Eternal Providence ~死と眠りの神々の異世界珍道中~   作:とんこつラーメン

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CHAPTER Ⅸ 亡霊消滅

 クラス対抗戦は、無人機なんて無粋な乱入者なんて現れることなく、無事に何事も無く終わりを迎える事が出来た。

 一年生の部は、なんと優勝したのは鈴でもなければセシリアでもなく、一年四組のクラス代表にして日本の代表候補生でもある『更識簪』だった。

 

 織斑一夏がISを動かさずにいたので、彼女の専用機の開発が中止される事も無くなったので、彼女は堂々と自分の専用機である『打鉄弐式』にてトーナメントに参加。

 実は打鉄弐式と簪は、色んな意味でセシリアと鈴とは相性が非常に悪かった。

 

 まず、セシリアの専用機である『ブルー・ティアーズ』のビットは、打鉄弐式の高性能誘導八連装ミサイル『山嵐』と、マルチロックオンシステムの前に呆気なく迎撃され、トドメに荷電粒子砲『春雷』を撃ち込まれ敗北。

 

 鈴との試合の時は、甲龍の装甲を利用した『肉を切らせて骨を断つ』戦法で辛うじて大量のミサイルと荷電粒子砲を乗り切るが、その時点で鈴と甲龍は満身創痍。

 接近さえすれば勝ち目があると思った瞬間、簪の手には対複合装甲用超振動薙刀『夢現』が握られており、その斬撃にて呆気なく撃沈。

 因みに、甲龍自慢の武装である『衝撃砲』は、ミサイルの嵐によって破壊され使用不能になっていた。

 

 結局、二人揃ってタナトスとヒュプノスに自分が優勝するところを見せられず、鈴は準優勝、セシリアは第三位に落ち着いてしまった。

 

 全く予想していなかった相手に惨敗してしまったセシリアと鈴はかなり落ち込んだが、双子の慰めによってすぐに立ち直ることが出来た。

 その際に、しれっといつかどこかで一緒に遊びに行くことを約束されてしまったが、双子にとっては些細なことなので気にしなかった。

 

 こうして、特に怪我人や事件、これといったトラブルも起きることなく、今年のクラス対抗戦は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 クラス対抗戦が終わってから時間が経ち、6月初頭の日曜日。

 

 タナトスは寮の部屋のベットに寝転がってゴロゴロとしていて、ヒュプノスは椅子に座って静かに雑誌を呼んでいた。

 

「ねーヒュプノスー」

「何よ」

「今日って何か予定とかあったりするー?」

「別にないけど? つーか、そんな予定なんてある訳が無いでしょうが。私達はこの世界の住人じゃないんだから」

「そりゃそーだけどさー」

「そんな事を聞くって事は、アンタは予定があるワケ?」

「んー…あると言えばあるんだけどー…」

「何よ。妙に煮え切らない言い方をするわね」

「いやねー…話したいのは山々なんだけどさー…誰かが部屋に近づいてくる気配がするんだよねー」

「誰かって誰よ?」

「現状、日曜日にオレ達に接触して来ようとする人間なんて『あの子達』しかいないじゃん」

「あー…」

 

 タナトスの言おうとしている事をすぐに理解したヒュプノスは、ジト目になりながら虚空を見つめる。

 次の瞬間、タナトスが言った通り、ノックの後に部屋の扉が勝手に開かれた。

 

「タナトス! もし暇なら、ちょっとアタシと遊びに行かないッ!?」

「ヒュプノスさん! よかったら私とお散歩にでも行きませんことっ!?」

「「え?」」

「「…………」」

 

 どっちかだとは予想していたが、まさか鈴とセシリアの両方が来るとは思ってなかったのか、双子は珍しく揃って目が点になっていた。

 

「…両方来たんだけど」

「うん…ちょっとだけ驚いた」

 

 本物の神々が15歳の少女二人に驚かされる。

 神としての面目が丸潰れである。

 

「ど…どうしてセシリアがここにいるのよっ!?」

「それはこっちの台詞ですわ! 鈴さん!」

((いや、こっちの台詞なんですけど))

 

 部屋の主を全無視して話を進められても普通に困る。

 せめて、まずはこっちと話をして欲しい。

 

「あー…申し訳ないんだけど、今日はオレもヒュプノスも実は用事があるんだよねー」

「え…そうなの?」

「うん。悪いねー」

「それなら…仕方がありませんわね…」

 

 急に雨に濡れた猫のような顔になる御両人。

 流石に申し訳ないと思ったのか、ここでタナトスがフォローを入れる。

 

「その代わり、別の日に二人と一緒に過ごすように予定を組むよ。それならいいでしょ?」

「し…仕方がないわね~! 絶対に約束は守りなさいよッ!?」

「タナトスさんが、そこまで仰るのであれば…分かりましたわ」

 

 聞き分けが良すぎる二人が心配になるが、それはそれと割り切ることに。

 

