マジシャンズ / 奪われたロストロギア   作:紅乃 晴@小説アカ

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第六話「雷鳴はまだ遠く」

 

 

 

スイーパー・ギルドの拠点は、ヘンリー・ヴァンダーの各所にある。その理由は単純で、害獣駆除で拠点が使用されることが多い。

 

この世界の原生生物は豊富な種類がいて、種の起源はこの世界で栄華を極めたグランデリニア帝国が存在していた頃に遡る。

 

この地に残された遺跡の一つに記された帝国黙示録には、末期に起こった帝国内戦によって、多種多様の生物兵器が生み出されたようで、それら生物兵器と環境汚染による影響で、帝国は衰退し、最後は自らの禁忌兵器を使用して、その身を滅ぼしたと記されている。

 

現在、この地に生きる生物の多くが、グランデリニア帝国の産んだ生物兵器の子孫にあたる。といっても、その生き物たちも独自の進化、生態系を築いており、星を死に追いやる毒性を持つ生き物たちは生き延びるためにその能力を退化させていき、星の理に順応して行った。ただ、星単位で見れば丸くなったとはいえ、人にとってはまだまだ危険な存在であり、その気まぐれで人の生活圏は簡単に脅かされる。

 

スイーパーの仕事には人に害を及ぼす害獣の駆除も含まれていて、同時にスイーパーとなる人間の少なさに直結する要因ともなっている。害獣駆除はスイーパーで最も危険な仕事でもあり、ヘンリー・ヴァンダーでの死因でもトップクラスなのが害獣による被害でもあった。

 

この世界において害獣は三つのランクに分けられていて、そのランクはB級、A級、特A級とされている。B級は駆除用に販売されている武装を使えば、一般人でも討伐できるランクで、A級は腕に覚えがある者なら対処可能、そして特A級がヤバい。何がヤバいかというと危険性が他のランクと段違いなのだ。

 

先日、サガミが討伐したワードラゴンを筆頭に、ローデックスや、ゲールズドラゴなど、神話から飛び出してきたような化け物が存在していて、そのランクの害獣はまず討伐用の武装が通じない。腕に覚えがあるからといって安易に挑んだ者で帰ってきた者は存在せず、特A級を単独撃破できるスイーパーでも、討伐失敗で殉職することも珍しくないのだ。

 

まだ単独撃破できるワードラゴンはマシ。素早い動きな上に群れで獲物を狙うローデックスや、中型空輸艇を丸呑みにできる巨体を誇るゲールズドラゴになると、スイーパーも一人では対処は困難。ギルドの要請で傭兵たちにも声をかけて討伐作戦を計画することもある。

 

そのため、討伐用の詰め所や待機場、いざという時に逃げ込めるようにとリニアを中心に、ヘンリー・ヴァンダー各所にスイーパー・ギルドの拠点があるのだった。

 

ひとまず、対処に頭を悩ませたサガミは、外からやってきた管理局を名乗る者たちを最寄りの拠点に運んできたわけだが、どうやら厄介ごとに首を突っ込んだらしい。

 

外へつながる扉を出ると、すでに拠点の周囲には何名かに取り囲まれていた。ざっと見て10名近く。しかも人だけじゃなく自立型の補助ドローンも連れているのが確認できた。

 

補助ドローン。

 

もとは自立型の機械兵器群とデバイスを掛け合わせたものらしく、一年前に飛行艇の中古販売業を行っている業者が商品紹介のデータを持ってきたことがあったが……まるで使い物にならない代物であったはずだ。

 

だが、技術の進歩は恐ろしいもので、ワイズナリー・バイエンス社が開発した補助ドローンは、力で全てが罷り通る世界で爆発的に需要が上がっていた。

 

結果的に、いくつかのバージョンアップを経て、補助ドローンは警備ロボットや暴動鎮圧用のものも普及し始めているのだとか。

 

「噂には聞いていたが……実物を見ると雲泥の差だな」

 

警戒を怠るなよ、と告げる愛剣からの忠告に無言の了解を示すと、取り囲んでいた何名かの内、三人が緩やかな足取りでサガミの元へとやってくる。

 

「大所帯で申し訳ない。少し、君が保護した者たちに用があってね」

 

