鉄の霞と技術者 作:石和
※二話まとめて投稿しています。
前の話からお読みください。
ここは星外企業「アーキバスグループ」の系列企業「シュナイダー」が管理する、ルビコンに多々存在するガレージの一つ――――のフリをした、解放戦線の拠点。
鉄や油のにおいが充満するそこで、TSUBASAの肩に胡坐をかいて座る女が一人。前下がりボブの髪の隙間から、スパナをかたどったイヤリングが見える。それを揺らしながら、彼女は膝上に乗せた端末を操作し、コードでつながった頭部パーツ内の電装系のメンテナンス作業を進めていく。
せわしなく手を動かす彼女のはるか下、TUBASAの脚部パーツ付近から声が響く。
「メカ、お呼びだぞ」
「今行く」
彼女はACに接続していた端末を外し、移動を開始した。
「待たせました」
「悪いな、メカ」
帥叔に呼び出された先は、シュナイダー本部。アーキバス傘下で、帥叔のせいで気付いたら獅子身中の虫と化したルビコン解放戦線の協力企業だ。
――――うわあ…ひい…
内心、メカは緊張している。
笑ってほしいのだが、『前世の記憶』が存在するので、初めて見るはずの景色に覚えがあるなんてことがあるのだ。だから、シュナイダーに就職するのも、帥叔に首根っこ掴まれて解放戦線入りするのも、なんならこの呼び出しも、初めてではない。
左手をポケットに突っ込む。中に荷物がちゃんと入っていることを確認。忘れ物は無い。
一応相手を確認しておこう、と帥叔に声をかける。
「ここに来るのは、ラスティ?」
「知っているのか」
「少しだけ」
それならば話は早い――――帥叔はガレージのカードキーを渡すと次の仕事へ行ってしまった。忙しい人だ。
ぽつねんと残された私は、しばらく立ち止まる。
【夏も近づく 八十八夜】
緊張を紛らわすために、歌いながらとぼとぼ歩き始めた。
………柄にもなく不安なのだ。ラスティが、何も覚えていなかったら、私は初対面の振りをする自信が無い。
前の終わりで、私が『再会』を祈ったことは覚えている。本当は、こんな世界じゃなくて、殺し合いの必要が無い平和な世界が良かった。
――――そうしたら今度は普通に、友達をやれそうな気がしたんだけどねえ…
ふと気づけば、ガレージの扉の前に立っていた。思わず顔が下がる。
【摘まにゃ日本の茶にならぬ】
最後のフレーズを歌いきり、覚悟を決めてカードキーを通そうとして、扉が開く。
「チャツミ…お茶の葉を収穫するときの歌だったな」
「!」
頭上から降る声に、顔を上げる。
「やあ、メイカ」
覚えのある胡散臭い笑顔ではなく、何の飾り気もない普通の笑顔が見えた。
「ラスティ」
「その様子だと、覚えていそうだな」
腕を引かれてガレージへと立ち入る。扉が閉まり、彼はずいぶん嬉しそうにこちらを向いた。
彼の手が伸び、黒い髪に触れる。…その顔は、どんな感情なんだ?
