王女様の狂信者君   作:這いよる混沌

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ベアトリーチェって舞踏会や社交界に精通してそうな気品と優雅さがある


エデン条約編
異質な大人たち


薄暗く複雑な道を男は迷うことなく歩き続けている。非常に入り組んだ道を幾つも形成しているこの場所は本来指示を受け、それに従って移動しなければどれだけ慣れ親しんだ者でも進むことのできない迷宮である。にも拘わらず男は迷うことなく進んでいる。最初に男を発見した見張りはどうせすぐ迷うのだからと一応連絡を入れるだけですぐに対処をしなかった。しかし男は迷うどころか確実にこの地に存在する学校へたどり着く道を進んでいる。見張りは慌てて連絡を入れながら男を追いかける。

 

どんなからくりでこのカタコンベを正確に把握して進んでいるかは知らないがいつものように数で制圧すれば良い。

 

 

……嘘だ。心の奥底ではあの男に自分たちを凌駕する力を持っていてほしいと願っている。そうであったなのなら自分たちはこの世界(地獄)から離れる(死ぬ)ことができるのだ。

 

どうせ自分たちだけでなく他の小隊もあのスクワッドにはかなわずマダムに道具とすら見られていない。けれども命令に従わなければマダムにどんな目に合わされるのか分からない。もし命令に逆らう事が出来れば、きっと今の生活よりも幸せな未来をつかめるのだろう。でも幼いころから体に刻まれた教育がマダムの命令に逆らうことを許してくれない。

 

 

なぜ私たちはこの世に生を受けたのだろう。誰からも必要とされず、満足な食事も得られず、死にたくても死ぬ事が出来ず、あのスクワッドのような実力もないのに…

 

……誰か……誰でもいい……私たちを……殺して(助けて)

 


 

『随分と悪趣味な模様替えをしたものだな』

『最後にここに来たのは……ユスティナが滅ぶ少し前だったか』

『どれだけ入り組んだ構造であろうとも正確な知識と刻まれた感覚の前には無意味なものよ』

『黒服の話によればここを支配下においているゲマトリアがいるようだが、アリウスを拠点にしているのだろうな』

『このカタコンベと繋がっている場所で使える場所は彼処しか存在しない』

『さて、……いつまでそこに隠れているつもりだ』

 

 

「……気付いていたとはな」

「…………」

「……はぁ、最悪」

「うわぁん!気づかれてます、もう終わりです...」

 

創設以来から決して変わらないトリニティの醜い部分を一斉に向けられ追いやられたアリウス分校を目前にした所で男とアリウス分校最高戦力であるアリウススクワッドは対峙していた。アリウススクワッドは男の察知能力の高さに様々な反応をする中、男はでスクワッドをつまらないものを見るような目を向けたまま何も言葉を発しない。他のアリウス生徒の足音が大きくなる度にこの場の緊張感は高まっていく。両者は既に戦闘態勢に入り、いつ開戦してもおかしくない状況の中アリウス生徒が到着する。その瞬間錠前サオリと男は一気に駆け出すがそこに第三者が介入する

 

「初めまして、無名の司祭に連なる者よ。ようこそ我がアリウス分校へ」

『二度とその名で俺を呼ぶな、ベアトリーチェ』

「あら、これは失礼致しましたわ。私の名をご存知なのですね。黒服からお聞きしたのですか?」

『大体はそんな感じだ。それでお前は俺に何の用だ』

「あなたがこちらに来ることを黒服からお聞きしていたので出迎えに来たのです」

『その割には中々物騒な出迎えだったがな』

「私の生徒が余計な真似をしてしまい、申し訳ありません。後でしっかりと教育しておきますので」

『そうか、……手加減してやれ。特に気にする必要は無い』

「そう言っていただきありがとうございます。立ち話もなんでしょう、中へ案内致します」

「アリウススクワッドよ着いてきなさい」

 

自分たちを支配するマダムと無名の司祭に連なる者と呼ばれた男の呼吸を忘れてしまうような異質な会話が終わりスクワッドを除いた生徒たちは全力で酸素を取り込もうとしてむせている。アリウススクワッドは練度の高さからあの異様な空気の中でも呼吸ができていたがマダムからの命令にサオリは極度の緊張が走る。マダムはあの男を客人として扱っていた。あのマダムがだ。万が一マダムの到着が遅れて衝突し戦闘になっていたら幾ら結果を残しそれなりの待遇を受けている私たちでも罰は避けられなかった。家族が傷つけられてしまうかもしれなかった事実にサオリは体が震えてしまう。震える体を誤魔化すようにサオリはスクワッドメンバーに指示を出し移動を開始する。

 

「こちらにどうぞお座り下さい」

『失礼する』

「先程は失礼致しました、あなたの事はなんとお呼びすれば良いでしょうか?」

『……ゼロで構わん』

「それではゼロ様、改めて自己紹介させていただきます」

「私はアリウス分校生徒会会長ベアトリーチェです、ようこそ我がアリウス分校へ」

『俺は悠久の放浪者ゼロだ』

「その肩書きはユスティナ聖徒会がお呼びしていた名でしたね」

『知っているのなら、説明は要らんな』

「えぇ、大丈夫です。アリウススクワッドよ、アツコ以外は外でここを警備しなさい」

「マダム、ひめ…アツコはどうするのですか.」

「彼女は彼に紹介しなければなりませんのでここに残って頂きます」

「……了解、いくぞお前たち」

「え、でも……」

「……いいから行くよ、ヒヨリ」

「ま、待ってください置いてかないでください」

「……アツコこちらへ来なさい」

「……………」

『お前は……そういう事か』

「えぇ、かのユスティナ聖徒会と関わりがあったゼロ様ならもう既にお気付きでしょう」

「秤アツコはユスティナ聖徒会と繋がりのあるアリウス生徒会長の血を引くロイヤルブラッドです」

「………………」

『……彼女は言語機能に問題でもあるのか?』

「いいえ、彼女はこれから行われる儀式において重要な役目を担っているため負荷を減らすようにしているのです」

「………………」

『……そうか、随分難儀なものだな』

「ところでゼロ様はアリウス分校に一体なんの用事があったのかお聞きしても?」

『ここの統治者がどのような者か気になったのでな。……随分と変わり果てたようだがな

「……………(変わり果てた?)」

「ふむ、そうでしたか。悠久の時を生きるゼロ様からの評価は気になりますが、今はその時ではありません」

『さて、俺はこれで失礼する。やることがあるのでな』

「そうですか、ではアリウススクワッドに護衛をさせましょう」

『……世話になる』

 

「…………」

「……えっと……その……」

「………………」

「…………」

『護衛はカタコンベ前までで構わん』

「……そういうわけにはいかない。マダムは貴方の護衛を命じたのだ、それを達成しなければならない」

『俺の方から申し出たと伝えておけ、どうせ見ているのだろうしな』

「…………」

『それじゃあな』

 

「な、なんというか……変な人でしたね」

「……そうだね」

「………………」

「いったい何者なのだあの男は」

 

あのマダムが丁重にもてなす男の正体についてサオリが思考する中、アツコはマダムの入っていた「無名の司祭に連ねる者」という言葉とゼロが小さく零した「変わり果てた姿」について考えるのであった

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