単刀直入に要件を言う男は、まるで道を尋ねるような気軽さでサガミの懐へと踏み入り、手を差し伸べた。

 

「アルネスト・エッセだ。以後お見知り置きを」

 

「サガミ・バルディオ。スイーパーだ。その役目の説明は必要か?」

 

お互いの自己紹介をすると日が暮れてしまうよ、とアルネストと名乗った男は、40と言う齢に相応しい落ち着いた様子で、警戒を解かないサガミへ気さくに話を続けた。

 

「君がこの世界における保安官的な役割をしているのは承知の上だ。だからこそ、我々に君が保護した者たちを引き渡してほしい」

 

「正確にはアイツらが持っている〝何か〟をだろ?」

 

そう答えると、アルネストは愉快に口を歪めてサガミの肩を叩いた。

 

「話が早いのは嫌いじゃない。簡単な話だ。我々はその〝何か〟が欲しい。手に入れば別段何かをしようと言うつもりもない。早々にここを離れて、本来いるべき場所へと戻るさ」

 

「その保証はどこにある?」

 

「それを言われては何もできないさ。我々の誠意で示すしかあるまい」

 

そう言葉を続けるアルネスト。ただ者ではない。サガミは察せられない程度に、しかし、その気になればいつでも剣を抜けるように臨戦体制を心がけていた。

 

「ただ、君が抵抗すると言うなら……我々も相応の対応をせざる得ないがね」

 

リニアの外れは一面の荒野が広がっている。平地を吹き荒らす風が、サガミの右肩に掛かったいる肩章を揺らした。背後に気を向ければ、不安げな顔でこちらの様子を伺うメリーや、ファーンの気配があった。たしかに、彼女らを引き渡せば厄介ごとから逃れられるかもしれない。

 

だが、それは相手が本当のことを言っていればだ。

 

「アルネストさん。アンタ一人なら信用していたかもしれない。……後ろの二人から漏れてる殺気がなければ、だけどね」

 

その瞬間、穏やかだったアルネストの顔に邪悪な笑みが浮かび上がった。

 

「貴方、良いかもしれません」

 

それが合図だったのか。アルネストの後ろに控えていた二人が、腰に携えていた剣を引き抜く。ひるがえした灰色の外套の下。一見したサガミの感想は時代不相応な防具だった。

 

まるで旧世代の騎士甲冑を思わせるような形をしている二人からの殺気を受け、サガミは一足飛びでアルネスト含む三人から距離を取る。

 

「ひとつ、忠告だ。このまま帰ればよし。挑むというなら……」

 

静かに背中に収まっている愛剣、ドワーズのグリップを握りしめる。75センチという片手で扱うことに重きをおいた刀身と、無駄のない実用的な面に特化したデザイン。引き抜き、その洗練された一刀に相対していたアルネストは感心したように、まるでいい原石を見つけた指導者のように、サガミの姿を見て、目を細めた。

 

「スイーパーに喧嘩を打ったこと、後悔するなよ?」

 

片翼の肩章をはためかせながら、サガミはドワーズを構え、殺気をみなぎらせる男たちへ立ちはだかるのだった。

 

 

 

 

 

 

時空管理局、本局。

 

次元の海を管轄とするそこは、治安維持を主とする地上本部とは違い、次元航行部隊が各世界をまたに掛ける形でロストロギアの回収や魔導犯罪者の追跡、逮捕を主な活動目的としていた。

 

執務官であり、フェイトの兄であるクロノからの招集を受けたなのはたちは、すぐに本局へと上がることになった。

 

トラブルの発端となった「ジュエルシード輸送船からの通信途絶」。事件当初は輸送船がミッドチルダから遠く離れていること、未開領域が多い外縁部を航行しているという点から、単なる通信装置の不備が疑われたのだが、その後、外縁部から離脱した脱出艇からの救難信号を受けたことで状況は一変した。

 

ファーンたちが逃した外縁調査部のL-U級外縁次元探査艦「エンデュランス号」の乗組員たちはすでに管理局の船に保護されているが、エンデュランス号が最後に確認された座標が不可視領域に入っているのが問題を大きくしていた。

 

