王女様の狂信者君   作:這いよる混沌

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今日も推しが尊くて幸せ。皆さんの推しはどの子ですか?


問と答えと謎

男の質問は船についてのものだった。どういうことなのだろうかという考えが生徒たちと先生の脳裏によぎる。アビドス(ここ)で船?自分たちの自治区にこんなこと言いたくないが砂しかないところで船なんか探しても意味なんかあるのだろうか?いやあるわけがないと考えが一致する対策委員会。それに対して空崎ヒナと先生はアビドスという砂漠地帯で船について聞いてきたことの意味を考える。契約紙なんていうオーパーツを扱うような存在が砂漠で探す「船」とは一体何なのか皆目見当もつかない。そうやって思考している中しびれを切らしたのか男が答えをせかしてくる。

 

『それでお前たちはここアビドスで船を見たことはあるのか?』

「私は見たことがないわね」

【私もそういったのは見かけてないね】

「私もないわね、シロコ先輩はどう?」

「ん、私もない」

「私もないですね~♧」

「私もないですね」

「おじさんもないかなぁ」

『……ふむ、嘘はついておらぬようだな』

【君の望む答えは得られなかったみたいだけどこれでいいのかな】

『構わん。もとより今回の契約に俺の望む答えを答えなければならないという制約は課せられていない』

【そういってもらえてよかったよ】

 

そんなやり取りをしていると先生と生徒たちはいつのまにか身体に巻き付いていた鎖のようなものが消えた感覚を覚える。いったい何が起こっていたのか理解できず皆そろって男の方を向く。

 

『何やら聞きたいことがあるようだな』

【そうだね。いつのまにか体に巻き付いていた鎖のようなものが消えた感覚があった。これはいったい?まさかとは思うけど契約の仕組みについて隠し事をしていたのかな?】

「もしも先生の入ってる通りなら、おじさんちょっと見過ごせないかなぁ」

 

小鳥遊ホシノの発言を皮切りに全員が戦闘態勢に入る。皆全く怯えていないわけではないが先ほどよりもしっかりと構えている姿を見て自然と笑みをこぼす男。先ほどの落ち着いた空気から一転しいつ衝突してもおかしくない緊張が走る。両者とも言葉を発さずに相手の動きを観察し続けるこの空間に一切のノイズは流れていない。小鳥遊ホシノと空崎ヒナが先制攻撃を仕掛けようとする瞬間に男が口を開く。

 

『そう構えるな、そもそも俺は契約によってお前たちを攻撃することができないのだから反撃ができん』

【そう言うなら最初に話しておいた方がお互いのためだったと思うけど】

『契約紙を用いた契約など久しいからな。ついこの感覚について伝えるのを忘れていただけだ、すまんな』

『さて、お前たちが感じたものは契約紙が生み出す強制力の具現化現象だ。この鎖の感覚こそ正常に契約が履行されたこと示している』

【体に害があるわけではないんだよね?】

『心配性だなお前は。そういった効果はペナルティでしか生み出せん』

【それならよかった。みんな銃を下して大丈夫だよ】

「……先生がそういうのなら」

「うへぇ、そうだね。みんな下そっかぁ~」

『……慕われているなお前は』

【うれしいことにね】

【あなたには言いたいこともあるけどまずありがとう】

『……なんのつもりだ』

【あなたがイオリやチナツ、風紀委員会の子たちを攻撃したことや何も知らないのにホシノを侮辱したことは許せない】

【でもここで行ったやり取りにおいてあなたは暴力を振るわずにいてくれた、そのことに感謝を】

『……わけがわからん。なぜわざわざ俺に言う』

【だって生徒が無事でいてくれることがうれしいからね!】

『……ッ⁉』

 

シャーレの先生がその言葉を発したとたんにうめき声をあげながら頭を抱える男。額には脂汗が流れ顔は苦悶の表情に染まり、両目は焦点が合わず虚ろな目で空を見上げている。明らかな異変に小鳥遊ホシノ、空崎ヒナは武器を構え先生は指揮を執る準備をする。三人は先ほどの契約に付与されたペナルティについて一つの疑問を抱いていた。先ほど男が明言しなかった「ペナルティの効力」についてである。あの男はどんな契約内容にもペナルティを付与することで契約紙の絶対的な強制力を生み出していること、ペナルティは契約によって行われる動作に関係するものであることを説明していたが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()については何一つ説明していない。先程のように単に久しぶりだから忘れていたのか、何かしらの意図を持って説明しなかったのか。万が一ペナルティの発動にタイムラグがあった場合すぐに動けなければ全滅する可能性がある。それだけの実力があの男にあることをこの場にいた全員が本能的に理解している。あの男が一体どんな状態なのか不明だが最悪の事態を避けることを優先し、シャーレの先生は指揮を執ることを決断した。

 

【みんな!戦闘z『やめろ』!?……もう大丈夫なのかい?】

『……あぁ、気分は最悪ではあるがな』

【いったい何があったのか説明してもらえるかな?】

『久しぶりに発作が起きただけだ、気にすることはない』

【そっか、よかった。私はてっきりあなたが契約をやぶって攻撃してくるものかと】

『……おまえは俺が契約を破るような奴だと思っていたのか?』

【まさかそんな。でもさっきのあなたは間違いなく正気を失っていた。人を見る目はある方だと自負してるけどさすがに正気を失っている相手を心の底から信頼できるとは限らないからね】

『……それもそうだな』

『……さっきの俺はそれほどまでに正気を失っていたのか』

【そうだね、正直に言って誰でも警戒するぐらいには正気を失っていたよ】

『……迷惑をかけたな。……そんなにひどいのか』

【周りから言われたことはないのかい?】

『……諸事情で天涯孤独だ』

【それは……申し訳ないことを聞いたね……】

『気を使う必要はない。もとよりあれらにそういった感情を抱いていない』

【……そっか】

『……二つほどサービスしてやる』

【何かな?】

『一つはペナルティについて。ペナルティには効力の差とタイムラグが存在する。効力に関しては威力も期間も契約期間に影響される。タイムラグに関しては一律で契約違反から三分後だ』

「もう一つは先ほどおまえが聞きたがっていた印を必要とする契約紙に関して。印を必要とする契約紙は契約を成立させるために必要なあらゆる手順や過程に不備が一つでもあれば効力を発揮しない』

【……そんな特大情報を教えてもらえるのは大変ありがたいけど、いったいどうして?】

『……わからん。ただ気分がよいからだ』

『目的は果たした、もうここに用はない。じゃあなシャーレの先生』

『……小鳥遊ホシノ』

「うへぇ、おじさんにまだ用があるのかなぁ」

『……先ほどはすまなかったな』

 

謎の男との会合はこうして幕を閉じた。




あと一話でアビドス編は終了します。アビドス編の後は話の都合上エデン条約を先に終わらせてパヴァーヌを間隔を開かせずに進めます。カルバノクは狂信者君と殆ど関係がないのでカットすると思います。ご容赦ください。
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