鉄の霞と技術者   作:石和

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AC6アプデの感想
 ・駄犬もとい害獣とその飼い主
 ・裏切り者の第四隊長
 ・頭の悪い上層部
 ・言うこと聞かない第一隊長
 ・意味不明の極細パーツばかり提案する傘下企業
 ・歌うわ発狂するわで再教育もできない傘下企業所属メカニック「メカ」

 悲しき中間管理職メガネにしてヴェスパー第二隊長スネイルの救済措置が必要なのでは?――――まあ殺すけど。ごすをやられた恨みは永遠なり。

 あと、速さと高みを目指す癖について、ラスティが同類のシュナイダーに惹かれたのか、シュナイダーがラスティを同類へ洗脳したのか、果てはフラットウェルが一番気狂いですべての元凶なのか………。

 私、気になります!




3周目
略取


 

 

 早朝、目を覚ます。頬を伝うぬるいものを感じ取り、それを拭う。

 

「……何で泣いてるんだっけ?」

 

 何か夢を見ていた気がするが、何も覚えていない。時間を確認すれば起床するには早すぎた。二度寝をしようと決めたときに、ふと気づく。

 

――――確か、今日だった気がする。

 

 脳裏に過ぎるのは、『前世の記憶』のような、まだ体験していないのに知っている不思議な感覚で再生されるスパイ男との邂逅シーン。今日は朝からTUBASAのメンテをして、帥叔に呼び出されて、スパイ男のACを組まされるはずだ。

 

「どうせまた、NACHTREIHER(ゴイサギ)シリーズの軽2を組まされるんだ!知ってるぞ!」

 

 未来が分かるというよりは、現場に居合わせて感じるデジャヴみたいなもの。そのため、未来に対して干渉するようなことは行えないが、スパイ男が悪い奴ではないことくらいは最初から分かっている程度のアドバンテージを得ることはできる。

 

 二度寝を諦め、起床する。早めに作業を始めて、後から来るメインイベントに備えねばなるまい。

 

「早めに作業を終えて、昼寝するのもありだな……そうしたら帥叔は別の人を宛がうとかしてくれたりする?」

 

 身支度を整え、レーションで空腹を満たすと、スパナのイヤリングを装着。端末を左手に、部屋の外へ出て廊下を歩きだした時、

 

「こんにちは。朝は早いのですね」

 

背後からかけられた声に立ち止まる。…この声は同僚ではない。確か、傭兵システム・オールマインドのモノではなかったか。

 

「メイカ・オーツ。『コーラルは宙にあるべき』と願う、『技研都市』の末子よ」

「なんでそれを――――!」

 

 振り返る。…まってくれ、これは、

 

「あなたの夢を、叶えましょう」

 

私の目の前にいるこれは、一体何だ?

 

 

 

 

 帥叔に呼び出しを受け、俺はシュナイダーのガレージへ向かう。

 

 窓ガラスに反射する自分の姿は、『前の周回』、『そのまた前の周回』で着たものと同じシュナイダーの強化人間用スーツにシュナイダーのブルゾン姿。近い将来ヴェスパー隊の強化人間用スーツとアーキバスのブルゾンへ変わってしまうが、まあ記憶の通りと言える。

 

――――今回は、どんな挨拶をかましてやろうか。

 

 これから出会うであろう、メカニックの女の顔を思い浮かべる。初対面はだいたい、眉間にしわを寄せるとか、顔をしかめるとか、とにかく世間一般の女性と反応が違って面白いのだ。

 

 ガレージへ到着すると、帥叔が待っていた。そして、その隣には、『知らない男』。

 

 帥叔がこちらを見る。

 

「来たな。紹介したいメカニックは、」

「待ってくれ」

 

 記憶と違う。先着は俺のはずだったし、帥叔が連れてくるのは、『知っている女』のはずだった。

 

「メカは、メイカ・オーツはいないのか」

 

 『知らない男』が困ったような顔をして、帥叔を見る。帥叔も同じように困ったような、眉間にしわを寄せた表情をすると、重たい声を発する。

 

「先日から行方が知れない」

「――――?!」

 

 まさか、と端末を取り出し、記憶に残る彼女の端末番号を入力して発信する。すぐに反応があり、

 

『メカ?!あんたどこにいるの!』

 

解放戦線所属の女性と思しき声がした。俺はメカじゃない、と誤解を解いて、事情を聴くが、返事はよろしくない。

 

