紅き戦鋼のTSガール's   作:上殻 点景

98 / 107
98 娘娘猫とその他と気持ちの向き

【ギルド総本山/中腹/工房 [現地時刻 昼すぎ]】

 

「こ、これが、ゴンスさんの鎧……あれ、なんか形違うような?」

「外装の鎧は取り外してあるニャ」

 

右をみれば、外されているゴンスさんの鎧です。

 

こちらはピカピカに修復が終えてありました。

 

「外装の鎧……あの鎧の下に、この鎧が入ってたって事ですか?」

「まあ鎧というより、機械人形だニャ」

 

「機械人形、悪くない響きですね」

「そう────あれ、ニャ?」

 

くらげの少年は、気づけば横からいなくなり、

 

どこにいったのかと、娘娘猫さんが見渡していると、

 

戦鋼をいじくっている少年の姿がありました。

 

「変なところ触ると危ないのニャ」

「このケーブルはなんですかね。魔力を送る線とか、いや……」

「一切聞いてないのニャ」

 

あーだ、こーだと少年は戦鋼にべったりと触りつづけます。

 

そしていったん満足したのか、今度は娘娘猫さんに詰め寄ります。

 

「店主猫さん、質問いいですかッ」

「いや、聞かれても別に答えれないニャ」

 

「まずこのケーブルが魔法陣の魔力伝達と同じ役割だと────」

「おかしいニャ。言葉が通じてないニャ……」

 

数十分後。へとへとになっているのは、娘娘猫さんです。

 

一方で、満足そうに頷いているのは、くらげの少年となっています。

 

「つ、疲れたニャ」

「あっ、すみません。つい聞きまくってしまって」

 

「いいのニャ……しっかし、よくそんなことまで頭が回るのニャ」

「実はこう見えて、魔導雑貨店の店主をやっていまして」

 

ちょっとだけ、胸をはる少年です。

 

背後からあらわれた、触手はもじもじしていますね。

 

どうやら自慢したい気持ちと、バレたくないという気持ちが合わさっている様子です。

 

「魔導具店の店主ニャ? なら、この鎧も知っているんじゃないのニャ?」

「恥ずかしながら、こんな凄いモノとは知らなくて……」

 

「確かに的あてに売られていたしニャ」

「うぐっ」

 

娘娘猫さんの言葉を聞いて、落ち込むくらげの少年です。

 

「あの販売は、僕の一生の不覚といっていいかもしれません……」

 

ぶつぶつと呟く中には、「まさか動くモノとは」「上手くやれば、僕が動かせたかも」なんて言葉も聞こえてきます。

 

「まあ、どのみち、この機械人形は動かないのニャ」

「えっ、そうなんですかっ⁉」

 

娘娘猫さんは、戦鋼の空洞部を、顎でさします。

 

くらげの少年は首をかしげます。彼女が何を言いたいかを分かっていません。

 

「そこに入ってたモノがないのニャ」

「僕にできる範囲で、素材は渡しますよ」

 

「いいニャ。キイロニャ曰く、制御プログラムが無ければ、ただの重い鎧ですよ、だそうニャ」

「制御プログラム……魔法でいう、陣みたいなモノってことですか」

 

「まあ、たぶん、そんなもんニャ」

「ぐ、わからない。分からないけど、時間があれば分かる。でも肝心の時間がッ」

 

少年は先ほどから、妙に時間を気にしています。

 

急に現れ、秘密を聞いて、動かないことに落胆して、理由はなんでしょうか?

 

「なにか、急ぎの予定でもあるのニャ?」

「いえ、いや、そういうことではなくてですね……」

 

口ごもる少年に、疑問におもう娘娘猫さん。

 

そして視界に割り込んでくる、プラカードです。

 

[────ほら、いった通り]

 

娘娘猫さんが、今度は誰にゃ、と振りむくと、

 

プラカードを持っているのは────赤髪の小さな少女です。

 

眼にアイマスクをしている不思議な少女となっています。

 

「い、イヤーガールさん」

[おとなしく、自分の運命を受け入れなさい]

 

「ほら、今見たら運命変わっているかもしれないじゃないですかッ」

[どうせ変わらない、と思うけど]

 

アイマスクから溢れる青い光。

 

[あなたの獣王戦勝率は0%]

「嘘だあ。僕には聖女様の許可をとって、この街を巨大な魔導具に改造するって野望が」

 

「そっちの野望も0%」

「う、嘘だあ」

 

くらげの少年は、頭を抱えます。

 

背中の触手も空気をよんで、オロオロと狼狽しておきます。

 

「獣王戦? 少年は獣王と戦うのニャ?」

「えっと、それは、アレでして」

[彼が大会決勝戦、獣王の相手]

 

プラカードが割り込みます。

 

「ちょっ、イヤーガールさんバラさないでくださいよッ」

[どうせ勝てないから問題ない]

 

「でも、鎧の秘密を知れば、僕でも勝てるんじゃないかという淡い期待が、バレるのが」

[こざかしいことをする貴方は嫌い]

 

「そ、そんなこといわなくても」

[運命は不変。変えれるものではない]

 

打ちのめされている少年に、声をかけるのは、娘娘猫です

 

「────大丈夫ニャ、少年が負けてもゴンスニャが、勝つニャ」

 

イヤーガールは首をかしげます。

 

[あなた達は負けたのでは?]