次元探査艦には、非常時のための転送装置が設置されている。これは乗組員を脱出させるというより、管理局からの救援隊を送るという側面が強い。基本的に次元航行艦の乗組員は非戦闘員だ。戦闘要員もいるのも確かだが、あくまで護衛という面が強いことから、ロストロギアが暴走した場合や、現地の調査時に不足の事態に巻き込まれるなど、そう言った非常時には強力な戦力を即時投入できるよう体制を整えていた。

 

しかし、エンデュランス号が確認された不可視領域は、外部からの転送を一切受け付けない領域。副艦長から艦は一度、トラクタービームで捕捉され、敵が乗り込んでくるのが見えたという証言が得れていることから、艦のコントロールは敵の手に落ちていると考えていいだろう。不可視領域へエンデュランス号を移動させたのも、外部からの戦力投入を防ぐ目的があるはずだ。

 

つまり、敵の動きは完全に組織化されている。

 

幸いなことに、ロストロギアであるジュエルシードは、指揮官であったファーン・コラードや、彼女が選んだ優秀な訓練生たち、そして本局技術部にも在籍していたエンジニア、レイカ・S・ヴァーンも搭乗した小型艇で脱出したと聞いてはいるが……彼女らの消息も途絶していた。

 

本局は彼女らが消息をたったエリア、エンデュランス号が確認された不可視領域の座標を中心に調査を進めていたのだが……。

 

「何言ってるんですか!?無茶に決まってるでしょ!?」

 

本局技術部の主査となっていたマリエル・アテンザは、ジュエルシードを巡った事件や、闇の書事件から縁が深くなった少女たちの言葉を聞き、思わず声を上げていた。

 

「座標の近くにあるのは、第6外縁世界のヘンリー・ヴァンダーです。なら、そこに辿り着ければ何か手掛かりを得ることができるはずです」

 

驚愕するマリエルにそう畳み掛けるのは、この事件で誰よりもジュエルシードと関わりを持つフェイトだった。

 

「ちょおお!フェイトちゃん!落ち着きぃ!」

 

凄まじい剣幕でマリエルに詰め寄るフェイトだが、その間に待ったをかける。無理やり引き離されて冷静になったのか、フェイトは小さく息を吐いてマリエルに「ごめんなさい」と頭を下げる。その様子を見て、マリエルも「わからないわけじゃないけど……」と言葉を置いた上で、フェイトが求めたことの危険性を説いた。

 

「次元跳躍(ディメンションジャンパー)はまだ実証実験途中のシステムです。実験段階もまだ物体のみで、生体実験も行なっていないのに……それを使って外縁世界に向かうなんて、無茶を通り越して自殺行為ですよ?」

 

次元跳躍。それはこれまでの転送とは根本的に異なる新たなシステムだ。転送はあくまで登録された点と点を結ぶものであり、制約はあるものの、一度登録し、経由点に障害となるものが存在しなければ自在に行き来できるようになっている。

 

転送の利点は登録した点の行き来だ。

 

一度、道が確立してしまえば安全に目的地へと向かうことができる。デメリットで言えば、登録されていない点に行けないことや、一度登録していても経路に障害物ができてしまった際に、再度経路を登録し直す必要がある点だ。

 

次元跳躍はそのデメリットを無視できる。

 

未登録の地でも強制的にそこへ向かう道を作り、そして対象を現地へ文字通り跳躍させるのだ。ただ、このシステムにはまだまだ課題がある。

 

一つ目は跳躍する対象者の安全が絶対ではないこと。

 

転送が出来上がった通路を通るイメージなら、次元跳躍は砲弾に人が乗って目的地へ打ち出されるイメージであり、次元跳躍時、対象者は強固な魔力外殻で覆われて目的地まで打ち出されることになるのだ。

 

もちろん、移動経路は算出されるので、航行中の艦艇との接触や、他世界にぶつかるという最悪の事態は回避できるが、それでも不可視領域や、虚数空間、次元の裂け目など次元空間の危険性を無視することはできない。もし跳躍時にそれらに巻き込まれれば目的地に到着する前に無限に広がる次元世界のどこかを彷徨い続けることになるのだ。

 