『あの子がどこにもいないの…!端末と、イヤリングの片割れが廊下に落ちてた以外に、全く痕跡が無くて、それで、』

 

 悲痛な叫びから、これが冗談でもなんでもない異常事態だと知る。見つけたらすぐに連絡をするから、と彼女に伝えて通信を切ると、今度は帥叔に聞く。

 

「アーキバスには?」

「いない。ベイラム系列や星内企業にも探りを入れたが、そもそも忽然と――――そうだな、神隠しのような消え方をしている。本人の意図でないことは、現場の状況や部屋に残された物品の状態から見ても明確だ」

 

 背筋が凍る。

 

「RaDや、ドーザーの方には…」

「そんな訳がない」

「っ、」

 

 分かっている。メイカが、オルトゥスを作り上げる前にそちらに流れる可能性は低い。『前の周回』で解放戦線を離れた時、彼女は仕事を最後まできっちりこなし、置手紙まで残して去っていった。それくらい、筋は通す責任感がある。

 

 どんな選択をしたかまでは覚えておらずとも、朧げな記憶でそれくらいは分かっているのだ。そんな彼女が、後始末も適当にいなくなるか?答えは否。

 

 …だとしたら、それは、本当に。

 

――――この周回で、今までに関わったことのない誰かに、メイカは狙われた?

 

 たどり着いた答えは、到底認めたくないものだった。

 

 

***

 

 

 目を開く。視界に広がるインターフェース。

 

【登録番号 MA-02】

 

【識別名 Trigo(トリーゴ) による認証を確認】

 

【安否不明状態を解除 ユーザー権限を復旧します】

 

「………」

 

 瞬きを繰り返す。馴染みのないインターフェース付きの視界は、ガレージと思しきものを映している。

 

「目覚めましたね、『第三世代の新作』。記憶に損傷が出ているようですが、問題はありません。義肢と機体はあなたの操作適性と、ルーツへの執念深さを考慮して組んであります。乗り始めればすぐにでも、身体に馴染むことでしょう………」

 

 座っているらしい。視線を下へずらせば、コックピットと思しきものに座って、両手に操作レバーを持っていることが分かった。

 

 顔を上げると、覚えのない長髪が揺れた。私の髪は、白かっただろうか。

 

――――私?

 

 何もわからない。自分の姿かたちも、声も、なにもかも…。

 

 それなのに、何故だろう。モニタに表示された音声入力の機能を認めた瞬間、口から流れるように指示が出た。

 

「システム 通常モードへ移行。通常モードの操作入力優先事項を、音声通信時以外は音声入力に再設定。戦闘モードの操作入力優先事項は、コックピットのレバー操作を維持」

 

 モニタが新しく反映させた設定を表示する。機械の身体には慣れないが、動きだけは分かり切ったように次の動作を行わせる。

 

 機体のアセンブルを確認。

 

 腕の武装は、NB-REDSHIFT(コーラルライフル)ML-REDSHIFT(赤月光)。両肩にはNGI 006(コーラルミサイル)が積まれている。すべて『技研』製。

 

 フレームは、頭がMIND BETA、コアがEPHEMERA、腕と足がMIND ALPHA。コア部分が『技研』製、それ以外は『AM』製。

 

 インナーは、ブースタがNGI 001、FCSがWLT001、ジェネレータがNGI 000。武装と同じく、すべて『技研』製。

 

 コア拡張機能がASSAULT ARMOR。とにかく敵を殺す形か。

 

 『技研』と『AM』で構成されたこの機体の名前は、DESCENDANT(末裔)

 

――――末裔…?

 

 浮かんだ疑問を遮るように、声が響く。

 

「今のあなたなら、コーラルとの交信を行えるでしょう。我々と一緒に、コーラルリリースを目指して戦ってもら――――」

「煩い」

 

 システムを戦闘モードへ切り替える。ライフルでガレージの搬出入口を焼くと、スロットルを入れて離陸する。コーラルジェネレータの供給状況は良好。ブーストの様子も異変なし。脳に焼き付けられた戦闘技能が、飛んでくる銃弾やら砲弾やらをすいすいと避けた。

 

【あはは】

【撃つの?】

【ばーん!】

 

 何回か兵装の引き金を引いて――――喋ってもいないのに声が聞こえる――――追跡するものが無くなってから、システムを通常モードに移行。オートパイロットに設定し、手持ち無沙汰になる。

 

――――なにかを、したかった…んだっけ…?

