれた、死ね」
主人公「あべし」
→秒殺エンド
獣王 「(うますぎるッ)」
主人公「(怖っ、獣王おる、帰ろう)」
獣王 「(だがこんなに美味しいモノを他人が食うのは不快だな、壊すか)」
主人公「アレ、急に光が……」
→巻き込まれエンド
うん、なんでこの√につっこんだろうね。
ほんと運命を手繰りよせるの大変だったわ。
以上、投稿が遅くなった理由でした。
ここまでよんでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者がよろこびます。