紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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勇者バーガー、食事の極み。

様々なギルド支部にある店で、ギルド総本山には、その1号店がある。

“食事の極み”とついているのは、昔はハンバーガーというモノが無かったから。

最初期は閑古鳥が鳴くような店だったけど、冒険者の常時食というイメージがついてからは、販売の方が追い付かなくなった。

1人でもおいしい勇者バーガー、2人で食べたらもっとおいしい勇者バーガー、みんなで食べろ勇者バーガー♪

懐かしい替え歌まで、思い出しちゃったな―。

────勇者バーガー創業100周年記念本、二代目店長コメントより抜粋。



93 少女と間食と出会い

【ギルド総本山/中腹 [現地時刻 昼すぎ]】

 

勇者バーガー13号店の中にいるのは、赤金髪少女(わたし)と巨人族のゴンスさん、です。

 

店内は人がすくなく、注文さえしてしまえば、貸し切りになりそうなほどです。

 

「ここのバーガーは、時間がたってもおいしんですよね」

「それは、冒険者たちが極地でも食べれるようにした為でごんすな」

 

「そんな工夫がされているんですか?」

「容器をみると分かりやすいでごんす」

 

注文カウンター上で、サンプルと置かれている容器を手にとります。

 

よく見れば内部でスライムが暮らしており、彼らがバーガー自体を覆ことで、鮮度を維持しているということが分かります。

 

「でも、開けた時にはスライムなんていなかったような」

「本来は、あけると勝手に死んでいくでごんす」

 

耐衝撃性は高いスライムですが、急激な魔力濃度の変化には耐えれない、品種改良がされています。

 

ですので、容器の蓋を開けられると、魔力を含んだ空気が混入して、勝手に消えます。

 

そして残った、素材(スライムゼリー)はソースになるという完璧な仕様。

 

「ごんすも羽織のいい依頼を受けた時に、ご飯としてもっていくでごんす」

「特化型スライム(バーベキュー味)……凄い名前ですね」

 

「他にも塩レモン味や、トマトソース味があるでごんす」

「確かに多種多様な味があった気もします」

 

うんうん、と頷きながら、はや10分ぐらい。

 

流石に食べたいバーガーの種類も決まってきました。

 

「そろそろ注文するでごんすか?」

「そうですね」

 

という訳で店員さんを呼びます。

 

カウンターのベルを叩くと、金属音が鳴り響いて、厨房からどたどたという足音が。

 

あわてて駆け付けてくれる店員さん。ですが、顔は申し訳なさそうにしています。

 

「あの、その、申し訳ありません。本日の勇者バーガーは売り切れてしまいまして」

「「えっ、売り切れた(でごんす)?」」

 

「はい、こちらでも在庫を確認したのですが」

「今日はそんなに人が来たんですか?」

 

「いえ、つい先ほど、あちらのお客さまが、買い占めてしまって」

「「あちらのお客様────」」

 

二人が視線を向けると、外のテラス席に、あふれるほどの紙袋。

 

なにより、中心にいたのは私達がよくしっている人物、

 

「「────げっ、獣王⁉」」

 

バーガーをむさぼり喰うのは、王者の威風ただようライオン髭に、トマトソースをつけた獣人です。

 

彼は1人で、ただひたすらに袋を開けて、容器から取り出し、バーガーを食べるを繰り返していました。

 

「なんだ、貴様ら」

「「いや、なんでもないで(ごんす)」」

 

驚きすぎて外まで声がとどいてしまったのか、獣王は鋭い眼光で睨んできます。

 

窓ガラスが1枚あるはずなのですが、獣人の耳はよく聞こえるんですね。

 

「ならばさっさと消えろ、今日の俺は気分がいい」

「あっ、はい」

 

私達は、右向け右、と引き返す準備をします。

 

文句? あんな化物に言えるわけないじゃないですか。

 

さっさと引き返して「待て、小娘」────どうやらそうもいかないようです。

 

「なんでしょうか」

「貴様、いい目をしているな」

 

獣王は私を見つめ、なぜかニヤケていきます。

 

「普通の眼ですよ」

「更に、おもしろいことを言う小娘だ」

 