二つ目は装置が大型すぎて携行出来ない点だ。これは非常に大きな課題となっている。次元跳躍は通路を作るという過程を無視して対象者を指定した場所へ向かわせる技術だ。つまり、多少の障害物等があった場合はそれらを無視する必要があるため、跳躍時の射出装置には膨大なエネルギーが要求される。

 

本局で開発中のものでも、装置は巨大でエネルギー充填用の専用チャンバーや、電磁レール射出機などなど、将来的には全てをオミットした携行サイズのものも作れるだろうが、現時点ではとてもじゃないが持ち運べるサイズに落とし込めるものじゃない。

 

つまり、マリエルの開発している次元跳躍装置はかなりのリスクを孕んだ上で、片道しか使用できないのだ。

 

「しかも目的地は次元世界の端である外縁部……いくらなんでも無茶よ。リスクが大きすぎる」

 

いきなり技術本部に押しかけて来られたので何事かと思えば、まだ実験テストも途中の装置を使わせて欲しいなんて、無茶振りもいいところだ。

 

一歩間違えれば、命を落とす。

 

そんな危険があるというのに、それでも目の前にいるフェイトは頑として諦めようとしなかった。

 

「それでも、行かなきゃいけないんです……!」

 

絞り出すような声にマリエルも困り果てた表情しかできない。本来なら誰もが反対することではあるのだが、今の状況はマリエルの味方をしてくれなかった。

 

「ここからポイント・エイトまでは高速航行でも二ヶ月はかかる。アースラを使っても一ヶ月以上は必要だ」

 

そう付け加えたのは、なのは、フェイト、はやてを呼び出した張本人であるクロノ・ハラオウンであった。彼の後ろには不安げにフェイトを見つめるアルフや、はやての守護騎士であるシグナムやヴィータたちもいる。

 

クロノが緊急通信を繋いだ段階で、事態は最悪の状態となっていた。乗組員の脱出は確認できたが、肝心のジュエルシードは護衛していた人員ごと行方不明。しかも護衛の指揮をとっていたのは、なのはやフェイトとも関係の深い訓練学校の学長、ファーン・コラードだ。

 

彼女の肝入りの生徒たちを人選したとはいえ、何者かに狙われたジュエルシードを護衛するなんて荷が重いどころの話ではない。しかも、場所は通常航行なら三ヶ月ちかく掛かるとされている場所だ。

 

「その期間に、ジュエルシードが何者かの手に堕ちれば、またあの時みたいな惨劇が起こる……いえ、もっと酷いかも」

 

なのはの言うとおり、状況がマリエルのいうリスクを覆すほど悪い。海鳴の地で次元震を起こしかけたジュエルシードはたったひとつ。それが複数個、同時に臨界に達すれば、外縁部であるポイント・エイトなど容易く吹き飛ぶことになる。

 

「たった数個で次元震を起こす代物やからな。まともな相手なら手を出さへんけど……手を出している以上、相手も普通じゃない」

 

「マリエルさん。お願いします!行かせてください!」

 

頭を下げてお願いをしてくるなのはたち。しかし、マリエルにも技術者として譲れないものがあった。計り知れないリスク。望んで得たモノで体を蝕まれる少女。それをわかっている上で、そんな物しか渡せなかった自分。

 

『素質も才能も技術者がおもちゃにしていいものじゃないのよ!!』

 

若者の才覚。力にばかり目を向けていた本局技術部の方針に嫌気がさして出ていった先輩の言葉が、マリエルの胸に深く突き刺さっている。……才能があるからといって、それを委ねていいものではない。

 

「上からの承認を取って入るとは言っても……危険すぎるよ」

 

でも、あの時と同じく状況はマリエルの思いを許してはくれない。組織としての方針と、技術者としての役割。そんな思いに板挟みになっているマリエルに、フェイトはまっすぐとした目で言葉を紡いだ。

 

「ジュエルシードは……私にとって母の形見のようなものなんです。それが悪用されることだけは……お願いします!」

 

その目は、ある種の覚悟を持った目だった。あぁ、知っている。あの時……闇の書に挑んだ時も、この子達は同じ目をしていた。その目に後押しされて、自分は持てる力を彼女たちに託したのだ。

 

先輩の言うように無責任な真似だったのかもしれない。できるからやったと言う無責任な行動の結果、なのはも傷ついたし、フェイトやはやても、浅くない傷を持つことになってしまった。

