【ギルド総本山/中腹/鍜治場 [現地時刻 昼すぎ]】
少女達とお姉さんが、鍜治場に集まっていました。
ハンマーやペンチが散乱した部屋は、スペース確保のため、手前と奥に道具をよせています。
「あぁッ、どーしよおおおおおおッ!!」
ツインテさんは頭を両手でかかえて、悲鳴をあげています。
「ほら勢いで言っちゃうから」
「言うでしょ、やるでしょ、仕方ないでしょ」
「これからは細々と生きていくしかないですね」
「無理でしょ。絶対次合ったら殺す眼をしてたじゃんッ」
あの手、この手と言葉をつむいで数十分、
「そうだ────」
ツインテさんは急に立ち上がります。
顔には妙案が思いついたと書いてありました。
「いっその事、ここから逃げるわよ」
「借金もあるのにどうやって逃げるんですか」
「そりゃ借金を返してよ」
「返せないからここにいるんですよ」
「大会をもう一度やり直せたりしない」
「まずはタイムマシンを探すところからですか」
現実を知って、ツインテさんは再び頭をかかえます。
「────そんなにもう一度やりなおしたい?」
口をはさむのは、紫髪の美人なおねーさんこと、ギルド主任です
「マジで、ほんとに、嘘じゃないのよね」
「ホント、ホント、ギルド主任、嘘つかなーい」
ギルド主任の視線は、明後日の方向をむいています。
彼女が協力する理由は無いはずですから、一体なにが目的なんでしょうか。
ツインテさんは、気にせずに話をつづけます。
「で、どんな案なのよ」
「ふっふー、この大会の最後には何があるか知ってる?」
「どうせ冒険者らしく酒盛りとかなんかでしょ」
「ぶっぶー、はずれー」
ギルド主任は、指でバッテンをつくります。
ツインテさんは、不満な顔になります。
「はい、ニャン子ちゃん正解は?」
「ニャッ? ニャぁ、確かニャ、聖女様からのお言葉、そして優勝品のお渡しがあるニャ」
「正解、100点満点」
「まあ予定表というか、司会の人が言ってたニャ」
猫耳をゆらし、ニャニャッと答えてくれるのは、娘娘猫さんです。
自慢の髭には、油が固まって、ピコピコと揺れています。
「狙いはそこ。聖女様が獣王に、優勝をつける時────旗を使うの」
「旗を使ってどうすんのよ」
「ただの旗じゃない、聖女が使う旗よ」
聖女の旗。龍との孤独な闘いにおいて、彼女たちが象徴として使ったのが“純白の旗”。
長き戦いを耐え抜いたその旗は、気づけば民衆たちの“正しさ”の象徴となっていました。
「本来は、自分の後ろには聖女がついてるって脅しなんだけど」
「それを聖女にやるのかニャ?」
「それも問題よねー」
最後の言葉に、ツインテさんは、ひっかかりを感じます。
「それも、ってことは更に問題があるわけ?」
「ざっと2つほどかなー」
ギルド主任は、指を1本立てます。
「まずは、旗が聖女の手元にある点」
「それは具体的にどこあんのよ」
「ギルドの地下」
ツインテさんは、それって取りに行くの不可能じゃないって顔になります。
ギルド主任は気にせず、2本目の指をたてます、
「次は掲げるに足りる理由があること」
「掲げる理由ですか?」
「そんなの負けたのが悔しいとかでいいんじゃないの?」
ギルド主任は、ツインテ少女の提案を却下します。
「だめだめ、負けたのはコロシアムのルールに沿ってるんだから理由にはならない」
「と言われてしまうと、理由を考えるのも難しいですね」
前回の敗北は、獣王と私の圧倒的な力量差です。
不正をしたもの私達ですし、そこまでして勝てなかったのも私達です。
「しかも妹ちゃん。もしすべてが上手くいっても問題は山積みって話よ」
「確かにニャ。キイロニャの機械巨人は前回、全壊しているニャ」
「全壊以前の問題でしょ。そもそも、あんだけやらかして、前回負けてるんだから」
「痛いところつくわね。ツインテちゃん」
「結局、全てが上手くいっても勝てる見込みがないニャ」
「それは同感。前回と違って、私も力を貸せないし」
皆さんは頭をかかえます。
彼らをみてから、口をひらくのは、私です。
「大丈夫ですよ、何とかなります、いえ何とかしてみせます」
「つったく。アンタの前向きな言葉はどこから出てくるのよ……」
「理由なんてただ一つですよ」
気持ちが前を向いている理由は1つ。
獣王の言葉をつかうなら、こんな感じでしょう。
「────今度は皆さん、
一瞬の間。
皆さんが顔を見合せると、どこからもなく笑いがこみ上げてきます。
「くく、アンタ、中々に言ってくれるじゃない」
「いやー、私はもとから妹ちゃんのために協力してたしー」
「そうだニャ、今度こそはニャだって役に立ってみせるニャ」
ツインテ、ギルド主任、娘娘猫、と三者三様の反応を示します。
「まあどっちでもいいわよ、ニャン子。肝心なのは私達に気合が入ったって事」
「確かに、始まる前から悲観的なのは私らしくなかったわねー」
「そういわれるとそうかもしれないニャ」
「私は必要なモノを街から集めてくるわ」
「ならこっちはギルドにちょっと細工してくるかなー」
「ならニャもゴンスを連れて街で買いあさってくるニャ」
動き出す皆さんをみて、胸に手を当てる、私。
脳からの幻聴は聞こえませんが、誰かの声を聞いたような、気持ちになります。
「大丈夫ですよ────私たちは一歩ずつでも進んでいきますから」
私もドアノブに手をかけます。
ここまでよんでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。