そして、隣のゴンスさんを一瞥した後、一息の呼吸。

 

ビキリッ。筋肉が力んだかと思うと、彼の魔力がドス黒く、視認できるほど濃くなっていきます。

 

「────余興だ」

 

窓ガラスがはじけ飛びます。

 

嵐のように放出される魔力は、物理的に私達に害を与え、

 

ゴンスさんはひっくり返り、積み重なった紙袋はぶっとんで、もってた容器は空に舞います。

 

踏ん張って耐えるのがやっと。彼と大会で戦っていなければ、私も飛翔物の一部になっていたことでしょう。

 

「顔色ひとつ変えんとは」

「背中に冷汗がびっしょりですよ」

 

中心部の中から、未だに笑みを浮かべている獣王は、拳を構えます。

 

「かかってこい。勝てば好きなモノをくれてやる」

「面白い、話ですね」

 

賢い選択肢は、撤退一択。

 

ですが、ここで退くのは私の空腹が許してくれません。

 

「悪いですが、勝って、奪わせてもらいますよ」

「俺から何を奪う? 富か、名声か、力か?」

「勇者バーガーですよ」

 

私は手に持っているサンプル容器を見せつけます。

 

もちろん空の容器ですから、中には何も入っていません。

 

ですが、私の言いたいことは伝わるでしょう。

 

買い占めたバーガーをよこせという事です。

 

「むっ、それは、どうしたものか……」

 

ですが、彼の反応は好戦的なモノではありませんでした。

 

どちらかと言えば、困ったという様子です。

 

「まさか獣王とあろうものが、食べ物1つをケチるんですか」

「いや、そうではない」

 

「ならば戦えない理由でも?」

「そのだな」

 

彼はごくりと唾を飲み込んで、申し訳なさそうにいいます。

 

「悪いが────全て、食べてしまった」

 

彼の気持ちを代弁しているのか、魔力の嵐が消えて、紙袋がどさどさと落ちてきます。

 

私は落ちてくる紙袋を頭にのせながら、つい言ってしまいます。

 

「あの……100個ぐらいありましたよね」

「とても美味であった」

 

「ほら他の店を回れば、まだ」

「ここが売り切れてない最後の店であった」

 

「えっ、マジで、国中の全部を食べたんですか……」

「獣王の胃袋を並みだと思ってもらっては困る」

 

膝から崩れ落ちるとは、まさにこの事でしょう。

 

現状、重度の空腹状態。正直、バーガーの匂いだけでもかなり限界でした。

 

「お、終わりです、ね」

 

倒れ込んだ地面は硬いですね。

 

ソースをかけたら、バーガーとかになったりしませんかね。

 

てか、もうバーガーじゃなくていいので食べ物をください。

 

「最後に、お腹いっぱい食べたかった」

 

狭まる視界に、ぼやけている手がうつります。

 

私の手よりも大きく、もふもふとしながらも、鋭い爪を備えたのは────獣王の手。

 

「小娘、好きな店を案内しろ」

「あ、案内……?」

 

よれよれの私は立つこともままならず、彼の肩に担がれます。

 

「────施してやると言っているんだ。早くしろ」

 

もふもふの毛を感じながら、私はそんな言葉を耳にするのでした。




余談

獣王√は、会話と行動をミスるだけで、即死します。

現状、10ぐらいある運命で主人公は死んでます。


獣王 「欲しいのはなんだ」
主人公「金」

 →勝てずに敗北エンド。もちろん蘇生は3年後ぐらい

獣王 「いい眼をしているな」
主人公「怖いんで帰りますね」
獣王 「臆病者が、興が削がれた、死ね」
主人公「あべし」

 →秒殺エンド

獣王 「(うますぎるッ)」
主人公「(怖っ、獣王おる、帰ろう)」
獣王 「(だがこんなに美味しいモノを他人が食うのは不快だな、壊すか)」
主人公「アレ、急に光が……」

 →巻き込まれエンド

うん、なんでこの√につっこんだろうね。
ほんと運命を手繰りよせるの大変だったわ。
以上、投稿が遅くなった理由でした。

ここまでよんでいただきありがとうございます。

誤字脱字報告があると作者がよろこびます。

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