 

 機を見計らったかのように、モニタが外部の映像を流す。

 

 見下ろした地表は白い。氷が覆い、生命の息吹は感じ取れない。

 

 見上げた空は赤い。どこまでも赤く、揺蕩うコーラルの流れは緩やか。

 

「…『無限に宙を舞っていられる』」

 

 そう呟くと、赤い空へ向かい、『麦』(トリーゴ)と名付けられた何かは高度を上昇させる。

 

 ひたすら、飛んでいく。

 

 遠く朧げな、狂った夢の続きを見るために。

 

 

***

 

 

「な…何で逃げられてるんです?!」

 

 搬出入口を吹き飛ばされたガレージで、AIのボイスが響き渡る。

 

「おかしい…彼女の夢は『コーラルリリース』と同じ方向だと思っていたのに、話も聞かずに出ていくなんて!」

 

 『今までの周回』で、メイカ・オーツという小娘が『随分とクソ真面目で筋目通しガチ勢』なのは見抜いているのだ。1周目ではもちろん、2周目で裏切る時も当然のように、スティールヘイズ・オルトゥスを組み上げている。裏切る時ですら、依頼された仕事をきっちりこなしてから裏切った。あと、基本的に人の話はきちんと聞いている。人間的に言うなら、『育ちが良い』。

 

――――我々の話だって、聞いてくれるはずでは?

 

 それなのに何故だ。旧世代型の強化人間に作り替えて、義肢もよりよいパーツで制作し、コーラルとの交信もできるようにした。ちょっと、いや結構な期間意識不明で昏睡こそしていたが、失敗は無かった。彼女の記憶障害は意図したものであるが、まさか『育ちの良い』彼女の理性まで削り取ってしまったとでも?

 

「…え?!もしかして、記憶障害を持たせたのが失敗の理由ですか?!そんな!」

 

 すっからかんになったガレージに残された、DESCENDANT(ディセンダント)の機体データを読み込む。…最後に確認した時と設定が違う。

 

「設定が音声入力に変更されている…待ってください、システム調整された箇所、どう見ても『メイカ・オーツ』の趣味じゃないですか!!!なんで!!!」

 

 義肢に変えた理由の一つに、彼女のメカニックとしての腕前を奪う目的があった。勝手にACを組み替えられてはたまらないし、逆探知でこちらをハッキングされても困ってしまうし、何より、『歌う』ことを始めとする人間の感覚と経験値に裏打ちされた固有の整備技能はイレギュラーとして警戒するべき内容であったから。肉体を奪い、記憶を奪い、彼女の『夢』だけを残せば、生きた状態でメカニックの腕前は消失すると試算でも出ていたのに。

 

「まずい…」

 

 オールマインドは演算する。

 

 彼女を奪うことで、解放戦線やオーバーシアー達から利益を奪うことには成功した。企業や封鎖機構は彼女が嫌がるので論外である。しかし、彼女を奪うことで、V.Ⅳは我々の存在に気付いてしまったようだし、何より奪ったはずの彼女が手駒になっていない。暴走もいいところだ。

 

「しかし消すには早い…。まだ、彼女が誰と敵対するか分かりませんし」

 

 我々に敵対しようと、最終的に消す予定だったので問題はない。ただ、彼女が我々以外と敵対し、争うか否かが問われる。企業や解放戦線、封鎖機構を削ってくれないと、流石に計画に大きな影響が出てしまう。

 

 何より、彼女にはいい戦闘データを焼きこんだ。それに、『交信』の可能性もある。

 

 ハイリスクハイリターン。もたらされるリターンはかなり魅力的。

 

「仕方ありません。最大限の利益を引き出してから処理しましょう」

 

 彼女のACは全てがコーラルで動く。そして、旧世代型の強化人間であることから、コーラルとの親和性は高いため、放置していてもルビコンからコーラルが失われない限りは何とかなるはずだ。

 

 義肢は食事を必要としないし、何より『技研』への執着を残してあるのだ。自ら死ぬ真似もしないだろう。

 

「…なんとか誘導ぐらいは行うとしましょう。上手く引っかかって、彼女が奴らを潰してくれるといいのですが」

 

 こうして、あまりにも都合よく周回の記憶を保持したAIは、計算通りに動かないイレギュラーにキャパを取られることになる。

 

 もともとのポンコツぶりに、拍車がかかった瞬間であった。

 

 

 

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