「旗を立てれば、もう一回挑めるらしいにゃ」

 

[旗? そんな凄いアイテムが存在するわけ……]

「確かニャ、聖女の旗だったニャ」

 

イヤーガールの顔が、どんどんと青くなっていきます。

 

[────まさか、旗でやり直すのではなく、旗を立てることで聖女に直訴するつもり⁉]

 

次々とプラカードに表示される、イヤーガールさんの焦った心情です。

 

[無茶、無理、不可能]

「どのみち、皆はやる気ニャ」

 

[理も無ければ、正しくもない。そんな事に旗が共鳴するハズがない]

「旗を立てることに、正しさがいるのニャ?」

[正しいとみなされなければ、もってかれるのはその身]

「し、死ぬってことかニャ」

[消える。間違ったモノを嫌うのは聖女の旗よ]

 

聖女の旗。その正体は、聖女の魂を保存した旗となっています。

 

高貴な魂を握るのですから、彼女の許しがなければ体が消し飛ぶのは自明です。

 

「────それでも、あなた達はやるというの?」

 

「────むしろ、決心がついたニャ」

 

娘娘猫さんは、ちいさな肉球を握ります。

 

「いいかニャ、前回の戦いだって、自分は壁の向こうで見ていることしかできなかったニャ」

 

悔しくても、悲しくても、どうしようも無かったニャ。

 

でも、そんな自分に今回はやることができたのニャ。

 

「ならば────旗を掲げれるのは自分しかいないのニャ」

 

[自意識過剰よ。あなたは特別な力すらもってないのよ]

「分かってるニャ。キイロニャも、ゴンスニャも、ツインテニャもみんな、戦場で戦える力を持っているのニャ」

 

娘娘猫さんは、自分の小さな肉球の手をみつめます

 

「戦場はすでに決着がついたニャ。でもそれを覆すなら、誰からの、外からの声が必要なのニャ」

[アナタにそれができると?]

「人はどこかで踏み出せば、変われると知ったのニャ」

 

イヤーガールから、青い光が漏れます。

 

[旗が手元にある可能性だって……1%。なぜ、その運命が存在する」

「きっと……仲間が協力してくれるからニャ」

 

[私の勇者、ちょっと付き合ってもらう]

「えっ、イヤーガールさん、ちょ、急に引っ張らないでください」

 

どたばたと工房から消え去っていく、イヤーガールと、くらげの少年。

 

見送る娘娘猫さんは、満足そうに、ちょっぴり残念そうな顔をします。

 

「今度は売り物も用意しとくかニャ」

 

彼女は、鎧を磨き始めるのでした。

 

【ギルド総本山/内部/地下 [現地時刻 夕方]】

 

[まさか、本当に旗が盗まれるなんて]

「記録用水晶玉見ましたけど、幽霊みたいな人物がいるんですね」

 

[ギルド総本山の地下は、幽霊に抜かれるほど甘くない]

「でも、実際に虚空に消えてましたし。あんな魔導具ありましたっけ?」

 

[おそらく、あれは魔法]

「でも転送魔法系統は使えないハズじゃあ」

[誰かが意図的に切ったか、それすらも超える使い手か……]

 

くらげの少年は、ところで、と口をひらきます。

 

イヤーガールさんは、なんだ、とプラカードをあげます。

 

「イヤーガールさん……僕が決心をしたところで、獣王戦の勝率は変わりますか」

[変わらない。変わるわけがない]

 

「なら、僕、決めました」

[それ、口に出さなくていいわよ]

 

「えっ、どうせ負けるなら、盛大に使いたいって思っただけなんですけど……」

[おかげで1%になったって話をする?]

 

「なにがですか、って聞いても」

[彼女が旗を握れる可能性に決まってるでしょッ]

「痛いッ! あ、ちょ、プラカードで殴らないでくださいッ!!」

 

空洞にこだまするように、彼らの声は地下に響きわたるのでした。




ここまでよんでいただきありがとうございます

誤字脱字報告があると作者が喜びます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。