「それじゃあ、またね」

「お邪魔しましたわ」

「ばいばーい」

 

 二人が去ってから、ヒュプノスはすぐにタナトスに詰め寄った。

 

「ちょっと。どうして私も用事があることにしたのよ?」

「んー? その方が都合が良いと思ったからだけど…もしかして、ヒュプノスはあの子達と一緒に遊びに行きたかったの?」

「別に…どっちでもよかったけど…。っていうか、さっき言ってた『用事』って何よ? いい加減に説明しなさい」

「はーい。うんしょ…っと」

 

 勢いをつけながら起き上がり、胡坐をかきながらヒュプノスと向き合った。

 

「オレはさ…この間のクラス対抗戦の一件でこう思った訳ですよ。『織斑一夏という特異点がIS学園と言う舞台にいなくても、決して油断は出来ない』…って」

「それって…例の無人機?」

「そ。実際、篠ノ之束は彼がIS学園にいなくても普通に無人機を使ってきた。まるで、無理矢理にでも『歴史』を『修正』するかのように」

「確かにね。そういえば、その篠ノ之束の慣れの果ては今どこに保管してんのよ?」

「冷凍庫の中」

「幾らなんでも保管の仕方が適当過ぎるでしょうが!!」

「別にいーじゃん。最初から冷凍保存してるんだし」

「それでもよ! せめてアタッシュケースの中とかに仕舞っておきなさいよ!」

「後でやっとくー」

「子供か!」

 

 因みに、文字通りの胎児退行した束が収められているケースは、後でヒュプノスがちゃんと改修して然るべき場所に仕舞った。

 

「話は戻すけど、原作で害悪となっているのは何も篠ノ之束だけじゃない。他にもいるでしょ?」

「そりゃまぁ…いるにはいるけど……まさか!?」

「その『まさか』。少しでも仕事の邪魔をしてくる可能性があるのなら、その芽を先に摘んでおけば問題無くね?」

「言ってる事は分かるけど…」

 

 タナトスが言っている事は理解出来るし、共感も出来る。

 実際、過去にヒュプノスも何回か似たような事はしてきた。

 

「もしかして、それを今からしに行くから『今日は予定がある』なんて言ってたの?」

「いえーす。善は急げって言うしね」

 

 道理でさっき、タナトスが言い渋っていた筈だ。

 確かに、こんな事は彼女達の前では話せない。

 

「場所は分かってるの?」

「もち。今からでもすぐに直行出来るよーん」

「方法は?」

「色々と考えたんだけどねー。その中でも『一番確実で、一番クリーンな方法』で行くことにしたよ」

「妙な胸騒ぎがするけど…その時は私が止めればいいだけの話か」

 

 これに関してはいつもの事なので気にしない。

 念の為にカッターナイフはポケットに入れておく。

 

「てなわけで…れっつらごー!」

「はいはい」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 成層圏。

 それは地上と宇宙の境目。

 タナトスとヒュプノスは現在、そこにいた。

 

「『一番確実で、一番クリーン』だって言うから、何かと思ったら…」

「んー?」

 

 その場所には、二体の全身装甲のISが浮いている。

 一体は血のような真紅に染まり、もう一体は巨大なバックパックを背負った全身が紫のISだ。

 

「まさかの『サテライトランチャー』だなんて流石に予想出来ないわよ!!」

 

 そう。

 彼女達が今装備しているのは『ガンダムヴァサーゴ・チェストブレイク』と『ガンダムアシュタロン・ハーミットクラブ』を模したISだった。

 色んな意味で異形な姿をしているので非常に目立つ。

 ここには他に誰もいないが。

 

「っていうか、この世界には『マイクロウェーブ送信施設』なんて無いでしょうが! どうやって撃つのよ!?」

「確かに、この世界にはマイクロウェーブの送信施設は無い。けど…無いのなら作っちゃえばいいじゃない!」

「アホか―――――――――!!! そんな後世に影響を与えそうな施設を遊び半分でサクッと造るな――――――!!!」

 

 もしISなんて纏っていなかったら、迷わずカッターナイフをタナトスの頭にぶっ刺していたのに。

 いや…ビームサーベルならいけるか?

 割とヤバいことを真剣に考えたヒュプノスだった。

 

「別にいいじゃーん。この世界の人類はISなんて代物があるにも拘らず、未だに月面の開拓は愚か、調査すらしてないんだからさ。別に送信施設一つ程度造っておいてもバレないって。念の為に、ちゃんとGビットも配備してるし、地球からじゃ肉眼でもレーダーでも観測できないように『ミラージュ・コロイド』と『ハイパージャマー』を使って隠蔽しておいたからさ」

「やりすぎだっつーの…もう…!」

 

 もうツッコミ疲れたヒュプノスは、頭を抱えながら呟いた。

 