 

でも……それでも、あの時の自分の決断も、その覚悟を持った彼女たちの思いも、間違いじゃなかったし、それに後悔なんてしてない。

 

マリエルは少し息を吐いて、しばらく瞑目するように目を閉じてから、意を決して耳に備わるインカムをオンにした。

 

「みなさん、聞こえますか?ジャンパーを使います。テスト?いいえ、違います。本番です。スタッフ全員、所定の位置へ」

 

通信越しに「無茶だ」「そんな危険な真似」とチームの面々からの声が聞こえる。けれど、それじゃあ止まらない。目の前にいる少女たちの意思は、それを振り払ってでも前に進むと言う覚悟を宿していた。

 

「保証はできないけど……それでもいくんだね?」

 

真剣な眼差しで問うマリエルの言葉に、フェイトをはじめ、なのはもはやても力強く頷き答えた。

 

ついてきて、とマリエルに案内されたのは実験区画の奥に存在するプラットフォームだった。そこにはすでにスタッフが集まっていて、システムの最終調整を進めている。入り口までなのはたちを案内したマリエルは、そのまま管制室へと向かい、モニターとマイクの前に立つ。

 

「これより、次元跳躍システムの最終テストを行います」

 

その言葉に、現場は一気に慌ただしくなった。作業員たちが最終チェックを行い、各システムの接続が始まってゆく。

 

【次元跳躍(ディメンション・ジャンパー)、最終項目チェック完了。隔壁閉鎖。作業員は所定の位置へ退避してください】

 

「いい?よく聞いて。貴女達はある意味では放たれた砲弾に乗って目的地まで向かうことになる。着地する地点は少しの微調整ができるようにしているから、跳躍開始後のコントロールだけは貴女達に委ねる形にしているよ」

 

前に進んで、というマリエルの言葉に従い、なのは、フェイト、はやてが隔壁内のエリアへと足を踏み入れると、すぐに後ろの扉が閉まり、目の前を閉ざしていた二重扉が開いた。

 

【座標固定。目標、ポイント・エイト。エネルギーライン、8番から15番接続。メインタービン始動、同期開始……3、2、1。リアクター同期完了。正常起動を確認】

 

次元跳躍装置の内部は小さな円球の空間で、三人はその中央部に立つように指示を受ける。

 

「まだ試作段階だから搭乗員は3名まで。貴女達の跳躍後、後発のシグナムさんや、ヴィータちゃんも出発することになる」

 

すると、マリエルに続いて管制室へ入ったクロノが、マイクを手に取って任務の内容を三人へ伝える。

 

「なのは、フェイト、はやて。向こうについてから、脱出した者たちとの合流が最優先だ。可能ならそのまま離脱。外縁部から脱出してくれ」

 

くれぐれも言うが、今回の作戦は救出作戦だ。対象を保護したらすぐに離脱する。それを忘れないでくれ。そう締め括ったクロノからマイクを返されたマリエルは、最終データをチェックし終えてから、震える手をギュッと握りしめて、モニター越しに三人を見つめた。

 

「危険なのは覚悟の上だろうけど、これだけは言わせて……これ以上、無理をしないで」

 

待機している中、フェイトは改めて深く頭を下げる。彼女にとって、ジュエルシードは特別なものだった。母との絆であり、母がいたという証の一つでもあるから。だから、これはワガママだ。

 

自分の思いに従った、ワガママだから。

 

「マリエルさん。……ありがとう」

 

フェイトの言葉に、マリエルは小さく頷きつつ、起動プロセスを開始を告げた。

 

【アイゼンロック。電磁リング回転開始】

 

空気が抜ける音と、電磁リングが動き始める音がプラットフォーム内に響き渡る。徐々に回転を早めていくそれは、なのはたちを安全にかつ、確実に目的地へと打ち出すために必要なエネルギーを充填させていく。

 

【外殻成形正常。チャンバー内、正常加圧中。全エネルギー、オールグリーン】

 

「次元跳躍、開始!」

 

エネルギーを充填した次元跳躍装置は、極光を放つように打ち出され、その打ち出された光は凄まじい速度で次元空間を貫き、三人を遥か先へと羽ばたかせていくのだった。

 

 

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