紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

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95 少女のやらかしと細い筋と通すための三手

【ギルド総本山/中腹/鍜治場 [現地時刻 昼すぎ]】

 

少女達とお姉さんが、鍜治場に集まっていました。

 

ハンマーやペンチが散乱した部屋は、スペース確保のため、手前と奥に道具をよせています。

 

「あぁッ、どーしよおおおおおおッ!!」

 

ツインテさんは頭を両手でかかえて、悲鳴をあげています。

 

「ほら勢いで言っちゃうから」

「言うでしょ、やるでしょ、仕方ないでしょ」

 

「これからは細々と生きていくしかないですね」

「無理でしょ。絶対次合ったら殺す眼をしてたじゃんッ」

 

赤金髪少女(わたし)の慰めも、どこに吹く風とばかりに聞いてくれません。

 

あの手、この手と言葉をつむいで数十分、

 

「そうだ────」

 

ツインテさんは急に立ち上がります。

 

顔には妙案が思いついたと書いてありました。

 

「いっその事、ここから逃げるわよ」

「借金もあるのにどうやって逃げるんですか」

 

「そりゃ借金を返してよ」

「返せないからここにいるんですよ」

 

「大会をもう一度やり直せたりしない」

「まずはタイムマシンを探すところからですか」

 

現実を知って、ツインテさんは再び頭をかかえます。

 

「────そんなにもう一度やりなおしたい?」

 

口をはさむのは、紫髪の美人なおねーさんこと、ギルド主任です

 

「マジで、ほんとに、嘘じゃないのよね」

「ホント、ホント、ギルド主任、嘘つかなーい」

 

ギルド主任の視線は、明後日の方向をむいています。

 

彼女が協力する理由は無いはずですから、一体なにが目的なんでしょうか。

 

ツインテさんは、気にせずに話をつづけます。

 

「で、どんな案なのよ」

「ふっふー、この大会の最後には何があるか知ってる?」

 

「どうせ冒険者らしく酒盛りとかなんかでしょ」

「ぶっぶー、はずれー」

 

ギルド主任は、指でバッテンをつくります。

 

ツインテさんは、不満な顔になります。

 

「はい、ニャン子ちゃん正解は?」

「ニャッ? ニャぁ、確かニャ、聖女様からのお言葉、そして優勝品のお渡しがあるニャ」

 

「正解、100点満点」

「まあ予定表というか、司会の人が言ってたニャ」

 

猫耳をゆらし、ニャニャッと答えてくれるのは、娘娘猫さんです。

 

自慢の髭には、油が固まって、ピコピコと揺れています。

 

「狙いはそこ。聖女様が獣王に、優勝をつける時────旗を使うの」

 

「旗を使ってどうすんのよ」

「ただの旗じゃない、聖女が使う旗よ」

 

聖女の旗。龍との孤独な闘いにおいて、彼女たちが象徴として使ったのが“純白の旗”。

 

長き戦いを耐え抜いたその旗は、気づけば民衆たちの“正しさ”の象徴となっていました。

 

「本来は、自分の後ろには聖女がついてるって脅しなんだけど」

「それを聖女にやるのかニャ?」

「それも問題よねー」

 

最後の言葉に、ツインテさんは、ひっかかりを感じます。

 

「それも、ってことは更に問題があるわけ?」

「ざっと2つほどかなー」

 

ギルド主任は、指を1本立てます。

 

「まずは、旗が聖女の手元にある点」

「それは具体的にどこあんのよ」

「ギルドの地下」

 

ツインテさんは、それって取りに行くの不可能じゃないって顔になります。

 

ギルド主任は気にせず、2本目の指をたてます、

 

「次は掲げるに足りる理由があること」

「掲げる理由ですか?」

「そんなの負けたのが悔しいとかでいいんじゃないの?」

 

ギルド主任は、ツインテ少女の提案を却下します。

 

「だめだめ、負けたのはコロシアムのルールに沿ってるんだから理由にはならない」

「と言われてしまうと、理由を考えるのも難しいですね」

 

前回の敗北は、獣王と私の圧倒的な力量差です。

 

不正をしたもの私達ですし、そこまでして勝てなかったのも私達です。

 

「しかも妹ちゃん。もしすべてが上手くいっても問題は山積みって話よ」

「確かにニャ。キイロニャの機械巨人は前回、全壊しているニャ」

 

「全壊以前の問題でしょ。そもそも、あんだけやらかして、前回負けてるんだから」

「痛いところつくわね。ツインテちゃん」

 

「結局、全てが上手くいっても勝てる見込みがないニャ」

「それは同感。前回と違って、私も力を貸せないし」

 

皆さんは頭をかかえます。

 

彼らをみてから、口をひらくのは、私です。

 

「大丈夫ですよ、何とかなります、いえ何とかしてみせます」

「つったく。アンタの前向きな言葉はどこから出てくるのよ……」

「理由なんてただ一つですよ」

 

気持ちが前を向いている理由は1つ。

 

獣王の言葉をつかうなら、こんな感じでしょう。

 

「────今度は皆さん、()()してくれるでしょ?」

 

一瞬の間。

 

皆さんが顔を見合せると、どこからもなく笑いがこみ上げてきます。

 

「くく、アンタ、中々に言ってくれるじゃない」

「いやー、私はもとから妹ちゃんのために協力してたしー」

「そうだニャ、今度こそはニャだって役に立ってみせるニャ」

 

ツインテ、ギルド主任、娘娘猫、と三者三様の反応を示します。

 

「まあどっちでもいいわよ、ニャン子。肝心なのは私達に気合が入ったって事」

「確かに、始まる前から悲観的なのは私らしくなかったわねー」

「そういわれるとそうかもしれないニャ」

 

「私は必要なモノを街から集めてくるわ」

「ならこっちはギルドにちょっと細工してくるかなー」

「ならニャもゴンスを連れて街で買いあさってくるニャ」

 

動き出す皆さんをみて、胸に手を当てる、私。

 

脳からの幻聴は聞こえませんが、誰かの声を聞いたような、気持ちになります。

 

「大丈夫ですよ────私たちは一歩ずつでも進んでいきますから」

 

私もドアノブに手をかけます。




ここまでよんでいただきありがとうございます。

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