マジシャンズ / 奪われたロストロギア 作:紅乃 晴@小説アカ
きっかけは些細な一言だった。
スイーパー・ギルドの面々と管理局魔導師の模擬戦。
互いが互いを戦士として讃えあっていた中での、ジャンが対戦相手のフェイトに一言。
「君はいい尻をしているな。よい戦士を産むだろう」
「えっ…?」
「は???????フェイトちゃんは胸やけど?????」
「えええ……?」
その言葉に即座に反応したのは、たまたま隣に居たはやて。
なのはが隣であれば、ジャンは消し炭になっていたであろうが、幸運な彼は幸運である事に気が付かず「分かってないな」とはやての言葉を否定する。
かくして、東にはやて、西にジャンが陣を構える合戦の幕が上がった。
後に語られる天下分け目の癖ヶ原の戦いである(身内談)
先陣を切るは、勝手知ったる地元チームであるスイーパーギルドのジャン。初手を取れれば、それだけ流れを掴みやすいからだ。
「女の戦士の尻を褒めるのは何故か。それはやはり下半身が安定すればするほど、デカイ得物での立ち回りも比例して安定するからだ」
射殺さんばかりの目でこちらを睨みつけるはやてだが、それは副産物に過ぎない、とジャンは語る。困惑するフェイトを真ん中にバチバチと火花を散らすジャンとはやて。そして真向かいに座るなのはの目がスッと冷気を帯びていく。ヒッとフェイトの上げた小さな悲鳴だが、合戦を繰り広げる二人は気づかなかった。
「ヒトにとって、いや生命にとって繁殖行為というのはとても大事な事だ。尻のデカイ女性というのはそれだけで男の性欲を滾らせると同時に、争ってでも女性を孕ませねばと強く思う事が競争を生み、結果として強い男が子孫を残す!サガミ、お前もそう思うだろ!?」
「知らん。巻き込むな。勝手にしろ」
だが、相棒だったはずのサガミが一応聞くだけ聞く義理を果たした後、その場を去った。
おお、なんたることか。まるで優勢だった豊臣軍から小早川秀秋の離反した時のようだ。これにより、2対2の均衡は破られる。
「生命として繁殖行為が大事なのは認める。けどな?それが“胸は尻に劣る”と否定するのは、ウチちょっと違うと思うんよ。尻が異性だけでなく、時には同性すら魅了するのは認める。せやけど、それはあくまで“ヒトが四足歩行やった時代”や。二足歩行になり、道具を使い、衣服を纏うようになってからは…そうとは限らん。暑い日は夏の日差しを遮り、寒い日は風と冷気を防ぐ衣服。文明が環境を克服した証の一つや。そして胸が大きくなったんは!そんな衣類の上からでも分かる位大きくなったんはズバリ!!文化の発展に適応し、女性としての強さをアピール出来るよう進化したからや!!!更に胸の大きさはそれだけで母乳分泌量が増し、育てられる子供の数も増える……胸の大きさはつまり、文化の大きさなんや……!!」
大筒の如しなんたる一撃か!生命としての本能を説いたジャンの真田丸めいた難攻不落とも言える前提を、文化の発展と生命の進化になぞらえ反論せしめたのだ!これには横にいたなのはも頷き……。
「とりあえず二人とも黙らせた方が良いのは分かったの」
得物を、抜く。
魔力が乏しいこの世界。それがなくとも不調のデバイス。
一介の魔導師では十全にその能力を発揮できないだろう。
だが、高町なのはは違った。
彼女は魔導師である以前に…「古流武術を修める男の妹」だった。
「御神真刀流小太刀二刀術…」
そこから先は、一瞬だった。
哀れ真横にいたはやては初撃で尻を叩かれ、一方のジャンは「上等!」とまるで島津の如く全力で前に向かって逃げるが、神速の刃の前にあっけなく尻を赤くするのであった…。