「そんな事よりも、とっとと『亡国機業』の本部目掛けて『サテライト・ランチャー』を最大出力でぶっ放そうよ。この位置からなら狙い撃てるし」

「同じ『狙い撃つ』でも、威力が桁違いなのよ…。跡形も残らないでしょうね…」

「じゃあ、やめとくー? もし奴等が襲来した場合、戦力的な意味でほぼ確実にオレ達も矢面に立たされることになるけど」

「それは…避けたいわね…」

「でしょー? だったら…」

「あー…ハイハイ。今回も、アンタの言ってる事が正しいわよ! ったく…」

「んじゃ、いっくよー」

 

 返事と共にアシュタロンがMA形態へと変形し、バックパックからサテライトランチャーが展開される。

 その上にヴァサーゴが搭乗し、背部にある三対六枚のウィングバインダー兼リフレクターの中央部にマイクロウェーブが送信されてくる。

 

「マイクロウェーブ受信…チャージ開始」

 

 エネルギーをチャージしている最中、ヒュプノスはずっと疑問に思っている事をぶつけた。

 

「あのさ…どうして『サテライト・ランチャー』なの? ガンダムXやDXなら単機でもサテライトキャノンが撃てるじゃない」

「んー…どうせなら、仲良し姉妹の共同作業をしたかったんだよねー…ダメ?」

「非効率…って言いたいけど、そんなのはもう今更か。はぁ…」

「溜息なんて吐いちゃって。お姉ちゃんはちゃーんとヒュプノスの心は分かってるんだからね」

「自分の事をお姉ちゃんって言うなら、アンタがヴァサーゴに乗りなさいよ」

「発案者はオレだし、折角だからヒュプノスに引き金を引かせてあげようかなー…という姉心」

「意味不明だし。あ…チャージ完了した。それじゃ…やるわよ」

 

 目の前に移る拡大された標準画面を覗き込む。

 そこには、緑生い茂った森林の中に巧妙に隠蔽されている怪しい施設があった。

 並の連中では見つける事は非常に困難だろう。

 だが、それでも神の眼だけは誤魔化せない。

 

「ターゲット…ロックオン。誤差修正…」

「いつでも行けるよー」

「了解」

 

 ゴクリと唾を飲んだ後、意を決してヒュプノスは引き金を引いた。

 

「サテライトランチャー……発射!!!」

 

 砲身から放たれる超絶的なまでの極太ビーム。

 それは一瞬で空気を切り裂き、雲を貫き、目標へと向かって行く。

 

 そして……。

 

「おぉー…」

「とうとう大量破壊兵器にまで手を伸ばして…はぁ…」

 

 宇宙からでも分かるほどの大規模な爆発が起き、その威力はドーム状に広がっていく。

 周囲の森林は蒸発していき、そこにいた生物たちも自分達に何が起きたのかも分からないまま消えていった。

 施設にいた者達も、逃げる暇もなく、死んだことすらも理解出来ないまま光の中へと消滅していく。

 

「…哀れなもんね。相手は仮にもテロリストだから同情はしないけど」

 

 ヒュプノスがサテライトランチャーの光を眺めながらボソっと呟く。

 

 やがて、光が消え、森林や施設があった場所には巨大なクレーターのみが残され、後には文字通り何も残らなかった。

 

「排除完了…ってね」

「あのさ…『亡霊』を消すのは良いけど…重要なのは『あの三人』でしょ? 誰か一人でも下手に残すと色々と厄介よ?」

「その辺も抜かりないよ。ちゃんと事前に調べて、三人共『あそこ』にいるのは確認済みだから。でも、念の為にー…」

 

 タナトスが目の前に投影型ディスプレイを出してから徹底的に調べてみる。

 

「うん。この世界から完全に『スコール』と『オータム』と『マドカ』の生体反応は消滅してる。これでお掃除完了」

「はぁ…なんか、無駄に疲れた。とっとと帰りましょ」

「さんせー。お腹空いたし、帰りにレゾナンスのはなまるうどんに行こうよ。きつねうどんを食べたい気分ー」

「私はざるうどんかしらね。あっさりしたのが食べたいわ」

 

 そんな話をしながら、双子の神々はその場から消えた。

 仕事の為とはいえ、自分達が数多くの命を奪ったという事実を知りながらも、全く気にすることなく。

 

 神々からしたら、この程度の事は些末事なのかもしれない。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「おい…なんでだよっ!? どうして繋がらないんだよッ!?」

 

 IS学園の三年生の寮の自分の部屋にて、アメリカ代表候補生で三年生のダリル・ケイシーは冷や汗を掻きながら戸惑いを隠せないでいた。

 

 ちょっとした用事があって『親戚』に電話を掛けたのだが、全く応答しない。

 それどころか、繋がる様子すらなかった。

 いつもならば、3コール以内には絶対に出ていたのに。

 

「一体…何があったんだよ…叔母さん…!」

 

 顔を青くして床に座り込むダリル。

 その彼女が『真実』を知るのは、それから少し経ってからの事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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