「やはり、黒が似合う」
「そう?――――そんなことより、こっち」
記憶があるとわかった私の緊張は吹き飛んで、用事を済ませようとする。一方の彼は、私の言葉で先ほどまでのよく分からない顔が苦笑いに変わった。
「そんなことより、何だ?」
「これあげる」
左のポケットから取り出したのは、スティールヘイズをゆるく模した小さな根付。
「スパイするのに、流石にスパナはまずいかなって思ったから、私が組む予定の機体をキーホルダーにしてみたの」
ついでに、『スティールヘイズ』となる機体に適用させる予定の起動キーも手渡す。
「なくしたら困るものにつけて使って。スパナのキーホルダーは、『オルトゥス』の起動キーにつけてあげるから」
「………ははっ、」
「?!」
彼が壊れた。こんなに声を出して笑っている姿は、記憶に全くない。
ひとしきり笑って、目じりの涙を拭った彼は言った。
「ありがとう。――――『これからも、スティールヘイズを頼む』」
「ん」
だったら、早速機体を組まないとね。
ガレージに備え付けの端末をひっつかんで、カタログを展開する。
こうしてまた、私はスパイ男のメカニックをするのだ。
――――安い機体など組んでやらない。
ルビコンの夜明けを目指す英雄だ。絶対に、最後の最後まで生かしてやる。
祝!3周目完結~周回は続くよ永遠に~
ということであとがきを書きます。支離滅裂ですし、意味も不明な怪文書なので読む必要は全くありませんが、お付き合いいただける方はよろしくお願いいたします。
まずは、ここまでの閲覧、誠にありがとうございました。コーラルに脳を焼かれてしまった人間の幻覚と妄想の煮凝りを読んでくださったあなたは本当に褒め称えられてしかるべき。
「あんな反逆心剥き出しの男が何でスパイなんかしてるんですか?」という発想から始まった狂気の連想が文章と化し、なんか連載になり、完結したはずなのに周回を始め、最終的にエンドレスになったという現実を未だ呑み込めないです。これは重篤な患者だな…と自分でも思っていますが、個人的には楽しかったのでいっか~の顔をしています。
何とか年内に書き終えることができたのも個人的に歓喜ポイント。年明けはさわやかな気持ちでAC6の幻覚から逃れられるな!やったぜ!と思っています。逃れられるはずなんです。
私にとっては10年ぶりの新作にして、初めて据え置き型で本格的にやれたACだったのですが、PSP版しかまともにプレイしたことが無かった狂人にはあまりにもルビコンの空が光り輝いて見えました。実際綺麗。そして、めちゃくちゃ楽しい。ACを操作するのも、アセン組むのも、世界観も、フロム脳を爆発させて考察するキャラクター達も…本当にいい作品を遊ぶことができた私は幸運に違いない…ッ!あとボタンが不足しない。すごい。
ACを始め、フロムゲーはプレイするの苦手だと思ってたんですけど、PSP版しかやったことないのが原因の勘違いだったらしいと実感し、今ではエルデや隻狼にまで手を出す始末です。たのしい。
さて、この作品ですが、今度こそ終わりです。謎時空編の現パロが出てきたりとかはしません。あくまでもルビコンで彼らは生きているはずだ…そのはずなんだ…と自分を制して我は寝る。
以下、解説を少し書いていくことにします。
この作品の周回順は、私がプレイした順番になっています。そのため、1周目に解放者√が来ていて、随分と狂気の621だなあと思われた方もいらっしゃるでしょう。Exactly!
なお、1周目が本編なのは、彼らにとって最良の終わりが解放者√だからです。やっぱり幸せに終わるのが一番だよ…と『ミシガン殺し・ラスティ殺しからの火√愛好家』は申しております。
そして、2周目3周目でやたらメカちゃんの殺意が高いのは、『気に入らない奴は殺す』『好きな奴は死んでほしくはないが、他人に殺されるくらいなら自分で殺す』という思考がもともと彼女にあるためです。なんかフロムでよく見る流れですね。
でも殺すのはつらいから、結局『相手の継戦能力を奪う』にシフトしてしまうのが、メカちゃんの優しさにして甘さなのかもしれません。そんなだから真っ先に死ぬ。
あと、気付いたら周回する形にしてしまったので、周回越しに伏線を回収するような雰囲気も出すようにしました。ちなみに、1周目のおまけに載せた『メカちゃんオバケ嫌い』は、3周目の『隣人に応えてはならない』につながっているかもしれません。小さいころ、親や祖父母に『不用意に声をかけると連れていかれちゃうよ~!』って教わって恐怖するメイカちゃんがいればいい。
3周目のメイカちゃんの機体は、私がアリーナ、地下、カーマンライン全箇所でラスティを転がしてきたものになります。特にカーマンラインはSランク取りまくりですので、実質オルトゥス殺しの機体という認識でいます。
そろそろネタが尽きましたので、武闘~解放あたりを書く上で聞いていた曲でも並べておきます。
「亡国の王者」「高慢と誇りと」「銀の庭であなたと」「真実」(FEエコーズ)
「舞踏会の夜」「神を屠る星」(FE風花雪月)
「船上生演奏」「仮面舞踏会」(憂国のモリアーティ)
「楽園」「答えは深い闇の中にある」(PSYCHO-PASSシリーズ)
「桜春」(ジョーカー・ゲーム)
こんな話書きながら聞くチョイスじゃねえ!!!(各作品もぜひプレイしたり観たり読んだりしてくれよな!)(ささやかな布教)(年末年始のお供に…ね!)
以上、怪文書でした。
ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。
もしも趣味が合いましたら、またお会いしましょう~!